呪いの森と、魔女の国
プローローグ
……諸外国の王達は、
エルガイアの挙兵に、眉をひそめた。
アルフェリアと、同盟国である。セウリアは、アルフェリアのため。一万の兵を集め、エルガイア北の国境に、出兵した、
セウリアは、塩の交易で、財をなした国であり。シュレットの兄ハスフェルが、ある事が、きっかけで、セウリアの相談役を、兼任していた……。
……数年前、
セウリアは、沿岸部の半島と言う、小国に過ぎない国だった、
一年中温かく、気温が安定していたから。大小複数の島を有する。リゾート地として有名である。
が、これと言う、名産品、交易品がなく。
旅人の落とす。外貨が、主な収入であった、
それが激減したのが………、
エローラの大使、バルタスの暗躍である。
バルタスは、宰相の地位にいたにも関わらず。自国の王を、暗殺して、ついに……自ら王と、なるべく、クーデターを起こしたのだ、翌年エローラの王となった。
財政難のあったエローラは、数年とせず。小国ながら、広大な森を領地とした、ルガイヤと、戦端を広げ、これを、攻め落とした。
━━このまま……。
戦争の噂で、旅人が激減した……。
数年とせず。セウリアは、財政難に陥る。
若き王は、苦悩した、幕僚の1人が、進言した、
━━領内の島に。賢者と名高い。アルパーナの皇子が、隠居してると……。
面識のあった、王は、ハルフェル皇子に、会いに行った……、
アルパーナ三人の皇子は、有名である。賢王ディシスもさることながら、第二皇子のハルフェル殿下は、賢者、学者と広く知られていた、
ただ……、
賢者のメダリオンの持ち主だと、言われてるだけで、
国を離れ、隠居をした理由を、誰も知る者は、いない……。そこが不安だった、
近くの漁村で、話を聞いた役人は、一部の知識人、魔導師、神学者が、膨大な知識を有する。
ハルフェルを、訪ねるくらいで。漁村には、船を乗りに来る程度、あまり表に出ることを、止しとしない。人物でのようだ……。
ハルフェルを知る人物から、話を聞く限り、知識量は世界屈指の知識人であり、知識の幅はとてつもなく広く。
諸外国の歴史、世界各地の地理、はたまた過去各地で行ったの経済事件、奇病の薬製造から、見たこともない草、花の裁判方法、様々な調味料の製造法まで、およそ知らぬことは無いと、言われる人物である。
だからこそ、それだけで、魔導師でもないハルフェルが、
『魔導師の塔』から賢者のメダリオンを、与えられるのは、異例どころか、異常である……。
若き王と重鎮が、
漁村にほど近い。島にある。屋敷を訪れたのは、翌朝。
「なるほど……」
ニッコリ微笑すると、嬉しそうに頷いた、
ハルフェルと言う人物は、ただひたすら、知識を得ることを喜びを感じていた、普通の青年である。その一方で、弟に勉強を教える喜びを、糧にしていた。若き王に知識の中から、答えたのは、
「これだけある。砂浜は、宝の山だよ!」
怪訝な顔をする。客人に。嬉しそうに、前置きして、知識のヒモ説いた……。
話を訊いてく内に……、セウリアの政務官、同席した、外務官は、己に無い知識量に舌を巻いた。半信半疑だが………、
迷った、若き王は……、ハルフェルを良く知っていた、シュレットの友だであった王は、ハルフェルと面識がる。だから決意して、幕僚を、説き伏せた、
そして………。
渋る重鎮を説き伏せ、ハルフェルの書いた、製造法に従い。塩田事業を、始めた。
近年、塩は貴重となっていて、製造する方法が模索されるが、取れる量が不定期で、製造するのは困難であると言われていたため、国で製造することが、今までは無かった……。
小さな漁村が小銭稼ぎに作るだけで、量も僅かで、流通事態少なかったため、塩は高価だった……。
ハルフェルは、これを逆手にとった。交易を行わせた、一年中変わらぬ気候。セウリアには、広い砂浜がある……。
人手もあった……、だから塩を大量に作り。安価にして交易品に仕立て上げたのだ、
安い塩に、庶民は飛び付いたのは言うまでもない、塩を使った料理に、人々は喜び。次第に流通が広がって、着実に利益を上げた、
ハルフェルは、膨大な、利益を得るためと、若き王に、商会の建設を進言して、王は、これを快諾。
━━セウリアは、僅か数年で、交易大国となった。
ハルフェル皇子の助けで、アルパーナと、同盟国となった。背景もあっての義による挙兵は、民の称賛を集めた。
草原の国エルマ王は、ハロルド学友であった、大陸中央に位置する。魔導師ギルドは、都市に学園を開き、国々身分に関係なく。門戸を開いていた、かつて学園で、共に学び、研鑽した友であった、ハロルドの為。立ち上がった。自ら指揮を取るべく、厳命した、
「我が国エルマは、義を重んじる!、友を救わん」
「おう!」
一万の騎兵を編成して、直ちにエルガイア国境に、進軍した、
中央にほど近い、草原の国エルマは、歴史の古い国で、頑迷な国王の元、騎士の国と名を馳せている。
秩序を、重んじ。騎士団は、礼節に厳しく、労りの心を、大切にする。古き国だ、
その為。近隣の国々から頼まれ、騎士学校を開いた、幼少の八歳~十二歳までの四年間。礼儀作法、一般教養、剣、槍、馬術で、身体を鍛える。
卒業した生徒は、騎士として優秀で、勉学を学ぶ物は、魔導師ギルドの開く、学園でさらに知識を学ぶが、多くの生徒は、そのまま見習い騎士となる。一種のブランドだ。
そうすると、金を積んでも、子供の入学を望む。貴族は多くなったが、
……一方で……、
厳しい戒律に、辞める。生徒も多い。
だけど騎士学校では、毎年試験が行われ。貧民でも合格すれば、無料で、入学出来る制度があり。毎年試験を、受ける者は、後を断たない……。
皇太子ハロルドは、
父の意向に従い―。
騎士学校に入学した。
━━その年から、二年、剣技大会で、優勝、さらに……、
翌年から行われた。
馬術大会で、三位と優秀な成績を残している。
現王ジゼ・ライザ・エルマとは、騎士学校からの親友である。
エルガイア挙兵に、憤る。臣下達を、一瞥して、将兵を自身で、指揮すべく馬上から、号令をかけた、
セウリア、エルマ二国の王は、互いに手を結び。エルガイア北方にある。国境に、陣営を築いたのは、数日後のことだ、
━━それは突然だった……。
エルガイア、全土が闇に覆われるではないか……、
「何事だ!」
二国の将兵は、恐怖に震えた。
『諸外国の皆さん♪、始めまして、私は『呪いの森の魔女』とか呼ばれたりする~。アイレット・コール・レイン、私の国、魔導王国ルアロに、戦争仕掛けに、来たんじゃないなら、帰りなさい』
頭に直接、声が、響いた、
『そうそう~、一応伝えるけど、魔導王国ルアロは、アルフェリアと同盟関係だから、詳しく知りたかったら~(笑)、使者寄越して。ご苦労様♪』
唐突に、闇は消え去り。声は消えた……。
残された、二国の将兵は、呆然と立ち尽くした。
訳も分からないが、至急調べなくてはならない。二国の王は頷き、兵に命じた、「帰還する」
訳も解らず。戸惑う将兵は、素直に従った、
「6の魔女の物語」
━━アルフェリア国境。
風竜の咆哮は、『竜の風』(ソッニックブーム)の魔法を放つ、
騎兵は、一瞬で瓦解した、落馬した騎士を残して、
馬が恐怖で、逃げ惑う。
さらに竜は、
天空に昇り、一気に下降して、地表ギリギリを抜けた。
それにより大規模な、『竜の刃』(ドラグスラッシュ)で、歩兵。数千を無力化した。
竜から離れていた、ハーピィ部隊は、
逃げ惑う将兵を、捕まえ、次々と連れ去り、魔方陣の中に消えた……。
恐怖に駆られた、エルガイア軍の弓兵は、それでも単発的に、応戦した、ハーピィ魔導兵の使う『風刃』(エアーカッター)で、弓兵は壊滅されて行くのを。バルタスは呆然と立ち尽くした。
゛友よ。゛
王は、疲れていた……、空を力一杯、
駈ける。喜びに震えていたが……。
地下迷宮と違い、魔力の密度が薄く。竜の魔法は、想像以上に、魔力の消費が、激しいのだ。
「エローラ、休め」゛承知。゛
気だるい思念に、小さく笑いながら、
竜の背から、飛び降りるや。竜は送還された。
素早く『浮遊』(レビテイション)の魔法を使い、落下スピードを、制御しながら。
「我が、友にして。疾駆する者よ……」愛馬ファルスを、召喚した、
━━竜が、消えた瞬間、エルガイア兵は、歓喜して、
「竜が消えたぞ、今だ!、殺せ」
数百の歩兵は、歓喜して、シュレットに緊迫した。
「シュレット様を、守れ!」
巨馬ファルスに股がるシュレットを、守るべく、アルフェリア師団兵が、集まり、防御の陣形を整えた。ハロルドの考えではあるまい、アロワナ辺りか……、
「すまない……」
アルパーナの兵か、見知る者がいた。真摯な眼差しが、心に刺さる。皆小さく頷き、シュレットはただ、黙礼して、
「皆、頼むぞ」
『はっ!』
力強く声を上げた、
━━上空に留まる。ハーピィ姉妹は、小さく笑う。
「予定通りね。姉さん」
「そうね♪、男達は?」
「十分、里に運んだわ」
「そう、シュレット様と、味方の将兵の援護に、向かいます後はお願いね?」
「はい、姉さん」
甲高い声で。ハーピィ達に、合図した。
……するとハーピィ小隊は、エルガイア軍を撹乱し始めた。
「クッ!、何をしておるか、たかが少数ではないか!」
「しかし、王よ……」
言い募る幕僚を、激昂して、首を跳ねた。
「我が前に、あの男の首を持ってまいれ!」
━━最早……これまでか、誰もが理解した、
王は……。狂気に、犯されたと……。
幾ら、数で勝ろうと、エルガイア軍は、少しずつ、崩壊しはじめていた、
━━方で……、
「シュレット様を、守るのだ!」僅か数十の兵まで。数を、減らしていた、味方の兵を悲しげに見詰める。
このままでは…。
シュレットの顔に、悲痛な表情が、見て取れた。
……ここまでだな。同盟国の兵として、十分だ。
「皆、前を、開よ」
「しっ、しかし……」
言い募る。兵士は血みどろで、片目を失っていた……、
優しく兵の肩を叩き前に出る瞬間。シュレットの目が……、冷酷な光を、宿した。
「死ぬつもりはない」
鋭い眼光、殺気が膨れあがり、兵は真っ青に青ざめる。それに気付いて、自嘲気味に笑いながら、不敵に笑うと、安堵したように、
「はっ!はい」
慌てて素直に、引き下がる。
迫る。エルガイア兵を睨み付け、
『エルガイア将兵に告げる。負けを認め、何処と無く去れ。命だけは、助けてやる』
『魔声』の魔法が、
エルガイア将兵に、届く。なぜか……、
取り囲む将兵は、殺気立ていた。
「どこを見て、言ってる!」
「殺せ!、領土を得るのは俺だ」
数で勝る。エルガイア軍、孤立した、シュレット皇子の構図。
……だが、ハーピィが達は、危険を察知して。シュレットから離れたのに、誰も気付かない。
わざわざエルガイア兵を、集め、挑発したと、最後まで、気付くことはなかった………。
殺気が、膨れ上がる。王と同じく、欲望に目を、眩ませ。
エルガイア兵が、シュレットに殺到した、
アルフェリア師団の兵がシュレット皇子を守ろうと、動こうとした瞬間、凄まじい、殺気が、シュレットを中心に爆発的に広がった、皇子の眼光に……、たたらを踏んで、止まる。青ざめる兵達を、小さく笑い。
