『地上への道』
洞窟を出ると、三人は同時に空を見上げた。
雲を突き抜けるほど巨大な一本の光の柱。
天と地を繋ぐように、静かに輝いている。
「……あれか。」
ロウが小さく呟く。
ジェフも腕を組みながら頷いた。
「たぶんな。」
ランも光の柱を見つめる。
「行ってみるしかないねぇ。」
三人はゆっくりと歩き始めた。
今までとは違う。
この道の先には、帰る場所があるかもしれない。
しばらく沈黙が続いたあと、ロウが口を開く。
「ジェフさん。」
「ん?」
「帰るんですか?」
ジェフは迷うことなく答えた。
「帰る。」
「理由、聞いてもいいですか?」
ジェフは豪快に笑う。
「がははは!」
「決まってんだろ。」
「鍛冶だ。」
「鍛冶?」
「ああ。」
肩へ担いだ戦斧を軽く叩く。
「空の大陸へ送られてから、もう十三年だ。」
「十三年も地上の鍛冶に触れてねぇ。」
「俺は《アダマント・ドワーフ》だ。」
「鍛冶師として、自分の腕がどこまで通用するのか。」
「地上で確かめてぇ。」
ロウは思わず笑った。
「ジェフさんらしいですね。」
「だろ?」
「がははは!」
今度はロウがランを見る。
「ランさんは?」
ランは少しだけ空を見上げた。
いつもの笑顔は少しだけ寂しそうだった。
「私はねぇ。」
「エルフの里へ行ってみようかなって。」
「故郷ですか?」
「うん。」
ランは小さく頷く。
「変わってるかなぁ。」
「みんな元気かなぁ。」
少しだけ間を置く。
「……まあ。」
「望みなんて、少しもないけど。」
ロウが首を傾げる。
「どうしてです?」
ランは苦笑した。
「幼馴染がいたの。」
「でもね。」
「その子も、一緒に空の大陸へ送られちゃったんだもぉん。」
小さく笑う。
「キャハ。」
「いるわけないよねぇ。」
「だから。」
「ちょっと見てみたいだけ。」
その笑顔が、どこか切なかった。
ロウは何も言えなかった。
そして。
二人の視線がロウへ向く。
「ロウ。」
ジェフが尋ねる。
「お前は?」
ロウは前を向いたまま答えた。
「僕は……。」
一度、言葉を止める。
「父さんと。」
「母さん。」
「それと。」
自然と笑みがこぼれた。
「あいつら三人。」
「友達です。」
「元気にしてるかな。」
「僕のこと。」
「もう死んだと思ってるんでしょうね。」
五年間。
会えなかった家族。
そして、大切な友達。
その姿を思い浮かべるだけで、胸が熱くなる。
ジェフは優しく笑った。
「会いに行け。」
「ああ。」
ランも微笑む。
「きっと驚くよぉ。」
「キャハ。」
ロウは力強く頷いた。
「はい。」
三人は歩き続ける。
やがて。
光の柱は目の前まで迫っていた。
近くで見るそれは、想像を遥かに超える大きさだった。
静かに。
ただ静かに、空へ向かって伸び続けている。
三人は足を止めた。
その瞬間。
頭の中へ、無機質な声が響く。
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【地上への往来権限】
【確認】
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【転移可能】
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三人は顔を見合わせる。
ロウは拳を握った。
ジェフは不敵に笑う。
ランも小さく微笑む。
そして。
三人は同時に、一歩を踏み出した。
――地上へ。




