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俺の親友が今日も悪役ムーブで世界を震え上がらせている件  作者: 矢満田太郎
第1章:悪役の誕生
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【第2話】 監視官来訪と、悪役の誤解はさらに深まる

 黒城レイが“魔王候補”として学園にマークされる――その知らせは、翌朝には学園中に広まっていた。


「おい聞いたか……黒城レイ、監視対象になったらしいぞ」

「そりゃそうだろ……昨日の魔物襲撃、ほぼ一人で片付けたんだぞ」

「ていうかあれ、魔王軍がレイをスカウトしに来たって噂もあるし……」


 廊下を歩くだけで、ひそひそ声が飛び交う。

 レイはそれを聞きながら、なぜか満足げに頷いていた。


「フッ……我が闇の名が広まっているようだな」


「いや、悪い意味でだよ!」


 俺――白峰ユウは、朝からツッコミで喉が枯れそうだった。


 レイは黒いローブを翻しながら歩く。その姿は確かに“悪役”っぽい。

 だが本人はただのロールプレイで、根は優しい。

 問題は、**実力が本物すぎる**という一点だ。


 昨日の魔物襲撃で、レイは魔物の群れを一瞬で沈め、ダンジョンのボスまで倒した。

 その結果――


「黒城レイ、職員室へ来なさい」


 朝のホームルームで、担任が震える声で言った。


「……呼び出し、か」


「いや、なんで嬉しそうなんだよ!」


 レイは堂々と立ち上がり、黒いマントを翻して教室を出ていった。

 クラスメイトたちは一斉に距離を取る。


「黒城レイ……ついに処分されるのか……」

「いや、逆に教師が処分されるかもしれん……」

「どっちにしろ地獄だな……」


 お前ら、言いたい放題だな。


 俺はため息をつきながら、レイの後を追った。



 職員室に入ると、そこには見慣れない人物がいた。


 黒いスーツに身を包み、鋭い目つきの女性。

 腰には魔力測定器と、魔法封印用の手枷。


 ――監視官だ。


「黒城レイ。あなたを監視するため、王国魔導庁より派遣された監視官、セリス・アルトリアよ」


 女性は冷たい声で名乗った。


「監視官……か。フッ、悪役には相応しい役回りだな」


「あなたが悪役かどうかはどうでもいいわ。問題は――」


 セリスはレイを鋭く睨む。


「あなたが“魔王候補”として危険視されているという事実よ」


「いや、俺はただの悪役だが?」


「それが一番危険なのよ!!」


 職員室の教師たちが一斉に頷く。


「黒城レイ君、昨日の魔物襲撃……あれは偶然かね?」

「魔物を一瞬で殲滅するなど、常識では考えられん……」

「本当に……本当に魔王軍と繋がっていないのか?」


 レイは少し考えたあと、堂々と答えた。


「繋がっていない。むしろ、俺は“悪役”として魔王軍を敵視している」


「敵視してるのか!?」

「やはり魔王軍と因縁が……!」


「いや、悪役ロールの話だよな!? レイ!!」


 俺が慌ててツッコむが、もう遅い。

 教師たちは完全に誤解している。


 セリス監視官は深いため息をついた。


「……黒城レイ。あなたには今日から監視がつく。私があなたの行動を逐一記録し、危険があれば即座に拘束する」


「フッ……面白い。悪役には常に監視がつきものだからな」


「なんで嬉しそうなんだよ!!」


 セリスは眉をひそめる。


「あなた……本当に自分の立場を理解してるの?」


「もちろんだ。俺は悪役だ」


「違うわよ!! あなたは“魔王候補”なの!!」


 レイは本気で首をかしげた。


「……ユウ。俺は魔王なのか?」


「違うよ!! ただの悪役ロールプレイヤーだよ!!」


 職員室が静まり返る。


 セリスはこめかみを押さえながら言った。


「……もういいわ。とにかく、私はあなたを監視する。それだけよ」


「好きにしろ。俺は悪役として、己の道を進むだけだ」


「だから悪役って言うな!! 誤解が深まる!!」



 監視官セリスがついてくる状態で、レイは学園内を歩き始めた。


 その姿はまるで――

“悪役を監視するヒロイン”のようだった。


 だが現実は違う。


「黒城レイ、歩くのが速い。もっとゆっくり歩きなさい」


「フッ……悪役は常に影を駆けるものだ」


「駆けなくていいのよ!!」


 セリスは本気で疲れているようだった。


 そんな中、事件は起きた。


 ――ドォンッ!


 校舎の外で爆発音が響いた。


「また魔物か!?」


「いや、違う……これは魔法の衝撃だ!」


 生徒たちが騒ぎ始める。


 レイはゆっくりと立ち上がった。


「……また愚か者が現れたか」


「いや、まだ何も分かってないだろ!」


 セリスが魔力探知器を取り出す。


「……これは……“王国最強騎士団”の魔力反応……?」


「は?」


 俺とレイは同時に声を上げた。


 次の瞬間、校庭に銀の鎧をまとった騎士たちが現れた。


「黒城レイ!! 貴様を討伐しに来た!!」


「なんでだよ!!」


 俺の叫びは虚しく響く。


 騎士団長と思われる男が前に出る。


「貴様は魔王候補……いや、魔王そのもの!! ここで討つ!!」


「いや、違うだろ。俺は悪役だぞ?」


「それが一番危険なんだよ!!」


 またそれか。


 レイはため息をつき、黒いマントを翻した。


「……ユウ。俺はどうすればいい?」


「どうすればって……戦うしかないだろ!!」


「フッ……悪役らしく、派手にいくか」


「いや、派手にいくな!! 誤解が深まる!!」


 だがレイは聞いていない。


 騎士団長が剣を構える。


「黒城レイ!! 覚悟!!」


 レイはゆっくりと手を上げた。


「――跪け」


 その一言で、騎士団全員が地面に叩きつけられた。


 地面が砕け、校庭が陥没する。


「な、なんだこの力は……!!」

「魔王……魔王だ……!!」


「違う!! 悪役ロールだよ!!」


 俺の叫びは誰にも届かない。


 セリス監視官は震えながら言った。


「……黒城レイ。あなた、本当に……何者なの……?」


「ただの悪役だ」


「違うわよ!!」



 騎士団を一瞬で沈めたレイは、満足げに頷いた。


「フッ……これでまた、我が闇は深まった」


「深まってないよ!!」


 だが、もう誰もレイの言葉を信じていない。


 こうして――

**黒城レイは“王国最強騎士団を撃破した魔王候補”として、さらに世界から恐れられることになった。**


 そして俺は、またしてもツッコミ役として地獄を見るのだった。



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