【第4話】 王都召喚と、悪役の威圧は国を揺らす
黒城レイが“聖女アリシアを一瞬で沈めた”という噂は、翌朝には王都全域に広がっていた。
いや、噂というより――
もはや“国家レベルの緊急事態”として扱われていた。
「黒城レイ……ついに王都に召喚されるらしいぞ」
「聖女を倒した魔王候補……」
「いや、魔王そのものだろ……」
学園の廊下は、昨日以上に騒がしかった。
レイはそれを聞きながら、なぜか満足げに頷いていた。
「フッ……我が闇の名は、ついに王都にまで届いたか」
「いや、悪い意味でだよ!!」
俺――白峰ユウは、朝からツッコミで喉が枯れそうだった。
そして、レイの後ろには監視官セリスがついてくる。
「黒城レイ。今日、あなたは王都に向かうわ。
王国議会があなたを直接査問する」
「フッ……悪役として、王都に呼ばれるとは光栄だな」
「光栄じゃないのよ!!」
セリスは朝から頭を抱えていた。
◆
王都へ向かう馬車は、学園の正門前に停まっていた。
黒い装甲に包まれ、魔力障壁が張られた“特別護送馬車”。
本来は凶悪犯や魔王級の魔物を運ぶためのものだ。
「黒城レイ……まさかこの馬車に乗ることになるとは……」
「いや、なんで誇らしげなんだよ!!」
俺がツッコむと、レイは首をかしげた。
「ユウ。俺は悪役だぞ? こういう扱いは当然だろう」
「いや、悪役ロールの話だよな!? 本気で言ってないよな!?」
「もちろんだ。俺は悪役ロールを楽しんでいるだけだ」
「それが一番危険なんだよ!!」
セリスが馬車の扉を開ける。
「黒城レイ。あなたは王都に着くまで、絶対に問題を起こさないでよね」
「問題など起こさん。俺は悪役だが、無闇に暴れたりはしない」
「悪役って言うのをやめなさい!!」
レイは馬車に乗り込み、俺とセリスも続いた。
馬車が動き出すと、外の生徒たちがざわめいた。
「黒城レイが連行されていく……」
「いや、あれは護送じゃなくて“護衛”だろ……」
「どっちにしろ国が動くレベルだな……」
お前ら、言いたい放題だな。
◆
馬車の中は静かだった。
レイは窓の外を眺めながら、ぼそりと呟いた。
「……ユウ。俺は本当に、魔王なのか?」
「違うよ!! ただの悪役ロールプレイヤーだよ!!」
「だが、周囲はそう思っているようだが?」
「それはお前の悪役ムーブのせいだよ!!」
セリスが深いため息をついた。
「黒城レイ。あなたの“悪役ロール”のせいで、王国が混乱してるのよ」
「そうなのか?」
「そうよ!! 聖女アリシア様があなたに敗北したことで、
王都は“魔王出現”と大騒ぎなの!!」
「……大騒ぎ、か。悪役としては悪くないな」
「悪くないじゃないのよ!!」
◆
王都が見えてきた。
巨大な城壁、魔力障壁、そして空を飛ぶ監視魔導兵。
だが――
その全てが、レイを警戒していた。
「黒城レイが来たぞ!!」
「魔力障壁を最大出力にしろ!!」
「王都防衛隊、全員配置につけ!!」
いや、なんでこんな大騒ぎなんだよ!!
レイは満足げに頷いた。
「フッ……歓迎されているようだな」
「歓迎じゃないよ!! 完全に敵扱いだよ!!」
馬車が王都の中央広場に到着すると、
そこには数百人の兵士が待ち構えていた。
そして――
王国議会の代表者たちが並んでいた。
「黒城レイ……ついに来たか……」
「この男が……聖女を倒したという……」
「魔王候補……いや、魔王そのもの……」
レイは馬車から降り、黒いマントを翻した。
「フッ……王都よ。我が闇の訪れを恐れるがいい」
「言うなって言ってるだろ!!」
セリスが頭を抱える。
◆
議会の建物に入ると、
巨大な円形の部屋に議員たちがずらりと並んでいた。
中央には、王国議長が座っている。
「黒城レイ。あなたを査問する」
「フッ……好きにしろ」
「いや、挑発するなよ!!」
議長は震える声で言った。
「黒城レイ……あなたは昨日、聖女アリシアを一瞬で倒したな?」
「倒したというより……跪かせただけだが?」
「それが問題なんだよ!!」
議員たちがざわめく。
「やはり魔王……」
「いや、魔王以上かもしれん……」
「この男をどうする……?」
レイは腕を組み、堂々と立っていた。
「……ユウ。俺はどうすればいい?」
「どうすればって……誤解を解くしかないだろ!!」
「誤解……?」
「そうだよ!! お前は魔王じゃないって言え!!」
レイは少し考えたあと、議会に向かって言った。
「俺は魔王ではない」
議会が静まり返る。
「……では、何者だ?」
レイは胸を張って答えた。
「悪役だ」
「言うなって言ってるだろおおおおお!!」
議会が大混乱に陥った。
「悪役……!?」
「魔王より危険では……?」
「いや、悪役の方がタチが悪い……!」
セリスが絶望した顔で言った。
「黒城レイ……あなた、国を滅ぼす気……?」
「そんなつもりはない。俺は悪役ロールを楽しんでいるだけだ」
「それが一番危険なんだよ!!」
◆
議会は混乱し、議長が叫んだ。
「黒城レイ!! あなたは危険すぎる!!
よって――
“王国監視下に置く”!!」
「監視下……か。悪役としては悪くないな」
「悪くないじゃないよ!!」
議長は続けた。
「そして……
あなたの監視役には、聖女アリシアを任命する!!」
「は?」
俺とレイとセリスは同時に声を上げた。
アリシアが前に出る。
「黒城レイ……あなたを監視するのは、私よ」
「フッ……聖女に監視される悪役か。悪くない」
「悪くないじゃないのよ!!」
◆
こうして――
**黒城レイは“王国監視下の魔王候補”として、聖女アリシアに監視されることになった。**
もちろん本人は、まったく理解していない。
そして俺は――
またしてもツッコミ役として地獄を見るのだった。