「黙って見てな、同盟国の兵士共」
兵士達は、息を飲んだ。小さく苦笑しながら、シュレットは、魔力を解放した、
ゴオオオォー
魔力による。突風が、凄まじい、勢いで、エルガイア兵を押し包み、足を止める……。
「さあ、喰らえよ!」
獰猛な笑みが、口元に張り付いた、
「我が、声にこたえよ。
『腐敗の魔王』(ゾアルイータ)よ………。
━━━生を、喰らい。『死者の国の扉へ』(ヘブンザゲート)誘わん」
━━『開け』。
ゾグン。
腕を、振るい。
力ある言葉に。
世界は鳴動した……
「たっ太陽が…」
闇に━━喰われてゆく……。ゴクリ唾を飲み込んだ。
「光は闇に……。生にはは死を……」
「なんと不気味な……」
禍々しい。言葉は、呪いとなり……。
命ある者は、立ち尽くした。
「なっなんだこれは………」
吐く息は白く。辺りに異臭が、立ち込め始めた。
『我が、前に立つ、愚かさを、悔いるがよい……』
地の底から、心臓を捕まれたような、不快な声が、直接頭に響いた。
「汝らの……命を餌に、『死者の国の扉』が口を開けん…」
……それは、命ある者が、抱く嫌悪。
「なっ、なんだあれは…」
バルタスは、あまりの光景に、色を無くした。
「ばっ、化け物…」
ザグン、
叫ぼうとした、兵は消えた。
「ひっ……」
ザグン、
また、兵は消えた……、
恐怖に震える。命ある者は、
「なっ、なんなんだ!」
突然消える同僚……に、恐慌をきたし、逃げようとした、
だが……次々と、消える。
ザグン、ザグン、ザグン、ザグン、ザグン、ザグン、ザグン、ザグン、ザグン、ザグン、
黒き太陽から、闇の雫石が、堕ちる。堕ちて、堕ちて、堕ちた。
……逃げる。
兵の上に………、
━━消える。
―消える。
まるで……。生きたまま、喰われてるように。
「なんだ……。これは…」━━悪臭に、鼻白む
バルタスの前にいた、幕僚は、雫石が当たり腐敗を、撒き散らせ、消えた。
ゴポリゴポリ。
バルタスの足元で、
腐汁が泡立ち。
『愚かなり、人間よ。
我が君を、敵にする。愚かさに悔いるがよい……』
そいつは腐汁から顔を出した。
……ニタリ、
目蓋の無い目、皮膚の無い顔、唇の無い剥き出しの歯から、呪詛が、つむがれた。
音もなく。バルタスの前に立ち、いきなり顔を掴んだ、
恐慌来した、バルタスは、魔人から。逃れるため、剣を抜いて、
斬る。斬る。斬る。
斬る。斬った。
━━魔人は、唇のない口で、ニタリ、
笑う、笑う、笑う、わらう。わらった……。バルタスの目が、見開き、恐怖に、顔が、ひきつる。
―べきぐちゃぐちゃ、
腕が、バルタスの体を貫いて、心臓を生きたまま引きずり出した。
腐敗の魔王は、ゴミを捨てるようにバルタスを投げ棄てた。
ゴミ(バルタス)は、糸の切れた、人形のように、地面に堕ちる。
やがて……。ゴミは……、
ゆっくり、ゆっくり、ギクシャクしながら、立ち上がる。死人の仲間となった王の姿に。
「ひぃー……」
失禁する者。正気を失う者、動かなくなる者、堕ちた死人の王は、襲う。喰らう。
殺し………仲間を、
増やした。
エルガイア軍の大半は。死者の軍勢に、成り果てる。
「シュレット様、これは……」
喰われる人々を、正視出来ず。呻く。
「気にするな、お前達は、襲われない」
「はっはい……」
魔力のある者なら、『死者の国』の召喚内を、垣間見るのだろう。嘆息した。
シュレットのこの力こそ。アンダーグラウンドで、六の魔王を倒して、手に入れた、魔法の1つである。
━闇は、現れた時と同じく消えていた。死者も何もかも……、
今まで。
見ていた悪夢が、嘘のように、
消えていた……。
『エルガイア将兵に、告げる。武器を捨て。降伏せよ』
生気を失った兵は。力なく従った。
これが……
アルフェリア大戦の結末であり、新たな大戦の序章だった……。
━━━アルフェリア公歴 元年。
アルフェリア国境で起こったエルガイアとの戦争は、
伝説の魔女の介入により、
思わぬ結末に終わる。諸外国の王達は、動向を探るべく。
魔導王国ルアロに、密偵と、使者を送り、様子を、見ることにした、
しかし……。
渦中の中心にあった。アルフェリアが、魔導王国ルアロと、同盟を、表明した……。
密偵は、すぐに戻た、報告を受けた、諸外国の王達は、
報告の内容に、半信半疑であった。
今しばらくの……、
静観が必要だと、感じた。
アルフェリアと同盟国である。セウリアは、カウベル・ジーザを使者として送る。
カウベル・ジーザは、商人ながら、外交官を任じられる程。目端の効く人物で、
塩の交易を、一手に任される。ジーザ商会の。若き商人である。
エルガイアのバルタス王は、民に貧困の生活を、長年強いていた、
カウベルが、見たところ、
飢餓に苦しむ。民の姿はない……。
大通りには、人が溢れ。商店は、活気付いていた。豊かな国のように、見える。
……同じ国とは、思えない変わりようだ……。妙な感心をした、
密かに入国して数日、安宿に泊まり、情報を集めてから、改めて、魔女に謁見を求めることにしたのは、6日目のことになる。
夜。居酒屋で、簡単に食事をしてると、無粋な、影で、食事を邪魔する人がいて、
誰だ?、イライラしながら、顔上げるカウベルを。やたら不敵な顔をして。くすんだ色の髪を、結い上げた、女の子が、腰に手を当て、立っていた。わりと仕立ての良い、服装の少女を、場違いな……。と、怪訝な目で、細める。
「あの?、何か用ですか」
商人として、相手を、侮らないよう、にこやかな。仮面を作るのを忘れない。
「バカじゃないの?、繕っても、あんたが何者か、バレバレだから」
小馬鹿にした口調。ガラの悪い喋り方に、いささか面食らった、
「君は、誰だ……」得体の知れない不安に、カウベルは、唾を飲み込んだ。
「あたし?、ラウラ」
「そうか……。そのラウラさんが、僕に、何の用かな」勤めて冷静に、相手を見るカウベルを、
少女はクスクス笑いながら。意地悪く目をすがめながら、
「用があるのは、あたいじゃないよ、あんただよ」
首を傾げ、眉をひそめた、
「言ってる意味が、分からないが…」
困ったな、頭を掻きながら、値踏みする。
……どんな子なんだ?、着てる服は、裕福な子女の物だが、
あまりに口が、悪すぎる。
「外交官の癖に、察しが、悪いね」
呆れたように、少女が、言ってのけた。
「なっ……」
血の気を失うカウベルを。つまらなそうに、鼻を鳴らした、
「ここいらは、あたしらの縄張りだよ。うちの女王様は、あんたが、城下に入った瞬間から、あんたのこと気付いてたよ」
「そっ、そんな……」
茫然自失の商人に、嘆息しながら、ちょとだけ同情的な、目を向けて。
「あんたが、初めてじゃないさ、安心しな、それから……。密偵は、捕まえさせた」
一瞬言葉に。詰まった。
「……、それで……、僕はどうなりますか?」
恐る恐る。少女を伺う。
「さあ~?、スレッド侯爵が、決めるんじゃないかな」
「そうですか…」
懐にある。ナイフを確かめる。どうするか、迷う。
少女は、ニヤニヤとカウベルの反応を、見ていた。静かにただ、見る。それが仕事だから、
ハッと顔が強ばる。少女の表情は、カウベルの考えを、見抜くように、鋭く細まる。
息を飲んだ、もしかしたら……。
商人は、力で闘わない。知恵で戦うのだ、だから理解した、
商人の感に従い。、
ナイフから。手を放して、立ち上がり。
「ラウラさん……でしたね。どうか謁見の申し込みを、お願いしたい」
深く。頭を下げる。ラウラは華やかに笑みを広げ、
「良いよ♪。魔女さんも、そのつもりだしさ、ただシュレット宰相が、戻るまで、城で、待って、もらうことになるけど、構わないね?」
正解らしい……。
急に、口調が変わり。打算的な……、
値踏みする。目をしていた、
カウベルは、今さらながら気付いた……。
ラウラの態度は、演技していたのだ、
自分こそ、値踏みされてたと知り。商人として、外交官として、
寒気すら、感じた。
「君は、いったい……」
「あたし?」
キョトンと、少女らしい、笑みを浮かべて、
「ラウラ・ヘイドル。姫さんの女官長をしてるよ」
愉しそうに、カラカラ笑われた、彼女の顔をみると、なんて馬鹿馬鹿しい……、嘆息して、肩の荷を降ろした。
…諸外国の送った、密偵は………、
最初の報告を、最後に、誰も、戻らなくなっていた……、
そのため王達は、様々な憶測を、巡らせるしかなかった。
魔女の魔法で、エルガイア全土を、包んだ闇は、魔導王国ルアロの民を選別したのではないかと……、
奇しくも。バルタスの悪政が、国民の、変革を求める。気持ちと重なり。すんなり、国の交代を、受け入れた、
バルタスの悪政と違って、魔女は、惜し気もなく、無償で、必要なだけ食糧を、民に配給した。
さらに、職の無い者に、職を与え、
バルタスに追い落とされ。復職を願う、優秀な人間を、能力に見合う、地位と名誉を与え。登用した、
一躍魔女は、国民の尊敬を集めた、
改革は止まらない。魔女は、子供のために、学校を作り、学舎を無料で、解放した、
次に、魔法医療の環境を整えた。国民なら、格安で、治療を受けれる政策と。それを成し得る施設を作る。
これに病に苦しみ、貧困に喘いだ民は、魔女を、崇めた、
魔女は、湯水の如く、金を使っても、まるで税金を上げない、安い税金は、城下に商人を呼ぶ。商人が増えれば、品物が増える。
客が集まり、新たな仕事、雇用が増えた。
短時間で、魔導王国ルアロの経済が、上向いた。
商人は、金の匂いに敏感だ、恐ろしい伝説の魔女だろうと、商人は大陸中から集まる。
さらに、大量の魔石を、売買して、国政に、当ててる事実を、
『魔導師の塔』(ギルド)の商人から、耳にした商会は、買い付けに走った、
負けじと、大国の商人まで集まり、魔導王国ルアロは、
バブル最盛期である。今日も早朝から、
複数の商人が、城に詰め寄る。
表に出ない、魔女の代わりに対応するのは、
四人の女官長と、国を空けてる。宰相、将軍、魔法学校長が、戻るまではと、
あっさり断られた、
しかし焦る商人は、
その四人の女官長に、すり寄り、
少しでも有利になるよう。口添えを頼みに、奔走したが、
四人の上司たる。
スレッド侯爵に、のらりくらり、
翻弄される。それ等の話を訊いて、当惑したカウベルは。
「私に、教えて良いのですか?」
不安を、口にしていた、
「ああ、大丈夫だよ。喋っても、大丈夫なことだけ、教えてるから」
「そうですか……」
感嘆の溜め息を、吐いた、
普通、自国の財政状況を、知られ無いように、苦心してるのが。幕僚だ、密偵を使い。調べ、自国の有利な状況を演出して、条件を飲ませるのが、外交である。カウベルは、いきなり自分の土俵が、通じない事態に、苦心していた、
「あの橋に、いた鎧は?」
「ああ~。『動く鎧』(リビングアーマ)だよ」
「なっ…なんと」
気が付けば、場内。至るところに、配置されてる。
「あれは、あたしら以上の命令じゃないと、動かないから、平気だ」
「しかし……。これだけの『動く鎧』は、魔女様が、造ったのですか?」
