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俺の親友が今日も悪役ムーブで世界を震え上がらせている件  作者: 矢満田太郎
第2章:国家レベルの誤解
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【第5話】 聖女アリシアの監視開始と、悪役の学園支配

 黒城レイが王都での査問を終え、正式に“王国監視下”となった翌日――。


 学園は、もはや“学校”ではなかった。


「黒城レイが戻ってきたぞ……!」

「聖女アリシアまでついてきてる……!」

「学園終わったな……」


 朝の登校時間、校門前は阿鼻叫喚だった。


 レイはそれを聞きながら、なぜか満足げに頷いていた。


「フッ……我が闇の名は、王都から学園へと戻ってきたか」


「いや、悪い意味でだよ!!」


 俺――白峰ユウは、朝からツッコミで喉が枯れそうだった。


 そしてレイの後ろには、王国監視官セリスと――

 昨日レイに一瞬で沈められた聖女アリシアがついてくる。


「黒城レイ。今日から私はあなたを監視する。

 あなたの行動はすべて記録し、王都に報告する」


「フッ……聖女に監視される悪役か。悪くない」


「悪くないじゃないのよ!!」


 アリシアは朝から頭を抱えていた。



 教室に入ると、クラスメイトたちは一斉に距離を取った。


「黒城レイが帰ってきた……!」

「聖女までいる……!」

「もうこのクラス、魔王城だろ……」


 レイは席につきながら、満足げに笑った。


「フッ……恐怖が満ちている。実に良い」


「良くないよ!!」


 俺がツッコむと、アリシアが机を叩いた。


「黒城レイ!! あなたの“悪役ロール”のせいで、

 学園が完全に混乱してるのよ!!」


「そうなのか?」


「そうよ!! あなたが王都で聖女を倒したせいで、

 学園は“魔王の巣窟”扱いされてるの!!」


「……魔王の巣窟、か。悪役としては悪くないな」


「悪くないじゃないのよ!!」



 ホームルームが始まると、担任が震える声で言った。


「こ、黒城レイ君……今日から聖女アリシアさんが、

 君の監視役として同席することになった……」


「よろしく頼む」


「よ、よろしくお願いします……」


 クラス全員が震えながら頭を下げる。


 アリシアはため息をつきながら言った。


「黒城レイ。あなた、今日は絶対に問題を起こさないでよね」


「問題など起こさん。俺は悪役だが、無闇に暴れたりはしない」


「悪役って言うのをやめなさい!!」



 1時間目の授業。


 レイは静かに座っていた。


 だが――

 その“静かに座っている”という行為が、すでに問題だった。


「黒城レイが……動かない……」

「逆に怖い……」

「何か企んでるのか……?」


 いや、ただ授業受けてるだけだよ!!


 アリシアはレイの横で、魔力測定器を構えていた。


「黒城レイ。あなたの魔力、少しでも上昇したらすぐに止めるからね」


「フッ……好きにしろ」


「挑発するな!!」



 2時間目の魔法実技。


 レイは参加を拒否した。


「俺は悪役だ。表舞台で魔法を披露する趣味はない」


「いや、授業だからな!? 参加しろよ!!」


 だが教師は震えながら言った。


「む、無理に参加しなくていい……!

 黒城レイ君が本気を出したら、校庭が消し飛ぶ……!」


「消し飛ばないよ!!」


 アリシアは深いため息をついた。


「……黒城レイ。あなた、存在してるだけで問題を起こしてるわよ」


「そうなのか?」


「そうよ!!」



 昼休み。


 学園の中庭は異様な緊張に包まれていた。


 レイが弁当を食べているだけで、周囲の生徒たちは震えている。


「黒城レイが……箸を持った……!」

「何かの合図か……?」

「いや、ただの食事だろ……」


 いや、ただの食事だよ!!


 アリシアはレイの横で監視を続けていた。


「黒城レイ。あなた、食事中に魔力を使わないでよね」


「使わん。俺は悪役だが、食事中に暴れたりはしない」


「悪役って言うのをやめなさい!!」



 そんな中――

 事件は起きた。


 ――ドォンッ!!


 校舎の外で爆発音が響いた。


「また魔物か!?」

「いや、違う……これは魔法の衝撃だ!」


 生徒たちが騒ぎ始める。


 アリシアが魔力探知器を取り出す。


「……これは……“魔王軍の幹部”の魔力反応……?」


「は?」


 俺とレイは同時に声を上げた。


 次の瞬間、校庭に黒い霧が立ち込めた。


 その中心に、黒い鎧をまとった男が現れた。


「黒城レイ……貴様を迎えに来た」


「迎えに……?」


 男は深々と頭を下げた。


「魔王様……どうか我ら魔王軍の頂点に立ってください……!」


「いや、違うだろ!!」


 俺が叫ぶ。


「レイは魔王じゃない!! 悪役ロールだよ!!」


 だが男は聞いていない。


「黒城レイ……あなたこそ、我らが求める“真の魔王”……!」


「違う!!」


 アリシアが叫んだ。


「黒城レイは魔王じゃない!! ただの危険人物よ!!」


「それも違う!!」


 俺が叫ぶ。


「ただの悪役ロールプレイヤーだよ!!」


 男はレイを見つめ、震える声で言った。


「……悪役ロールでこの力……

 やはりあなたこそ、魔王の器……!」


「いや、なんでそうなるんだよ!!」



 男は剣を抜いた。


「黒城レイ……あなたの力、見せていただく!!」


「フッ……良いだろう」


「良くないよ!!」


 レイの周囲に黒い魔力が渦巻く。


 男が突進する。


 レイは微動だにせず、ただ指を鳴らした。


「――跪け」


 その瞬間、男は地面に叩きつけられた。


 地面が砕け、校庭が陥没する。


「な……っ……!?

 こ、これが……魔王の力……!」


「違う!!」


 俺とアリシアが同時に叫んだ。



 男は震えながら立ち上がり、深々と頭を下げた。


「黒城レイ……あなたこそ、我ら魔王軍の頂点……!」


「違う!!」


 アリシアが叫ぶ。


「黒城レイは魔王じゃない!!

 ただの……ただの……」


 アリシアは言葉に詰まった。


「……ただの何?」


 俺が代わりに言った。


「ただの悪役ロールプレイヤーだよ!!」


 男は震えながら言った。


「……悪役ロールでこの力……

 やはりあなたこそ、魔王の器……!」


「いや、なんでそうなるんだよ!!」



 こうして――

**黒城レイは“魔王軍の幹部に認められた魔王候補”として、さらに世界から恐れられることになった。**


 もちろん本人は、まったく理解していない。


 そして俺は――

またしてもツッコミ役として地獄を見るのだった。



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