『英雄の帰還』
静寂の中。
ロウの頭の中へ、無機質な声が響いた。
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【骸の主の討伐を確認】
【Lv8916】
【レベルが上昇しました】
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【固有スキル】
【『骸』】
【獲得しました】
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「……。」
ロウは表示を見つめる。
「二しか上がらないんだ。」
「思ったより少ないな。」
「…………。」
ザルヒの頬がぴくりと引きつった。
「おい。」
「今……何て言った?」
「え?」
「レベルが二しか上がらないって。」
「…………。」
護衛たちも固まる。
「お前……。」
「それ。」
「骸の主だぞ?」
「王国が何百年も討伐できなかった化け物だ!!」
「それで二しか上がらないだと!?」
ロウは首を傾げる。
「いや。」
「本当に二しか……。」
「もういい!!」
ザルヒが頭を抱えて叫んだ。
「頼むからその話は終わりにしてくれ!!」
「価値観がおかしくなる!!」
護衛たちも何度も頷く。
「その通りです……。」
「聞けば聞くほど頭がおかしくなりそうです……。」
ロウだけが困ったように笑った。
「そう?」
「普通だと思うんだけど。」
「普通じゃない!!!!」
全員の叫びが湿原へ響いた。
◇◇◇
数時間後。
一行は王都アストラ・エクリプスへ到着した。
巨大な城壁。
普段と変わらぬ賑わい。
市場では商人たちの威勢の良い声が飛び交っている。
だが。
ザルヒは門を潜るなり叫んだ。
「道を開けろ!!」
「緊急報告だ!!」
公爵家の紋章を見た兵士たちの表情が変わる。
「ザルヒ様!?」
「何があったのですか!?」
「陛下へ。」
「至急お取次ぎを。」
その迫力に兵士たちは顔色を変えた。
「はっ!!」
数分後。
謁見の間。
王をはじめ、重臣たちが並ぶ。
王が静かに口を開いた。
「ザルヒ。」
「そこまで急ぐとは。」
「何があった。」
ザルヒは跪く。
そして。
一言だけ告げた。
「ご報告します。」
「骸の主は――」
一拍置く。
「討伐されました。」
…………。
謁見の間から。
音が消えた。
「…………は?」
王の口から漏れたのは、それだけだった。
重臣たちも理解できない。
「今……。」
「何と申した?」
「骸の主です。」
「消滅しました。」
その瞬間だった。
「ば、馬鹿な!!」
「あり得ん!!」
「数百年討伐できなかった魔獣だぞ!?」
「誰が倒した!!」
王の問いに。
ザルヒはゆっくりとロウへ視線を向けた。
「彼です。」
謁見の間。
全員の視線が、一人の青年へ集まる。
王も目を細めた。
「……名は。」
ロウは一歩前へ出る。
「ロウです。」
なに…?!?!
謁見の間が騒然とする中。
一人だけ。
その様子を黙って見つめる人物がいた。
王の玉座から少し離れた場所。
重臣たちのさらに後方。
腕を組み、静かにロウを見つめている。
王族たちが、その人物へ視線を向ける。
驚き。
戸惑い。
そして、どこか気まずそうな表情。
しかし、その人物だけは何も言わない。
ただ一人。
ロウだけを見つめていた。
ロウも、その視線に気付き、ゆっくりと顔を上げる。
「……。」
目が合う。
一瞬だけ。
時間が止まったようだった。
その人物は、小さく息を吐く。
「……帰ってきたか。」
その一言だけを残し、静かに踵を返した。
その背中を見つめるロウの瞳が、わずかに揺れる。
──あの人は。
5年前。
スキルを授かる、あの日。
最後まで姿を見せることはなかった。
家族でありながら。
何一つ言葉を交わすこともなく、ロウを送り出した男。
そして今。
王のすぐ傍らに立つ、その男の正体は――
ロウの兄だった。




