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第19話 最強ボス、初めての敗北


「くっやしいぃぃぃいいいいい!」


 とある家の一室で大人とは思えないほど大きな声を上げ、体をバタつかせ全身で悔しさを表している者がいた。


 その者の正体は今、世界中で大ブームとなっている『プラス・フィクション・オンライン』、通称『PFO』というゲームにおいて最も有名で最強と言われているメアリーであった。


 理由は現在開催中のPFO初のイベントである宝玉争奪戦において、初めてプレイヤーに敗北したからだ。いくら本来の力の半分以上が制限される弱体化せいではあるが、あれだけ暴れ散らかして負けてしまうのは恥ずかしいという感情と悔しいという感情以外沸いてこない。


「最期まで油断しなかったのに!最上位層強すぎでしょ!」


 私を倒したプレイヤー、Karinとアルバートの2人は最初のほうは敵対関係にあったはずだ。しかし、最後の最後で協力関係を結び、私という強敵に屈することなく、相打ちとは言え倒すことに成功した。油断もせず、全力で相手をしたにも関わらず破られたという事実はメアリーのプライドをひどく傷つけるものであった。


 メアリーはベットの上で足をバタつかせ、反省と愚痴を交互にしていた。自分を貶し、相手を褒め称えるメアリー。あれは仕方ないと自分を言い聞かせようしともやっぱり悔しくてあれがダメだったと反省し続けた。時間にして、大体30分くらい続けるとそれなりに反省会も終わり、それが終わると緊張の糸が切れたのか一気に疲れが押し寄せてきて、メアリーはそのまま眠りについた。


 起きた頃には時計の針は8時を指しており大体5時間ほど眠るという、昼寝にしては寝すぎなくらいの大爆睡をしていた。眠ったことでかなり落ち着いたメアリーは自分を励まそうと改めて自分の戦績を調べることにした。


「私の最終ポイントは130,310か。ええっと……あ、ここ押したら詳細出てくるんだ。宝玉が120,000ポイントでその他、プレイヤー討伐が12,090ポイント。そんなに倒してるんだ。というか宝玉のポイント大きいな。つくづく1人が無謀だったと思い知らされたよ。」


 今回のイベントでの私がしなければならなかったことは宝玉を奪うこと、守ること、それなりのプレイヤーを倒すことの3つだった。しかし、宝玉を奪いに行けば自分の宝玉は取られるし、宝玉を守れば追加の宝玉は手に入らないし討伐ポイントも得ることができない。せめて2人だったら結末は変わらずとも、結果は変わっていただろう。


 メアリーは過ぎたことを気にしても致し方ないのでとりあえず布団から飛び出たついでにそのまま浴室へ向かった。そして、丁寧に体を洗い、湯船につかりながらこれからどうするべきかを考える。


「やっぱり成長が止まっているのが痛いんだよなあ。」


 レベル以外にも実力だとかスキルの所持数とかが増えると大きく成長を実感することができるが、レベルが300を超えてからはレベルアップによるステータスアップ以外の成長をほとんど感じられなくなってしまっている。


「一番は使える剣技が増えることだけど、あれどういう基準で剣技になるのか一切わからないんだよなあ。」


 メアリーが扱っている剣技はもともとがスキルとしてあったものである。おそらく一定の熟練度に達すると、剣技として扱うことができるはずなのだがいかんせんその熟練度の上がり方が一向にわからずじまいなのである。


「今使える剣技は『血車』『紅』『血突』『流血蓮華』『血乱れ桜』の5つか。『赫断』『縮赫』『赫薙』は刀が私の血を吸ったら強化されるやつなだけだし、そうなると一番扱えているのは『血車』『紅』『血突』の3つだけなのよねえ。」


 そもそも吸血鬼という種が魔法攻撃主体なせいもあって攻撃力事態にステータスが割り振られない。そういった要因もあってか、刀を使う際の熟練度の上がりに差が出ているのかもしれない。


 なら魔法をという話であるが今現在で存在している魔法は可能な限り集め終わっているし、ほとんどの魔法が最上級まで扱えるくらい成長しきっているため、そこまで大規模な成長をすることはできないと思う。


 これからどういった成長をしようかメアリーは次第に潜水しながらじっくりと考える。今のままのやり方ではすべてが中途半端に終わってしまい、ろくなことにはならない。おそらく、1年足らずでメアリーは討伐されるまで行くだろう。


 顔を上げ息を大きく吸ったメアリーは再び勢いよく潜っていった。大体20秒くらいしたときにメアリーは勢いよく顔を上げた。


「くっそ~。師匠に会いに行けば何とかなるんだと思うんだけどなあ。」


 メアリーがそれなりに刀を扱えるようにしてくれた剣の師匠。メアリーが魔王となった日から仕様のせいで会いに行くことができなくなってしまった悲しいお別れをした過去がある。


 元気にしているかなと変な心配を思い浮かべると、突然、町に侵入する方法が舞い降りてきた。


 メアリーは急いで浴槽から出ると、体を軽くふいただけでとある人物に連絡を取る。


「待ってもしかしたらいけるかも!……クロイだ!クロイに連絡しよう!」


 仕事で忙しいと聞いていたため1日2日は反応がないと覚悟しておいたが案外すぐに返信が来た。


「条件次第で教えてやる。」


 それだけの返信であったがそれだけで少なくとも町に入れる方法が存在することを確認できたメアリーは早速「条件を吞むから早く教えて!」と連絡を返した。


 既読はついたが返信が来ないためいったん落ち着いて、髪を乾かしたり、服を着たりして待っていると大体30分後くらいに返信が来た。


「2日後、今マークしているところに姿を隠して来い。条件は大量の金。ざっと500万ゴールドは必要だと思ってくれ。」


 まさかの要求に驚いたメアリーだが、正直魔王になってからはお金を使う機会がなくなったので有り余っている財産が役に立ついい機会となった。


「確か1億は持っていたはず!」


 今確認する術は持ち合わせていないが少なくともリリースされる前にカンストさせておいたのでそれ以降減っていなければ500万なんてはした金すぐに渡せるはずだ。


 メアリーは「わかった!持っていく!」と返信し、遠足を楽しみにしている子供のようにわくわくした心のまま、数時間かけて眠りについた。

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