第6話 計画
「あなたは……」
「俺はロンドだ。お前のことはアリサから聞いている」
「ロンド様、ありがとうございます!アリサ様はどちらに?」
「俺の家にいる。」
「……あぁ……よかった……」
リーシュは膝から崩れ落ち、口を押さえながら涙している。
アリサの話から相当忠誠心が高いとは思っていたが、これは相当だな。
「はぁ…はぁ…ちょっと足早すぎ…」
マキセが息を弾ませながら走ってきた。
「ってあれ…ロンド?」
遠くから数人の声が近づいてくる。騒ぎを聞きつけた軍の奴らだろう。
「とりあえず、移動しよう」
「話はそこで聞く」
* * *
「リーシュ!」
「アリサ様!」
二人は泣きながら抱き合う。無理もない。自分の星から突然の脱出、見知らぬ星(地球)で突然追手に追われるんだ。
「それで…これはどういうこと?」
マキセが腕を組みながら言う。
俺からアリサに出会ってから襲撃事件までの経緯を皆に話す。
「なるほど」
「でそっちは?」
「…えっと」
「私からお話させていただきます!」
リーシュが突然名乗り出た。
「私はハートヒート星、第四王女アリサ・ドランヴォーグ護衛隊隊長のリーシュ・スカイテイナーです」
「以後お見知りおきを」
リーシュは深く頭を下げ、一礼する。敬意を表す行動は地球に近いものを感じる。
「地球に来てから体がうまく動かず、敵を惹きつけることだけ精一杯でした」
「ピンチになって倒れているところをこちらのマキセ様が助けてくださいました」
「マキせ様、ありがとうございます!」
「私は医者として当然のことをしたまでよ!」
マキセが意気揚々と話す。マキセが無償で人助けなんてことは絶対にありえないが、王女の護衛と聞いて金になるとわかったんだろう。
「そうか!マキセ、私からも礼を言うよ」
「大切な部下を助けてくれてありがとう」
アリサはニコッと笑い、頭を下げる。
「いいんですよ!アリサ様……それでお礼は…」
「マキセ!」
「ロンド、いいんだ。お前にもマキセにもお礼は必要だ」
「ただ…申し訳ないんだが、急いで出てきたから手持ちがあまりない」
「……」
マキセは悲しそうな顔をしている。まぁ俺も少し期待していた。
「だが、安心しろ。私がなんとかする」
声、高らかにアリサは宣言する。
「アリサ様、素敵…」
リーシュは羨望の眼差しでアリサを見ている。すごい忠誠心なんだな。
「まあその格好を見てすぐにお金を取ろうなんて思わない。どっかの闇医者じゃあるまいし」
マキセがギロリとこちらを見る。
「ところで、お前らはなぜ追われているんだ」
「……」
二人は黙ってこちらを見ている。
「お前のことを狙っていたのは3人、全員軍の関係者だと俺は考えている」
「いくらなんでも地球に来たその瞬間から狙われているのは何かないと説明がつかない」
「成り行きで匿った上に助けはしたが、素性がわからない輩をいつまでも置いておく分にはいかない」
アリサは真剣な眼差しでこちらを見ている。
「……それは」
「リーシュ。私から話そう」
アリサがリーシュを手で制し、ゆっくりと椅子に座る。
「二人に全て話そう」
* * *
ロッジグレイブ城内、キース邸
「逃げた…だと?」
キース・ドランヴォーグは苦虫を噛み潰したような顔で言う。
「はい…申し訳ございません。護衛隊隊長のリーシュもおらず二人で逃亡した可能性が高いです」
キース護衛隊の部下が答える。
「……くそっ、あの能天気バカ女…変に勘がするどいな……いや、待てよ……あいつがそんなことをするとは到底思えない。……リリアか?」
「リリアに動きは?」
「リリア様に動きはございません」
「バカ女がどこに行ったのかわかるか」
「つい先ほど、小型高速宇宙船が緊急発信されたことを確認しています」
「そんなものどこに隠し持っていたのか…行き先はわかるか?」
「はい!記録によると地球に行った可能性が高いと報告を受けております」
「地球だと……まあいい。念には念をと思い講じた策だ。あいつがいなくなったことをむしろ好都合だと考えよう」
キースは窓の外を見る。
「計画に変更はない。予定通り続ける」
ロッジグレイブ城内、リリア邸
「リリア様」
「ニーナ、わかっています。アリサは無事脱出できたようですね!」
「はい、リーシュとともに地球に向かわれました」
「そう」
リリアはニコッと笑い紅茶を口にする。
「リリア様……その……」
「ニーナ、あなたが何を言いたいのか分かるわ」
「なぜアリサをここに残さず地球に行かせたのか…でしょ?」
「はい……」
「醜い争いに可愛い妹を巻き込みたくなかったもの」
「それにね…もう一つ」
「地球にはあの方がいらっしゃるもの。必ずアリサを助けてくれる」
「そして……私のことも……ね!」
リリアは笑顔でニーナに話す。
「引き続き、キースに何か動きがないか注視してください」
「外交任務に出ている者も、もうすぐ戻ってくるわ。それまでの辛抱ね…」
* * *
「王位継承?」
「あぁ、そうだ」
アリサはコクッとうなずく。
「もうすぐ国王であり私のお父様であるボーグ・ドランヴォーグは重い病に伏しており、そう長くはない」
「……」
「…お前が気にすることではない、ロンド」
「もう長いこと生きている。地球の年数で言ったらざっと200年ってところか」
「200歳?それはすごいな…」
「王妃はすでに亡くなっているため、その子供が王位を継承することになっている」
「なんの問題もなければ第一王女であり、私の姉であるリリアがその後を継ぐことになるが、それをよしと思わん者もいてな……」
「お前が第四王女ということは第二か第三か…」
「そうだ。第二王女であるキースはそれをよく思っておらず、必ず邪魔をしてくると考えている」
「なんで第四王女であるお前が狙われるんだ?頭から潰していけばいいじゃねぇか」
「あぁその通りだ。ただリリアの力は絶大で、そう簡単にはうまくいかない」
「リリアと私は母親が同じで仲もいい。すこしでも勢力を削いでおきたかったのだろう」
「……」
リーシュは何か言いたげな顔でアリサを見ている。
「それに…顔もこの通り可愛いのでキースから妬まれている」
「……そうか?」
(まぁ整っている方ではあるか)
「がーん」
「あっアリサ様〜、アリサ様が一番可愛いです」
「よかった!」
なんだこのバカ二人は……
「だからすこしの間でいいからここに匿って欲しい」
「頼む!」
アリサとリーシュは俺に頭を下げる。
「はぁ…わかった、少しの間だけな」
「必ずあとで金をもらうぞ」
「やった〜、やったぞリーシュ!」
「はい!アリサ様」
こうしてどこかの星の王女の護衛をすることになった。
この時のおれはまだ知らなかった。この面倒ごとがさらに面倒になることを。
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