第25話 最強ボスと人魔模擬大戦-0-
無事に師匠との修行を終えたメアリーは数日あけて、ようやく久しぶりに自分の縄張りにしている森へと帰ってきた。
その間も自分で練習をしたのだが、『点滅』を剣舞として扱うことができなかった。1回だけの点滅なら問題なく出すことができる。しかし、連続でしようとするとどうしても体が動かせずにいるのが現状だ。
「このままじゃ『瞬天』を覚えるのもまだ先かなあ。」
メアリーの師、ミネルヴァが見せた奥義『瞬天』。本人曰く、『点滅』の応用だと言っていたがいざ実践しようとしても「全く分からない。」というのがメアリーの感想だった。ただ、最近イベントがあったばかりで、また起きないと思うので今すぐに覚える必要はないとメアリーは高をくくっていた。
「おっと、公式からのアナウンス。なんだろなんだろ……え!?イベント開催決定!?うそでしょ!?」
絶対に来ないと思っていた矢先の運営からの告知。しかも、今回のイベントの内容を見るに、特別待遇など一切なくただのプレイヤーとしてメアリーも参加できるような内容なのである。
「えっと、イベント名は『人魔模擬大戦』。魔族に分類されるプレイヤーたちと人族のプレイヤーたちが特殊なステージで争う。……プレイヤーだけが争うから模擬ってことなのかな。何はともあれまともなPVPだ~!」
正確には人数差のせいでまともなPVPにはならないまあいつもの如く不利なメアリーなのだが、それを差し引いても一切の弱体化なしで参加できるというのは非常に大きい。とりあえずルールの確認だけは最低限しておきたいメアリーはじっくりとスクロールしながら、残りの文章に目を通す。
「なるほどね~。人間側のプレイヤーはお城を守り続けて、人外側のプレイヤーはそれを攻め落とす。人外側の勝利条件は『人間側のプレイヤーを10万人倒す』もしくは『城に隠された宝を奪う』。逆に、人間側のプレイヤーはその2つをされないように立ち回る。1度でも倒されたプレイヤーはその日のイベントに参加できず、観戦のみになる。期限は1週間の午前9時から日付が変更される午前0時までと。いや~、いろいろと仕様変更されてんね~。」
第1回とは時間制限と期限、残機とほとんどが修正されているが何より大きいのは『観戦』という存在である。
これでも一応はユニークボスモンスターであるメアリーにとって、自分の手の内がばれてしまうのはよろしくない。結局また手加減をしなければならないのかと1度考えたところで、メアリーは自分の考えが浅はかだと気づいた。
「手の内を晒すのを避けるなんて、そんなの執行者のする事じゃない!」
何よりもユニークボスモンスターであることを第一に考えて行動してきたメアリー。今更弱点を晒すことになるからという躊躇いを持つなどありえない。
顔をたたき、己が最強であることを再認識する。ルールを最後まで読んだメアリーは今回のイベントの最終目標を定めた。
「今回、私はハチャメチャに暴れ散らかしてやる!」
メアリーの宣言は森に大きく響き渡った。
「さて、そうと決まればイベントが始まるまで『瞬天』と『点滅』を使えるようにしないとね。」
イベントは来月の始まりから、大体の学生が長期休暇に入ったタイミングからスタートになる。それまでの猶予はおよそ2週間弱。『点滅』は絶対ものにしたいが現状『瞬天』を扱えるかどうかは分からない。
刀を抜いて鍛錬をしようとしたタイミングで何者かから鬼のような連絡が届いた。
「メイちゃんからだね。まあ、十中八九イベントのことなんだろうなあ。……そっか!今回はちゃんと共闘できるじゃん!」
メイからのメッセージを開くと、こんにちはから始まって怒涛の連絡が届いている。メアリーは少しびっくりしながらもしっかり内容を読む。予想通り、今度のイベントについての話で、メイもメアリーと一緒のチームになってうれしいと喜んでいるようだった。
メアリーも『一緒になれてうれしい。今度は一緒に戦おうね。』という旨のメッセージと可愛らしいスタンプを添えて送る。すぐに返事が返ってきてしばらくの間メッセージのやり取りを続ける。ちょっとした変換ミスだったり、漢字を間違えて使っているのを見ると、年相応の子ととても和やかな気持ちになる。
――残念ながら、会話の内容は人に見せられないほどに物騒なのだが。
ともかく、メイと初めて一緒に戦うこととなったメアリーは下手な行動を見せられなくなった。誰よりも凛々しく、メイにさらに尊敬されるようになるため、メアリーはイベントまでの時間を友好的に扱った。
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