【第7話】 王国最強騎士団の忠誠と、悪役の影が国家を覆う
黒城レイが“王国の最重要保護対象”として再び王都へ護送された翌日――。
王都は、もはや“都市”ではなかった。
「黒城レイが王都に入ったぞ!!」
「魔力障壁を最大出力にしろ!!」
「いや、逆に刺激したら危険だ!!」
「どうすればいいんだ……!」
街中がパニックだった。
レイはそれを聞きながら、なぜか満足げに頷いていた。
「フッ……我が闇の名は、王都全域に響き渡っているようだな」
「いや、悪い意味でだよ!!」
俺――白峰ユウは、朝からツッコミで喉が枯れそうだった。
そしてレイの後ろには、監視官セリスと聖女アリシアがついてくる。
「黒城レイ。今日、あなたは“王国最強騎士団”の本部に呼ばれているわ」
「フッ……悪役として、騎士団に呼ばれるとは光栄だな」
「光栄じゃないのよ!!」
アリシアは朝から頭を抱えていた。
◆
王都中央区――王国最強騎士団本部。
巨大な城壁、魔力障壁、そして空を飛ぶ監視魔導兵。
だが――
その全てが、レイを警戒していた。
「黒城レイが来たぞ!!」
「全隊、迎撃態勢を取れ!!」
「いや、迎撃したら殺される!!」
「どうすればいいんだ……!」
いや、どうすればって……普通に迎えろよ!!
レイは満足げに頷いた。
「フッ……歓迎されているようだな」
「歓迎じゃないよ!! 完全に敵扱いだよ!!」
◆
騎士団本部の大広間に入ると、
そこには数百人の騎士が整列していた。
そして――
中央には、王国最強騎士団長・レオンハルトが立っていた。
銀髪に鋭い目つき、巨大な剣を背負った男。
その存在感は、まさに“英雄”だった。
「黒城レイ……貴様が噂の魔王候補か」
「フッ……悪役だが?」
「悪役って言うな!!」
アリシアが叫ぶ。
レオンハルトはレイを睨みつけた。
「黒城レイ。貴様が聖女アリシアを一瞬で沈めたというのは本当か?」
「沈めたというより……跪かせただけだが?」
「それが問題なんだよ!!」
レオンハルトは剣を抜いた。
「黒城レイ。貴様の力、確かめさせてもらう」
「フッ……良いだろう」
「良くないよ!!」
◆
レオンハルトが突進する。
その速度は、聖女アリシアを上回っていた。
「速い……!」
「これが騎士団長……!」
「黒城レイでも避けられないんじゃ……?」
いや、避ける必要ないんだよな……
レイは微動だにせず、ただ指を鳴らした。
「――跪け」
その瞬間、レオンハルトの身体が地面に叩きつけられた。
地面が砕け、衝撃波が走る。
「な……っ……!?
わ、私が……押さえつけられて……?」
レオンハルトは震えながらレイを見上げた。
「貴様……本当に……魔王……?」
「違う。悪役だ」
「悪役でこんな力が出せるわけないでしょ!!」
アリシアが叫んだ。
◆
レオンハルトは立ち上がり、深々と頭を下げた。
「黒城レイ……
貴様こそ、我ら騎士団が忠誠を誓うべき存在……!」
「いや、なんでそうなるんだよ!!」
俺が叫ぶ。
「レイは魔王じゃない!! 悪役ロールだよ!!」
だが騎士たちは震えながら言った。
「……悪役ロールでこの力……
やはりあなたこそ、王国の頂点……!」
「いや、なんでそうなるんだよ!!」
◆
レオンハルトは剣を掲げた。
「黒城レイ!!
我ら王国最強騎士団は、あなたに忠誠を誓う!!」
「誓うなよ!!」
俺とアリシアが同時に叫んだ。
だがレイは満足げに頷いた。
「フッ……悪役として、騎士団に忠誠を誓われるとは悪くない」
「悪くないじゃないのよ!!」
◆
その時――
王都全域に警報が鳴り響いた。
――ゴォォォォォォン!!
「緊急事態!!」
「魔王軍が王都に接近!!」
「黒城レイを奪還しに来た可能性あり!!」
「いや、奪還ってなんだよ!!」
俺が叫ぶ。
アリシアは魔力探知器を見て震えた。
「……これは……魔王軍の“幹部級”が複数……!
しかも……魔王本人の魔力反応まで……!」
「は?」
俺とレイは同時に声を上げた。
◆
王都の空が黒い霧に包まれた。
その中心に、巨大な影が現れた。
「黒城レイ……貴様を迎えに来た」
魔王だった。
全身が黒い炎に包まれ、赤い瞳がレイを睨みつけている。
「黒城レイ……
貴様こそ、我が後継者……!」
「いや、違うだろ!!」
俺が叫ぶ。
「レイは魔王じゃない!! 悪役ロールだよ!!」
だが魔王は聞いていない。
「黒城レイ……
貴様の力、確かめさせてもらう!!」
「フッ……良いだろう」
「良くないよ!!」
◆
魔王が突進する。
その速度は、聖女アリシアや騎士団長レオンハルトを遥かに上回っていた。
「速い……!」
「これが魔王……!」
「黒城レイでも避けられないんじゃ……?」
いや、避ける必要ないんだよな……
レイは微動だにせず、ただ指を鳴らした。
「――跪け」
その瞬間、魔王の身体が地面に叩きつけられた。
地面が砕け、王都全域が震えた。
「な……っ……!?
わ、私が……押さえつけられて……?」
魔王は震えながらレイを見上げた。
「貴様……本当に……魔王……?」
「違う。悪役だ」
「悪役で魔王を押さえつけるな!!」
アリシアが叫んだ。
◆
魔王は立ち上がり、深々と頭を下げた。
「黒城レイ……
貴様こそ、我が後継者……!」
「いや、なんでそうなるんだよ!!」
俺が叫ぶ。
「レイは魔王じゃない!! 悪役ロールだよ!!」
だが魔王軍の幹部たちは震えながら言った。
「……悪役ロールでこの力……
やはりあなたこそ、魔王の器……!」
「いや、なんでそうなるんだよ!!」
◆
こうして――
**黒城レイは“魔王を跪かせた魔王候補”として、
王国と魔王軍の両方から“頂点”として扱われることになった。**
もちろん本人は、まったく理解していない。
そして俺は――
またしてもツッコミ役として地獄を見るのだった。




