表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の親友が今日も悪役ムーブで世界を震え上がらせている件  作者: 矢満田太郎
第1章:悪役の誕生
PR
3/10

【第3話】 王国監視官セリスの絶望と、悪役の誤解は止まらない

 黒城レイが王国最強騎士団を一瞬で沈めた翌日――。


 学園は、もはや“学校”ではなかった。


「黒城レイが登校したぞ!!」

「避難しろ!!」

「いや、逃げたら逆に狙われるかもしれん……!」

「どうすればいいんだ……!」


 廊下を歩くだけで、阿鼻叫喚が巻き起こる。


 レイはそれを聞きながら、なぜか満足げに頷いていた。


「フッ……我が闇の名は、ますます広まっているようだな」


「いや、悪い意味でだよ!!」


 俺――白峰ユウは、朝からツッコミで喉が枯れそうだった。


 そして、レイの後ろには監視官セリスがついてくる。


 昨日、王国最強騎士団がレイに敗北したことで、

 セリスの仕事は“監視”から“暴走阻止”に格上げされたらしい。


「黒城レイ。あなた、今日は絶対に問題を起こさないでよね」


「問題など起こさん。俺は悪役だが、無闇に暴れたりはしない」


「悪役って言うのをやめなさい!! 誤解が深まる!!」


 セリスは朝から頭を抱えていた。



 教室に入ると、クラスメイトたちは一斉に距離を取った。


「黒城レイが来たぞ……!」

「机が浮いたりしないよな……?」

「昨日は騎士団を一瞬で沈めたらしいぞ……」


 レイは席につきながら、満足げに笑った。


「フッ……恐怖が満ちている。実に良い」


「良くないよ!!」


 俺がツッコむと、レイは首をかしげた。


「ユウ。俺は悪役だぞ? 恐れられるのは当然だろう」


「いや、悪役ロールの話だよな!? 本気で言ってないよな!?」


「もちろんだ。俺は悪役ロールを楽しんでいるだけだ」


「それが一番危険なんだよ!!」


 セリスが机を叩いた。


「黒城レイ。あなたの“悪役ロール”のせいで、王国が混乱してるのよ!!」


「そうなのか?」


「そうよ!! 昨日の騎士団撃破の報告が王都に届いて……」


 セリスは深いため息をついた。


「……王国議会が緊急会議を開いたわ」


「は?」


 俺とレイは同時に声を上げた。


「議会は“黒城レイは魔王候補であり、放置すれば国家崩壊の危険がある”と判断したの」


「いや、なんでそうなるんだよ!!」


 俺の叫びは虚しく響く。


 セリスは続けた。


「そして……今日、王都から“特別監視官”が派遣される」


「特別監視官……?」


「そう。私より上の立場で、黒城レイを直接査問するための人物よ」


 レイは腕を組み、満足げに頷いた。


「フッ……ますます悪役らしくなってきたな」


「いや、喜ぶなよ!!」



 昼休み。


 学園の中庭は異様な緊張に包まれていた。


 王都からの特別監視官が到着するという噂が広まり、生徒たちは遠巻きに様子を見ている。


「黒城レイ……ついに処刑されるのか……」

「いや、逆に監視官が処刑されるかもしれん……」

「どっちにしろ地獄だな……」


 お前ら、言いたい放題だな。


 レイは黒いマントを翻しながら、堂々と中庭に立っていた。


「……来るな」


 レイが呟いた瞬間、空気が震えた。


 次の瞬間――。


 ――ズドォォォォンッ!!


 空から巨大な魔法陣が降りてきた。


 その中心に、白銀の鎧をまとった女性が降り立つ。


 長い金髪、鋭い青い瞳。

 背中には巨大な魔力の翼。


 圧倒的な存在感。


「……あれは……!」


 セリスが震えながら呟いた。


「王国魔導庁・特別監視官……

 “白翼の聖女”アリシア・グランフェルド……!」


「聖女!?」


 俺は思わず叫んだ。


「なんでそんな大物が来るんだよ!!」


「黒城レイが危険すぎるからよ!!」


 アリシアはレイを見下ろし、冷たい声で言った。


「黒城レイ。あなたを査問するために来た」


「フッ……聖女か。悪役には相応しい相手だな」


「悪役って言うな!!」


 アリシアは剣を抜いた。


「黒城レイ。あなたは魔王候補として危険視されている。

 ここで力を見せてもらう」


「力を……?」


「そう。あなたが本当に“魔王級”かどうか、私が判断する」


 レイは少し考えたあと、ゆっくりと頷いた。


「……良いだろう。悪役として、聖女と戦うのも悪くない」


「いや、悪くないじゃないよ!!」



 アリシアが剣を構える。


 その瞬間、空気が震えた。


 聖女の魔力が周囲を包み込み、地面が光り始める。


「……すげぇ……」

「これが聖女の力……?」

「黒城レイでも勝てないんじゃ……?」


 生徒たちがざわめく。


 アリシアは静かに言った。


「黒城レイ。全力で来なさい」


「フッ……後悔するなよ」


 レイの周囲に黒い魔力が渦巻く。


 空気が重くなり、地面が震える。


 アリシアが目を見開いた。


「……この魔力……本当に人間なの……?」


「フッ……悪役だからな」


「悪役の範囲を超えてるわよ!!」


 アリシアが突進する。


 光の剣がレイに迫る。


 レイは微動だにせず、ただ指を鳴らした。


「――跪け」


 その瞬間、アリシアの身体が地面に叩きつけられた。


 地面が砕け、衝撃波が走る。


「な……っ……!?

 わ、私が……押さえつけられて……?」


 アリシアは震えながらレイを見上げた。


「あなた……本当に……魔王……?」


「違う。悪役だ」


「悪役でこんな力が出せるわけないでしょ!!」


 セリスが叫んだ。


「アリシア様!! 黒城レイは悪役ロールをしてるだけです!!」


「ロール……?」


 アリシアは呆然とした。


「じゃあ……この力は……?」


「ただの趣味だ」


「趣味で聖女を押しつぶすな!!」



 アリシアは立ち上がり、震える声で言った。


「黒城レイ……あなたは……

 “魔王候補”どころか……

 “魔王そのもの”よ……!」


「いや、違うだろ。俺は悪役だぞ?」


「それが一番危険なんだよ!!」


 またそれか。


 アリシアは深いため息をついた。


「……黒城レイ。あなたは王都に召喚されるわ。

 王国議会が、あなたを直接査問する」


「王都……か。悪役として、行く価値はあるな」


「いや、喜ぶなよ!!」



 こうして――

**黒城レイは“聖女を一瞬で倒した魔王候補”として、王都に召喚されることになった。**


 もちろん本人は、まったく理解していない。


 そして俺は――

またしてもツッコミ役として地獄を見るのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