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空の大陸の落ちこぼれ  作者: 滝本りお


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『覚醒したカオス』

紫色の瞳は、しばらく三人の亡骸を見下ろえていた。


 感情はない。


 怒りも。


 喜びも。


 何も映っていない。


 やがて。


 グドウ・テンマは、ゆっくりと空を見上げた。


 シュン――。


 その小さな身体が、一瞬で空高く消える。


 残されたのは、静寂だけだった。


 洞窟には、三つの亡骸だけが横たわっている。


 その時だった。


 ロウの頭の中へ、無機質な声が響いた。


 ────────────────


 【超格上への敗北を確認】


 ────────────────


 【スキル『成長』が大発動しました】


 ────────────────


 【Lv8914】


 ────────────────


 【覚醒した混沌が発動しました】


 ────────────────


 次の瞬間。


 洞窟全体が、漆黒の闇へ包まれた。


 光が消える。


 音も消える。


 何も見えない。


 何も聞こえない。


 ただ、闇だけが広がっていく。


 そして。


 真っ二つになったロウの身体が、ゆっくりと闇へ溶け始めた。


 ジェフも。


 ランも。


 三人の身体は黒い霧となり、互いに引き寄せられていく。


 失われた血肉が再生する。


 砕けた骨が繋がる。


 裂けた皮膚が閉じる。


 鼓動が戻る。


 そして。


 ドクン。


 ロウの心臓が動き出した。


「…………。」


 ゆっくりと瞼が開く。


「……生きてる。」


 身体を見下ろす。


 傷一つない。


 真っ二つだったはずの身体は、完全に元へ戻っていた。


「何が……起きたんだ。」


 少し離れた場所では。


 ジェフも身体を起こしていた。


「傷が……ねぇ。」


 ランも呆然と両手を見る。


「助かった……?」


 三人が状況を理解できずにいると。


 再び。


 ジェフとランの頭の中へ、無機質な声が響く。


 ────────────────


 【成長スキル保持者の覚醒混沌を確認】


 ────────────────


 【恩恵対象となりました】


 ────────────────


 【レベルが上昇しました】


 ────────────────


「……は?」


 ジェフが固まる。


 ランも目を見開いた。


「え……?」


 二人は反射的に自分のレベルを確認する。


「上がってる……。」


 ロウは訳も分からず二人を見る。


「僕の……せい?」


 ジェフは首を振る。


「知らん。」


 ランも苦笑する。


「こんなの。」


「私も初めて。」


 三人が顔を見合わせた。


 その瞬間だった。


 洞窟全体へ。


 三人全員の頭の中へ。


 今までで最も重く、最も機械的な声が響く。


 ────────────────


 【一定レベルへ到達】


 ────────────────


 【条件達成】


 ────────────────


 【『地上への往来』】


 【権限を解放しました】


 ────────────────


 洞窟から音が消えた。


「…………。」


 ロウの口がゆっくり開く。


「……は?」


 ジェフも言葉を失う。


「おい……。」


 ランも紫色の瞳を揺らした。


「地上……?」


 三人は顔を見合わせる。


 誰一人。


 その意味を理解できなかった。

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