第7話 護衛
「用心棒?」
「あぁそうだ」
シゲ爺が答える。朝から依頼だと言い、いつもの如く勝手に入ってきた。
とりあえず歩けるようになって一安心だ。
「……その前にその二人はなんだ?」
「…あぁ、ひょんな事からうちで面倒を見ることになったアリサとリーシュだ」
「初めまして、シゲ爺様!私はアリサでこっちがリーシュ。以後お見知り置きを」
「こんなに可愛い子達を居候させるとは……何か嫌なことされたら家においで」
「……なんもしねぇよ」
相手は王族だぞ。そんな簡単に手を出せるかよ。
「シゲ爺様、ご安心ください。私にはリーシュがついております。リーシュはとっても強いんです!」
リーシュが深くお辞儀をする。
「そうかそうか!よろしくねアリサ、リーシュ」
「部屋はどうしてるんだ?」
「…あぁとりあえずアリサは地下の部屋を使ってもらっている。リーシュはそこのソファででいいと」
「はい!私はアリサ様の護衛です。敵が襲ってきた際、万が一に備えてここで待機しております」
「……まあ、本人がそれでいいならいいか…」
「それで用心棒の仕事を教えてくれ」
「急遽ハラルド星の要人が地球に来ることになり、その護衛をしてほしいと依頼があった」
「………断る」
「まあ最後まで話を聞け」
「あら、ハラルド星の方は苦手なの?」
アリサが俺に聞く。
「苦手じゃないが一ミリも関わりたくない」
ハラルド星人は御免だ。名前も聞きたくない。
「今回の一件は軍からの要請ではなくハラルド星の関係者から人づてに依頼があった」
「珍しいな……ハラルド星と言ったら軍事力、経済力、そして種族としての能力が突出して高いはず、それなのに他の星のやつに頼むとは…」
アリサは答える。
「ほぉ、詳しいねお嬢ちゃん」
「えっへん」
「なんで俺なんだよ」
「目的は外交だが、直近の軍の動きに対して何か不信感を抱いていると見てる」
「地球で、軍関係者以外の手練れを複数集めているようだった」
直近のシゲ爺襲撃、そしてアリサを追ってきたのも軍関係者だと考えている。
この用心棒の仕事でその調査をする機会だと言いたいわけか。
「いつ来るんだ?」
「明日だ」
「急だな……」
「その仕事、私にもお手伝いさせていただけないでしょうか」
部屋の端で聞いていたリーシュが名乗り出た。
「人数制限があるわけではないから構わないが…」
「ロンド様には大変お世話になっています。少しでも恩返ししたいという気持ちでいっぱいです」
「アリサはいいのか?」
「私は問題ない、リーシュ好きにするがよい!」
「ありがとうございます!」
「アリサ様の身に何かあった時にはすぐに飛んでいけるようにしますのでご安心ください」
* * *
「ロンド様、この仮面は……」
「お前が王族の護衛だとバレたら面倒になるだろ」
ポグラに作ってもらった仮面。
ハラルド星人と顔を合わせたくないという理由は伏せておこう。
「なんだか体が重い気が…」
「このお面の影響だ。つけると敵の検知を妨害する効果があるらしい、あと通信機能もついている」
「その代わり、つけると若干の行動制限を受けると言っていた」
「……そうなんですね!」
「それよりアリサは大丈夫なのか?」
「はい!いざとなったら私に通知が入る装置を持っていただいています」
アリサにはこの護衛の間は部屋から出るなと伝えてあるし大丈夫か……
この倉庫で待っているように言われたが……
集まったのは俺とリーシュ含め、七人か。精鋭の条件があったからそこまで人数は多くないのか。
顔を知っているのは…
部屋のど真ん中に座っている賞金稼ぎアリグロンと部屋の奥に立っているハルカ・ヤマモトか。
知らない顔が二人と……奥のローブの男は……
「来ましたね」
リーシュが入口を見て言う。
「どうもみなさん、お待たせしました」
腰のナイフから手を外す。黒のコート、人間だ。シゲ爺はこいつから依頼を受けたのだろうか。
「お集まりいただきありがとうございます。私の名前はジョウです。よろしくお願いします」
ジョウはここにいる全員に視線を送る。なぜか俺とローブ男を見る時間が長かったような……
「よし!みなさんお強そうだ。私とっても嬉しいです!」
「ただ一人を除いては……」
その瞬間、奥に座っていた一人の前にジョウは瞬間移動した。
「えっ」
横のリーシュは驚いている。無理もない。とんでもないスピードでジョウは移動した。
「私がオーダーしたのは優秀な護衛です。なぜネズミが混ざっているのですか?」
「……くっ」
「あなたのボスに伝えてください。喧嘩を売る相手を間違えるなよと」
ジョウはその男の腹にナイフを刺しながら言う。
「……ぐっ。わかった」
男は血を流しながら出ていった。あのジョウという男、相当強い。
「みなさま、お待たせして申し訳ありません。邪魔者が消えたので本題に入ります」
ジョウが話し始める。
「今回皆様にお願いすることはハラルド星、次期国王であらせられるシュヴァイツ王子の護衛です」
「といっても基本的には私たちハラルド星の護衛部隊がいるので、王子の近くで守っていただく必要はございません」
「重要な視察を行っている最中に、万が一的に襲撃されるようなことがあってはいけないので、事前に周辺の敵の位置などを逐一報告、対処いただきたい」
そのあとジョウから詳細の説明があった。視察場所、時間、護衛の配置。そして俺たちの役割分担。
リーシュは高台から遠隔の敵の探知、俺は比較的王子の近くで危険因子の排除を行うことになった。
翌日。
「リーシュ、聞こえるか」
「はい!聞こえます。ここから王子のことも……確認できました」
「ハラルド星の方はみなさん大きいですね。昔見た時よりもすごく大きく感じます」
「あぁ、ハラルド星人は常に体が進化し続けていると聞く。小さい頃に見たのであればより一層大きく感じるのかもな」
「……王子、とてもイケメンですね」
「お前、あんなのがタイプなのか」
「ちっ、違いますよ!ロンド様の方がかっこいいです」
「そりゃどうも」
「そろそろ俺もポイントに近づく」
「ん?」
「どうかされましたか、ロンド様」
……あの王子
「……いやなんでもない」
軍の基地局の視察と聞いている。表向きは最近の地球防衛軍の軍事力の視察といったところか。
王子自らが出向く視察だ、他に理由があるに違いない。
「あの方が軍の責任者ですかね」
「……きっとそうだな」
最近の軍関係者の顔は覚えていないが胸の勲章を見る限りきっとそうだろう。
「ポイントに入っていきます」
「……みなさま聞こえますか?」
ジョウから通信だ。
「今からポイントに入ります。警戒を怠らないでください」
「了解」
俺は基地の周りの観察、中に入るのはアリグロンともう一人の役目だ。
周りに怪しいやつは…いない。
「ん?ジョウは入らないのか」
「あれーおかしいですね。計画だとジョウさんも中に入る予定だったのに」
おかしい…計画を変更するようには思えなかった。
……ローブの男もいない。何かおかしい。
「ホークとかいったか、姿が見えないぞ。今どこにいる?」
おれは無線でローブの男を呼びかける。
だが、反応がない。あたりを見渡す。
「リーシュ、ローブの男見えるか?」
「んーこっちからだと見えないですね……」
しばらくして……基地からドンと大きな音。
「リーシュ見えるか!」
「……」
「リーシュ!」
リーシュから応答がない。
「くそっ何が起きてやがる」
嫌な予感が当たった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
楽しんでいただけましたら、感想や評価で応援していただけると励みになります。




