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第15話 最強ボスと宝玉争奪戦-7-


 メアリーとメイが戦い始めてから数分が経過した。戦闘が始まって以来、メイが攻撃を仕掛けてメアリーがそれを避けるという状況が続いているが、トーマは依然として攻撃を仕掛けてくる様子がない。

 

 「スキル『鬼の強打(オーガ・アタック)』!」


「お~危ない危ない。」


 メアリーが攻めてきた少し後に、Karin率いるプレイヤーたちがアルバートの塔に攻め入ってきた。Karinはメアリーの存在に気付いているがそれよりも塔を攻めることを優先させたようで、他のプレイヤーたちはその対処だったりに手いっぱいで、私たちの戦いに入る隙はないようだ。


 トーマは今、メイを取るか仲間のプレイヤーを助けることを優先するか、どっちを選ぶのかを迷っているのだろう。

 

 「私としては二人と戦いたいたいんだけどなあ。そうだ!」


 メアリーはすでに慣れたメイの攻撃をかわし、トーマのところへ一直線で向かう。


 「ほらほら、今の君の相手はあのユニークボスなんだからよそ見しちゃだめだよ。ほら、仲間を信じよ?それより大事なメイちゃんがやられるのをじっと見てるだけかな?」


 「……っく。1人で戦わせてごめんメイ!今からは2人でメアリーさんを倒そう!」


 メアリーはようやくやる気になったトーマから一度離れた。これは油断でもなんでもなく、全力の2人と戦いたいというメアリー自身の意思による選択だ。


「しっかりしてよねお兄ちゃん。本当に急な出来事に弱いんだから。」


「ごめんってメイ。これからは僕も本気で挑むから安心して。」


 2人の作戦会議は終了し、再びメイはメアリーに突っ込んでいく。メイの動きも何もかも変わらないがトーマが遠距離から絶妙な位置に攻撃を仕掛けてきたことでメアリーにあった余裕がどんどんなくなっていった。


「いい連携だけどそれじゃあいつまでたっても勝てない、よ!」


 メイが攻撃を仕掛けた後の後隙を狙って蹴りを入れ、メイは遠くまで吹き飛んでしまう。メアリーは、メイの攻撃がなくなればトーマの魔法による遠距離攻撃は大した脅威にはなりえないと考え、そのまま一直線にトーマのほうへ突っ込んでいく。


「隙だらけだよお2人さ。剣技『血車』!」


 トーマは自分のほうへ向かうメアリーをじっと見つめるとその場に立ち尽くしたまま機会をうかがう。


 「スキル『鬼の呪鎖』。隙だらけになりましたねメアリーさん。」


 メアリーはいつの間にか仕掛けられた罠にはまってしまい、行動を制限されることになった。ただ、いくらレベルやステータスが下がろうとも小手先の仕掛けではびくともしないので、メアリーは強行突破して抜け出した。


