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香寧の誓い

「よかった。もう駄目かと思いました……」


 暗闇の中に、凛とした鈴のような声が響く。それは深淵へ沈みかけていた佐藤の意識へ差し込む、一筋の光のようだった。頭に重いものがのしかかっているような感覚がある。その苦痛から逃れようと、佐藤はゆっくり目を開けた。


 ……眩しい。


 焦点の定まらない視界の向こうで、誰かがこちらを覗き込んでいる。何度か瞬きを繰り返し、鈍痛に耐えながら視線を凝らすと、ようやくその姿が見えてきた。


香寧こうねい、声が聞こえますか?」


 誰かが佐藤の目を真っ直ぐ見つめ、静かに語りかけてくる。こうねい?誰のことだ?

 まだ靄のかかった頭で周囲を見回す。

 そこは竹林の中だった。空へ伸びる無数の木々。その頂では太陽が燦々と輝いている。土を踏む複数の足音が聞こえ、草木の青い匂いが鼻を掠めた。───草?

 さっきまで、自分は電車に乗っていたはずだ。意識が徐々に鮮明になり、佐藤は状況を整理する。

 ここは屋外――恐らく林の中。そして自分は着物のような衣を纏い、力が入らないまま誰かに支えられて横たわっている。支えている人物へ視線を向けた瞬間、佐藤は思わず息を呑んだ。

 白い長髪。雪のように白い肌。澄み切った青い瞳。その人物もまた、佐藤と似た白い衣を身につけている。浮世離れした中性的な美貌は、まるで神仙画から抜け出してきたようだった。

 きっと先ほど呼ばれた『香寧』とは、自分のことなのだろう。しかし佐藤に改名した記憶はない。


 そして――。


 現代ではありえない服装。竹林。仙人みたいな美形。そこまで考えた瞬間、佐藤の脳内ですべてが繋がった。


 ――転生した!!!


 ドクン、と心臓が大きく脈打つ。まるでもう一度命を吹き返したみたいに。


「え、ええと……はい。聞こえます」


(うわ、声が違う! しかもめちゃくちゃ良い声だ!)


 平静を装って返事をしたものの、佐藤の内心は爆発寸前だった。


(転生!? ここどこ!? 俺誰!? 何の役!? 特殊能力持ち!? まさか主人公!?)


 逸る気持ちを必死に抑え込み、佐藤は極めて冷静な顔を作る。生前、転生ものを読み漁りながら何度も脳内シミュレーションをしていたのだ。

 ――もし転生したら、まずは落ち着くこと。その努力がまさか実践で役立つ日が来るとは。

 白衣の人物は安堵したように息を吐き、周囲へ声をかけた。


「皆、もう大丈夫ですよ。香寧こうねい師匠を支えてあげてください」


 その声と同時に、小さな手が何本も佐藤の身体を支える。ふらつきながら立ち上がり、下を向くと、そこには三人の子供がいた。


 少年。

 少女。

 そしてもう一人の少年。

 三人とも必死に踏ん張り、自分たちより遥かに大きな佐藤を懸命に支えている。


香寧こうねい、あなたは本当に良い弟子たちを持ちましたね」


 仙人。師匠。弟子。

 断片的な情報を頭の中で整理しながら、佐藤は必死に記憶を探る。どこかで見た世界観だ。だが、決定的な何かが思い出せない。


「あの……おれ、いや、私が香寧こうねい……なんですよね?」


 慣れない口調で言葉がぐちゃぐちゃになる。


「少し混乱していて……。ここはどこで、皆さんは誰で、私は一体何者なんでしょうか」


 その瞬間。全員がぽかんと口を開けた。


――――――――――


(いやいやいや、普通に考えて最後に投げ銭した作品への転生だろ!?)


 風を受けながら、佐藤は内心で盛大にツッコんだ。今、自分は剣に乗って空を飛んでいる。


(うわ、本当に飛んでる……!)


