第14話 最強ボスと宝玉争奪戦-6-
「やっと雪原についたね。ちなみにフェアリーさんはどこの塔にいるの?」
かなり気さくに話しかけてくれるこの人はKarinさんという。
そう、言わずもがなランキング2位のあのKarinさんだ。同姓同名も疑ったけれど全然そんなことはないらしい。ちなみに最初に話しかけた男の人はあくまで指揮を執るのがうまいからリーダをやっているらしく実力はKarinのほうが圧倒的らしい。
そんなことよりも塔の名前をどうしようか。適当に言ってばれたらそれこそ終わりだし、慎重に答えないと。
メアリーは頭をフル回転させてこの場を乗り切る最適解を考える。
「Karinさんみたいにランキングにとっているようなチームじゃないですよ。昨日の夜にアルバートって塔の人たちに宝玉を取られてしまってますし。」
それなりにいい回答ができたと思っているメアリーはその流れでなぜここに来たのかを尋ねてみることにした。
「ちなみにKarinさんがここに来た理由って何ですか?」
一瞬黙ったため聞いたらまずいことを聞いてしまったのかと思ったメアリーだがそんなことはなく意外と素直に教えてくれた。
「私の仲間が件のアルバートの塔にかなり苦戦しているらしくてね。それで応援に向かっているってわけだよ。彼らは全員かなり強いよ。特にリーダーのアルバートはそれこそ私と同等レベルかそれ以上に強いと思ってる。厄介だよねえあのチーム。」
アルバートについても少し聞いてみたがかなり対人戦に長けているプレイヤーらしく単独での塔の攻略も成し遂げているとのうわさも出ているらしい。
メアリーは1人だけなので常に単独攻略をやっているのだがやっぱりかなり凄いものらしい。
少しだけ鼻が高くなったメアリーだがここで思わぬ人物のうわさも聞くことになった。
「あとは、荒野の悪魔かなあ。私はまだ行ったことないけど荒野に向かった仲間たちが気づいたらやられていたって言っていたし、かれらも警戒していた中やられているからとんでもないプレイヤーだと思うね。」
まさかいきなり私の話になるとは思っておらず思わずせき込んでしまった。
「だ、大丈夫?」
「大丈夫です。ちょっとむせただけなので。それで、荒野の悪魔って何ですか?」
決して調子に乗って聞いたわけじゃあなく、他のプレイヤーにどう思われているのか純粋に気になったメアリーは顔に出ないよう、一応知らないふりをしながら聞いてみた。
「犯人はおそらくユニークボスエネミーのメアリーだといわれてるね。ランキングの3位にいるし、なんでイベントに参加できるんだろうとは思うけど。あ、ごめん荒野の悪夢の話だったね。荒野の悪魔っていうのは1日目の夜に起きたとんでもない事件で、荒野にある塔全部が何者かに襲撃されて宝玉を奪っていったって話なんだよね。しかも誰も姿かたちを見ていなくて気づいたら死んでいたとか、魔法が追ってくるだとかいろいろ信じられないことを言っててね。そのあとに宝玉が一気に増えたアルバートとメアリーの塔が怪しくて、アルバートが雪原にいるから消去法でメアリーの仕業ってなったわけ。」
「そ、そうなんですね。荒野に塔がなくてよかったです。」
そのあともKarinさんと仲良く話していたところ、ついにアルバートの塔の付近というところまでやってきた。
「あ、そろそろ目的地に到着するみたい。どう?自分の塔の場所分かった?ついて行こうか?」
Karinさんは凄い笑顔でついてきたそうな顔をするがさすがに迷惑になってしまうのでやんわりと断る。
「皆さんのおかげで安全に帰ることができました!ありがとうございます!」
「こちらこそ!また会ったときにゆっくり話そうね!」
他の4人の人たちとも別れを告げるとメアリーは奥に見えた塔を目指すふりをしてアルバートの塔へ向かう。
「『偽装』解除。いやあ、思ったよりもいい話が聞けたな。あと複数人で遊ぶのってこんなに楽しいんだね。」
心の穴が少し塞がったメアリーは笑顔のまま例の塔へ向かう。
「やっほ~メイちゃん。遊びに来たよ!」
「あっ!しっ……メアリーさん!どうしてここに!」
気づいたメイは全速力で向かってくる。それを私はハグでお迎えする。
「よくここにいるってわかりましたね。」
後からトーマがこちらに向かってくる。
「トーマも久しぶり。たまたまSNSを見ていたら2人が写真に写っていてね。アルバートの塔にいるってわかったからすぐ向かったんだよね。」
「あれほど写真は控えてといったのに。それはそうとここに来た目的って何ですか?メアリーさんは荒野のプレイヤーでしょう?こんな遠くに来たら宝玉盗まれちゃうんじゃないですか?」
ごもっともな意見をするトーマにメアリーは今持っている宝玉を1つ取り出した。
「宝玉は盗まれたくないから全部持ってきちゃった。目的は君たちに挨拶をしに来ただけだよ。」
メアリーがどんどん宝玉を出して見せるとトーマは慌てた表情をして、メイは変わらず尊敬のまなざしでメアリーを見つめる。
「すごいのです!」
「と、とりあえず人の眼もありますから宝玉を隠してください!」
「はいはい。軽い冗談だって。いやあ、2人にあえてよかったよ。どこにいるか一切の手がかりもないかったからね。いやあ、よかったよかった。」
宝玉を元に戻したメアリーは少し下がって2人のほうを向く。手には宝玉の代わりに武器が握られており、2人は次の展開まで容易に読むことができた。
「まさか、僕たちの塔から宝玉を奪いに来たんですか?」
恐る恐るトーマが聞くとメアリーはさも当然かのように返答した。
「ついでにね。挨拶も済んだし、宝玉をもって帰ろうかなって。どう?止める?」
すでにいつでも斬れるという状況にあるメアリー。トーマはいきなりの状況にまだ戸惑いを隠せない状況であるが、メイは既に武器を構えてメアリーに突っ込んでいった。
「スキル『鬼の強打』なのです!」
向かってくるメイに正面から受けたメアリーは、危険を察知してそのままの流れで受け流すことにした。
「ふ~、調子乗ったこと言っちゃったかも。とんでもない攻撃力だね。負けちゃいそう。」
「絶対に負けないのです!」
雪が降りしきる中、2人の鬼と1人の吸血鬼の戦いの幕が開けた。
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