第9話 戦争
「……」
「……」
「……あのーー」
リクが口を開ける。
「どの面下げて来たんだ?」
「俺が行きたいって言ったわけじゃねぇよ」
「まぁまぁ二人とも落ち着いてください。久しぶりにあった仲じゃないですか」
リクが俺とロキの間に入って手で制す。
「なんだ、二人とも知り合いなのか?」
アリサが驚いた声で言う。
DOGSの基地、と言ってもロキの基地の一つに俺らはいる。
「あぁ昔な」
ロキが答える。
「申し遅れたが私は…」
「あぁ紹介不要だ。俺はなんでも知っている」
「ハートヒート星の第四王女とその護衛だろ」
「おぉ…」
アリサとリーシュは驚いた表情でロキを見る。
「あなたは……」
「俺はロキ・ハルヴァード」
「僕のボスです!」
リクが答える。
「これ買って来たぞ!」
本当にお菓子を持っていくのかと思ったが、アリサは郷に入っては郷に従えみたいなことを言ってふざけた名前のお菓子を買っていた。
「おぉ…これは俺が大好きなかまぼこぷりんアラモードじゃねぇか」
「お前やるなぁ」
「えっへん」
アリサは得意げな顔をしている。
「それで要件は、この指名手配の件か?」
「はい…大変なことになりました」
「そこのバカがやらかしたんだろ?」
「いやロンドさんは悪くないですよ」
リクがフォローしてくれるのはありがたいが、明らかに俺の失態だ。もう少し早く気づいていればここまで悪化することはなかった。
「あぁ、おれの失態だ」
「……ロンドさん」
「それで俺に助けてほしいって?」
「あぁ情報が欲しい」
「頼む」
「僕からもお願いします。ロキさん」
「……」
ロキは俺、アリサ、リーシュを順番に見て何か考えている。
「今わかっていることを話す。とりあえずついてこい」
そう言うとロキは部屋の奥の何もない空間を操作して、突然現れた扉を開ける。
* * *
「ジョウ様、報告です」
「見つかりましたか?」
「申し訳ございません。あたりを探しましたが……」
「まぁいいでしょう。予定通りロンド・グレンジーを王子殺しの犯人にできたのですから」
あのローブの男、怪しいと思い前線から外しましたが予想以上に曲者でした。
それに一緒にいた少女……
「とりあえず次のステップに移しますよ」
「はっ」
* * *
「見ての通り、今お前は軍の中で最重要危険人物かつ極悪人として認定されている。なんせよそ様の星の王子を殺したんだからな」
巨大なディスプレイに映し出された情報を見ながらロキは説明する。
「殺してない」
「そんなもん知っている。だが真実は必要ない。この事実だけで国のバランスが大きく崩れようとしている」
「……こんな機密情報どうやって」
リーシュがぼそっと言う。
「こいつはDOGSというハッカー集団の創設者だ。この程度の作業は難しくない」
「簡単にバラすなよ。まぁ知られたところで何の問題も起きないけどな。それに今はDOGSとは関係がない」
「というか最近目立ちすぎだな。お前。こんだけ目立っていたらそりゃいいように使われるぞ」
「俺は何も変わっていない」
「……いや、なるほど移星派の力が強まっているのか。そりゃお前みたいな奴、移星派からしたら美味しい存在だもんな」
「……」
「移星派って何ですか?」
リーシュが聞く
「あぁ、他の星のやつらを積極的に地球に受け入れて行こうとしている奴らの集まりだ。最近、そいつらの動きが活発になってきてそこのバカが、今回の事件に利用されたってわけ」
「ハラルド星人はその動きを察知してさらに地球での影響力を拡大するために事件を起こしたんですね」
「お前のことだ、移星派の奴らの動きは気づいてたんじゃねぇか?」
ロキが振り向きながら俺に問う。
「……動きがどうとか知らねぇが、どんな奴が俺に喧嘩売って来てるのかツラを拝みたかったのさ」
「ルート星人の動きはどうなっているかわかるか?」
「あぁ…ちょっと待ってろ」
「……!?……なるほどね」
「これも何かの運命かもな」
ロキは一口コーヒーを飲み、そして何かを覚悟した顔で答える。
「お前……ハートヒート星に行け」
* * *
ロッジグレイブ城内
ドンと勢いよくドアを開ける音。
「……何ですか急に物騒な格好をして」
リリアは窓目の椅子に座り、紅茶を一口飲む。
武装した兵士たちは部屋の周りを見渡す。
「我々がくることがわかっていたのか?」
「見てください。今夜の月は特別綺麗なんですよ」
「月?」
「この自然豊かなハートヒート星から見える月は他の星から見る月と比べて、特別綺麗だと聞いたことがあります」
「何を言ってる?」
「…ドモン隊長!」
部下が前のめりになるところをドモンは制す。
リリアは話を続ける。
「地球からみた月もすごい綺麗でした。でも……あの時は横におられた方が素敵だったから特別そう感じたのかもしれませんね」
もう一口、紅茶を飲む。そして立ち上がる。
「『我々がくることがわかっていたのか』という質問でしたね」
「はい、当然わかっていましたよ。私を誰だと思っているのですか」
「私はハートヒート星、第一王女リリア・ドランヴォーグ」
「邪悪な力に、決して屈しない」
* * *
「私たちの星にくるのか?」
アリサは嬉しそうな顔をして言う。
「……アリサ様」
リーシュは少し複雑そうだ。
「どうして?という顔をしているな」
「お前がどこにいようが見つかるのは時間の問題だ」
「……つまり、出て行けと」
「あぁそうだ。現時点で地球防衛軍、ハラルド星人、ルート星人から追われている奴がこの地球で生活するのは不可能だ」
「そこでハートヒート星に行って、身を隠せ」
「別に初めてじゃないだろ?ハートヒート星」
「ロンドそうなのか?」
アリサは嬉しそうな顔をして言う。
「昔、一度だけ行ったことがある」
「なんだ、早く言ってくれよな、案内するぞ!」
「……」
「リーシュどうかしたのか?」
何か言いたげなリーシュに声をかける。
「それが…」
「そこのお嬢ちゃんはわかってるんだろ。今国がどんな状況か」
そりゃそうか。もともと自分の国から逃げて地球に来たんだ。簡単に戻れない事情があるんだろう。
「私もわかっているぞ!」
「えっへん」
アリサが自信満々に言う。
「戦争だ!」
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