 感動も束の間、佐藤は必死に記憶を掘り返した。


初雪戦火はつゆきせんか』。

 古代中華風の世界観を舞台にした人気ファンタジー小説。そして、自分が最後に投げ銭した作品……。一体、誰に転生したんだ。

 豪奢な建物へ案内され、窓から部屋へ入る。木製の寝台、静かに香る香木、白い帳。きっとここが『香寧』の部屋なのだろう。言われるがまま腰を下ろし、佐藤は俯いて考え込む。すると横から湯呑が差し出された。


「あ、お茶? ありがとうございます」


 差し出したのは、吊り目気味の少年だった。彼は律儀に会釈すると、そのまま部屋の外へ出ていく。一口飲む。飲み慣れた茶の味だった。それだけで少しだけ現実感が戻り、佐藤はゆっくり息を吐く。


香寧こうねい、落ち着きましたか?」

「は、はい」


 白い男が佐藤の傍へ座る。近くで見ると、なおさら人間離れした美貌だった。陽光を受けた白髪も、長い睫毛も、まるで淡く光っているように見える。


「倒れる前のことは覚えていますか?」

「いえ……覚えていません」

「そうですか。では逆に、香寧こうねいが覚えていることは?」


 佐藤は慎重に口を開いた。


「ええと……確か、この世界には人間界とか、魔界とかがありますよね?」


 白い男は僅かに目を細める。


「ええ。代表的なものは人間界、仙界、邪界、魔界、妖界、鬼界の六界です」


 その瞬間、佐藤の脳内で一気に記憶が繋がった。


「あなた……もしかして白宵しらよい大師兄ですか!?」


 白宵。

 作中最強格。

 そして――。


(主人公を裏切って魔王復活を手助けした黒幕!!)


香寧こうねい……」


 白宵は嬉しそうに微笑む。


「はい。私が白宵しらよいですよ」


 柔らかな声音。穏やかな笑み。到底、黒幕には見えない。だが佐藤の脳内では、嫌な記憶が次々と蘇っていた。


 三人の弟子は、主人公に立ちはだかる未来の「三邪王」候補。

 そして「りん香寧こうねい」。弟子たちを育てた張本人。最終的に八十六の肉片へ解体される、悲惨な悪役師匠。


「……詰んだ!!!!」


香寧こうねい!?」


――――――――――


 何かを思い出しては叫び、そのまま気絶する。そんなことを何度も繰り返した結果、白宵しらよいと弟子たちは気を遣って部屋の外へ出て行った。静まり返った室内で、佐藤は筆を走らせる。上等な和紙。雑に擦った墨。そこへ思考を整理するように、知っている情報を書き殴っていく。


「俺がりん香寧こうねいになったのは確定……」


 ぶつぶつ呟きながら、佐藤は震える手で文字を書く。


「悪役転生。しかもやり直し系の可能性が高い。弟子三人はまだ幼い。つまり、まだ三邪王ではないので、俺の破滅エンドの未来は確定してない……はず」


 香寧こうねいは作中でも謎の多い人物だった。主人公と敵対する三人の王――魔王、鬼王、妖王。その育ての親。だが本人は既に死亡しており、作中で登場した時には『八十六の肉片』として処理された後だった。


「いや、待て。普通に嫌すぎるだろ、その死に方……」


 思わず筆が止まる。佐藤は深く息を吐き、再び考えを整理した。


「とにかく、弟子たちを未来の邪王に育てなければいい。そうすれば死亡フラグは回避できる……多分」


 だが問題がある。香寧こうねい本人について、佐藤はほとんど知らないのだ。性格や口調、能力、人間関係。何一つ分からない。


「転生したら案内役がいるもんじゃないのかよ……」


 佐藤はハっとして天井を見上げる。そうだ、転生お決まりの案内役!!


