第11話 混乱
「……えーっとこれは?」
一歩踏み出すとパキッと枝が折れた音がする。周りは木々に囲まれており、どこからか水の音がする。だが色が違う。オレンジ色の木、赤っぽい地面、そして白い葉。
「んーー不時着ですね」
リクが呑気に答える。
「……おかしいな…」
「アリサ、リーシュ、大丈夫か?」
「……痛てて、腰が少し痛いが大丈夫だ」
「アリサ様、それは前から患っている腰痛では?」
「!?」
「リーシュ!余計なことを言うな」
「……失礼しました。ロンド様、無事です」
リーシュが答える。主人がやばいやつだと部下は大変なんだな。
「アリサ、ここがどこかわかるか?」
「……ちょっと待ってろ!」
そう言い、アリサは周りを歩き、何かを観察する。
「わからん!」
「使えねぇな」
「がーん」
そう言うと泣き顔でリーシュに駆け寄る。
「アリサ様、少しお待ちください。私が調査してきます」
そう言うと、リーシュは腰にさしている棒を手に持つと一瞬でドでかいハンマーに変形させた。
そして、そのハンマーを地面に振り下ろす反動を使って、上空へと跳ね上がった。
リーシュはかなり背の高い木の上に立ち、あたりを見渡す。
「……凄いな」
「あぁリーシュは凄いんだ」
そういうアリサの顔はとても誇らしげだった。
「ロンドさん、これを見て欲しいです」
リクは俺に手に持っているタブレットを見せる。
「もともとここのイルファという城下町の裏手の森に着く予定でした。それが宇宙船の移動中に外部から邪魔が入ったようで予定地点ではない場所に着いたようです」
「俺らがハートヒート星に行くと知っている奴らからの邪魔ということだな」
「……はい」
大きい岩に腰掛け、葉巻に火をつける。
俺らの着地点をずらしたのは軍の何者かで間違い無いだろう。
状況だけ見ると邪魔をしたように思えるが、或いは……。
「宇宙船は大丈夫か?」
俺はリクに尋ねる。
「ダメですね。修理できないこともないですが手持ちの道具や材料だけだとかなり難しいです」
「どこかで調達しないと……」
困った。アリサたちを助けるために来たはずだが帰る術を失ってしまった。
ふーっと息を煙を吐く。
「ロンド様」
リーシュが上から降ってきた。
「何かわかったか」
「はい、ここはトパリンという街の近くの森です」
「トパリン?」
「トパリンは城があるイルファの南側の街だ」
アリサが答える。
「隣町と言うがイルファからは結構遠い」
「……困ったな」
宇宙船の問題もあるが、城いや国の状況がどうなっているかわからないこの状況。すぐにでも動きたいが……
「……アリサ様」
リーシュは何か言いたげな顔でアリサを見る。
「あぁリーシュ、わかっている」
「トパリンには知人がいる。まずはそいつを頼ってみよう」
「変わっているがいいやつだ」
変わっているやつから紹介される変わっているやつは少し心配だが、やむを得ない。
「移動するぞ」
葉巻の火を消し移動を開始する。
* * *
「……」
「……」
背の低い男に睨まれている。
「ロンド、コルクだ」
「それでコルク、こっちがロンド、そっちがリクだ」
「で早速だが……」
「ちょっと待て!」
コルクが叫ぶ。
「アリサ、急にきてどういうことだ」
トパリン、町外れの家。
あたりは木々に囲まれ裏手には小川が流れている。
「コルク、さっきも言っただろ。困っている助けて欲しい」
「どういうことだよ。俺は何がなんだか……」
「まぁ落ち着けよ。コルクと言ったか?」
葉巻に火をつける。
「おいお前、ここで変なものを吸うんじゃねぇよ」
コルクが俺の方に駆け寄る。
「お前ではなく、ロンド様です!コルク」
リーシュが間に入る。
「……リーシュ」
リーシュはじっとコルクを見る。なぜかコルクが顔を赤らめている。
「ちっ」
コルクは舌打ちをして近くの椅子に座る。
「コルク、それで今どうなっている?」
「どうなっているじゃないぞ、大変なことが起きている」
「三日前、突然クーデターが起こった。クーデターと言ってもキース様がリリア様の王権の私物化、他星への軍事的侵略を企てていたと言う大義名分を持って実行された」
「……」
アリサとリーシュは神妙な面持ちで聞いている。
「リリア様がそんなことするはずありません!」
「そんなことわかっている!リリア様がこの国にしてくれたいたことはほとんどの国民が理解している」
「だが、その出来事は一瞬のうちに終わった」
「アルガンド星人か?」
「はい。キース様が大量の軍を引き入れた一瞬のうちに……」
「リリア様の直属軍は外交任務からの帰還後直後の出来事だったから対抗する力もなく捕まったと聞いた」
「計画通りということか……」
少し引っかかる。全て予定通り進んだということはその対策も打てたのではないのか。
アリサの話を聞くとアリサたちを地球に送ったこと自体も計画だとしたら……
「リリアはどうなっている?」
「わからねぇ。ただ捕まったという情報が流れていた。なんでも城へ食事を配達している奴が見かけたとかで…」
「ふむ。わかった」
アリサは腕を組んで何か掴んだ顔をしている。
「皆、協力をしてほしい」
* * *
「コルク、いろいろとありがとね」
「……お前が困っているんだ。当然だ」
リーシュに感謝されたコルク、また顔が赤くなっている。
「アリサ」
「なんだ?」
「あの二人…」
「二人?あぁリーシュとコルクか。なんだ気になるのか?」
「いや、俺に対する態度と違いすぎないか」
「そりゃそうだ!コルクはリーシュに結婚を迫っているからな」
「アリサ様!」
リーシュが慌てて駆け寄る。
「耳がいいな、リーシュ。流石だ!」
アリサはうんうんとうなずいている。
「ロンド様に余計なことを言わないでください!」
「がーん。余計だったか?」
「……」
「結婚を迫られるということは恋人関係なんだろ?」
「恋人!……ちっ、違います!」
「ただの友人です」
「ロンド、女子にはいろいろあるんだよ」
俺にはよくわからない世界だ。
「準備できました!」
リクが大きめな三輪バイクのようなものにまたがってこちらに声をかける。
「潜入調査?」
「あぁ、そうだ」
「リリアはしばらく殺されない。多分」
「確証はあるのか?」
「ない!だが、リリアのことだきっとこうなることを事前にわかっていた」
これに関しては同意だ。
「まずは城の中の状況を把握する必要がある」
「奪還はそれからだ」
奪還。その言葉に引っかかる。
「そのためにはまずは城の近くに移動する必要がある」
「城下町なんだろ?近くに行ったらバレるぞ」
「ロンド!安心しろ。私の秘密拠点がある」
「アリサ様は、幼い頃からよく街にこっそりと出かけられていました。その際に秘密裏に作った拠点が街の中にいくつもあるんです」
リーシュは困った顔で言う。
「街の裏側、城から少し離れた場所の拠点に移動して潜入の準備をする」
「ここからどうやって移動するんだ?」
「おれのバイクを貸す。それを使え」
「いいのか?コルク」
「あぁ問題ない」
コルクはリーシュの方をじっと見る。
「荷物は必要最低限に、不要なものはここに置いていけ」
「ありがとう。コルクさん」
「俺らは後ろの荷台に…リク運転できるのか?」
「似たようなものは地球にもありますし、さっきコルクさんに聞きました!」
「それじゃあ出発するぞ!」
「ありがとうなコルク」
手を振るコルクを背にし、俺らはアリサの拠点へ向かう。
第二章スタートしました!
続きが気になりましたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。




