第13話 最強ボスと宝玉争奪戦-5-
メアリーが目を覚ますと時計の針は9時を少し過ぎたあたりを指していた。朝ごはんを食べて、順位を確認がてらSNSを開くと随分面白いことになっていた。
「ええっと何々?『荒野の悪夢?巷で噂のユニークボスとの関係性は?』。話題になってんねぇ~。」
ニュースの見出しやトレンドにはちらほらとメアリーに関する話題が載っている。小1時間くらい眺めていたいところだが、ほどほどにして今の順位を確認する。
「3位。まあでも寝ているだけでここまで上がったのなら上々でしょ!」
2位はKarinというプレイヤーが率いている塔。1位はアルバートというプレイヤーが率いている塔だった。2位とはそれほど離れていないのでおそらくすぐ抜かせるとしても問題は1位のアルバートというプレイヤーたちだ。
今現在の宝玉の数は16個。ポイントも1チームだけ20万をこえるなど圧倒的となっている。
「ここまで来たらもうねえ、1位狙いたいよねえ。」
メアリーは食後のコーヒを飲みながら今日の作戦を考える。
「塔に来たプレイヤーを狩るのは手に入るポイントが少ないからなしでしょ?でもかといってまた塔を放棄するわけにもいかないし、昨日みたいに罠は長時間張れないし。う~ん。」
1番手っ取り早いのは今の1位と2位から宝玉を奪うこと。その2基の塔から宝玉を奪うだけでも3分の1の宝玉を独占することになる。しかし、問題はどこにいるかもわからないことと、確実に宝玉は取られてしまうということだ。
飲みやすくなったコーヒーを一口飲んで、SNSを開くと、思わぬ手掛かりがメアリーの眼に入った。
「雪だるまって。ほかのチーム楽しんでるなあ……ってこれトーマとメイじゃない?」
真ん中の男は知らないが少し後ろにいる大きな雪玉を転がしている少女とそれを見ている少年はつい最近知り合った鬼族のトーマとメイにそっくりな格好をしている。ほかにも手掛かりがないか確認するとアルバートという単語が目に入った。
「なるほど、『我ら最強のアルバート軍団。今日は山の反対側の平原を狙います!応援ヨロ。』ねえ。」
にやりと笑ったメアリーは冷えたコーヒーをグイっと飲み干すと、メアリーはすぐにPFOの世界に入った。
「さあ到着っと。まずは罠を解除しなきゃ。」
PFOの世界にやってきたメアリーはまず最初に自身の塔に設置した罠をすべて解除していった。解除が終わって改めて塔を出ようとしたメアリーだがここでとある面白い策を思いつく。
「どうせ取られるから放置しようと思ったけど、どうせ0ポイントになるなら私が持っていけばいいじゃん!」
メアリーは自分のもらえるポイントを捨ててでも相手に宝玉を渡したくないので早速宝玉の部屋まで移動して自分の宝玉を回収する。これで帰ってくるまで再び0ポイントの日々となるが致し方ない。
「そもそも一人の時点で守りながら攻めるなんて不可能だからね。せめてもう1人くらい仲間がいればなあ。」
いないものを愚痴っても仕方がないので宝玉を回収して大きな山を目標にして走り出す。
道中に塔があっても目もくれず、邪魔してきたプレイヤーをほどほどに倒しながらまっすぐ直線に進むメアリー。荒野を抜けた先にあるちょっとした森林もガン無視して、山に向かった結果、大体1時間ほどで山の麓につくことができた。
「反対が平原って言ってたし、右か左のどっちかに進めばいいんだよね。確率は2分の1。外す自信しかないな。」
メアリーはこういう2択をことごとく外すことで有名。ならどうするか、メアリーの中で答えは既に決まっている。
付近を歩き回ってメアリーはプレイヤーを全力で探す。5分くらい経ったころ、5人程のパーティーを組んでいるプレイヤーを発見した。
「よし発見。スキル『偽装』。名前はそうだね、フェアリーにしよう。」
さすがにメアリーでは有名になりすぎているため、ここは『偽装』スキルを使って別人のふりをするメアリー。フェアリーというメアリーに似た語感だけでつけただけのドシンプルな偽名を作って、メアリーもといフェアリーはプレイヤーの前へと姿を現した。
「すいません。雪原ってどっちですか?」
急に現れたメアリーに警戒して武器を構えたプレイヤーたちだが、ただ道を尋ねてきただけだと分かるとみな武器を下ろした。
「雪原はこの先を歩いていけばつくけど、どうしたの迷子?」
1人の優しそうな青年が親切に雪原の場所を教えてくれた。メアリーは別に迷子でも何でもないが正直に話すよりも迷子といったほうが楽そうなので迷子ということにした。
「実はそうなんです。この森、いくら歩いてもおんなじ風景ばっかりで方角もわからなくなってしまって。教えていただきありがとうございます。」
お礼を言って立ち去ろうとしたメアリーだが、すぐ後ろで呼び止める声が聞こえた。
「雪原なら今は激戦区だから1人じゃ危ないよ?よかったらなんだけど私たちと一緒に行かない?」
雪原は激戦区となっているらしく、後ろにいた女性が心配そうに話しかけた。メアリーには激戦区だろうが関係ないがせっかくの相手の心配を無下にするのもなんだか申し訳ない。
「所属する塔も違うのに仲間に入れてもいいんですか?裏切るかもしれないのに?」
既に心は初めてのパーティのお誘いにワクワクドキドキしているメアリーだが一応ごもっともな反応だけはしておく。
「裏切るかも知れないって言ってる人が本当に裏切るとは思っていないよ。それでも君が気になるというなら元の塔に戻るまでの一時的な協力関係ということにしようじゃないか。」
メアリーは、あまりにも聖人君主なプレイヤーに思わず感激を受けた。
「でしたら、よろしくお願いします。」
PFOを1年以上遊んで初めてのパーティ結成。一時的なものではあるがメアリーにとってはこの上なく感慨深いものとなった。
メアリーを含めた6人は話をしたり、途中襲ってきたモンスターを倒したりしながら無事雪原へとたどり着くことができた。




