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気になる隣人

二人は妖怪を探して街を歩いている。もちろん、餌は吾一だ。

「ふう………ちょっと休憩しましょ……」

燐はそう言うと近くにあったベンチに座り込んだ。それを見た吾一が

「あのさ、さっきからずっと思ってたんだけどさ、体力無さすぎない?もう五回目だぞ?」

と言った。

「いや……まだ人界に………。慣れて…ないんで………。ちょっとの…こと…で…疲れ………るんですよ」

そう言い終えると燐はベンチに横たわった。

「あっ!おい!ちょ、そんな所で寝るなって!」

そう話しかけたときにはもう遅く、少女は既に眠っていた。

「ったく………」

吾一は燐を叩き起こそうかと思ったが、彼女の寝顔が何だか苦しそうだったのでやめておいた。

(人界って、そんなに疲れるもんなのかな……)

吾一は何だかそう思った。

「今回は一体何分待ちゃいいんだよ……」

しかし、待つのも面倒だったので、吾一は仕方なく燐を背負い、アパートへと戻った。

「………重っ」




目が覚めた。どうやら寝てしまっていたようだ。なぜか部屋が橙色になっているのを見て、反射的に時計を見る。時刻は六時半だった。

「ふう………」

吾一はため息をつく。

「俺も寝ちまったのか……。もうこんな時間かよ」

ゆっくりと立ち上がり、本来自分が休むべき布団を見る。そこには少女が横たわっていた。

「全く、別世界の住人はいいよな〜……」

窓に近づき、外の景色を見る。

一面橙色。空も橙色。雲も橙色。建物も橙色。みんな、一色に染まっていた。

吾一はふと我に返り、カーテンを閉めると部屋の電気をつけた。

「ん……まぶしい……」

夕日はまぶしくないのに、蛍光灯は何故かまぶしかったようで、燐は目を覚ました。

「…………ああ、疲れた」

(あんだけ寝といて何が疲れた、だ)

吾一は少女を横目で見ながら心の中でそうつぶやいた。

その時、まるでタイミングをはかっていたかのように玄関の呼び鈴が鳴った。

「ん?何だ?宅配便か?」

吾一はドアに近づいていった。それを見た燐ははっとした表情で

「吾一さん!気をつけて!」

その声を聞いて、吾一の鍵を開ける手が止まった。

「気をつけるって………いったい何をだ……?」

厳しい表情で燐の方を振り返る。燐はすでに吾一の真後ろまで来ていた。

「私が後ろにいるのでもう大丈夫です。さ、開けてください」

燐がそう言った。真剣な顔つきだ。

吾一は鍵を外すとゆっくりとドアを開けた。ドアの向こうにはマスクをつけた若そうな女性が立っていた。

「あ…あの、隣に引っ越してきた朽崎です。これから色々とよろしくお願いします…。で…あの………これ、よかったらどうぞ」

朽崎と名乗る女性は菓子包みを吾一に手渡した。

「ご丁寧にありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします」

吾一も丁寧に頭を下げた。

「では……何かとご迷惑をおかけすることがあると思いますが、よろしくお願いします…。では…」

朽崎はそう言うと頭を下げてから自分の部屋へと戻っていった。

それを見届けた吾一はドアを閉め、しっかりと鍵をかけた。


「で、あの人のどこをどうやって気をつければいいんだ?何か?色気とかか?」

そう言う吾一に、燐はあきれたような顔をした。

「もしかして………気づかなかったんですか?」

「気付くって……何をだよ」

「今の人、口裂け女ですよ」

「えーっ!マジで!?」

「大体、朽崎なんて苗字普通無いですよ………あ、いや、そうでもないかな。……とにかく、さっきの人は口裂け女です」

「それって………おまえが逃がしたヤツなのか?」

「いえ、彼女はもともと人界にいるタイプですね」

「ふ〜ん………口裂け女が隣に住むって、なんか複雑だなぁ」

吾一は少し心配になった。が

「ま、でも俺の安眠を邪魔しなければ口裂け女だろうがゴジラだろうが隣に住んでも構わんよ」

「ゴジラ………ああ。マツイとか言う人間ですか」

「ちげーよ」

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