「おーい、神様! ナビゲーター! システム! 誰でもいいから説明して!」


 当然、返事はない。


「能力一覧とか……ステータス画面とか開いたり……」


 静寂。


「うそだ……」


 佐藤はがっくり肩を落とした。そして癖のようにポケットへ手を突っ込み――そこで絶望する。スマホがない。当然だ。ここは異世界なのだから。


「……終わった」


 呆然と呟き、部屋を見回す。知らない香り。見慣れない家具。紙障子の向こうで揺れる木の影。

 ここには佐藤を知る人間が誰もいない。これから先、自分は『林香寧』として生きなければならないのだ。

 太陽が雲に隠れ、室内が少し薄暗くなる。その瞬間。佐藤は唐突に、自分が崖っぷちへ立たされているような感覚に襲われた。一歩踏み外せば終わる。選択を間違えれば、原作通り破滅する。

 前世でも孤独だったが今はそれ以上だ。この世界で、佐藤は本当に一人きりだった。


「逃げたい……」


 思わず本音が漏れる。


「せっかく転生したんだから、才能を使って楽しく生きたい……。師匠とか責任とか、正直重い……俺が務まるわけがない……」


 佐藤はぶつぶつ呟いて、窓を見る。

 

 ……逃げてしまおう! そう思い、窓へ手を伸ばした瞬間。




「師匠、泣いてるんですか?」




「!」


 突然声がして、佐藤は飛び上がった。振り返ると、少し開いた扉の隙間から金色の瞳がこちらを覗いている。太陽が隠れた薄暗い部屋の中、その瞳だけが小さな満月みたいに輝いて見えた。


「……泣いてないよ」

「でも涙の匂いがします」


 くんくん、と鼻を鳴らす音がして、その直後に女の子の声がした。


「ばか! 師匠が泣いてないって言ってるでしょ!」

「じゃあこの匂い何?」

「知らない」


 扉の向こうでこそこそ話す声に、佐藤は思わず吹き出しそうになる。その無邪気さだけで、張り詰めていた気持ちが少し軽くなった。


「入っておいで」


「えっ」

「師匠の部屋に?」

「入る!」


 佐藤の呼びかけに三者三様の反応があり、すぐさまバン!と大きな音がして扉が開かれる。その瞬間、息が詰まりそうな部屋に複数の新風が入り込み、佐藤は思わず目を見開いた。