「詳しく。知らないけどさ。魔女さんじゃないよ」
「えっ………」
驚き、戸惑うカウベルを、悪戯ぽく笑み。
「帰って来てないけど、うちの魔法学校長が、造ってるらしいよ」
「魔法学校長?」
知らない単語に、首を傾げた、
「魔女さんが、国中に学校作ってる噂。訊いてるだろ?」
「ええ……まあ」
「前の馬鹿王はさ~、優秀な人材を飼い殺しにしてた、だから学舎の一つに、魔法学校を作ったんだよね。魔法学校長は、その先生らしいね」
「なるほど……。それにしても、この数は」
呆れ果てる。まだ、軍の編成途中だから、仕方ないにしても。
「これ以外にも、ちょっとした数、数万はあるらしいよ」
それはまた…。
動揺を抑え、表情を取り繕う。
「もっとも、魔女さん曰く。魔法学校長は、魔女さん以上の魔法使いらしいよ」
「なっ……、それは、本当に?」俄に、信じられない話だ、驚き勇む、カウベルに、肩を竦めながら。
「さあ?、魔女さんの話だけだから、今一つ信用に欠けるけど、宰相は、あのシュレット・アルパーナだしさ、信憑性あるよね」
片目を、瞑り。愉しそうに笑う。
「あっラウラさん、丁度良かった」
幼さの残る。兵士が、戸惑った顔で、助けを求めた。
何事かと、見れば、
少年兵の向こうに。数人の兵士がいて。
三人の男女を、取り囲んでいた。
「どうしたのあれ?」
首を傾げ、問う。
「はい……。あの三人が、いきなり、奥に入って行こうとしてまして」
自分達の手に、余る。そう言いたいらしい。
「しょうがないな…」
「すいません」門番の兵と少女は、顔見知りなのか?、少年兵は頭が、上がらないらしい。
「ちょっと待ってて」
「はい、分かりました」
素直に頷いた。
━━時間は、少し戻る。
城塞都市ハルガで、シルベルト、キャリンを待ち。
元エルガイア……。魔導王国ルアロに戻った三人が見たのは……、人、人、人、
予定より、戻るのが遅れたのには……。切実な、理由があったシュレットは、兄に捕まり、3日3晩愚痴られ、さらに翌日、早馬で。駆けつけた父に泣きつかれ。困り果てた。
終いには……。
砦にいる間。戦後処理を手伝わされ。
気付けば、15日もの日数が、過ぎていた、どうにか、逃げ出したシュレットは、3日ハルガに留まり。遅れた二人と、ようやく、合流、色んな噂の流れる。
自分達の国?に、戻った訳だが……、
「場違いだ……」
バッサリ切ったのは、銀髪を、短く刈り込み、袖のない、東方の胴着を、着込んで、小さなリックを手に、呻くシルベルト、
「確かに……」
頭一つ高い、シュレットは、旅装のフードで、顔を隠していた。色々苦労したのだ……。
「キャリン疲れたニャ」
髪の1房だけ白く、頭の横で、結んでるキャリンは、眠そうな顔をしていた。
妹ミルキー女王に可愛がられ。毎日。夜中まで、キャリンの話を、ねだったらしい。
困った妹だ……。
苦笑を漏らした。
城下に入ると、真新しい石畳が、街中に敷き詰めらていて。馬の負担を減らすため、気使ったシュレットの意向による。石畳である。
「なんで、こんな人がいるんだ?」
訝し気に、活気のある街を眺める。
「早く行くニャ!。アイレット様に、ちゃんと、仕事出来たて、ご報告するニャ♪」
「……………」
「……………」
急に、元気になるキャリンを、生暖かい。半眼で、二人は嘆息していた、
入国してから、間もなく、香しい香りに、キャリンの口から、涎が……、
向かう先から、美味しそうな匂いが、漂う。
「仕方ないな、キャリンが急ぐから、買い食い無しで」
「そうだな」
「ニャ、ニャニャ!、ガーン」
血色を失い、力無く、座り込み。ウルウル瞳に涙が、浮かぶ。
━━やっぱりか、食道楽猫か……。
打ちひしがれる。姿が、なんとも哀愁が漂う。哀れに見えてきた、人狼に、目配せすると。小さく苦笑を滲ませ。頷いた。
仕方ないか……。
「俺は、お腹空いたんだが……」
俯き小声で、呟いた瞬間。顔を輝かせ。
「キャ、キャリンに任せるニャ!」
嘘なんて、言われたら、堪らない、猫まっしぐら。
屋台に突撃する。
あまりの変貌ぶりに、二人は、苦々しく見合う。
今回、キャリンも頑張った、そのご褒美だと……。1人ごちる。
「まさかこんな時間になるなんて」
「まったくだ……」満面そうな笑みと、下手くそな、鼻歌は、主たる少女と同じである。過去のトラウマから、
人狼は、不快そうに、眉間に皺を寄せ。舌打ちした。
対象的な二人を、苦笑混じりにみてたが、
内心、魔女の所業に、感心していた、
賑わう町。人々の顔には、幸せな笑顔がある。耳にした噂は、悪い物ではなかった。
遅くなったので、屋台のオヤジに、城までの道を、訊いて、
三人は、大通りから、城に続く。道に出る。
城は、大きな掘りのある。要塞タイプの城になっていた……。
「うわぁ~……大きいニャ」
大きな目を、丸くして、驚きの声を上げた。
「これはまた……張り切ったな」三人は、知っている。城が、生きてることを……、
そして城は、自分の意志で、自由に姿を変えれるのだ。
「早く行くニャ~」
三人が、商人に混じり、城内に入ろうとした、瞬間。
「そこの三人!、何処に行くつもりだ」
数人の門番兵士らしき、男達が、集まる。
「誰だ。お前達?」人狼の殺気混じりの声に、兵士達が青ざめた。
「きっ貴様、何様だ!」
いきり立つ、若い兵士の腕が、震えてる。
「あっラウラさん、丁度良かった」
兵士の1人が、走り寄る。
「仕方ないな」
呆れたラウラの顔を、恥じて、俯いた、どうやら頭が、上がらないようだ。
「そこのあんた達、何してるのよ?」気の強そうな、少女がししゃり出てきたな……。
人狼は鼻白み。
何とかしろ。シュレットに目配せした、
そっと溜め息、吐き出して。
「一応言うけど、兵士募集は、昼間だから、魔女さんの謁見は、断りよ」
腰に手を当て、薄い胸を張る。
苦笑しながら、少し考え。
「その魔女に、呼ばれてるんだがな」
「はあ?、あんた達を……」
少女は、剣呑な顔で睨む。少し困り顔で、見てると、
商人風の若い男が、驚いた顔して、シュレットを見ていた、
「ん……(何処かでみた……あっ)君は、セウリアのジーザ商会の商人だったね」
「あっやはり!」
嬉しそうに、近づいて来た、
「えっ……あんた、この不審者と、知り合いなの?」
戸惑うラウラに、呆れた顔をするカウベルは、
『自分の国の宰相の顔、知らないの?』耳打ちした、
「へっ……、エ゛エ゛ー!。あんた……。シュレット宰相!なの~」
思いっきり、指を突き付け、驚きの声を上げる。
━━あちゃ……本当に知らないんだ……。
自分が、してやられた少女に仕返し出来た、形だが、複雑な気分になる。
「なっなんだって!。この方が、シュレット宰相様……」
兵士達は、呆然と、槍を落とした。
「宰相ての、知らないが、俺がシュレット、隣が、シルベルト。向こうで、挙動不審なのがキャリンだ」ズズンと。青ざめ立ち尽くすラウラ含めた、兵士達を、
笑えないな……。笑える訳がない
皮肉気に。1人愚痴る。
「大変失礼しました!」
両手を合わせ。深々謝る。ラウラに苦笑しながら、
「会った事がないんだ、仕方ない」
あっさり許され。
「あれ?怒らないの」
拍子抜けした、ラウラに一つ頷き。
「さっき気になること、言ってたね」
「はい?、ナニヲイッテヤガリましたか……」
大失敗の後だけに、顔がひきつっていた、シュレットとしては、気になった、話を聞きたいだけだが、
「俺のこと、宰相とか呼んでたけど……」
「あっ、そのことでしか」下手な敬語、思わずカミカミなラウラに。吹き出す。カウベルを、悔しそうに睨み付けた、
「はっはい、そっ、ソウナンデスマスよ」
いささか可哀想になって、
「シュレット殿下、多少私が訊いてます。良ければ、答えますが」
「なるほど……」
「では頼めるかい……」
わざと空白を作る。シュレット殿下に、思わず嬉しくなった、深々一礼して、
「カウベル・ジーザです殿下」
商人が、国の幕僚であり、この国の実質のトップである宰相に、顔を売る。チャンスを与えてくれたのだ、生かさない商人は、たたの愚か者だ、
ラウラに、訊いた限りのことを、三人に話した。
「なるほど……。あのバカのやりそうな、丸投げだな」何とも、疲れた顔をして呟いたが、怖くて相槌うてないな。
「ラウラ、今日は遅い、明日スレッドに会うことにして、部屋の用意を、人数分頼めるかな?」
「はっ、はいすぐに」
走り去る。ラウラを見送り、
「君達、よろしく頼む」
忘れ去られてたと、思ってた兵士達は、背を慌てて伸ばして、
『はい!』
嬉しそうに、仕事に戻る。
さすが、シュレット殿下だと、感心していた。
理由は、僅かな一連の出来事を、兵士に顔を覚えさせる。人心掌握に、使うなんて、感心するばかりだ、カウベルは、商人として、最大の敬意、襟を唯した。
早朝━━。日課の訓練を、裏庭にある。演武場で、シルベルトと行っていると、
「お早うございます!」
ルアロの兵士達百人余りが、集まってきた。
「シルベルト将軍、今日から訓練。お願いします」
「…………」
困惑して、何とかしろ。いつものお願いに、苦笑しながら、
「これで、全部かい?」
年嵩の中年兵士に、訊いた、
「いえ、スレッド侯爵の命で、三交代でして、夜勤した兵は休みになってます」
「なるほどね。そうだな………。
ならば丁度いいか」
ほくそ笑む宰相を不安そうに見ていた。
「皆に知らせがある。正式な発表は後日行うが、一週間後に、武芸大会を行うと、シルベルト将軍のお達しだ、但し、一般からの参加OK、優秀者には、昇進を含め。賞金を付ける」
おおおお……、
ざわめく兵を一瞥して、眉をひそめる。
「シルベルト将軍!、本当ですか」
意気込むのは、昨日の兵士だ、
「レイジお前…夜勤明けだろ」
「いやいや~凄く、いい話をしてるから、つい……」
ばつが悪そうに、赤くなる。
「ああ本当だ、なお詳しいことは、今日中に発表する」
「おっ、おれ!頑張ります」
「ああ期待してるぞレイジ」
名前を覚えられた、若い兵士は、歓喜のあまり、倒れそうにだ。
「全員武器を手に並べ!、順番に、シルベルト将軍に、打ち掛かり、自分の弱点を探ること、二回りしたら、訓練を終わりにする。いいですな将軍?」
「ああ………」ホッとした、シルベルトを残して、
スレッドの待つ、執務室に向かった。
途中。王座のある。大広間から、ラウラが、出てきた、
「あっ、お早うございます」
慌てて、寝癖の付いた、髪を隠そうとしている。クセ髪なのだろう。
「お早うラウラ」
「宰相は、スレッド侯爵の執務室に?」
そうだと頷くと、
「一緒に行きます」
歩きながら、ラウラが、元ストリートチルドレンのリーダーをしていたと、告白した、
「だからがさつで、申し訳、ありません」
昨日のこと、まだ気にしてたのだろう、見てると仲間に優しく、頼られる。姉御肌のようだ、おっちょこちょいな一面も、アイレットが、気に入った、一面だな、結論付けた、「そうか、俺には可愛らしい女の子に、見えるが」
「かっ、」
真っ赤になって、立ち止まる。ラウラを置いて、
