表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空の大陸の落ちこぼれ  作者: 滝本りお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/52

『英雄の帰還』

静寂の中。


 ロウの頭の中へ、無機質な声が響いた。


 ────────────────


 【骸の主の討伐を確認】


 【Lv8916】


 【レベルが上昇しました】


 ────────────────


 【固有スキル】


 【『骸』】


 【獲得しました】


 ────────────────


「……。」


 ロウは表示を見つめる。


「二しか上がらないんだ。」


「思ったより少ないな。」


「…………。」


 ザルヒの頬がぴくりと引きつった。


「おい。」


「今……何て言った?」


「え?」


「レベルが二しか上がらないって。」


「…………。」


 護衛たちも固まる。


「お前……。」


「それ。」


「骸の主だぞ?」


「王国が何百年も討伐できなかった化け物だ!!」


「それで二しか上がらないだと!?」


 ロウは首を傾げる。


「いや。」


「本当に二しか……。」


「もういい!!」


 ザルヒが頭を抱えて叫んだ。


「頼むからその話は終わりにしてくれ!!」


「価値観がおかしくなる!!」


 護衛たちも何度も頷く。


「その通りです……。」


「聞けば聞くほど頭がおかしくなりそうです……。」


 ロウだけが困ったように笑った。


「そう?」


「普通だと思うんだけど。」


「普通じゃない!!!!」


 全員の叫びが湿原へ響いた。


◇◇◇


 数時間後。


 一行は王都アストラ・エクリプスへ到着した。


 巨大な城壁。


 普段と変わらぬ賑わい。


 市場では商人たちの威勢の良い声が飛び交っている。


 だが。


 ザルヒは門を潜るなり叫んだ。


「道を開けろ!!」


「緊急報告だ!!」


 公爵家の紋章を見た兵士たちの表情が変わる。


「ザルヒ様!?」


「何があったのですか!?」


「陛下へ。」


「至急お取次ぎを。」


 その迫力に兵士たちは顔色を変えた。


「はっ!!」


 数分後。


 謁見の間。


 王をはじめ、重臣たちが並ぶ。


 王が静かに口を開いた。


「ザルヒ。」


「そこまで急ぐとは。」


「何があった。」


 ザルヒは跪く。


 そして。


 一言だけ告げた。


「ご報告します。」


「骸の主は――」


 一拍置く。


「討伐されました。」


 …………。


 謁見の間から。


 音が消えた。


「…………は?」


 王の口から漏れたのは、それだけだった。


 重臣たちも理解できない。


「今……。」


「何と申した?」


「骸の主です。」


「消滅しました。」


 その瞬間だった。


「ば、馬鹿な!!」


「あり得ん!!」


「数百年討伐できなかった魔獣だぞ!?」


「誰が倒した!!」


 王の問いに。


 ザルヒはゆっくりとロウへ視線を向けた。


「彼です。」


 謁見の間。


 全員の視線が、一人の青年へ集まる。


 王も目を細めた。


「……名は。」


 ロウは一歩前へ出る。


「ロウです。」


なに…?!?!


 謁見の間が騒然とする中。


 一人だけ。


 その様子を黙って見つめる人物がいた。


 王の玉座から少し離れた場所。


 重臣たちのさらに後方。


 腕を組み、静かにロウを見つめている。


 王族たちが、その人物へ視線を向ける。


 驚き。


 戸惑い。


 そして、どこか気まずそうな表情。


 しかし、その人物だけは何も言わない。


 ただ一人。


 ロウだけを見つめていた。


 ロウも、その視線に気付き、ゆっくりと顔を上げる。


「……。」


 目が合う。


 一瞬だけ。


 時間が止まったようだった。


 その人物は、小さく息を吐く。


「……帰ってきたか。」


 その一言だけを残し、静かに踵を返した。


 その背中を見つめるロウの瞳が、わずかに揺れる。


 ──あの人は。


 5年前。


 スキルを授かる、あの日。


 最後まで姿を見せることはなかった。


 家族でありながら。


 何一つ言葉を交わすこともなく、ロウを送り出した男。


 そして今。


 王のすぐ傍らに立つ、その男の正体は――


 ロウの兄だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