『認められない』
ザルヒは震えていた。
目の前にいるのは。
五年前。
空の大陸へ送られた落ちこぼれ。
初期スキル一つ。
公爵家の自分とは違う。
生まれた時から負け組だった少年。
「……違う。」
小さく呟く。
「違う。」
ロウは首を傾げた。
「ザルヒ?」
「そんなわけがねぇ。」
ザルヒはロウを睨みつける。
「俺は公爵家の息子だ。」
「初期スキルは三つ。」
「選ばれた側なんだ。」
「お前は違う。」
「スキル一つ。」
「空送りの落ちこぼれ。」
「俺より強い?」
「そんなこと……。」
「あるわけねぇだろぉぉぉぉ!!!!」
ザルヒが地面を蹴った。
護衛が慌てる。
「ザルヒ様!?」
「俺のもう一つのスキル!」
「《毒撃》!!」
拳へ紫色の毒が纏う。
一瞬でロウの目前まで踏み込む。
ドゴッ!!
拳がロウの腹へ突き刺さる。
ロウは避けない。
「……。」
毒だけが身体へ流れ込む。
「あれ?」
ロウが首を傾げる。
「なんか……。」
「少し元気になった?」
「…………。」
ザルヒの目が見開く。
「は?」
「はぁぁぁぁ!?」
「何なんだよ、お前!!」
ザルヒは叫びながら両手を広げた。
「もう一つのスキル!」
「《火の加護》!!」
炎が渦を巻く。
「《ファイヤトルネード》!!」
巨大な火炎旋風がロウを飲み込んだ。
ゴォォォォォォッ!!!!
土煙が舞う。
炎が消える。
ロウはその場に立っていた。
服の裾が少し揺れているだけ。
「……。」
ロウは自分の肩についた灰を、軽く払う。
パンッ。
それだけだった。
ザルヒは息を呑む。
「かわ……。」
「避けもしなかった……。」
ロウは困ったように笑う。
「ザルヒ。」
「久しぶりに会えたんだから。」
「喧嘩はやめようよ。」
その穏やかな一言が。
ザルヒの胸へ、何よりも深く突き刺さった。