執務室に入った。
「おお!シュレット様、お久しぶりで、ございます」
厳格な眼差し、執事ぜんとした、以前と違い。侯爵に見える。白い物が混じった髪を、後ろに撫でつけ、洒落たスーツを着流していた、
黒のスカーフが、以前の好みのままだが、
血色の良い肌、疲れの見える。顔、渋い……肉声?。
「もしかして、身体を作ったのか……」
疑似物に、魂を入れる。魔法が、あった……。
「そうでございます。いやはや、国とは、大変ですな……」ホッとしたのか、厳しい顔が緩む。
「キャリンが見たら、抱き着くな」
「………既に」
「そうか………」
苦笑いした、
ノックの音がした、
スレッドが、入るように言うと、ラウラと一緒に、シルバーブロンドの、貴族の令嬢のような、品のある。女の子を伴っていた。
「侯爵様、およびと聞きました」
チラリ、シュレットを認めたが、敢えて言われるまで、問うつもりはないようだ。
「ご苦労様ミスト、ラウラ済まないが、カウベル君を、呼んでくれたまえ」
首肯して、ラウラが出る直前、妙に熱い視線が、気になった……。
「ミスト、こちらが、我がルアロの宰相、シュレット・アルパーナ卿だ」
ハッと小さく、息を飲み、優雅に会釈した、これは?、スレッドを見ると、満足そうに頷き、
「ミストは、ルガイア公国の王族でしてな」
言わんとする事を、察した、
「君には、宰相の補佐を頼めるかい?」
「はい……」
迷いのある声だが、了承した、
「シュレット様、会われた二人の他、アイレット様付きの侍女ファナ、姉のソアラ、今日は、レブルの町に行っておりませぬが、シルビアの五人が、おります」スレッドの話では、五人は、アイレットが自ら選んだ女の子達だ、クセのある。才能の持ち主か、納得した、
「早速だけど、兵が少ない、役職を任せられる人員が少ない。だから、近々、武芸大会を開催する」「ほう、それはまた」
興味深い提案に、目を輝かせる。
「ミストすまないが、使えそうな、人間の何人か、心当たりあるか?」自分に、話が回るとは、戸惑うミストだが、小さく首肯した、
「国内外に、武芸大会を告知する。準備も任せたい、至急集めて」
「はい」
退室した、ミストを見送り、スレッドを見ると、頷き。
「あの子は、暗殺者か?」
「はい、暗殺ギルドに、仕込まれる。直前でした」
「そうか……。バルタスがやりそうな事だ」
忌々しそうに、吐息を吐いた。
「で、あいつはどうしてる?」
「はい、例の病気です」
諦めた顔から、趣味の風呂で、洗いをしてるのだろうか?。
「ファナが、お気に入りでしてな……」
苦い物を口にした、そう見える。
どおりで………、
アイレットの魔力を感じない。
「向こうか……」
「竜仙境で、ございます」
「あいつは、わざわざ自分の趣味のために、アンダーグラウンドまで、行ってるのか…」
呆れ果てた。
「まったく……」
「まあ、悩んでも仕方ない、国を運営しろって事だろう」
「そうですな……」
いつものことか……、
「セウリアと同盟するか……」
「今は、セウリアの商会の力を使うべきですな……」
「そっちは任せたい」
「分かりました」
二人には、見えていた、この先の戦乱が、
今は……敵が、攻めて来るより早く、国としての体裁を保つのが、先決である。
━━アルフェリア歴歴三年。
セウリアが、魔導王国ルアロとの同盟を表明した。
草原の国エルマから、同盟の意思があると、使者が訪れたのは、夏頃になる。
━━アルフェリア歴三年。冬。
魔女を中心に、一大勢力になった、四国の同盟は、諸外国から、四国同盟と呼ばれ、大国からは、危険視されたのは言うまでもない。
その年。ルアロの城下に、ジーザ商会が、店を開く、新たな塩の流通に、
『呪いの森』抜道を、使わせることで、ルアロは、莫大な利益を上げた、
ジーザ商会は、四国同盟の流通を一手に、引き受ける。大陸有数の商会に、数えられることになった。
「さて、カウベル呼んだのは他でもない。塩の生産が、落ちてるね」
ギクリ、顔が強ばる。カウベルに、小さく笑い。
「手助けじゃないが、この本を、渡して欲しい」
「これは……?」
見たことのない文字が書いてある。書物に、首を傾げる。
「渡せば、分かります」
「はっはあ」
戸惑う、若きジーザ商会長に、肩をすくめ。
「兄なら、意味が判る。気になるなら、訊いてみなよ。懇切丁寧に、教えてくれるからさ」
「う゛っ………」
明らかに、嫌そうな顔をした、経験ありか、苦笑いした。
「はっはあ~、分かりました」
「ああそれと、スレッド侯爵が、内々に、お話があるそうです。彼の執務室に寄るように」
「はっ、はい……」のらりくらりする。老練なスレッドの外交が、苦手なのだろう、
ま~レイスの時から、あれだからな……。
同情した。
退室した、カウベルの後、ミストが
、書類を抱え、入って来た。
「もう用意したのか?」
「…………」
口数の少ないミストは、色々な不安を、内に抱えてる。魔法医師は、言っていた。書類を読みながら、
「使者は、何人だ?」
色々含みある。言葉に、
「正式な使者は、エルマだけ、後の四人……」
「そうか、密偵のことは、シルベルトに任させる。そのまま軍部に行き、千騎士長の任命がどうなったか、副官ザルバに、訊いて欲しい」
「はい………」頼りにされて、ほんのり笑みを浮かべる。
昨年の武芸大会が、国を失ったて、路頭に迷ってた騎士。若い兵士に、希望を与えたことは聞いていた、
多くの兵を登用して、人員補充に。成功を納めた。アイレットも観戦して、大いに喜んだ。
そこで魔女は毎年、春、冬二回。武芸大会を開催すると、明言した、
あれから一年……。
先日、第三回武芸大会が、行われ、
人員が、増えた。
軍部の再編成、役職者の選出を、ミストに頼んでいた。
「失礼いたします」
遠慮がちな、声の後、ムッツリした、石像のような、大男が、入室した。
「ライネルか……ん?」
部屋の中で、気配がした?。
咄嗟に。シュレットは魔法を唱えた。
すると机の横に。ぼんやりした、人影が……ん?。
「キャリン。お前……何してるんだ?」
「ウニャ?、ニャニャー!、見つかったニャ」
青ざめるキャリンの、首根っこ捕まえて、
「キャリン様、生徒が待っておりますぞ」
「エエー!!。キャリンは遊ぶニャ、見逃して欲しいニャ」
拝むように、手を合わせる。キャリンを無表情に、見下ろして。無言のプレッシャーを与えた。助けを求めるように、シュレットをウルウル見てきたが、面倒だから、
「キャリン、連れてっていいよ」
「ガーン……。」
落ち込む、苦笑滲ませ。頷き一礼した。
「嫌ニャ!、離すニャ、キャリンは遊ぶの~」
ぶら下げられたキャリンの叫び声が、木霊した。
やれやれと嘆息する。
今のは……、
見なかったことにした。
ライネルは、元ルガイアの文官で、ミストを密かに、助け出した罪で、手配書を、出されていた人物だ、見た目ああだが、
「実直な男だ…」
ああもキャリンの手綱を、掴んでるのだから、
書類に混じり、アルフェリア女王の親書が、挟まれていた、
―親愛なる。兄様
でかでか書かれてる。一文に、顔をひきつらせながら、目を通す。
━━怒ってます!。
あれから一年になります!。父上とハロルド兄さんとは、会ったのに……。
不貞腐れる。愛らしい妹の顔が、思い出された。小さく溜め息をついて、軍部の編成が、ようやく一段落する。一度は母にも顔を、出さねばならないか……。
ついでに、セウリア国王ダーグに、謁見するべきだな……。なんて……言い訳するか、悩ましい限りである。
読み終えた手紙をしまって、凝った肩を、ほぐした、
フッと日が陰る。
国内の平定。軍部の編成、流通の確保。
国の形は、成したな。
「シュレット様、将軍と、ザルバ様が、新任の千騎士長を伴い。参ってますが」
シュレット宰相付き、小隊長レイジが、わざわざ報告に来た。
「通してくれ、」ミストがまだ戻ってない、まさか……私兵を使って、
シルベルトの代わりをしてるんだろうか?、
困ったなと嘆息した、暗殺者として、才能あったミストは、シュレットの密偵頭を、兼任している。
出来れば……、秘書だけに専念して、欲しいが、人員不足は否めない。
止めどなく考えて。ほどなく……。赤髪の少女が、冷たい印象を与える。メガネをズイッと押し上げ。入って来た、財務を一手に、引き受けるシルビアである。
四人の女官長の1人で……、何故一緒なんだと首を傾げた。
「宰相、お話があります。将軍達との話が、終わりましたら、すぐに確認して欲しいことがあります」
「分かった、控え室に…、カウベルが、持って来た、決裁の確認を頼む」
「すぐに………」
顔色変えず。さっさと出る。やや戸惑う二人が、慌てて避けた。新しい千騎士長だろう。手元の報告書に、どこから混ざったか、ライネル補佐官の苦言が、目に止まり。危うく、吹き出しそうになる。
「どうしました、シュレット宰相……」
おどおど挙動不審なザルバが、血色の悪い唇を紫色にしながら、不安そうな顔をしている。
「いやなんでもない……」
取り繕い、ライネルの苦言に、さっと目を通して、
━━━ライネルには悪いが……、
問題の生徒と、キャリンのことは一任しようと、決めていた。
入室した四人に、改め向き直る。
「君たちが、我が国の新しい将か?」
シルベルトに。視線を向けると、無言で頷く、これに慌てて。
「はっはい、こちらの二人は……」
ザルバの合図に、新任の二人は立ち、
「シーノ・キリクです」
「ロザーン・ブルグだ」
シーノは、東方の刀を腰に、差している。髪も多少赤いが、黒を基調にした、東方人であろう。
ローザン・ブルグ?。ブルグ家って、確かエルマの名家の出か、騎士らしく、精悍な顔立ちをしてる。そのことを伝えると、ローザンは、いたく感激した、武骨な笑みに、好感が持てた。
「シーノは、忍びかい?」
ハッと驚く顔をした、彼女の刀は、短く、切ることより、刺す毎を目的とした、特化した武器である。印象的な目をしていた。微かに驚いた顔を見せた。
「ご存知でしたか……。父が」
なるほど、セウリアには、東方の人間が住む。村があったな、
一つ頷いて、二人を見る。かなりの使い手だ、納得して、
「シルベルトの力に、なってくれ、頼むぞ」
頭を下げる。
「はっはい!」
「はっ」
武骨なブルグは、真っ赤な顔をして、喜びを隠しきれない様子だが、シーノがちょとだけ、呆れた顔をして微苦笑を。浮かべていた。
「ザルバは、仕事が済んだら、顔を出すように」
「はっ……はい」
青ざめた顔を、強ばらせる。
四人が出てすぐに、書類を抱え。控え室に向かう、途中お茶を侍女に頼んだ。
━━部屋に入ると。既に、決算書、決裁書に、目を通して終えたシルビアが、顔を上げた、満足そうな顔をしていた、
「お茶を飲んだら、話を聞こう」
運ばれた、焼き菓子を摘まみ。嬉しそうに、シルビアが頷く。こう見えて、甘い物好きの女の子だ、
冷たい印象が強く……。損をしてる。
「来月実施予定の訓練費用に及び、新設の部隊の寮について、だね」
「はい、新設の魔法兵団の長も、決めませんと」
