表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空の大陸の落ちこぼれ  作者: 滝本りお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/57

『ジェフの隠れ家』

炎の森を、三人はゆっくりと歩いていた。


 先頭を歩くのはジェフ。


 その後ろをロウとランが並ぶ。


 百を超えるゾーマコングが暴れたとは思えないほど、森は静まり返っていた。


 しばらく沈黙が続いたあと、ロウがぽつりと口を開く。


「ジェフさん。」


「ん?」


「この大陸って……。」


「街とか村はないんですか?」


 ジェフは前を向いたまま答える。


「ねぇな。」


「一つもですか?」


「ああ。」


「作れねぇ。」


 ロウは首を傾げた。


「どうしてです?」


 ジェフは歩きながら近くの枯れ木を顎で示す。


「群れりゃ目立つ。」


「目立てば魔獣が集まる。」


「それだけだ。」


 ランも静かに続けた。


「それにね。」


「子どもが育たないの。」


「え……。」


「泣き声だけで魔獣が集まる。」


「食べ物も。」


「水も。」


「何人分も集め続けるのは難しい。」


「だから。」


「みんな一人。」


 ロウは言葉を失った。


 自分が五年間、一人で生きてきた理由が、少しだけ分かった気がした。


 ジェフは少しだけ遠くを見つめる。


「昔は群れてた奴らもいた。」


「でもな。」


「俺の目の前で全員死んだ。」


「……。」


「目立ったからだ。」


 重い沈黙が流れる。


 風だけが赤い葉を揺らした。


 ロウは静かに問い掛ける。


「じゃあ……。」


「この空の大陸には、僕たちしかいないんでしょうか。」


 ジェフは首を横へ振る。


「知らねぇ。」


「誰もこの大陸の全貌なんざ知らねぇからな。」


「どれだけ広いのか。」


「何人生き残ってるのか。」


「俺たちしかいねぇのか。」


「何百人もいるのか。」


「全部、憶測だ。」


 ランも頷いた。


「もしかしたら。」


「私たちだけかもしれない。」


「反対に。」


「まだ会ってない人が、どこかで生きてるのかもしれない。」


「誰も答えは知らないの。」


 ロウは空を見上げた。


 五年間歩き続けても、この世界の広さはまるで見えてこなかった。


「……広いんですね。」


「広い。」


 ジェフは短く答えた。


「広すぎる。」


「だから。」


「生き残るには運も必要だ。」


「でも。」


 ジェフはロウを横目で見る。


「運だけで五年は生きられねぇ。」


 ロウは少し照れくさそうに笑った。


「そう言ってもらえると……。」


「嬉しいです。」


「がはは!」


「照れるな!」


「まだまだガキだ!」


 ランがくすっと笑う。


「十五歳なら。」


「まだ子どもだもんね。」


「ランさんは何歳なんですか?」


 ロウが何気なく尋ねる。


 ランは少し考えてから笑った。


「秘密。」


「えぇ!?」


「女の子に年齢を聞いちゃだめ。」


「キャハッ♪」


「す、すみません!」


 ジェフが腹を抱えて笑う。


「がははは!!」


「怒られてやんの!」


「笑わないでくださいよ!」


 三人の笑い声が炎の森へ響いた。


 その空気は、ほんの少しだけ柔らかくなっていた。


 しばらく歩き続けると。


 ジェフが足を止める。


「着いた。」


 ロウは前を見る。


 そこには大きな岩壁しかなかった。


「……え?」


「行き止まりですよ?」


 ジェフは不敵に笑う。


「よく見とけ。」


 そう言うと、岩壁の一部へ手を掛けた。


 ゴゴゴゴゴ……


 鈍い音を立てながら岩が横へ動く。


 その奥には、人一人が通れるほどの細い通路が現れた。


「うわ……。」


 ロウは思わず息を呑む。


「隠し通路……。」


 ジェフは振り返り、にやりと笑う。


「俺の一時的な隠れ家だ。」


「入れ。」


 ロウは期待と好奇心を胸に抱きながら、その暗い通路へ一歩足を踏み入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