 金の瞳の少年。少女。吊り目の少年。三人が揃って部屋へ入ってくる。先頭の金目の少年だけは妙に堂々としていた。


「師匠の部屋、いい匂いするから好き!」

「ちゃんと挨拶しなさい! お邪魔します!」

「……失礼します」


 性格が全然違う。佐藤は少し面食らいながらも笑ってしまう。


「師匠、何書いてるんですか?」

「師匠、本当に泣いてないですか?」

「お茶、苦くありませんでしたか」


 三方向から同時に話しかけられ、佐藤は慌てて順番に返事をした。


「これは記憶の整理。恥ずかしいから読まないでね」

 金目の少年は普通に覗き込んでいた。聞いていない。


「泣いてないよ。心配してくれてありがとう」

 少女が一瞬、驚いたように目を見開く。


「お茶、美味しかったよ」

 吊り目の少年がほっとしたように小さく頷いた。


 その姿を見て、佐藤はふと考える。本当に、この子たちが未来の悪役なのか?背丈はまだ小さい。話してみれば、ちゃんと優しくて、年相応の子供にしか見えない。


「師匠、これなんて書いてあるんですか?」

「だから読むなって言われてるでしょ!」

「見て。微明びめいより字が汚い」


 それを聞いた吊り目の少年が、いきなり金目の少年の頭を叩いた。


「痛っ!? 師匠! 微明びめいが殴った!」

阿野あやが馬鹿なこと言うからでしょう!」

「……野蛮人」


 言い争いが始まり二人は互いの襟を掴み合う。女の子も巻き込みそうになったので、佐藤は咄嗟に制止しようとする。


「こら! やめなさい!!」


 勢いで思わず大声を出していた。三人の動きがぴたりと止まり、みるみる顔色が青ざめていく。その反応に今度は佐藤の方が固まった。


「……ご、ごめんなさい、師匠」


 少女が震えながら跪く。


「……師匠、悪い私に罰をください」


 女の子が真っ先に跪き、震える声で謝罪を口にする。すると、先に手を出した吊り目の少年も慌ててそれに倣い、金の瞳の少年も不満そうな顔をしながらぎこちなく膝をついた。

 突然、自分よりずっと幼い子供たちに頭を下げられ、佐藤は大慌てでしゃがみ込む。


「分かったらいいんだよ。立ちなさい。それに女の子……ええと、君は関係ないだろう」


(名前聞いておけばよかったー!)


「でも、師匠に阿野あや微明びめいの世話を任されていますので……。わたしが止められなかったから……ごめんなさい……」


 その言葉に、残る二人は気まずそうに視線を逸らした。小さいと思っていた三人の体が、更に縮こまって見える。


(りん 香寧こうねいはこんな暴れん坊二人の世話をこんな小さい女の子に任せてたのか? )


「ええと、師匠ってば今混乱してて、罰って具体的に何をしていたっけ……? 」

「はい。背中を十回叩いて、宿舎の周りを十周走ることです」

「嘘だろ!? 」


 佐藤がまた大きな声を出したので、三人の小さな体が跳ねる。慌てて手で口を塞ぎ、背中に嫌な汗が流れるのを感じながら佐藤は自身の思考に飲み込まれそうになる。


(子供に世話を押し付けて、失敗したら暴力……? いくら将来悪役になるからって、今はまだ子供だろ! )


 頭が熱くなる。呼吸が浅くなる。


(これは虐待だ。立派な虐待だ……! )


 佐藤は頭を押さえ、何度も深呼吸した。胸を軽く叩く。フラッシュバックを抑えるための昔からの癖だった。佐藤は親に虐待されて育った。近所の通報で施設へ保護されなければ、今ここに生きていなかったかもしれない。あの頃の怒鳴り声も、痛みも、怯えも、今でも夢に見る。


「師匠……?」


 三人が不安げに見上げる。次の瞬間、佐藤は勢いよく床へ額を擦りつけた。


「ごめん!!」


 三人がぎょっとする。声が、少し掠れていた。


「師匠……いや、りん 香寧こうねいが全部悪かった! 今まで君たちにした酷いこと、本当に申し訳ない! 私は最低な師匠だった!」


 止まらなかった。自分はただの一般人だ。香寧こうねいのような品格も知識もない。けれど、間違っていることだけは分かる。だから、黙っていられなかった。


「許してくれなんて言わない! でも、やり直させてほしい!」

「これからの私を見て、判断してくれ!」


 一度、言葉が途切れる。


「……私は、生まれ変わったんだ」

「本当に、心から!」


「もう二度と理不尽に怒鳴らない! 叩かない! 傷つけない!」


佐藤は拳を握り締める。


「君たちは未来の宝だ!だから私は――」


 熱さで思考が霞む。それでもはっきりと言い切った。


「君たち三人が真っ当に生きる手助けをすることを、ここに誓う! 」


 それは悪役転生だとか、やり直しだとか、そんな物語の都合ではない。佐藤自身の本心だった。もしかしたら佐藤は子供たちに自分を重ねていたのかもしれない。謝罪もただの自己満足だ。しかし、これがきっと、自分の新しい人生の意味になると佐藤───香寧こうねいは確信した。