再び冷たい印象を与えるように、メガネを人差し指で押し上げる。
「新しい千騎士長シーノに、やらせればいい、彼女かなり使い手だ」
シルビアは、眉をひそめ、考え込む。
「それで……。よろしいのですか?」懸念に一つ頷いて、種を明かす。
「ああ、千騎士長は、1人の予定だったんだ、二人にしたのは、新設部隊のためだよ」
なるほど、感心した溜め息をついて、
「では……そのように」
「ああシルビア、来月セウリア、アルフェリアの王と、謁見に向かう、そのつもりで、準備を頼む」
「……はい、分かりました」
やや困った顔をして、退室した、
執務室で、夕食を、食べ終えた所で、ザルバが、入って来た。
「あの者に、会いに行くぞ」
突然の宣言に。色を無くした。
「なっ……。それは」
悪巧みする。宰相の笑みに、顔を、ひきつらせた。
━━ことは5日前になるか……。
昨年の武芸大会優勝者のザルバだが、
普段の挙動不審、血の気の無い顔で、
お飾り的な、副官だと思われてる。
だけど、可笑しな才能があって……言わば。
゛不運゛
これに尽きる。
調べた所。ザルバはエローラの出で。
常に疎まれていた、
それと言うのも。補給部隊の小隊長だった、ザルバは、初めての戦で、その才能を発揮した
なんと戦線が、極端に縦長になり、補給部隊のいる後方が、穴だらけに……。
気が付けば、補給部隊なのに、最前線で、戦うはめになる。
そんな話は序の口で、
━━ある時は、旅で寄った村が、山賊の村で、命からがら逃げた、
━━またある時など、守備隊に、移った日に、砦が襲撃される始末。命からがら助かった。
━━さらにある時など、城の警備に、出れば、暗殺者と鉢合わせ
━━可哀想なことに。休みに出掛ければ。どしゃ降りに見舞われ。たまたま雨宿りした、小屋を、裏庭の岩山が崩れ。死にかけたりと。
聞いてるだけで、ちょっとした、小説が、書ける。
シルベルトは、納得して、楽しみ半分に、ザルバを副官に、任命していた。
すると……、その日から、諸外国の密偵を、見付けては、捕縛を繰り返した、今でこそ、シルビアの密偵がいるから、他国からの密偵は減ったが、面白い才能ではある。
……問題は、5日前、
゛不運゛で、
呼び寄せた、侵入者を捕まえた、相手が、少年だったのもあり……。ザルバの一存で、逃がした、
話は、それで終わらない。
昨日まで。四度。少年は、侵入を試みて。
四度。ザルバと鉢合わせ、捕まり。逃がしたを三回まで、続けた。
今は、地下牢にいるはずだ。シュレットが、少年の人間離れした、敏捷性と、腕力を訊いたから、ザルバに捕らえとくよう言った次の日に捕まえたらしい。
呆れた執念だと、苦笑したシュレットは、
密かに、地下牢に降りて、
━━鉄格子ごしに、少年をみた、痩せた身体、薄汚れた衣服。浮浪者にしか、見えない格好だ、
だが目は、鋭く、殺気だっている。
意思の強そうな顔を、伸びた銀髪が被う。
「この少年です」ザルバを見た瞬間、犬歯の発達した、口元が、悔しそうに歪む。
プイと、横を向いた。
「殺しに来たのか……」
小刻みに、腕が震えていた。バルタスの悪政による。被害者たる少年は、恐怖を飲み込み。不安を押し殺す。
「ああ~やっぱり、獣人か」
「なっ!」
考えれば解る。凄腕の暗殺者、密偵でないのは、身のこなしを見てれば分かる。
それに生きた城を出し抜くのは、難しい。
となると……。
城は、知ってる誰かと間違えたか、
とても似ているのどちらかである。
それに……、
少年の容姿は、魔女の探し人。そのままだ。
「ソアラは、元気だぞ」
今度こそ、驚愕に色を無くした。
少年が、落ち着いた所で、牢屋から出した。ザルバには、黙ってるように伝えて、帰らせる。
執務室に、少年を連れ戻り、レイジを呼び出して。少年を、風呂に入れさせ、こざっぱりした、少年に。
「先に、食べたまえ」
「おい!、その前に教えろ、ファナはどうしてる」
腹が、空いてるだろうが、それを訊くまで、食べようともしないな……。
そっと嘆息して、
「二人共、うちの魔女の侍女をしてる」
「ほっ本当に!」
不安と安堵で、グウ腹の虫が、主張した、
「詳しく、訊きたいなら、食べてからにしろ」
「……分かりました」
急に、素直になると、がつがつ、凄い勢いで食べ始めた。
やはりと言うか、肉、好きらしいな、
しばらくして、ミストが戻り、少年を怪訝な目で、見たが、
「シュレット様、捕まえた密偵、そのままファナに引き渡しました」
「そうか、ご苦労様」
答える前に、風が動いた。
「なあ、あんた!、ファナを知ってるのか」
シュレットの目で、捉えるのに。苦労するスピードだった、がっちりとミストの肩を掴む。
「シュレット様、彼は?」
驚き戸惑いが、顔に浮かぶ。
「ソアラの兄だ」
「彼が……」
納得したミストは、唇に微かに。微笑を讃え。
「二人は、同僚よ」
「本当だったんだ……、良かった」少年がへたり込む。ミストが、問う目をした。
「まだ、帰ってないなら、二人を、呼んでくれ」
「はい、ただちに」
床に、座り込む少年を、椅子に座らせ。
落ち着くのを待ってから。
「訊いていいか……、その……あんた何者なんだ?」
ようやく意思の強そうな、目を取り戻した、肩を竦めて見せ。
「この国の宰相、魔女の次に偉そうな、男だよ」
笑い含む言葉に、目を丸くした、
「あの二人は、魔女に、お前を探して欲しいと、懇願してたらしいぞ」
「そうか………」
複雑な思いを、抱えてるのだろう。
「ソアラ……、俺と違って、獣人の血が、少ないから、目を……」
「そうか……、お前は、働きにセウリアの塩田に、行ってたらしいな?」
「うん……でも、こんなことに……、なってるの…知らなくて、」
だろうな……。そうそうあっても困るが、
皮肉気に、苦笑を漏らしながら、
「心配で、城に、侵入したと?」
「うん……。二人が、心配だったんだ」
なるほどね。頷き、
「獣人は、君達二人だけか?」
「うん、母ちゃんは人間だったんだ、だから二人だけ、父ちゃんは生きてるて、母ちゃんが、言ってた」
「そうか、お前は、人狼か?」
「そうだよ」
こざっぱりして、上げた顔が、誰に似てるか気が付いた、目元がそっくりだ……、
ん……。これは面白いことになるか?、
なら……、アイレットに、口止めして……。ほくそ笑み、
「良かったら、仕事をしないか」
驚いた顔をして、戸惑ったような、不安そうな目で、
「えっ……。俺のこと獣人と、知ってるのに?」
歳相応の反応である。
「獣人なら、結構知り合い、いるよ」
「えっ……」
言ってる意味が、分からない、顔に出てる。
「あんた、変わってるな」
「そうだな、魔女の家来をしてるくらいだ」
肩を竦めて、おどけるように、言ってのける。
さすがに呆れたが、顔を引き締め、決意した顔をした。
「分かった、あんたは信用出来る。一度も目を反らさず。見てくれた、俺やるよ」
「そうか……」
二人が、来るまでの間、どんな仕事をさせるか、簡単に話して聞かせた。
少年はしばらくシュレットの下で、訓練を積ませ、情報を集める。簡単な仕事をさせるつもりだ、ビーノの資質次第だが、獣人は、生まれながらの密偵だ、
上手く育てれば、面白いだろうし……、シルベルトの嫌がらせになるなと、小さく笑う。
「失礼します。」
ミストの声で、我に返り、
入室を許可した、
目付きの鋭い、普段から、警戒心剥き出しのファナ。隣に、薄い金髪に合わせ、魔石で造り出された、魔導具を額に着けてる。幼い容貌のソアラ、弱い視力の補助アイテムだ、
ビーノを認め、顔を輝かせた、
「お兄!お姉ちゃん、お兄だよ」うっすら、涙を浮かべる。妹の頭を、優しく撫でて、鋭い眼差しが和らぐ。
「ソアラ……。お前……。俺が、見えるのか?」
茫然自失、ふらふら妹に、近より……割れ物に、触れるような、手探りの兄の手を、くすぐったそうに、はにかむ。
「たく、心配させやがって………」
ツンと明後日の方に、背ける。ファナに、
「ごめん……。」
ばつが悪そうに、俯いた。
三人が、落ち着いた所で、ビーノが、シュレットの仕事を、手伝うことを伝え。
三人を、下がらせ。
ファナに、そっと金を渡して、
「明日1日。二人を、休みにする。ゆっくり休むんだ良いねと」
伝えると。目を丸くした、ファナに、肩を竦め。小声で、
『ビーノに、どんな仕事をしてたか、話す時間、必要だろ?』
納得した目を輝かせ。嬉しそうに笑うと、
『ありがとうございます。』
可愛らしく笑ってから。二人の元に急いだ。
「宜しかったのですか?」
少し羨ましそうな、目をしていた。
「ああ……、明日の昼、ライネル補佐官を呼んでくれ」
「………はい」
「次の休みは、君だから」
「えっ……、はい!」
ほんのり、嬉しそうに唇を緩めた。
翌日……。
ライネル補佐官が、石像のような、顔を無表情に、苦言を聞いた、魔法学校に、評判の双子がいる。
いわゆる天才で、並みの先生では、手に余る。そこで二人の母が、キャリン直々に、教えて欲しいと色気づいた。
「無謀だ……、」
苦笑しながら呻く、宰相に、ライネルは大きな手を、頭に乗せ、うめいた、普通なら破綻するはずが、
キャリンと波長のあった双子は━━。
悪戯三昧の日々と、頭の痛い話を、訊かされたのだ。
「あの能天気猫娘は……」
悩ましい限りだが、
「ライネル実はな……」
来月、アルフェリア、セウリアの王達に、謁見する胸を伝え。
双子を、連れてくと伝えたのだ、
「いったい……。何をなさるつもりてすか……」
「本物の天才に。会わせるのさ」
妹ミルキー、兄ハルフェスと、それからが、大変なのだがね。宰相の苦難は続く。
「7の神の代行者の物語」
時は、戻る。
シュレット皇子が、
地下迷宮アンダーグラウンドから、生還して、半年……。
キャリンを、連れて旅を続けていた、それはそれは苦労ばかりの、実地込みの家庭教師である。
現在エルガイアと名前が変わった東には、広大な森が広がっている。古くは神世の時代から、
『呪いの森』と呼ばれる。古く、暗い死者の森奥深く、『魔女の城』はある。
二人が、城に入るなり、辺りが暗く、冷気に包まれ。突然現れたのは、レイスと呼ばれる。アンデットで、
『これはこれは、お帰りなさい』
にこやかに微笑していた、
「ただいまニャ、アイレット様は、どこニャ?」『うむ、ただいまシルベルトと、図書館で地図を、調べております』
「分かったニャ、先に行くニャ♪」
とてとて走り出した。
スレッドと見合い。
思わず。苦笑を漏らした。
『今回はどちらに?』
「ん、東方のシゲンに、珍しい本があると、アイレットに頼まれてね」
『これはこれはまた、遠い国へ……』
お茶を。用意しましょうと言付け、スレッドは、消えた、
……二階にある。自分の部屋で、荷物を降ろして、背負い袋から古文書を、取り出した。いずれ兄ハルフェスに、渡す機会があれば、容易に、塩の精製が、
楽になるだろう……。
ひとまず。渡せるか、分からないが、
………いつの間に。寝ていたようだ、テーブルに、軽食とお茶が置いてある。
「シュレット起きてるニャ?」
遠慮なんて知らない。キャリンは、入ってくるなり、
