最初の改革
第2話です。
今回は蒼真とナナの価値観がぶつかります。
「働くこと」や「社会を支えること」について、蒼真なりの考え方が少しずつ見えてくる回です。
楽しんでいただければ幸いです。
蒼真は一人、屋上で菓子パンを食べていた。
春の風は心地良い。
できればこのまま静かに昼休みを終えたかったのだが、そう上手くはいかないらしい。
「ねぇ。」
聞き慣れない声に振り向く。
そこには吉村ナナが立っていた。
「昨日の話、どこまで本気なの?」
「一体どの話だ? 言葉で説明してくれないと分からないな。」
「資産収入で暮らすって話よ。」
「あぁ、その話か。」
菓子パンを一口かじる。
「もちろん本気だ。」
ナナは呆れたようにため息をついた。
「皆で働いて社会を支えていく。それが"普通"でしょう?」
「なら問うが。」
俺はナナを見る。
「ならどうして『お前の代わりはいくらでもいる』なんて言葉が存在すると思う?」
「え?」
「皆で支え合う社会なら、一人が欠けても皆で補えばいい。」
「でも現実はそうなっていない。」
ナナは黙る。
「産休や育休で離れただけでキャリアが崩れることもある。」
「つまり、社会を支えることと個人の負担は別問題なんだ。」
「……。」
「だから俺は努力が嫌いなわけじゃない。」
「無駄が嫌いなんだ。」
その時。
「また面倒くさそうな話してる。」
聞き慣れた声が飛んできた。
幼なじみの釣島桃香だ。
「桃香……。」
「この人、本当に面倒で変な人なの。」
ナナが即座に告げる。
桃香は苦笑した。
「今更気づいたの?」
「今更って何だ。」
「褒めてるのよ。」
「それは褒めてない。」
そんなやり取りを見ていたナナが腕を組む。
「じゃあ聞くけど。」
「何だ?」
「あなたは効率が悪いとか無駄だとか言うけど、実際にどう変えるつもりなの?」
俺は少し考える。
確かに文句を言うだけなら誰でもできる。
「そうだな。」
俺は立ち上がった。
「まずは文化祭だな。」
「文化祭?」
ナナが首を傾げる。
「昨日、生徒会室の前に去年の収支報告が貼ってあった。」
「暇だったから見た。」
「驚いたよ。」
「王国だったら担当者が頭を抱えるレベルの赤字だった。」
ナナと桃香が顔を見合わせる。
俺は小さく笑った。
「なのに誰も改善しようとしない。」
「去年と同じことを繰り返している。」
「だから、その前提がおかしい。」
春風が吹く。
俺は空を見上げながら呟いた。
「まずは文化祭だな。」
「仕組みを変える。」
「いや――乗っ取ると言った方が正しいかもしれない。」
第2話を読んでいただきありがとうございます。
今回は蒼真とナナの価値観の違いを中心に描いてみました。
蒼真は社会そのものを否定しているわけではなく、「その仕組みは本当に最適なのか?」と考えるタイプの人間です。
そして次回からは、蒼真が目を付けた文化祭の問題へと話が進みます。
果たして彼は本当に文化祭を「乗っ取る」ことができるのでしょうか。
次回もよろしくお願いします。




