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旦那様のサプライズ

 この数ヶ月は、陸にあるという甘い綿菓子のような夢の中にいた。マリオンの心はリシェラで満たされて、国を守る騎士の役目もうまくいくという自信になっていた。

 平和な国だが、国の外に脅威がないとは言えない。海賊はいるし、深海の人魚たちは体の作りから異なり、大軍で攻めてこられたら勝てないかもしれない。

 

 まぁ、深海の魚人たちは神代の約束で深海からでてくることはないだろうが・・・

 



 しかし、結婚がこんなによいものとは。

 自分たちは王族だから結婚というかたちをとったが、巷ではパートナーというかたちでいるのも多い。

 せっかく結婚したのだから、新妻を可愛がってあげなくては。プレゼントでもしようか。それならば・・・。


 リシェラは久しぶりに予定がない日を持て余していた。ずっと国賓や国内の貴族の祝辞祭りだったため、今日はぬるぬる海藻エステで1日のんびりでもいいかも、とリシェラが考えていたところ、プレゼントの山が届いた。マリオンからである。

「まぁ、こんなにたくさん!どうしたのかしら?」

 マリオンからの言伝を聞くと『親愛なる新妻様へ。かしこ。』とのことだった。

 かしこって・・・お兄様ったら。

 プレゼントを開けていくと、ドレスと宝飾品だった。丈の短いものから、二股になってから着るような丈の長いものまである。リシェラはぽっと頬を赤くした。

「さっそく着て、お兄様に会いにいくわ。このバンドゥとチョーカーを付けてもらえる?」

 ミーナたちがさっと支度を整え始めた。チョーカーは人魚の頬っぺたのような、内側からピンクが滲み出て、真珠とクリスタルで作られた物だった。リシェラの好みをよく分かっている人のプレゼントだ。




「お兄様!」

「リシェラ、あげたドレスが似合っているね。桃色はリシェラの可憐さを引き立てるな」

「ありがとうございます。あの、今日お休みと聞きました。もしかして」

「はい。新妻リシェラさん、私と一緒にデートしてくれませんか?」

「喜んで!」




 2人は少し遠方の街に出かけた。この前の結婚式で話題になってしまっているからだ。

 この国は巨大なシャコガイだったものの上に作られている。今日出かけるのはシャコガイの縁の方だ。


 前回のデートは、マリオンの中で大成功だった。安全な城の付近で、危険がないかチェックしたお店にさりげなく入る。うまくいった。

 守られるべき大切な妹に、安全に、嫌な思いをさせることなくデートを終えられたと思う。

 だが最近のリシェラは自分の意見を言うようになり、昼も夜も積極性というものがでてきた。

 ただ水槽の中の魚のように閉じ込めているだけでよいのか、マリオンは疑問に思いはじめた。

 そこで今回のデートである。シャコガイの端は、外との交易港になっていて賑わっている。波が強いため、屈強な男女が多く、城とは違った面白みがある。


 リシェラはどう感じるだろうか?




「波が強いですね・・・」

 リシェラは自身のフリルのようなひれが舞っているのが気になった。楽しみな気持ちがバブル珊瑚ように膨れていた分、コンプレックスが刺激されて、気持ちが萎んでいくようだ。いつもの癖で下を向くと、波に削られた地面が見えた。ここはお城ではないのだ。

 ふと行き交う人を見ると、皆んな前を向いて明るく泳いでいる。どんな尾びれの人魚もだ。

 兄を見る。兄はリシェラの様子を伺っているようだった。

 

 私は、このデートを楽しみたい

 この明るく屈強な人たちたちのように泳ぎたい


 リシェラは前を向いた。

「お兄様。この街の人達は素敵ですね。散策が楽しみです」

 マリオンは優しい目でリシェラを見て、そっと額にキスした。

「では、ご案内いたします、我が奥様。」


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