「お菓子ニャ♪、食べたいニャ」
目を輝かせた、苦笑しながら、頷いてやると、上機嫌に、食べ始めた。食道楽な猫だ……、呆れなが、キャリンの分もお茶を入れてやる。
「用が、あったんじゃないのか?」
「あっそうだったニャ!、アイレット様が、図書館で、呼んでるニャ」
「そうか……、身支度するから、お前は、お菓子食べてろ」
「分かったニャ」
喜色満面。お菓子の消費に走る。
身支度を整えたシュレットと二人で、二階の端まで足早に向かった、
……城にある図書館は、西の奥まった、奥にあって、吹き抜けの大きな部屋一面に、数万冊の蔵書があった……。
図書館の天井付近から、魔法の水晶が吊り下げられ、人が入れば自動的に、明かりが点く、魔法の仕掛けがなされている。
━━中央に、古い古文書を壊さず。広げ見れる。大理石のテーブルがあって、
二人は古文書を挟み。唸っていた、
「アイレット様♪、シュレット呼んで来たニャ」
「あっ、丁度良かった、これ見てくれるかしら」
顔を輝かせる魔女の手元には、古い地図が広げられていた、今の国と名前がかなり違うから、随分昔の大陸の地図であろうか?。魔導師ギルドで、見た地図に近いが、こっちの方が、所在が細かく。精緻である。魔女が(アイレット)、指す場所について、調べてるようだ、
「ここが、どこか解るかな~?」
現在と大陸の型も様変わりしているが、だいたいの地域、現在の国を思い出しながら、
「多分、その地域は、地殻変動で、大陸から群島になってるよ」
「えっ………地殻変動ですって!」
驚きを滲ませる。魔女のために、羊皮紙を取り出して。
地殻変動が、あった地域に。
現在の地図を書き出して、見比べさせた、
「道理で……。見つからないはずね~」
呆れた口調で、人狼と見合い、苦笑した。
「現在は…セウリア?」
訊かない名前なのか、困惑気味に、ただ笑う、
「シュレット、調べて欲しい。集落があるんだけど……」
上目遣いの猫なで声……、はっきり言って、不気味である。
「何て集落だ……」
諦めて、手伝うことにした。
━━10日以上掛かり。セウリア半島にある。島の一つである。
「じゃ、シルベルトと、『神の代行者』倒して来てね」
「えっ……。俺が…」
「うん♪。キャリンに、実戦積ませたいから、序でにね」
言い措いて。シュレットの顔を、睨むように見ながら。
「あの子、魔導兵造れるようになってたし」
「うっ……。マズかったかな…」
妬ましそうに、何故か睨まれた。
「ベ~ツに(キャリンのこと、羨ましいなんて、ことはないわよ~)」
妙に、不機嫌そうに、鼻を鳴らした。
「お早う~ニャ♪」
にへら寝惚け眼で、魔女に抱き付いた。
「もう、お昼よ?、まったくしょうのない子ね」
キャリンの頭を膝に抱き、懐から、東方の櫛(キャリンのお土産)で、髪を鋤いてやる。
「ウニャ~ン♪」
ゴロゴロ喉を、鳴らす。ご機嫌である。
「それにしても……」
じっとりした目は、豊かな、キャリンの胸に………。
「むむ……。クッ(負けてる」
薄い自分の胸を、見下ろして、唇が、わなわな、悲し気に震え。
「このこの!」
何やら、苛立ち混じりに、キャリンの胸をつつく。
「ニャハハ、くすぐったいニャ~♪」
恥ずかしい。女の子同士のやり取りに、ギロリ、なぜ俺を睨む?。小声で。
「何で、こんなに大きいのよ……」
ぼやきが聞こえたが、アイレットが可哀想で、そっと聞かなかったことにした。「そこ!。失礼なこと、考えたでしょ」
「さあ~、なんの話デスか。なぁシルベルト?」
顔を引きつらせ。人狼は、コクコク真剣に頷いた、目は、俺に振るなと必死である。
「おかしいな~。魔法薬効かないし……」
切実らしくて、シルベルトの気持ちも、理解した、
……タブー。
とても危険だったらしい……。朝から、嫌な、汗をかいた。『アイレット様、『瞬きの扉』の準備が、出来ております』
「そう、ありがとうスレッド♪」
珍しくタイミング良く、現れたな……。失礼なこと考えていると、
魔女の城には、森を歩かずに外に出れる。特別な魔方陣がある。三ヶ所の出入口があり。使う時は、調整が必要なのだ、
ジロリ、色んな含みある目を向けて。
「一応……。気をつけてね」
プイとそっぽ向いて、怒ったように、
……言われてもな。
「解った」
「ん…………」
手を差し出した、
あれからアイレットは、手にキスを求める。
いつものように、女王に拝した騎士のごとく、片膝着いて。恭しく手の甲に、キスをした
「あっ……」ほんのり赤い顔して、嬉しそうに、はにかむ。
……城の地下。
魔方陣が、明滅している。アイレットの研究所の一つだ。キャリンの作った魔導兵、鉄の魔導兵が(アイアンゴーレム)
コミカルなおめめを、ムムムと、にらめっこしてるのが、グリフォンの石像
が、研究所に安置されてる。キャリンは、召還でいつでも呼び出せる。
気になるのは、
キャリンが造ると、何故か、幼児なみの知能が備わるのだ。「規格外だよな……。魔導兵としても」
嘆息しながら、三人が、魔方陣に入った。
明滅が激しくなり、
三人の姿は……消えた。
━━━☆☆☆。
光が、消えると、
東の街道付近にある。崖の下の小屋。海の近くに、出現した。
「うわ~☆、海ニャ♪」
キャリンとの旅で、
━━東方シゲンに、行って以来か……。
皮膚に、刺さるような太陽の光、焼かれるような、ジリジリ感が、汗を誘う、
「あんたはどうだ?」
「いや………」
口数の少ない、人狼と行動するのにも、ようやく慣れた。
旅に同行することもしばしば、
『神の代行者』との戦いは、初めてになるが……。
……地下迷宮の六魔王より危険なのか?、
それが問題だ、
三年、地下迷宮でさ迷った時間。亜人の村、町で、様々な出逢い。別れを経験した、
中には、『契約者』のなりそこないの二人にも出会った。そして……、
六魔王と、戦うはめになったんだよな~……。
思い出したくもないが、
多分シルベルトは、最近海辺の国に、行ってない、そう言いたいのだろう、
「セウリアの首都は、街道に出て、南東の端、半島にあるから、この辺りは……。ファンゼの近くだな」
だいたいの大陸地図を思い出しながら、「キャリンの足で、6~7日か、ファルス喚んで、早めるか?」
眉間と鼻に、皺を寄せて、聞き入る。シルベルトに確認する。
「いや………」
今度のは、調べ物もある。構わない。そう言う、意味だろうか?。
「なら、街道を東に抜けて、ラノビアに寄らないか?」
「ん………?」
何故だ?、そう聞いたのだろう、
「たんに懐が、寂しいから、交易品を売りたいんだ」
「そうか」
了承に小さく頷いた、今まで、シルベルトだけに任せていた、魔女のアイテム売買、何せ、外に出れるのが、シルベルトだけだったためか、口下手な上、あまり深く考えない性格で、高価な、魔石、魔法道具を破格の安さで売買していた、
だからではないが……、
そっち面に明るい。シュレットは、個人で(商人証)を持っていた、当時の名がまだ使えたので、そのまま使ってるが、『魔導師の塔』発行の特別品で、大陸全土。如何なる国の町、村で、売買可能だ。
これは以前、メダリオンの所持者は、一つだけ、願いを叶えて貰える。限度はあるが……、シュレットは(商人証)を貰い受けた。
魔導師ギルドのある。レギオンの街に、小さな商会を作り魔導師に向かない。若者に、仕事を与えた、ただそれだけだったが、あれよあれよと、多額の利益を生み出した……、
本人は、知らぬ間に、商会は、新人魔導師に、格安で、金を貸したり、手広く商いをしていて、気が付けば、かなりの利益をあげる商会になっていた、商会の会長には、魔導師ギルドの落ちこぼれだった、青年に任せてただけなのだが……、シュレットに受けた、恩を返したいとの一念で……、らしい……、
シュレットの知らぬ間に、商会はギルドに、多額の投資をして、レギオンの街の建設に、多大な貢献をしたのだが、
本人は知らない……。
回り廻って、妹の手助けをしたなんてことも……。この時……、知るはずもない……。
3日とせず。ラノビアに着いた。ラノビアは、塩湖と海の境にある珍しい街で、海と川両方の魚が取れる。
浅い塩湖の珍しい特性に、目を付けた商人が、真珠の養殖に、力を入れた。
……多少なり、成功したと、聞いている。
いずれ、セウリアの交易品になるだろう。
街に入る時、商人、旅人は、一定の税を収めなければならない。普通の町と、違う理由もある。街とは、商人の使う、交易品の中継地で、
買い付けに利用される。訪れるのは、大概商人が率いる。商隊ばかりで、個人で訪れる者は少ない。商人は街では、宿を取らない。普通の町より割高になるからだが、街側にすれば、街に落ちる金が減り、街道の舗装、街の整備で、街の財政を圧迫させる。
そのため街は、入る為に税金を取る。
一方で……、
真珠の養殖で、交易品を担えば、莫大な利益を上げられそうだと。噂話が聞けた。
順調に養殖が上手く行けば、仕事が増え、人口も増えるだろう……。
街の入り口に、旅人向けの塩湖で取れた、魚を焼いて、香しい匂いは、旅人の胃を刺激した、
「二人は、適当に、買い食いしてて」
「分かったニャ♪」
満面の笑みのキャリンと、対照的に、疲れた顔で、小さく首肯した人狼に、金を渡して、商人の店が並ぶ、街の西側に向かう。
ラノビアには、ジーザ商会の本店がある。
主に、塩を扱う、ジーザ商会だが、
街では、様々な店が並ぶ。レギ商会の看板を、見上げ、中に入る。
「いらっしゃいませ」
線の細い店主は、商人には見えない、男が帳場を預かってるようだ、値踏みする眼差しに、(商人証)を見せると、表情が一変。
「こちらにどうぞ……」
恭しく。奥の部屋に、通され、
「ラノビアの商会長、アルマンです。貴方は……!!」
(商人証)に記載される名前を、驚愕の目で見ていた……、
レギ・ブランドル、レギ商会、創設者の名で、シュレットのもう1つの本名である。
「貴方があの……」息を飲み惚ける。
アルマンに、少々戸惑いながら、
「売買を頼みたいんだが、構わないかな?」
「はっはい!」
喜色満面に、アルマン商会長は、頷いた。
シュレットは、魔女の城に、捨てるほどある。
石から、質の良い、魔石と、東方で、手に入れた、染め布、茶器と、背負い袋から、大量に並べた。
唖然と、口を開けたままのアルマン商会長に、
「魔法道具だ、この中は、倉庫に繋がってる」
「なっ、なるほど……」
感心していたが、品物を扱うと、表情が一変した、
「しばしお待ちを…」
荷を運び、別部屋で、鑑定をする。
商会では、信用を売るため、大きな取引は、鑑定から始まる。「これで、全部でしょうか?」
「染め布が18反、茶器はあれで終い。魔石は質の悪い物100、良いのが10はある」
「そうですか……」
悩むアルマンの頭に、あるのは、
商会にある貨幣と、これを売り払うあてを、天秤に掛けている。
そこで……、失礼にならない程度の、
「今回、売買が目的でないから、足りない分は、真珠でも構わない」
譲歩を提示する。
明らかに、ホッとした顔をした(何でだ?)