「師匠、泣かないで……」


 えっ俺!? と香寧こうねいが顔を上げると、子供たち三人は崩れ落ちた態勢で香寧こうねいを覗き込んでいた。その頬に流れるのは媚ではなく、純な優しさを称えた涙だった。


「おれ、いや私は泣いてない、泣いてないよ。自慢じゃないがあまり泣かないんだ。……その、泣いているのは……」


 君たちじゃないか、と言葉が出てこなかった。三人ともが蹲って嗚咽を漏らしたからだ。

 香寧こうねいは行き場のない手を何度か空で彷徨わせた後に、そっと女の子の肩に置いた。触れた瞬間に彼女は震えたが、香寧こうねいが何度か優しく撫でると体の力を抜く。他の二人も同じようにしたが、皆一向に泣き止む気配がなかった。


「ほら、床は冷たいだろう。こっちへおいで」


 香寧こうねいは子供たちを担ぎ上げて床へ順に寝かせる。三人とも驚くほど軽く、とても熱かった。どれだけ緊張していたのだろう。ごめんなさい、と呟く小さな頭を撫で、香寧こうねいは囁く。


「分かった、分かったよ。もう謝らなくていい。大丈夫、何も怖くない。泣き止んだら皆でお菓子を食べようね……」


 お菓子と聞いて金の瞳の少年がすぐに顔を上げた。涙と鼻水でぐちゃぐちゃの真っ赤な顔が可愛くて、香寧こうねいは思わず笑う。


「お腹空いた?」

「すいた。……師匠、もう怒ってない? 」


 袖で顔を拭われながら、少年は恐る恐る尋ねた。その怯え混じりの声に、香寧こうねいの胸が痛む。


「怒ってないよ。罰も無しだ」

「ほんとう? 」

「本当」


 少年はへへっと笑った。残る二人も、つられるように小さく笑う。

 前世の香寧こうねいにも覚えがあった。どれだけ酷い扱いを受けても、子供は大人に愛されようとしてしまう。嫌われないように、怒らせないように。それがどれほど理不尽でも。

 胸の奥がずきりと痛む。きっと彼らも同じなのだ。今まで築かれた溝は簡単には埋まらないだろう。それでも香寧こうねいは、この子たちに誠実でありたいと思った。

 香寧こうねいは台所に行って何か食べるものがないか探そうとしたが、この建物内の台所の場所も、そもそも食料があるのかすら知らなかった。困ったなと思いながら立ち上がろうとすると、吊り目の少年が香寧こうねいの服の端を掴んで離さない。香寧こうねいは吊り目の少年を右腕に、少女は左腕で抱え、金の瞳の少年を背負った。

 こんな小さな体で、先ほどは必死に自分を支えようとしてくれていたのだ。本当にとても健気だ。


(……本当に、この子たちが未来の悪役なのか?)


 むしろ、傷ついた普通の子供にしか見えない。育て方を間違えただけではないのか。香寧こうねいは確信が持てないまま歩き、部屋を出て階段を降りたところで白宵しらよいに出くわす。


「三人とも、もう大きいのに何を香寧こうねい師匠に甘えているんだ」


 穏やかな声だった。だが弟子たちはびくりと身を強張らせ、慌てて降りようとする。香寧こうねいは反射的に三人を抱き締めた。


「いいんです」


 白宵しらよいを真っ直ぐ見返す。


「……白宵しらよい師兄。この子たちは、まだ小さいじゃないですか」


 白宵しらよいは長い睫毛を伏せ、小さく息を吐いた。


香寧こうねい、君は何も分かっていない」


 その一言で、場の空気がわずかに冷えた気がした。


(分かってない? 弟子たちが未来の悪役になるってことか? まさかもう、白宵しらよい香寧こうねいは結託していて、弟子を邪王として育てようとしている最中なのか? )


 だが香寧こうねいは怯まなかった。


白宵しらよい師兄」


 抱えた三人を守るようにしながら、はっきりと言う。


「今ここで誓います。私は、この子たちが真っ当に生きられるよう支えます。天に、子供たちに、そして白宵しらよい師兄に誓います」


 その瞬間。白宵しらよいがゆっくり目を開けた。青い瞳だ。深海みたいに静かで、美しく――底に何を隠しているのか、まるで読めなかった。

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