【第9話】 世界宗教の崩壊危機と、悪役の影が神域に届く
黒城レイが“魔王を跪かせた”という衝撃は、世界会議を超えて――
ついに **宗教国家エルディア** にまで届いていた。
いや、届いたどころではない。
宗教国家は、もはや“崩壊寸前”だった。
「黒城レイが魔王を跪かせた……?」
「いや、跪かせたどころか“押さえつけた”らしい……」
「そんな存在……神の敵か、神そのものか……」
街中の神殿は大混乱だった。
レイはそれを聞きながら、なぜか満足げに頷いていた。
「フッ……我が闇の名は、ついに神域にまで届いたか」
「いや、悪い意味でだよ!!」
俺――白峰ユウは、朝からツッコミで喉が枯れそうだった。
そしてレイの後ろには、監視官セリスと聖女アリシアがついてくる。
「黒城レイ。今日、あなたは“宗教国家エルディア”に呼ばれているわ」
「宗教国家……?」
レイは首をかしげた。
「俺は悪役だぞ? 神殿など関係ないだろう」
「関係あるのよ!! あなたのせいで宗教が崩壊しかけてるの!!」
「そうなのか?」
「そうよ!!」
◆
宗教国家エルディア――
世界最大の神殿を持つ、信仰の中心地。
だが――
その神殿の前には、数万人の信者が集まっていた。
「黒城レイが来るぞ!!」
「神の敵か……神の化身か……」
「どちらにせよ、世界が変わる……!」
いや、変わらないよ!!
レイは満足げに頷いた。
「フッ……歓迎されているようだな」
「歓迎じゃないよ!! 完全に神話扱いだよ!!」
◆
神殿の大広間に入ると、
そこには宗教国家の最高位―― **大神官ルシア** が立っていた。
白いローブ、金の杖、神聖な光をまとった女性。
その存在感は、まさに“神の代弁者”だった。
「黒城レイ……あなたが噂の“魔王を跪かせた男”ですね」
「フッ……悪役だが?」
「悪役って言うな!!」
アリシアが叫ぶ。
ルシアはレイを見つめ、震える声で言った。
「黒城レイ……
あなたの存在は、我々の信仰体系を揺るがしています」
「揺るがしているのか?」
「揺るがしてるのよ!!」
◆
ルシアは杖を掲げた。
「黒城レイ。あなたの力……
“神の奇跡”と同等、もしくはそれ以上です」
「フッ……悪役としては悪くないな」
「悪くないじゃないのよ!!」
俺が叫ぶ。
「レイは魔王でも神でもない!!
ただの悪役ロールプレイヤーだよ!!」
だがルシアは震えながら言った。
「……悪役ロールでこの力……
やはりあなたこそ、神の器……!」
「いや、なんでそうなるんだよ!!」
◆
その時――
神殿全体が光に包まれた。
――ゴォォォォォォン!!
「緊急事態!!」
「神託が降りた!!」
「神が黒城レイに言及した!!」
「は?」
俺とレイとアリシアは同時に声を上げた。
神殿の天井に巨大な魔法陣が浮かび上がり、
そこから“声”が響いた。
『黒城レイ……』
「神の声だ!!」
「いや、なんで神がレイに話しかけるんだよ!!」
神の声は続けた。
『黒城レイ……
汝の力、我が神域を揺るがす……』
「揺るがしてるのか?」
「揺るがしてるのよ!!」
アリシアが叫ぶ。
『ゆえに……試練を与える』
「試練……?」
レイは首をかしげた。
「俺は悪役だぞ? 試練など必要ない」
『必要だ』
「必要なんだよ!!」
俺が叫ぶ。
◆
神殿の床が光り、巨大な扉が現れた。
「これは……“神域ダンジョン”……!」
ルシアが震えながら言った。
「黒城レイ。あなたに神が試練を与えたのです」
「フッ……悪役として、神の試練を受けるのも悪くない」
「悪くないじゃないのよ!!」
◆
レイは扉を開け、神域ダンジョンへ足を踏み入れた。
中は光に満ち、神聖な空気が漂っていた。
だが――
その神聖な空気が、レイの黒い魔力に触れた瞬間。
――バチィィィィィン!!
神域が悲鳴を上げた。
「な、なんだこの反応は……!?」
「神域が……黒城レイの魔力に耐えられていない……!」
「いや、なんでだよ!!」
俺が叫ぶ。
アリシアは震えながら言った。
「……黒城レイの魔力、神域の“神聖属性”を上回ってる……!」
「上回ってるのか?」
「上回ってるのよ!!」
◆
神域の奥に進むと、
そこには巨大な光の存在―― **神獣セラフィム** がいた。
「黒城レイ……
汝の力、試させてもらう……!」
「フッ……良いだろう」
「良くないよ!!」
神獣が突進する。
レイは微動だにせず、ただ指を鳴らした。
「――跪け」
その瞬間、神獣が地面に叩きつけられた。
神域全体が震え、光が乱れた。
「な……っ……!?
神獣が……押さえつけられて……?」
ルシアは震えながら言った。
「黒城レイ……
あなたは……神をも超える存在……!」
「いや、違うだろ!!」
俺が叫ぶ。
「レイは神じゃない!!
ただの悪役ロールプレイヤーだよ!!」
だが神獣は震えながら言った。
「……悪役ロールでこの力……
やはりあなたこそ、神の器……!」
「いや、なんでそうなるんだよ!!」
◆
神域が光に包まれ、神の声が響いた。
『黒城レイ……
汝を“神域危険度SS級”と認定する』
「認定するなよ!!」
俺が叫ぶ。
『そして……
汝の監視役に、神殿直属の“神官長ルシア”を任命する』
「は?」
俺とレイとアリシアは同時に声を上げた。
ルシアが前に出る。
「黒城レイ……
今日から私もあなたを監視します」
「フッ……神官に監視される悪役か。悪くない」
「悪くないじゃないのよ!!」
◆
こうして――
**黒城レイは“神をも超える危険存在”として、
宗教国家からも監視されることになった。**
もちろん本人は、まったく理解していない。
そして俺は――
またしてもツッコミ役として地獄を見るのだった。




