カスクの町①
一際大きい建物に案内された。町長さんの家のようだ。
私をここまで連れてきてくれたのは猫の獣人でミウさんというらしい。
道中、この町のことやら名物やらを聞いた。この町はたまに迷い人が現れるらしく、案内人が存在するらしい。
到着して、家の人に言付けたあとミウさんは「ほなまたね、かえでさん」と言って、仕事に戻って行った。
家は玄関で靴を脱ぐ、日本家屋のような建物で、案内された部屋は和室のようだった。
座ってしばらく待つように言われたので、お茶をいただき、今後の身の振り方を考ていた。
「お待たせしました。案内人のテイリックです。鳴宮かえでさんですね?ミウさんから聞いてはるかもしれませんが、過去の文献に沿ってお伝えしますね。」
どうやら迷い人は、何十年か毎に現れるらしく、関わった者がいるとは限らないので記録に残すことにしたらしい。
記録といっても名前と、迷い人となる前に何をしていたか、どういう道を歩くのか、もたらした変化、他、といったところだ。
私の場合、駅を出たら別世界だったが、会社から帰る途中に気付いたら、という人もいた。道に迷ったら、とか、初めて行ったお店から出たら、という人もいた。
もとの世界に戻るために探す旅に出る人もいたが、この世界の人と結婚した人もいた。せっかくだからとやりたかったことをやる、と意気込んだ人もいた。
道を綺麗に保つためにゴミ箱の設置や、公衆トイレの設置をする人もいた。調味料を作りたいという人もいた。
じゃあ、私は?となったが、これから考えていけばいい、とテイリックさんに言われた。
「今日はここに泊まってください。私は仕事が残っていますので片付けてきます。明日はゆっくり案内しますね。部屋に案内させるので、とりあえずゆっくりなさってください。あ、お風呂に先にお入りになりますか?着替えは用意しますので、安心してください。」
部屋に案内され、言葉に甘えてお風呂をいただくことにし、ゆっくり身体を休めた。




