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「もしもし?私、メリーさん」「あ、新聞なら結構です」

翌日

「吾一さん、私色々とやることあるんでちょっと行ってきますね。夕方までには戻りますので」

燐はそう言うとドアから出て行った。

「あ……。もう人界に慣れたのか…?」

吾一はため息を一つつくと、朝食の準備に取りかかった。

「あ……そろそろ食材が無くなってきたな……」


食後の紅茶を飲んでいると、吾一の携帯が鳴った。

「ん……?誰だ?」

携帯には電話の相手の名前が表示されていなかった。

「………はい」

吾一は電話に出た。すると

『私、メリーさん。今あなたの町にいるの』

電話の主はそう答えた。

「はあ……………。あの、電話の相手間違ってませんか?」

普通に返す吾一。彼はなんとあの有名な話を知らないらしい。

『………………』

聞き返すと、電話は切れてしまった。

「…………何だったんだ?今の」

吾一は少し疑問に思ったが、特に引きずることもなく携帯を閉じた。



それから二時間後。

吾一は読書をしている。すると、また携帯がなった。どうやら今回も先ほどと同じ相手のようだ。

「はい」

吾一は本を読みながら電話に出た。

『私、メリーさん。今……』

「あ、じゃあ僕吾一君。今本読んでる」

『…………今、あなたの住んでるアパ』

「今本読んでるんだって」

『………………バカッ!』

電話はそこで切れた。どうやら怒らせてしまったらしい。

「………ったく、何なんだ………って、また電話かよ!」

吾一の手のひらで携帯が鳴っている。

「はい」

『私、メリーさん。今、あなたの部屋の前にいるの』

「はぁ………。まあ、用があるんならどうぞ。開いてるんで」

『……………はぁ…』

電話がまた切れた。何だか最後の方にため息が聞こえた気が……。

「何だコイツ……。部屋の前にいるならピンポンすればいいのに……」

そうつぶやいていると、玄関のドアの開く音がした。吾一は玄関を見る。すると、英国風の服で、金髪、ロングヘアー、縦ロールのあからさまにお嬢様っぽい少女が廊下に玄関にいた。

「あっ……」

少女は吾一と目を合わせると、とっさに下を向いた。そして、ポケットから携帯を取り出すと、誰かに電話をかけた。

すると、またもや吾一の携帯が鳴る。

『私、メリーさん。今、あなたの前にいるの』

「いや、そんなのもう電話越しに言わなくたっていいじゃん」

吾一はそう返した。

少女はしばらく黙っていたが、ため息をつくと携帯をおろし

「あなたは分かってないんですね……」

と言った。

「まあ、なんか訳わかんねーけど、あの居候の友達か何かだろ?とりあえずそこ座れよ」

吾一は座布団を用意した。



「どうも上手くいかなくて……」

メリーさんはそう話す。

「ずいぶん前までは上手く行ってたんですよ。電話かけたらみんな驚いてくれて………。フィニッシュなんかとっても面白かった」

吾一はそれを適当に聞いているようだ。

「でも、最近の人はみんな忙しいみたいで、驚いてくれないんですよ……。あなたみたいに」

メリーさんはそう言って吾一を睨んだ。

「ま……まあまあ。そう怒らずに話の続きをど〜ぞ」

吾一はとりあえず話を続けさせることにした。

「ええ……。こないだなんか、サラリーマンの方に電話したら『職場にまでかけてくるな!』って言われて……」

(めんどくせー……。ってか、それアンタが悪いよ)

話を聞きながら、吾一の心はそう叫んだ。



それから数時間して…

「……ふう。なんか色々と話聞いてもらっちゃってありがとうございました」

メリーさんは立ち上がると頭を下げた。

「では、私はそろそろ。またなんかあったら来ますね。それじゃ」

彼女はそう言うと吾一の部屋から出ていった。で、それと入れ違いになるように燐が帰ってきた。

「ただいまー」

「あ、おかえり。さっきまでお前の友達いたぞ」

吾一がそう言うと、燐は

「友達って………さっきこの部屋から出てかれた方ですか?」

と返してきた。

「え?違うの?」

「違いますよ。さっきの方は『電話のメリーさん』です」

「………ん?」

「聞いたことありませんか?ほら、『私、メリーさん。今あなたの後ろにいるの』ってやつ」

「あー…なんか聞いたことあるな」

「それですよ」

「えーっ!?」

吾一はさっきまでいた客人の正体がやっと分かったようだ。

「もし最後まで電話されてたら危なかったですね」

燐が座布団に寝転がりながら言った。

「最後まで聞いてたらどうなってたんだ?」

「死んでましたよ」

「いや、でも『今あなたの前にいるの』とか言われたんだけど」

吾一はそう返す。

「あ………それは聞いたことないですねぇ………」

燐は首をかしげた。

「まあ、とにかく無事だったことですし、夕食にしましょうよ」

「え?………ああ、もうこんな時間か。あの退屈な話聞いてたら昼飯食い損ねちまった」

吾一は時計を確認すると、台所へ向かった。




ガチャバタン。


冷蔵庫の戸を開け、すぐに閉める。

「あれ、どうしたんですか?」

吾一の背中に燐の言葉が当たる。吾一は冷蔵庫を静かに閉めると、ゆっくり燐に振り返った。

「そう言えば、今日は急な来客があったせいで食材の買い出しに行ってなかったっけな」

「えっ……それってどういう…」

燐がまさかというような顔をする。

「お願い。居候」





「あーったくよぉー!何で私が行かにゃならんのにゃ!あ、噛んだ」

もうすっかり辺りは暗くなったとは言え、人通りの多い道。さっきのを聞かれたのか、すれ違うサラリーマンに笑われた。

「まったく………何で私が。こう言うのは吾一のヤローが行けばいいのによ」

燐はすさんでいた。まあ、朝から妖怪捕まえていて疲れているのだろう。

「あーもー帰ったらぶん殴ってやろう」

燐はそうつぶやくと、吾一から渡されたメモに目を通した。牛乳、タマネギ、しゃぶしゃぶ用肉、人参、キャベツ、じゃがいも。

「カレー……?」

燐は首を傾げた。





ピンポーン


吾一の部屋のチャイムが鳴る。

「あーはいはい今行きますよー」

吾一は読んでいた本にしおりを挟むと、玄関に向かった。ドアについているのぞき穴から確認。知らない人だ。しかも女。

『あっ、ワタクシ燐ちゃんの友人でございます』

紅い髪に紅い着物を着た女性はドアの向こうからそう言った。

「あっ、そう?今あけます」

お人好しな吾一はすぐに玄関のドアを開けた。うん。紅い和服の女の子だ。

「あ、ウチ朱祢って言います。どうぞよろしくね」

玄関先の女の子は自分をアカネと名乗った。燐よりも十センチほど、背が高かった。

「…んまあ、立ち話もアレだからどーぞ」

吾一はスリッパを取り出すと床においた。

「あっ、じゃあお邪魔しますー」

朱祢と言ったか、彼女は燐と違って靴をそろえる等基本的マナーが出来ていた。ほんとに燐と友達なのか、怪しくなってきたな……、吾一はそうおもった。

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