「喜んで、お預かりした品は、買わせて、いただきます」
恭しく一礼して、握手を交わす。
取引終了である。
ラノビアの真珠は、
まだ、有名では無いが、西方ドマルキアなら、珍しさから、高値で売買されてる。との情報は、ある商人から以前買ってある。
旅を続けるなら、
交易カードが、いざと言うとき、助けになる。
━━あくまでも保険だが……。
運ばれた、貨幣の箱は、三箱、全て銀貨である。
箱1つで、半年は、豪遊出来る。金額になる。重量ある箱を、
背負い袋に、仕舞う。
今日は、宿を取り。明日王都のサレスを目指す。
━━4日の旅程で、サレスに着いた。
ラノビアのアルマンから、紹介状を書いてもらい、
王立図書館で、目的の集落を探した
館長と顔見知りになり、地殻変動前の集落を、探してる事を伝えると。地理学者を、紹介された、
「ほうほう、なるほど~」真っ白の顎髭をしごきながら、
とても古い地図を、シュレットに見せる。
過去あった地名を聞き、驚き目を丸くした、
「神の集落ラボーナ」
懐かしそうに、目を細めた、地理学者こそ、ラボーナに幼少を過ごし。住んでいた、最後の住人だったとしった、老人は目を細め。懐かしそうに。島が何処にあるか、丁寧に教えてくれた。
「わしは幼かったから、入れなかったが、島の東に、入江があった」
入江は、ほんの僅かな時間、引き潮の間だけ入り口を開き、
集落の若者が、成人を迎えた日に、祭壇まで行く。そんな話で、同席したシルベルトは、明らかに不機嫌な顔をしていた、何か理由がある。そう直感した。
翌日。食料を買い足して。
サレスから、
北東に5日。漁村ケストに着いた。
ケストから半日、行くと。アルデナと言う。リゾート都市がある。兄ハルフェルの屋敷は、ケストとアルデナの中間にあるため。
ここからも見える。
錆びた匂い。魚が放つ異臭は、珍味の干し魚で、干物と言う品だ、日持ちさせるための、加工品だ、
「うわ~凄く良い匂いニャ♪」
うっとり嬉しそうなキャリンを、信じられん。首を振りながら、鼻を押さえている。刺激臭は、嗅覚が発達してる。
人狼には、辛いのだろう……。
「お嬢ちゃん、良かったら、焼きたて食べるかい?」
安宿のおばさんが、豊満な腹を揺らす。
「うん食べるニャ♪」一階が、食堂兼、飲み屋をやってる。
一泊。食事ありで、三人一部屋。銀貨一枚と破格。ただし部屋は、大部屋だが……、
買い付けに来る。
アルパーナ、ア・フェリアからも来る。商人には、安く休める宿は、助かる。
金を別に払い。頼めば、船を出してくれそうな、漁師を紹介してくれないか、頼みこむ。
「あんた達。あの島に何しにいくだ?」胡散臭そうな眼差しに、用意してた話を聞かせた、
「はい、あの島に住んでいた、ある老人に頼まれまして、代わりにお参りに……」
不審がっていた、おかみさんは、
「ああ、あの学者先生かね…。」
知ってるようだ、
確か……12~13年前に、この村を、訪れたことがあると、訊いていた。「任せときな、安くするように、言ってあげるから」
「助かります」
―翌日、日も昇らぬ。早朝……。
威勢の良い。声が、あっちこっち、響く。まだキャリンは、起きない。
「少し、いいか?…」
「ああ、構わないけど、何?」
桟橋に、若い漁師が、網を積んでいる姿が見えた。
「あの島にいるのは、冥界の入り口を、開けた『神の代行者』が、……いる」
朝に。似つかわしくない。殺気を込めた呟きに。
「なるほどね……。あんたは、なぜ『契約者』になった?」
目が……、悲しそうに揺れた、
まだ、キャリンは、起きない。
仕方ないので、キャリンを背負い、
桟橋に向かう。早くも漁から戻り、魚を降ろす船もちらほら、宿の女将が言ってた、老漁師の船は、直ぐに見つかり、老人は朗らかに笑い、頷いた。
通常の漁船より一回り大きな船には、若い見習い漁師が二人。忙しそうに働く姿があった。
目的の島。『神の集落ラボーナ』に向かう航路は、
「今の季節。海流が、外れてな~、あの島に行けるのはわしだけよ。ひょひょ」
奇妙な、笑い声をたてる。
「島まで二フィス(二時間)くらいかの~」
茶目っ気タップリに片目を瞑る。
老漁師は、
シュレットの顔を、ちらほら見る。
老人は、海焼けして、体格のよいガッシリした、海の男で、
ガシガシ頭を掻く、指先は、傷だらけだが、人好きのする。優しい目をした人物だ、
「まあ~慣れない漁師だと、海流に飲まれ。東方シゲン、冗談か分からんが、ハルド興国まで、流されたって、話もあら~」
サラッと恐ろしい事を言う、セウリアから、帆船で10日以上。掛かる島国だ、
冗談にしては、笑えない……。
「うわ~♪、おっきな魚ニャ~」
黄金色の朝日に、誘われたか、銀色に輝く、小魚が海面を跳び跳ねる。
「おっイルカじゃな、あいつ等は、群れで、狩りをするんじゃ」
イルカの群れが、小魚を囲むように、回游していると、一頭が、波間を飛ぶ。
「凄い………」
息を飲んだ。
「すごい!すごい!凄いニャ!」
興奮したキャリンは、船の縁ではしゃぐ、
「大丈夫かの?」老人の心配そうな声に、首を傾げると、
一際大きな波に、乗り上げ、軽く浮遊の後、大きな水柱が、海水を適度に、浴びて喜んでいた。
「元気な娘っ子じゃて」
くしゃくしゃ、破笑一笑した、優しい眼差しは、孫を見るようだ。寛容な老人に、軽く頭を下げた、
「すまんな……、黙ってようと思ったが」
照れくさそうに笑い、
「お節介だが、似ておるな」
ハッと目を見張る。老人が見た島は……。
「ハルフェル様に、似ておる」
優しく笑う、気付いたかと……。小さく嘆息して、迷う。
「三年ですな……」
老人は、下の姫様が、見えられたと言った、
「……元気、でしたか?」誰かとは、言わない。身体が震えそだ、
「目元が、ソックリですな」
みなに、言われたことだ、
懐かしさに……、
涙が出そうだ、
「変わり者は元気ですか?」
認めた……。
困った顔をして、老人は苦笑した。
「あの通りの方、ですからな……」
親し気に、茶目っ気タップリ、片目を瞑る。思わず吹き出した。
「おっと……」
よろけるシュレットを、ガッシリした老人が支えた、甲板が、海水で洗われ、足元を濡らす。
「ブニャ!、ビショビショ………」
なんとも情けなさそうな、キャリンの声が、
「あっ………」
老人と見合い、小さく苦笑した、背負い袋から、タオルを出して、渡す。
「着替えは、島に着いてからな」
「うっ……、分かってるニャ!」
恨めしそうに、ぷんとソッポを向いた、
まるで子供だな、
アイレットに、ソックリだ、嘆息した。
「島が見えたぞ!」若い漁師が、ドギマギ、顔を赤くして、キャリンから、目を離す。濡れた身体で、クッキリ胸の形が、分かる。目の毒だな……。
船から降りて、
壊れかけの桟橋から、船を見送り。
━━なだらかな、坂道を登る。
鬱蒼と、繁る雑木林、集落がちらほら見てとれる。目的の入り江は、船が入れない、岩礁で、行くなら、わざわざ集落のある。坂を登り。
反対側の崖を、降りなくてはならない。崖の上からなら『浮遊』の魔法で、
落下して早いが、それまでが、一苦労である。
入り江まで『浮遊』で降下して、
干潮で、入り口の開いた、洞窟が、
入り江の奥に、あった。
「光よ」
短いワードで、3つの光球を作り、浮かす。一つを前に、飛ばした。
「うわ~真っ暗ニャ♪」
東方の着物に、着替えたキャリンが、
嬉しそうにはしゃぐ。猫か……猫だけに、
暗い。狭い。
好きなんだよな……、
洞窟の途中。エアーポケットのような、広い空間に出て、
地下に降りれる。階段を発見した。
長い年月と湿気で、階段は苔に覆われ、滑りやすくなっていた。
「足元気を付けて」
「はいニャ♪」急勾配の階段を、下まで降りると。
横に、広い空間があり、上の洞窟と、島の大きさと、リンクしない。
何らかの魔法か?、
強力な魔法で、空間を広げてる。
独特の違和感を覚えた、
「あっ、消えちゃうニャ」
3つの光球が、明滅して消える。
既に三フィシス( 三時間)が、過ぎてる。時間の感覚が、ずれてるのか、
「光よ」
今度は、数を増やして、周囲に、光球を飛ばした。
「これは、神の遺跡か……?」
天井付近は、滑らかな、ドーム状で、
幾つも、通路があったが、落盤で、塞がれてる。
「シルベルト?、怖い顔して、どうしたニャ」突然。進み出したシルベルトは、人狼の姿になっていた、
獰猛に、牙を剥いて、威嚇するような唸り声。
「どうしたシルベルト?」
戸惑う二人を、無視して、
様子がおかしい……。
「見るニャ、シルベルトの行こうとしてる。通路だけ、床が一部黄色いニャ」
言われて、気付いた、よく見てるな……。
感心した。
「シルベルトが、先に行ちゃうよ?。どうするニャ?」
「行こう……、あのまま1人には、出来ないから……」
様子が、変だった。
「はいニャ!」
おかしい……。
シルベルトは、ここを知ってるような…足取りだ。疑念が、胸中に広がった。
少し進むと、シルベルトは、人間の姿に戻り。ばつの悪そうな、顔をして、待っていた。二人は、顔を合わせ。ひとしきり笑う。憮然としてた、シルベルトも仕方ないと、照れくさそうに、薄く唇を歪めた。
シュレットは、光球を減らして、
辺りを照らしながら進んだ。
どうやら古代の遺跡、神の遺跡と呼ばれる。物のようだ、文献には、近付いたら、自動に開く、鉄のような扉、とあるが、
この遺跡、死んでるのか?、近付いてもびくともしない。
並の魔法では、
扉に傷すらつかない。魔法銀(エネミア鉱)で造られたのでは?、
魔導師としては、部屋の中が、気になるが……。
「なんか……、変ニャ……」
「そうだな……」
シルベルトも同意する。
「埃ぽくないな」最近まで、使われてたような、人の息使いすら、残ってるようだ、
「嫌な……、気配だ」
「ああ………」
この気配。覚えがある。地下迷宮。六魔王の居城に、迷い込んだ気分だ……。
シルベルトは、人狼になっていた、
危機感から、変身したのだろう。
「シュレット……、聞いてくれるか」
唐突に、悲痛な、声を出して、助けを求めるように人狼は、呟いた。
遥か昔。
神世の時代。神は、新たな世界創造の旅に出るため。まだ幼いこの世界に、幼い『神の子』だけ残すことの。不安から、神は、娘に12人の『神の代行者』を与えた。
『神の代行者』は、
神人8体、竜神2体、狼神1体、亜人1体の構成で、
『神の子』が、世界を統べる助けを、するはずであった……。
だが……神人達は、
自分達こそ、真実たる神であると、
『神の子』を、森に捨ててしまった、
他の『神の代行者』は、神人を非難したが、四体の神人以外を、
断罪した、
大陸には、人間が生まれ、様々な種族が、誕生していた、
そう………、
『神の代行者』は、新たな種族を連れて、それぞれが国を作っていた……、
神人に近い種族人間の国が、森にもあり。人間の夫婦が、『神の子』を拾って、人間として、育てた。
「ここは……、その中の神人の1人が使っていた、研究所だ……」
「ラボ……?(『神の代行者』言語か)」聞き慣れない言葉に、首を傾げた。
「それだけの事を知る。あんたは……いや、ただのシルベルトでいいさ……」
「変わり者め」
初めて、笑みを見せた、
『契約者』試練の時。人狼は、強さと慈愛のある。言葉を、シュレットに掛けてくれた。
「どうしたニャ?」
「なんでもない、早く終わらせて、釣りでもするか!」
「釣りってなんニャ?」
キョトンと、首を傾げた、二人が、釣りの話をしてるのを、優しく目を細めた、
最後まで『神の子』
の為に生きる『神の代行者』は、人狼として、歩み始めた……。
……肌が、泡立つ。魔素に似た、ねっとりした、魔力に辺りは、満ちていた、
最奥らしき部屋の入り口から、左右に10本以上の柱が立っていて、
壁には、不可思議な、明滅を繰り返す。何かがある。
「光よ」
新たに、光球を作り、飛ばした。
ドクン。
胎動のように、微細な振動。
「今のは…………」
―ドクッ、ドクッ……。
まるで、魔女の城のようではないか……、直感した、この遺跡は、生きている。
寒気すら、生ぬるい、圧倒的な気配が…、
「いる。」
―何かが……、いる。
……部屋の中央、大きな窪みのある。祭壇が、幾何学的な、黄色い石を解して、複雑な模様を産み出している。
「多重魔方陣!」
文献だけが残る。遺産。
「この施設はなんだ」
不気味な、吐き気を覚える。
「新人類、創造装置」「なに?」
祭壇付近の魔方陣は、余りに複雑で、まるで読めない。
シルベルトは、静かな怒りを瞳に宿して、拳を握る。
「なんニャ?、シュレット見るニャ!、柱の中に、何かいるニャ」
キャリンは、柱の中を注視している。
コポリ……。
泡が、上に昇る。
柱と思ったのは、半透明な何か、中は、水のような液体、
………ボコッ…。
!。濁った液体、
人形の化け物が、浮かぶ……。小さく後ずさる。
━━ようやく、理解した。これが人間……、
こんな物が、人間だと……
