第22話 最強ボス育成計画(地獄への入り口編)
無事に師である剣聖ルミナス・ミネルヴァと会うことができたメアリーは、腕を掴まれ、引きずられながら、とある部屋へと連れてこられた。メアリーが部屋に入ったのを確認するとミネルヴァは腕を引っ張ってメアリーを壁に追いやり、鋭い目つきでにらんだ。
「さて、馬鹿弟子。私はひさ~しぶりにあった可愛い、可愛い弟子に聞きたいことが山ほどあるんだ。ちゃんと答えてくれるよな。」
「は、はい。」
殺意すら生ぬるい剣聖の覇気に気圧されたメアリーはただおとなしく頷くことしかできなかった。
ミネルヴァは少し満足したのかメアリーの腕を放し、ソファへ座るよう促した。当然一切逆らう気のないメアリーはおとなしくソファに腰かけた。メアリーが座ったのを確認してから、ミネルヴァは反対のソファへ腰を下ろした。よく見ると先ほどの覇気は全く感じられず、むしろ何か安堵したような顔をしていた。
「まずはお前が生きていて本当に良かった。急に消えたときは柄にもなく焦ってしまったよ。」
「その節は本当にすいません。まさか『理』があんなに早く干渉してくるとは思ってもいなくて。」
『理』とはゲームマスターのこと。つまり運営ということだ。このゲームは運営を神、もしくは上位存在として認知しており、それを『理』と呼んでいる。
メアリーの言い訳に納得したのかミネルヴァは息を吐き、呼吸を整えた。
「なるほどな。随分、面倒なことになってるんだな。よし分かった。なら次だ。今になって戻ってきた理由はなんだ?お前のことだからふらっと立ち寄ったわけじゃあないんだろ?」
「さすが、わかりますか。……折り入って相談があるんです。」
メアリーはまず最初にこの半年間何をしていたかをすべて打ち明けた。最終的に魔王になったこと、何か身に着けようとも何も成長を感じられず、困っていることも、全てを伝えた。ミネルヴァはメアリーのそういった話を顔色1つ変えずにじっくりと真剣に聞いていた。
「っふ、剣聖の弟子が魔王とは笑えるな。それよりも話を聞くと自分自身でできることすべてをやり遂げたということでいいのか?」
「結構大事なことだと思って身構えて言ったんですけどね。まあ平たく言えばそういうことです。私1人だとこれ以上の剣技の成長が見込めないなと思ったのでこうして姿を変えてまで師匠のところへ会いに来たというわけなんですよね。」
魔王を置いておくとはさすが剣聖だ。師匠なら何とかなると思っていたが完全スルーとは恐れ入った。
「私も成長が止まった、いや、成長の壁にぶつかった経験はいくらでもある。そういったものは例外なく、自分で乗り越えたほうが遥かに成長の糧とはなるが、どうしても乗り越えられない壁はやっぱり出てくるものなんだ。」
「師匠にもそういった時期があったんですね。」
「日々剣を振ってりゃそういうのは当たり前だし、挫折なくして成長はありえないからな。ともかく、こういった1人で越えられない壁を越えられるように手助けするのが師匠ってものだ。さあ、準備しろ。お前の今の実力を正確に測ってやる。」
ミネルヴァは壁に飾ってあった模造刀を2本手に取ると、1本をメアリーに渡した。あまりに急な出来事に惚けているときれいに頭を叩かれた。
「わ、わかりました!準備します。準備しますから頭叩かないでください!」
白刃取りをして刀を受け止め、昔稽古をしていた場所へ向かう。メアリーは目的の場所に近づけば近づくほど過去の稽古が脳裏によぎり、次第に足取りが重くなった。逆に、ミネルヴァは顔には一切出ていないが、久しぶりの弟子との稽古にわくわくしていた。こうして訓練場についた2人は5メートルほど間をあけ、互いに刀を構えた。
「まずは攻めから見させてもらおう。準備ができたらお前の好きなタイミングで始めてくれ。」
「でしたら遠慮なくいかせてもらいますよ!剣技『血車』!」
メアリーはいつものように『血車』から始めると、続けて『血突』『紅』と流れるような剣さばきでミネルヴァに斬りかかっていった。かなり洗練された動きに見えるそれを、ミネルヴァは最小限の動きで受け止めた。メアリーはこれくらいなら止められると判断し、続いて2撃目、3撃目をしようとした。
「なるほどな。」
ミネルヴァはそうつぶやくとメアリーと全く同じ構えをとった。『血車』から始めて、続けて『血突』『紅』とあくまで構えと太刀筋だけをまねたものであるがメアリーの一連の動作より無駄をなくし、メアリーが反応できるギリギリを狙って斬りかかった。
「次だ。」
メアリーは『流血蓮華』や『血乱れ桜』、他にもまだ完璧に扱えずスキルとして存在している剣技まで、全身全霊をもってミネルヴァに斬りかかったがそのどれもが防がれて反撃を許してしまった。結局1撃も攻撃を充てることができなかったメアリーは息切れを起こし、ミネルヴァの完璧な1撃が頭に入ったところで稽古は終了となった。
「ふむ、お前は刀の扱いが雑になっているな。」
「えっ、本当ですか!?」
「ああ、太刀筋や足さばきは問題ないが、お前は無意識のうちに力を弱めている節がある。おそらく格下の奴らばかりと戦って、自分を忘れてしまっているのだろう。これでは力加減が分からなくなってしまうのも仕方ない。こういうときは強者との戦い方を思い出すまで戦えばおのずとわかってくるものだ。さあ、弟子よ、休憩は終わりだ。立って刀を構えろ。」
「ひぇ。は、はい!」
確かにケイトラやKarin、アルバートなんかは強敵と呼べたがそれ以外は大した記憶がない。メアリーはまさか一度刀を交えただけでここまでわかるとは思ってもいなかった。無意識のうちに力をセーブしているなら意識して力を出せばいい。そう考えたメアリーは、スピードよりも攻撃威力をあげることを意識しながら再びミネルヴァへと斬りかかった。
「フェイントがなくて1撃1撃が読みやすいし遅い。威力を殺さず、速度も殺さない。無意識と意識を使いこなせ!」
「はい!」
3度目、5度目とメアリーの欠点を1戦、1戦的確に見抜いて指導をするミネルヴァ。今日1日が終わるまで、戦いにして約150回にも及ぶ模擬戦を繰り返し、メアリーの癖などを徹底的に指導していった。稽古が終わるころには辺りは真っ暗となっていた。ちなみにまた明日もあるから絶対に来いとのことだ。
こうしてメアリーは己が成長するため、まさに命を懸けた地獄の1週間が幕をあけた。
お読み下さりありがとうございます!
下にある(☆☆☆☆☆)←これ
押してくれると一番うれしいのでもし面白いと思っていただけたら少しスクロールしていただいてついでにいいねやブックマーク、評価、などお願いしたいです!




