ブレスレットを探して
おかしいわ。どこでなくしたのかしら。
ミーナはダンスパーティー以来無くしてしまったブレスレットを探していた。侍女になった記念に購入したもので、大切にしていたのだ。清掃係に聞いたり、フロアを探したりしたが見当たらないのだ。
諦めるしかないと思いつつ、ダンスフロア近くの廊下を探していると、ユリアーノとばったり出会った。
ユリアーノは使節団として来てから、この城にすっかり居着いている。ミーナは失礼がないように手を組んで顔を伏せた。
「ミーナじゃないか。ピンクの髪の可愛らしい人」
ユリアーノはダンスパーティしか会っていないミーナに気さくに話しかけてきた。
「ユリアーノ王子。王宮でのご不便はございませんか?なにかあればそば付きにお申し付けください」
「顔をあげて」
ユリアーノは優しくミーナに行った。顔をあげると、あの有無を言わせない力のある瞳とかちあった。
「困ったというほどではないんだけど、王宮の地理がわかっていなくてね。せっかくだから陽当たりの良いところでカクテルでも飲みたいんだけど」
とても「では、後ほどそば付きに伝えておきます」と言い出せる雰囲気ではなかった。
ミーナも一緒にダンスを踊ってから、微妙に意識してしまっている。この女泣かせそうな王子を。
「でっでは!わたくしがご案内いたしますっ(ガバッ)」
ぷくんっ⭐︎
あれ?勢いよく腰を曲げすぎたせいで、なにか見えてはいけない、でもとっても心惹かれるものがユリアーノには一瞬見えた気がした。
気づかなかったフリをして、念の為心のメモリーに保存をした。
ミーナに案内された場所は、日当たりがよく、かつ人払いがされていて快適だった。ユリアーノはミーナとのんびりリシェラの話ができそうだと思った。カクテルを2人分持ってきてもらう。
「お待たせしましたっ!あっっ!!」
アレキサンダーという陸の乳白色のカクテルが渦巻くようにミーナの頭からかかった。
乳も滴るいい女・・ではなくて、この子『ラッキー欲しいすけべ』の子だっ!!
ユリアーノは男達の伝説の存在である『ラッキー⭐︎すけべ』の女神に出会ったのだ。
「申し訳ございません!とんだ粗相を!」
今度は腰を曲げすぎても、衣装が張り付いて大事なものは見えなかった。
残念、いや、よいのだ。この良き出会いに乾杯。
海の中とはいえ、カクテルを被ったらベタベタしてしまうので、そのまま話すのはミーナが可哀想だった。
「ミーナ、気にしないで。わたしはゆっくりしていくから、早く衣装を着替えなさい」
「はい。申し訳ございません。お心遣いに感謝いたします」
ミーナは飛び魚のように翔けていった。
ふぅ。。。今日は面白い日だった。まさかラッキーすけべの女神に会えるとは。
今度はミーナがいる時間を狙ってリシェラの部屋を訪ねようと決めた。
一方、ミーナはうつぼの穴があれば入りたいくらい恥ずかしかったし、情けない気持ちになった。
せっかくユリアーノ王子とお話できる機会だったかもしれないのに・・・。ううん、きっと2杯目のカクテルは、すでにお約束があったご令嬢か誰かのものよね。
はーぁ。
うっかりとリシェラの前でため息を吐いてしまった。
「あら、ミーナ、どうしたの?ため息なんて」
「リシェラ様・・・。実は・・・」
ミーナからことの顛末を聞いたリシェラは大興奮した。
うちの侍女が隣国の王子からデートに誘われたなんて!
「明日さっそくユリアーノ王子をお呼びして、カクテルのことを謝罪しなくては」
うふふ、それで2人の様子を見てみて、よさそうなら後押ししちゃいたいわ!
リシェラは愛のキューピッド気取りで明日のセッティングを始めた。