「ふざけるな……」
顔が、強ばる。
「これが『神の代行者』の所業だ、あの者達は、神などではない………」━━━ブッ………、
―ブッブブ……、ブッブブ、ブブブブブ。
耳障りな音、虫の羽音が、耳元でまとわり着く、そんな不愉快な、低周波が周囲を反響して、全身で体感した、
「きっ気持ち悪いニャ」
青ざめるキャリンが、耳を押さえる。
「クッ………」
「来るぞ!」
ゾワ……、
寒気に、襲われ。歯を噛み締める。
『クッククククク、アハハハハハは、久しく目覚めれば、下等な人間が、迷い込んでおるわ』
傲慢。人を、人と思わぬ声音。
思念……。
これ程、不愉快な思念を、今まで、感じたことがない、
「グルルルルルル…」
低い威嚇音を、口内から漏れ出る。
『ほう………。
まだ世界に、人狼が残るか』
せせら笑い、嫌らしいく、不快感な思念が、頭に響く。
『下等生物どおし、仲がよいのお~。
ああ~それとも、
神である我の尊顔を拝するか、下等生物が、這いつくばって、床じゅう舐めて綺麗にせよ。特別に赦すわ、
クッククククク、
ビャァハハハハハハは、それはいい」
狂ってる……。
『おお、そうだ……、新しいモルモットが不足しておる。よいのお~それはいい…』
「クッ」
思念が消えた瞬間。
足元が、揺れた。立ってられないほど……。
強大な力を持つ何か、足元から、ゆっくり競り上がるような、気配がする。
ギュルギュル金属を、擦る。耳障りな音に、顔をしかめ、人狼は、祭壇を。鋭く睨む。透明な石……、
祭壇中央が、開き。
穴から……競り出すように、魔法文字が、蟻のように、無数に描かれた、水晶が、現れた。
半ばまで、競り上がると、
「何か入ってるニャ、なんニャ、あれは」
干からびた、木乃伊が、水晶の中に入っていた、
『神の美しさに、言葉がなかろう』
悪夢だ、吐き気さえ覚えた。
「笑わせるな、何が神だ、たかが旧人類の癖に」
高らかに、嘲笑するシルベルトを、ギョッと見た。
『なっ何を言う…』
直接心にリンクする思念は、自身の心。傲慢さにヒビを入れられたのに気付かない。
不安、恐怖の感情が流れてきた。
『わっ矮小な、獣人ゴトキが!』
悲鳴のような思念。吐き気を堪える。たが……シルベルトは、
怒りの形相で、爆弾を落とす。それは『神の代行者』(かみ)にとって………、
容認出来ない現実となる。
「貴様は、昔から口だけだ、ゼウラー」
ハッと息を飲んだ、
ゼウラー…と言う名は、聞き覚えがある。
創世神ゼウラー……。
三柱の主神、光神パルキ。地神ディース。月神アーネリーの父に当たる。
神として、知られている。
神聖国パルディアは、三柱の主神を教義に掲げる国だ。
シルベルトが獣化を解いて、人間の姿に戻る。
『なっ…………。
あり得ぬ。あり得ぬ。あり得ぬは!』
神と名乗る男の思念が、
壊れた。
絶叫するように。神と名乗った男は、悲鳴をがなりたてる。『なぜだ……。なぜ貴様が生きている。オーランド!』
狂った思念を、撒き散らした。
ゼウラーの強力な思念により、部屋中の柱にヒビが入り。
白濁した、液体が流れた。
「神なのだろう?、そんなことも分からないのか?、だから他の7人に、裏切られた」
純粋過ぎた怒りを、無口な人狼は口にした、
「シルベルトが、めちゃくちゃ怖いニャ」
「………確かに」
予想外のスケールのでかさに……。困惑を隠せない。
ギロリ、シルベルトに睨まれ。たじろいだ。
「うっ」
「ニャニャ」
慌てて口をつぐみ。首を竦めた。
「お前達は、壁の装置を壊せ、そいつの生命維持装置だ」意味は分からないが、逆らってはいけない。二人は、背筋を伸ばし大きく頷いた。
……調子が狂うよ……。ぼやきを口内で呟いた。
『おのれ……。おのれ……。おのれ!』
水晶を中心に、凄まじい魔力が、祭壇の四方に置かれた、クリスタルに流れた、『我こそ神だ!、神だ神だ神だ神だ神だ神だ神なのだ!』
偽りの神、狂った神を詐称する男は、
強大な魔力を放つ。
シュレットは素早く、魔力をアイテムに流しながら、
「我が、使い魔にして、美しき妖鳥姉妹よ」
シュレットに、ぴったり寄り添うように、色彩鳥のような、美しい髪を、金の鎖で、束ねている。
人間の腕に当たる部分は、翼になっていて。姉妹のハーピィが、羽ばたき一閃。降り立った。
強力な魔力が、キャリンを中心に放たれた。無駄に大きな魔方陣を、魔力任せに呼び出して。
「さあ~♪。皆くるニャ!?」
呪文すら唱えない。ただ呼んだだけなのに、強すぎる。魔力は、召喚を可能にした、魔女の城、研究施設で、睨めっこしてる。あいつ等を呼び出した。ニ体の鉄の魔導兵と、
グリフォンに似せた、石像魔導兵
三体ともコミカルな、顔をしていた、
「皆~、やっちゃうニャ♪」
脱力感に見舞われる掛け声だが、ゴーレムの力は本物だ、一発で、液体の入った、柱を粉々に砕いた。
『おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれ!』
狂った叫びが、錯綜した。怒りの凄まじさに、部屋を震わせる。
『許さぬ許さぬ許さぬ許さぬ赦さぬわ……』
怨念のような呪詛を唱え。水晶とクリスタルに、魔力が集まり。
『集え我が兵よ。我が敵を滅ぼせ!!!』
波形状に、魔力が放たれ。複数の魔方陣が、一度に開く。
凄まじい数の様々な、魔法生物が、部屋を圧巻させた。
「ニャニャニャ!凄い数ニャ」
圧倒的な数は、シルベルトの胸中を不安にさせた。
「シルベルト!。あの馬鹿は、お前の手で始末つけやがれ!後のザコは、俺達に任せな」ハッと我に返り。目を開く。驚いていた……。そして心から震えた……、拳を強く握り、仲間の声に。
ただただ頷いて、
「グルルルルアオオオオオオォォ━━―。」
歓喜の遠吠えをした、たった1人で『神の子』を守っていた『神の代行者』たる狼神は、仲間の期待に。心を奮わせた。
霞むスピードで走り。迫る。魔法生物の隙間を駆ける。
『加速』×『防御』+『敏捷』
多重強化の魔法を、一瞬で自身に掛ける。
『おろかな…。愚かな。愚かな!。真なる神の前に、死すがよいわ!』
迫る。人狼に向け、魔方陣が開く。
「シュレット様!、上ですわ」
重々しい羽音を耳にして、光球を増やして、放つ。
「ガーゴイルか、チッ…」舌打ちして、素早くプランを変えた。
「リオナは俺の背に『風壁』を張れ、ナッシュは『風刃』で迎撃。デカイの放つ」
『はい』
姉妹の顔は、嬉しそうに、シュレットに寄り添う。
二人が、体制を整える間、『風弾』(エアーアッパー』を複数放つ。
「シュレット様」
姉ナッシュの声を聞き、強大な魔力の封印を解いた、
ピィーヤ。歌声で、ハーピィは魔法を放つ。次々『風刃』(エアーカッター)で、ガーゴイルを足止めした、数が数で、合間合間に、防壁にたどり着き、
槍で突撃してくる。
「我が、真名に答えよ……。
これから喚ぶのは、六魔王の1人、己の身体を剣に封じた、『魔神剣』(まじんけん)魔神アビル。
「闇世に浮かびし月光、汝の姿を浮かばさん」
闇が、生まれた……。
シュレットは闇に、手を入れて、闇にある。黒い刀身の片刃の大剣の柄を、一気に引き抜いた。
風の結界から、飛び出してシュレットは、
ガーゴイルに向けて一閃。二閃させる。
見える範囲のガーゴイルは、砂塵と化した。
「チッ、さすがに数が多いか…」
それでも牽制になり、ガーゴイルは警戒して、遠巻きに滑空する。
―だが、距離は関係ない。
獰猛に笑うは、人間の心にある闇。それこそが毒となり、胸中に広がる。闇に『魔神剣』を投げ落とした瞬間、音もなく送還され消えた…。
「我が声に答えよ。『腐敗の魔王』(ゾアルイータ)よ」
魔力は、一瞬で腐り始め。魔気となり。
死者の吐く。腐臭のように広がった。
ポチャン……。
床が、黒い腐液と変わり。
波紋が広がった。
……ゆるり。
ドロリとした腐汁から、皮膚のない顔を瞼のない目を歓喜に歪め。両手を捧げる。
禍々しい。腐臭を放つ、一本の杖を差し出した。
「グッ………」
掴んだ瞬間、腕に凄まじい激痛が襲う。
まるで……少しずつ腐りゆくようだ……、意志の力だけで、
杖を引き抜いた、
『腐敗の魔王』ごと……。
いつの間にか手にした杖は、シュレットの身長より大きく。
冥界のルーンを唱え、魔力を魔素に返還させて、放つ。ギィィィヤァァアアアアアアーーー
杖は、断末魔の如く。共鳴した。
ありとあらゆる物質を崩壊させる。
禁断のビートを奏でる。
異界の魔王たる。『腐敗の魔王』の力を、呼び覚ます。儀式
「『腐喰』(ドレイン)」
不吉な呪詛から、杖は数多の腐敗を、放射した。
それは……一瞬。
天井を埋め尽くした、ガーゴイルは、砂塵すら残さず。消え失せた、
「ガッハ………」
強すぎる。魔素に、吐血した、
「シュレット様!」
生を喰らう、『腐敗の魔王』に根こそぎ魔力を喰われたのだ、
「近づくな!」
二人のハーピィは、凍り付いた、
一つ頷いて、杖を腐汁に投げ込む
『我が君。またいつでもお呼びを……』
皮膚のない唇、剥き出しの歯をこの上無く。笑みにして、
『腐敗の魔王』は、
一礼しながら……、
沈み込んで行く。
なんとか意識の力で、送還した。安堵のあまり。喘ぐ、
「すまない…、大丈夫だ…」
ハーピィ姉妹に抱き抱えられ、脱力した、
「今ニャ~♪、増えるニャ、皆~突撃ニャ!」
いつの間にか、アイアンゴーレムは十体に、ストーンゴーレムも三体と、増えていた、
ストーンゴーレムは、キャリンを守るように、動く鎧の猛攻を防ぐ。
キャリンの周りに、動く鎧の残骸が、散乱していた、キャリンは残骸に、手をふり。ふり。
「増えるニャ♪」
残骸は、一つに集まり、アイアンゴーレムを造り出した。
無駄に大きな魔方陣が、キャリンの魔力を、ゴーレム製造に、変換する。
これが半年の間、造り上げたキャリンオリジナル魔法である。
ゼウラーは、
四方のクリスタルに、魔法生物を融合させて、使役した。
4つの融合生物は、甲羅の中にクリスタルを隠して、
人狼を遮り、それぞれ攻撃してきた、
「グルルルル…(チッ4大元素地水火風の力で、触手がコーティングされてる)」
緑色の融合生物の触手は、毒と麻痺。
叩かれた腕が痺れた。
「アオオオォォォー」『戦の叫び』(ウオークライ)で、
瞬発力を上げる。
大きく後ろに飛び退き、鋭い爪を低く構え。加速をつけ。走り出した。
赤い触手の融合生物が、触手に火を纏い。編み目のように広げ、押し包みに掛かる。
ヒュオオォォ―、
左右に飛びながら、
爪を伸ばして、凄まじいスピードで、
触手の網を切り払う、だが、身体に触れた触手が毛皮を焼いた、
「『空牙狼三弾』(くうがろうさんだん)」
渾身の一撃を、融合生物の甲羅に、叩きつける。
凄まじいスピード×瞬発力で、放てられた拳撃は……、
赤い融合生物だけでなく、群れで襲いかかる狼のように。
青い融合生物、黄色融合生物のクリスタルに、襲いかかる狼の群れのように、破壊しながら、喰らい尽くす。
『なっ……バカな……』
突然の出来事に、呆然とした思念が流れた、
「アオオオォォォー」
再び多重魔法を自分に掛けて、足を止めず。拳が伸びる。緑の触手を、爪で切り裂き、
甲羅の一点を、ラッシュで攻撃した、
「ウォォォォオオオ―」
魂の叫びで、ついに甲羅にヒビが入った。
紙一重で、触手をかわして、
近距離、融合生物の下から上体を、沈み込ませるように、渾身の一撃を放つ、
ビクビク、融合生物が、大きく震え、手が、クリスタルを掴んだ。
「フン!?」
腕が一回り太くなり、クリスタルを砕いた。砂の塊が、崩れるようにザザーっと、融合生物が崩れ去る。
『あり得ぬ……。有り得ぬ……』
「終わりだゼウラー」
静かな呟きは……、
喧騒の消えた室内に響いた。
『ヒッヒー……。まっ待て、オーランド、やっ止めろ!?』
傲慢な思念が、恐怖に震え、生にしがみつく姿は、
醜く……吐き気を抱く。
『頼む……頼む!。頼むオーランド!』
狂喜の仮面すら剥がされ。偽りの神は、
恐怖に震えた。
『いやだ……死にたくない、俺は悪くない!そうだ俺は悪くない、全て、あの三人が悪いのだ、なっなっ、何でも喋る。命だけは……』
バキン、
『あっ……』
シルベルトの拳が、水晶にめり込み。
封じられた時間が、木乃伊を、砂に変えた。
ただそれだけだ……。
エピローグ
三人が、地上に戻ると、沈む夕日を見ながら、砂浜に、倒れ込む。
魔力を使い果たした三人は、
魔力回復まで、空を見ていた、
「シュレット……」
「ん?」
傍らで、寝息を立てるキャリンに、外套を掛けてやる。
「聞かないのか?」
実直な光を、瞳に宿す人狼に、素知らぬ顔で、
「興味はないね。お前が誰だろうが、今はシルベルトだろ?、それで十分だ」
重い檻を、外すような言葉に人狼は、嬉しそうに、そうかと呟き、静かに眼を閉じる。
波音が、ただ三人を包んだ。
―終―
この物語は、ひとまず終了です。閲覧ありがとうございます。また違う物語で、お会い出来たら幸いです。




