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俺の親友が今日も悪役ムーブで世界を震え上がらせている件  作者: 矢満田太郎
第2章:国家レベルの誤解
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【第6話】 王都騒乱と、悪役の影が世界を揺らす

 黒城レイが“魔王軍の幹部を一瞬で沈めた”という噂は、翌朝には王都全域に広がっていた。


 いや、噂というより――

 もはや“国家非常事態”として扱われていた。


「黒城レイが魔王軍の幹部を倒したらしいぞ……」

「いや、倒したというより“跪かせた”らしい……」

「どっちにしろ魔王級だろ……」


 学園の廊下は、昨日以上に騒がしかった。


 レイはそれを聞きながら、なぜか満足げに頷いていた。


「フッ……我が闇の名は、ついに魔王軍にまで届いたか」


「いや、悪い意味でだよ!!」


 俺――白峰ユウは、朝からツッコミで喉が枯れそうだった。


 そしてレイの後ろには、監視官セリスと聖女アリシアがついてくる。


「黒城レイ。今日からあなたは“王都と魔王軍の両方から監視される”ことになったわ」


「フッ……悪役としては悪くないな」


「悪くないじゃないのよ!!」


 アリシアは朝から頭を抱えていた。



 教室に入ると、クラスメイトたちは一斉に距離を取った。


「黒城レイが来た……!」

「昨日は魔王軍の幹部を倒したらしい……」

「もうこのクラス、魔王城だろ……」


 レイは席につきながら、満足げに笑った。


「フッ……恐怖が満ちている。実に良い」


「良くないよ!!」


 俺がツッコむと、アリシアが机を叩いた。


「黒城レイ!! あなたの“悪役ロール”のせいで、

 学園が完全に混乱してるのよ!!」


「そうなのか?」


「そうよ!! あなたが魔王軍の幹部を倒したせいで、

 学園は“魔王と王国の戦場”扱いされてるの!!」


「……戦場、か。悪役としては悪くないな」


「悪くないじゃないのよ!!」



 ホームルームが始まると、担任が震える声で言った。


「こ、黒城レイ君……今日から“王都直属の護衛隊”が、

 君の周囲を警備することになった……」


「護衛……?」


 レイは首をかしげた。


「俺は悪役だぞ? 護衛など必要ない」


「必要あるのよ!! あなたが暴れたら王都が崩壊するの!!」


「暴れないよ!!」


 俺が叫ぶ。


「レイは悪役ロールしてるだけだよ!!」


 だが教師たちは震えながら言った。


「黒城レイ君……君が“本気を出したら”どうなるか分からん……」


「いや、出さないよ!!」



 1時間目の授業。


 レイは静かに座っていた。


 だが――

 その“静かに座っている”という行為が、すでに問題だった。


「黒城レイが……動かない……」

「逆に怖い……」

「何か企んでるのか……?」


 いや、ただ授業受けてるだけだよ!!


 アリシアはレイの横で、魔力測定器を構えていた。


「黒城レイ。あなたの魔力、少しでも上昇したらすぐに止めるからね」


「フッ……好きにしろ」


「挑発するな!!」



 2時間目の魔法実技。


 レイは参加を拒否した。


「俺は悪役だ。表舞台で魔法を披露する趣味はない」


「いや、授業だからな!? 参加しろよ!!」


 だが教師は震えながら言った。


「む、無理に参加しなくていい……!

 黒城レイ君が本気を出したら、校庭が消し飛ぶ……!」


「消し飛ばないよ!!」


 アリシアは深いため息をついた。


「……黒城レイ。あなた、存在してるだけで問題を起こしてるわよ」


「そうなのか?」


「そうよ!!」



 昼休み。


 学園の中庭は異様な緊張に包まれていた。


 レイが弁当を食べているだけで、周囲の生徒たちは震えている。


「黒城レイが……箸を持った……!」

「何かの合図か……?」

「いや、ただの食事だろ……」


 いや、ただの食事だよ!!


 アリシアはレイの横で監視を続けていた。


「黒城レイ。あなた、食事中に魔力を使わないでよね」


「使わん。俺は悪役だが、食事中に暴れたりはしない」


「悪役って言うのをやめなさい!!」



 そんな中――

 事件は起きた。


 ――ドォンッ!!


 校舎の外で爆発音が響いた。


「また魔物か!?」

「いや、違う……これは魔法の衝撃だ!」


 生徒たちが騒ぎ始める。


 アリシアが魔力探知器を取り出す。


「……これは……“王都の精鋭部隊”の魔力反応……?」


「は?」


 俺とレイは同時に声を上げた。


 次の瞬間、校庭に白銀の鎧をまとった兵士たちが現れた。


「黒城レイ!! 貴様を保護しに来た!!」


「保護!?」


 俺は叫んだ。


「なんで保護なんだよ!!」


 兵士の隊長が前に出る。


「魔王軍が黒城レイを狙っているという情報が入った!!

 よって王国は、黒城レイを“最重要保護対象”とする!!」


「いや、なんでそうなるんだよ!!」


 アリシアが叫ぶ。


「黒城レイは魔王じゃない!! ただの危険人物よ!!」


「それも違う!!」


 俺が叫ぶ。


「ただの悪役ロールプレイヤーだよ!!」


 兵士たちはレイを見つめ、震える声で言った。


「……悪役ロールでこの力……

 やはりあなたこそ、王国の切り札……!」


「いや、なんでそうなるんだよ!!」



 兵士たちはレイを囲み、護衛体制を取った。


「黒城レイ!! あなたを王都へ護送する!!」


「護送……?」


 レイは首をかしげた。


「俺は悪役だぞ? 護送など必要ない」


「必要あるのよ!! あなたが狙われてるの!!」


「狙われている……?」


 レイは少し考えたあと、満足げに頷いた。


「フッ……悪役としては悪くないな」


「悪くないじゃないのよ!!」



 こうして――

**黒城レイは“王国の最重要保護対象”として、王都へ再び護送されることになった。**


 もちろん本人は、まったく理解していない。


 そして俺は――

またしてもツッコミ役として地獄を見るのだった。



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