『毒』
……暗い。
何も見えない。
(……死んだ。)
(ここが、天国?)
ロウはぼんやりと目を開けた。
「……あれ。」
身体が動かない。
胸が痛い。
息を吸うたびに全身が軋む。
「……生きてる?」
右手を動かす。
土。
左手も土。
「……土の中?」
ようやく理解した。
ゴンゾルドタートルに殴り飛ばされ、そのまま地中へ埋められたのだ。
「まずい……。」
息が苦しい。
酸素が少ない。
「出なきゃ……。」
ロウは震える腕で土を掻き始めた。
一掴み。
また一掴み。
何度も。
何度も。
「はぁ……。」
「はぁ……。」
視界の先に、小さな光が見える。
「出口だ……!」
最後の力を振り絞る。
ドサッ!!
ロウは地上へ転がり出た。
「はぁっ!!」
新鮮な空気を肺いっぱいに吸い込む。
「生きてる……。」
身体中から血が流れていた。
腕も。
足も。
胸も。
全部痛い。
「水……。」
「何か……。」
視線を動かす。
「あ。」
少し離れた場所。
枯れ草で編んだリュックが転がっていた。
「よかった……。」
這う。
一メートル。
また一メートル。
指先だけで進む。
ようやくリュックへ辿り着いた。
革袋を開ける。
水を飲む。
「……生き返る。」
少しだけ呼吸が楽になる。
続いて。
紫色の果実を取り出す。
「これしか……ない。」
震える手で口へ運ぶ。
ガブリ。
噛んだ瞬間。
「っ!!」
舌が痺れる。
喉が焼ける。
胃が締め付けられる。
「しまっ……。」
「これ……。」
「昨日より……強い……。」
全身へ毒が回る。
「無理……。」
「死ぬ……。」
ロウは地面へ倒れた。
その時だった。
頭の奥で、無機質な声が響く。
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【成長スキル発動】
【毒を回復因子として認識しました】
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「……え?」
身体が光る。
温かい。
さっきまで流れていた血が止まる。
傷がゆっくり塞がっていく。
「な、何これ……。」
「毒なのに……。」
「治ってる?」
胸へ手を当てる。
鼓動が戻っている。
呼吸も楽だ。
「毒で……回復?」
理解が追いつかない。
その時だった。
ガサガサガサッ!!
草むらが揺れる。
「え?」
振り向く。
闇の中で、小さな光が十個。
「……目?」
違う。
近付いてくる。
細長い身体。
六本の脚。
蛇のように長く、それでいて蜘蛛のように地面を這う異形の魔獣。
「な、何あれ……。」
一匹。
二匹。
三匹。
十匹。
「うそでしょ……。」
ロウは乾いた笑みを浮かべた。
「あぁ……。」
「そういう光だったのか……。」
「いやいや。」
「そんなことより。」
「なんで今なの!?」
「せっかく回復してきたのにぃ!!」
次の瞬間。
十匹が一斉に飛び掛かった。
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
ガブッ!!
肩。
ガブッ!!
腕。
ガブッ!!
首。
脚。
背中。
腹。
全身へ牙が突き刺さる。
「ぎゃああああぁぁぁぁ!!」
大量の血が飛び散る。
魔獣たちは噛み終えると、何事もなかったように湖の中へ消えていった。
「はぁ……。」
「もう……。」
「好きにして……。」
ロウは空を見上げた。
「…………。」
その時だった。
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【毒を生命力へ変換】
【身体を修復します】
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身体が再び淡く輝く。
傷口が閉じる。
折れた骨が元へ戻る。
血が身体中を巡っていくのが分かる。
「え。」
「また治ってる……。」
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【ゴンゾルドタートルとの戦闘失敗】
【スネークマリアとの戦闘失敗】
【成長スキル発動】
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【Lv428】
↓
【Lv1054】
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「…………。」
ロウは表示を見つめる。
「は?」
「また?」
「失敗したのに?」
「レベル……。」
「千を超えた?」
空の大陸へ来てから。
ロウは初めて思った。
「もしかして……。」
「僕のスキルって。」
「本当に……。」
「ハズレじゃ、ないのか……?」




