第10話 特別任務
『戦争』という言葉を聞くとさまざまな光景が目に浮かびどうしても体がこわばってしまう。
今まで様々な仕事を受けてきたが、どの仕事よりも心の奥底が暗く、沈む気持ちになるのがこの『戦争』に関連する仕事だ。
「……アリサ様」
リーシュは心配そうな顔でアリサのことを見ている。彼女もきっと思うところがあるのだろうか。
「私が住んでいる星では今まさに争いが起きようとしている。所謂、後継争いというもので、とても面倒なことだ」
「お前には関係ないのか?」
俺はアリサに聞く。
「まったく関係ないわけではないが、重要ではない」
重要ではない…か。アリサらしいな。
「私は第一王女リリアより逃亡するよう言われリーシュと共にここに逃げて来た。その事実だけをみると、私の身の安全を思ってのことだと思うが。私はそう考えていない」
「他に理由が?」
こくっとアリサは頷く。
「地球への援軍要請だ」
過去に起きたある事件をきっかけに、地球とハートヒート星には縁がある。
「おそらく私がその役目を担っていると考えている」
いつもアホなことばかり言っているアリサがまっすぐに、そしてどこか遠くを見ているように感じる。
「私は争いごとが好きではない。だが第一王女、いや私の姉であるリリアが困っている以上私だけがここで呑気に過ごしていいわけがない」
ここにいる人間全てが彼女の言葉に耳を傾けている。人を惹きつける力とはこういうことなのかと思う。
「リーシュ、なぜ泣く?」
アリサは涙を流しているリーシュに声をかける。
「ハートヒート星、第四王女アリサ・ドランヴォーグからロンド・グレンジーに特別任務を依頼したい」
「報酬は弾めよ」
答えはあの日から決まっていた。
* * *
「これが見えるか?」
ロキからデータを見せられる。
「……これは密偵の報告か?」
「あぁそうだ」
「ここには先日からハートヒート星にアルガンド星人の戦闘部隊が配属されたと記載がされている」
「そしてこれは全て軍内部にいるルート星人の協力者がルート星人へ報告した機密情報であるということだ」
アリサとリーシュ、二人ともそれぞれ覚悟した顔をしている。
「以前から第二王女のキースはリリアが後継者だということに反対していた」
アリサは真剣な顔で話す。
「……反対したからと言ってどうにかなるわけじゃないだろ?」
「あぁそうだ。そしてそれが問題だ」
「私たちの星は生まれた順番で後継が決まる。つまり、キースがリリアをどかす方法は一つしかなかった」
「……」
「ぶっちゃけ、そんなに時間があるとは思えないが」
「すぐに殺されるでは……ということだろ」
「その可能性もあるが、かなり低いと考えている」
「なんか秘策があるのか?」
アリサはニヤッと笑い答える。
「ない!!!」
その場にいるポカンと口を開ける。
「ふざけているわけではないぞ」
「リリアは凄いんだ。簡単にはやられない」
ふん!と自信満々な顔をしている。
「……きっと大丈夫だ」
「王様は健在なんだろ?」
ロキがアリサに確認する。
「あぁ、だが今は病気でほとんど政務に対し影響が出せていない」
「その実、リリアがサポートしておったのだが……」
それがリリアが狙われる理由ということか。
「でもどうやって移動するんだ?」
「僕が宇宙船を用意します」
リクが答える。
「……それと僕も一緒に行きます!」
「いいのか?」
「はい、当然です」
ニコッとリクは笑う。
「サポートはこっちで行う」
ロキが言う。
「いいのか?」
「あぁ、金になりそうだからな」
「うまく行ったらたくさん払うぞ!約束する」
「では早速準備しましょう」
* * *
地下。
リクが用意した宇宙船の準備を進める。
「……」
「……聞こえるか?」
耳からロキの声がする。
「あぁ聞こえる」
「……この通信装置を使ってこちらから情報を落とす」
「星間通信にも対応しているようにしているから安心しろ」
「リーシュ、準備できたか」
「はい、アリサ様。マキセ様より体が元気になる薬を貰いました!」
体が元気になる薬……変なものではないといいが。
「準備ができました!みなさん乗ってください」
「なんだか名残惜しいな」
「お前らそんな悠長なことを言ってられないぞ」
ロキが通信機で話す。
「ハートヒート星でクーデターだ」
俺たちは宇宙船を発進させ窓から小さくなる地球を見る。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
これにて第一章は完結です。
何でも屋として地球で暮らしていたロンドでしたが、次なる災難の舞台はついに地球の外へ。
第二章では、ハートヒート星を舞台に、アリサたちの王位継承争い、そして少しずつロンドの過去にも触れていく予定です。
何でも屋ロンドの災難は、まだまだ続きます。
続きが気になりましたら、ぜひブックマークをして第二章の更新をお待ちいただけると嬉しいです。
引き続き『何でも屋ロンドの災難録』をよろしくお願いします!




