新妻さんいらっしゃい
リシェラは疲労感から無意識にため息をついた。ため息は疲労の色を伝えているが、唇は艶めいている。
新婚生活は昼間夜も忙しい。悠々自適に過ごしていた独身時代がもう懐かしく感じるほどだ。
ため息の波紋を感じ取ったミーナが、疲労回復によいカクテルを出してくれた。ブランデーと深海の塩、ちょっぴりとオレンジ海藻のエキスが混ぜられている。
ミーナは本当に気が効くわ。それに最近垢抜けてきたし、いい人が見つかるといいんだけど・・・。
「そういえば、ダンスパーティーの衣装はミーナが選んでくれたの?」
「いえ、実はマリオン様からの贈り物です。リシェラ様には聞かれるまで秘密にしておくようにと申しつかっていました」
「まぁ!お兄様が。あんなに素敵なドレスがどこからでてきたのか疑問だったの。なにかお礼をしないと」
リシェラは色々と考えて、腰布をプレゼントすることにした。腰から尾びれの真ん中くらいまで生地を垂らし、腰回りと鰭を守る役割があるので、騎士であるマリオンにはぴったりだ。
善は急げと王室お抱えの仕立て屋を呼ぶことにした。
「リシェラ様、この度はご結婚をおめでとうございます。ますます美しくなられて、貴婦人のドレスがよくお似合いになると思います。御子がお生まれになった際には、ぜひ産着を送らせてくださいませ」
「シテュール、いつもありがとう。今日は私のではなく、お兄様にお渡しする腰布を仕立ててもらおうと思っているの」
「承知しました。マリオン様には、リシェラ様へプレゼントするダンスパーティーの衣装を依頼いただいたばかりでございます。腰布も心を込めてお作りいたします」
やはりドレスを作ったのはシテュールだったのね。お兄様はどんなご様子で選んだのかしら。
シテュールは子供を産んだ二股の人魚だし、王室お抱えの仕立て屋で信用できるから色々聞いてみよう。
リシェラが流れ花珊瑚のような脳みそで一生懸命考えている間に、部屋には生地や宝飾品がずらりと並べられた。
「いかがなさいましょうか」
「そうね。こんなに並ぶと悩んでしまうけど、実は少しイメージをしておいたの」
いつも決めきれず侍女任せだったお姫様にしては珍しいことだった。
「この前落ちてきた沈没船から、珍しい刺繍や織物が手に入ったと聞いたわ。それを見せてもらえるかしら?」
重厚で豪華絢爛な刺繍が分厚い布に施されている生地や、ぷっくりとまるでタツノオトシゴの口のように絞りが入った染め物が並ぶ。
「この、布の蓋が囲まれて、豪華な刺繍が入った生地で腰布を作ったら、お兄様の雄々しさも引き立つかと思うんだけど・・・」
「大変よろしいかと思います。豪華な生地が波打つ姿は勇敢で美々しいマリオン殿下にお似合いになるかと存じます」
リシェラは満足げにうなづいた。
あとは細かいところのイメージを詰めていくだけだが、その前にシテュールに夫婦生活について聞きたかった。
「この生地は合いそうな宝飾品が宝物庫にあるか見てきてくれる?」
リシェラは侍女たちを下がらせ、シテュールと2人になった。もちろん扉の外から騎士が守っている。
「コホン・・シテュールは二股の人魚だけど、結婚生活はしたのかしら?」
「わたくしの時は、蜜月中は夫婦のように過ごし、卵も授かったので、その後はお互い自由にしています」
「そう・・・夫婦の生活ってどうだったのかしら?」
シティュールはやや困惑した。
もしや、このおぼこいお姫様は、寝屋事情を聞きたのだろうか?
なにも隠すことなどないが、ここは先にお姫様の様子を伺ってみよう。そう、何事も事前調査が重要だから。けっしてデバガメなどではない。そしてデバガメは海には存在しない。
なになに・・・
えぇっさすがマリオン様、ほうほうほう!そんな上から下まで!!ちょっとそんなことまで、このおぼこい方にしたの!?てか、このよく似たお2人が睦み合うのってナルシズム感じちゃう!あぁー、でもでもこのお2人ならアリかもと思ってしまう。美は正義だから!
ちょっとお姫様のほうもすごい、これは天性のもの!?神は何物もこの方には与えてるの??なんなの、そこまで女神属性だったなんてアラまぁ。。。
鼻血でそう。




