【第13話】 世界衝突の序章と、悪役の影が戦争を止める
黒城レイを巡る“世界争奪戦”が始まった翌日――。
世界は、もはや“平和”という言葉を忘れていた。
「黒城レイを確保せよ!!」
「いや、黒城レイは我が国が保護する!!」
「神殿が優先だ!!」
「ギルドが先だ!!」
「英雄連盟が先だ!!」
各勢力が同時に動き出し、
王都の空は魔法と魔力で埋め尽くされていた。
レイはそれを見ながら、なぜか満足げに頷いていた。
「フッ……我が闇の名は、ついに世界を戦場へと変えたか」
「いや、悪い意味でだよ!!」
俺――白峰ユウは、朝からツッコミで喉が枯れそうだった。
そしてレイの後ろには、監視官セリス、聖女アリシア、神官長ルシアがついてくる。
「黒城レイ。今日、あなたは“王都防衛本部”に呼ばれているわ」
「防衛本部……?」
レイは首をかしげた。
「俺は悪役だぞ? 防衛など関係ないだろう」
「関係あるのよ!! あなたのせいで王都が戦場なの!!」
「そうなのか?」
「そうよ!!」
◆
王都防衛本部――
王国軍、冒険者ギルド、英雄連盟、宗教国家の神官、魔導庁……
すべての勢力が集まる巨大な作戦室。
だが――
その前には数万人の兵士と冒険者が集まっていた。
「黒城レイが来るぞ!!」
「魔王を跪かせた男……」
「いや、英雄総帥を押さえつけた男だ……」
「どっちにしろ世界最強だろ……!」
いや、違うよ!!
レイは満足げに頷いた。
「フッ……歓迎されているようだな」
「歓迎じゃないよ!! 完全に“戦争の原因”扱いだよ!!」
◆
防衛本部の大広間に入ると、
そこには世界中の代表者たちが並んでいた。
王国の王、魔王軍の幹部、宗教国家の大神官、冒険者ギルドのマスター、英雄連盟総帥――
世界の“頂点”が勢揃いしていた。
そして中央には、王国軍総司令官・グランツが立っていた。
鋼の鎧、巨大な槍、圧倒的な威圧感。
その存在は、まさに“戦場の王”だった。
「黒城レイ……貴様が噂の“世界最強の危険存在”か」
「フッ……悪役だが?」
「悪役って言うな!!」
アリシアが叫ぶ。
グランツはレイを睨みつけた。
「黒城レイ。貴様のせいで世界が戦争寸前だ」
「俺のせいなのか?」
「そうよ!!」
セリスが叫ぶ。
「あなたを巡って各勢力が衝突してるの!!」
「衝突……?」
レイは少し考えたあと、満足げに頷いた。
「フッ……悪役としては悪くないな」
「悪くないじゃないのよ!!」
◆
グランツは巨大な槍を構えた。
「黒城レイ……
貴様の力、確かめさせてもらう!!」
「フッ……良いだろう」
「良くないよ!!」
グランツが突進する。
その速度は、英雄総帥ゼノスすら上回っていた。
「速い……!」
「これが王国軍総司令官……!」
「黒城レイでも避けられないんじゃ……?」
いや、避ける必要ないんだよな……
レイは微動だにせず、ただ指を鳴らした。
「――跪け」
その瞬間、グランツの身体が地面に叩きつけられた。
防衛本部全体が震え、床が砕けた。
「な……っ……!?
わ、私が……押さえつけられて……?」
グランツは震えながらレイを見上げた。
「貴様……本当に……魔王……?」
「違う。悪役だ」
「悪役で軍総司令官を押さえつけるな!!」
アリシアが叫んだ。
◆
グランツは立ち上がり、深々と頭を下げた。
「黒城レイ……
貴様こそ、我ら王国軍が忠誠を誓うべき存在……!」
「誓うなよ!!」
俺とアリシアが同時に叫んだ。
だが王国軍の兵士たちは震えながら言った。
「……悪役ロールでこの力……
やはりあなたこそ、軍の頂点……!」
「いや、なんでそうなるんだよ!!」
◆
その時――
王都全域に警報が鳴り響いた。
――ゴォォォォォォン!!
「緊急事態!!」
「魔王軍が王都に侵攻!!」
「黒城レイを奪還しに来た可能性あり!!」
「いや、奪還ってなんだよ!!」
俺が叫ぶ。
アリシアは魔力探知器を見て震えた。
「……これは……魔王軍の“幹部級”が複数……!
しかも……魔王本人の魔力反応まで……!」
「またかよ!!」
◆
王都の空が黒い霧に包まれた。
その中心に、魔王が現れた。
「黒城レイ……貴様を迎えに来た」
「迎えに来るなよ!!」
俺が叫ぶ。
魔王はレイを見つめ、震える声で言った。
「黒城レイ……
貴様こそ、我が後継者……!」
「違う!!」
アリシアが叫ぶ。
「黒城レイは魔王じゃない!!
ただの……ただの……」
アリシアは言葉に詰まった。
「……ただの何?」
俺が代わりに言った。
「ただの悪役ロールプレイヤーだよ!!」
魔王は震えながら言った。
「……悪役ロールでこの力……
やはりあなたこそ、魔王の器……!」
「いや、なんでそうなるんだよ!!」
◆
さらに――
王都の反対側から巨大な光が降り注いだ。
「これは……宗教国家の神官軍……!」
ルシアが震えながら言った。
「黒城レイ!!
あなたを神殿が保護する!!」
「保護するなよ!!」
◆
さらにさらに――
空から巨大な竜が降りてきた。
「これは……英雄連盟の竜騎士団……!」
「黒城レイ!!
あなたを英雄連盟が保護する!!」
「保護するなよ!!」
◆
そして――
地面が揺れ、冒険者ギルドのS級冒険者たちが現れた。
「黒城レイ!!
あなたをギルドが保護する!!」
「保護するなよ!!」
◆
こうして――
**王国軍、魔王軍、宗教国家、冒険者ギルド、英雄連盟が
“黒城レイを巡って王都で衝突する”という前代未聞の事態が発生した。**
世界は、完全に崩壊寸前だった。
◆
だが――
レイは静かに立ち上がった。
「……ユウ。俺はどうすればいい?」
「どうすればって……止めるしかないだろ!!
お前が原因なんだから!!」
「原因……か」
レイはゆっくりと歩き出した。
その瞬間、世界中の勢力が動きを止めた。
「黒城レイが動いた……!」
「攻撃か……!?」
「世界が終わる……!」
レイは空を見上げ、静かに呟いた。
「――跪け」
その一言で、
王国軍、魔王軍、神官軍、冒険者ギルド、英雄連盟――
すべての勢力が地面に叩きつけられた。
王都全域が震え、空気が揺れた。
「な……っ……!?
世界中の勢力が……押さえつけられて……?」
アリシアは震えながら言った。
「黒城レイ……
あなた……世界を一言で止めたのよ……!」
「止めたのか?」
「止めたのよ!!」
◆
こうして――
**黒城レイは“世界を一言で止めた存在”として、
世界中の勢力から“絶対的頂点”として扱われることになった。**
もちろん本人は、まったく理解していない。
そして俺は――
またしてもツッコミ役として地獄を見るのだった。