「厄介だけど、少し動きを止めるくらいじゃメイちゃんが戻る時間は作れないよ。」


 吹き飛ばされたメイがメアリーに追いつくまでは十二分に距離が開いている。メアリーは罠を真正面から蹴散らして速度を緩めずにトーマの元へ向かってくる。


「スキル『転移陣』『鬼の呪鎖』。」


 動きを読んでいたトーマはメアリーを転移陣でとある場所に移動させ、同じように行動を封じ込めた。


「スキル『鬼の強打(オーガ・アタック)』!」


 転移先はメイのすぐ近くであり、そのことに気付いた時には、すぐ後ろには拳を振りかぶっているメイの姿があり、メアリーは避けることもできずもろに攻撃を受けてしまった。


「2人のコンビネーションはさすがとしか言えないわね。いい一撃をもらったわ。」


 本能で動くメイと理性的なトーマ。2人が長く一緒にいるからこそできる協力なコンビネーションにメアリーは思わず感嘆の声を漏らした。


「まだまだ行きますよメアリーさん。僕はこの日のためにたくさん準備してきたんですから。メイ、次は一緒に攻めるよ。『形状変化<ハルバード>』」


「はいなのです。お兄ちゃん!『形状変化<クロー>』」


 さっきの近距離と遠距離の組み合わせから近距離と近距離の組み合わせにスタイルを変えた2人に、メアリーは一瞬の焦りを感じたものの刀を構えて応戦する。


「剣技『血乱れ桜』」


 武器を杖からハルバードに変化させたトーマは近距離から魔法を放ち、なおかつメアリーの足元を中心に狙って突きや横振りなどの攻撃を仕掛ける。そして、武器を籠手からクローに変化させたメイは重い一撃から速度を生かした一撃でメアリーに仕掛けていった。


 上からの攻撃や下からの攻撃、魔法攻撃にメアリーの行動を阻害する魔法まで、多彩な攻撃を短時間で攻め続けられたメアリーは次第にミスをするようになりダメージがどんどん蓄積されていった。


「『鬼の呪鎖』」


 トーマは、メアリーがその場から離れようとするたびに鬼の呪鎖を放ち、逃げる時間を与えないようにする。


「ううぅ。厄介すぎる~!」


 魔法に近接にとなんでもできるトーマ。それよりも厄介なのがメイの攻撃力の高さ。今のメアリーなら2回もろに食らえば死んでしまうほどの高威力となっている。


 完ぺきなコンビネーションと完ぺきな相性、トーマの考え抜かれた策とメイの驚異的な攻撃力にメアリーは数分間何もできずにただ守りに徹しているだけになってしまっている。


「こうなったら犠牲覚悟で……」


 トーマの鬼の呪鎖を食らってもお構いなしにただこの場から離脱することだけを考えたメアリーはメイとトーマから痛い一撃を受けながらもなんとか窮地を脱することができた。


「さて、ここからどうしたものか。」


 また同じ状況に陥ってしまえば10分間ノーダメージで耐え続けない限り抜け出せることはないし、いずれやられてしまう。この2人に勝つにはまずどちらかを倒さなければいけないのだが、残念ながらメアリーが思いつく限りの方法では到底倒すことはできない。


 どうすればいいのか考えあぐねていると、考える時間を上げないといわんばかりにメイが攻めに来る。


「あ、いけるかも。」


 1つだけ効果的な作戦を思いついたメアリーはトーマが追いつく前にさらに離れた位置に移動をした。


「対人ゲームの鉄則。多対一の戦いは一対一にするべし。」


 トーマが追いつけないようにしてどんどん2人の差を離すメアリー。ここぞというタイミングで追ってくるメイのほうに体を向け攻撃を仕掛けようとする。


「危ない!スキル『転移』。」


「そこ!剣技『血車』!」


 メアリーはメイではなくメイを守ろうとしたトーマに狙いを定めて攻撃をした。完全にしてやられたと思ったトーマはメアリーの一撃を食らってしまい退場してしまった。


「お兄ちゃん!」


 メイの一瞬の隙を見逃さずメアリーは同じように一撃を与え、退場させた。


「2人の兄妹愛を信じたから成り立った作戦だよ。まさしく勝負に負けて戦いに勝つ、だね。お見事!」


 何はともあれ戦いには勝ったので素直に喜ぶメアリー。しかし、すぐ先に長い髪をなびかせ、白い刀を手に持ったランキング2位が奪った宝玉を見せながらメアリーのほうに笑顔で向かってきているのが見えた。


「どうもフェアリーちゃん。さっきぶりだね。早速だけど私とも一戦交わらない?かけるものはこの宝玉で。」


 Karinはメアリーの本来の姿をはっきり見たうえでフェアリーと、姿を変えたときの名で呼んだ。


「レイズ。私が持っている宝玉も一緒に掛けちゃおう。もちろん、オールインで。」


「さっすが!」


 赤い剣と白い剣が交じりあり、PFO内で最高レベルの戦いが閉じた幕を切り裂いて強引に幕を開けていった。

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