【第11話】 英雄連盟の崩壊危機と、悪役の影が大陸を統べる
黒城レイが“人類最強と神獣と魔王を跪かせた”という衝撃は、
冒険者ギルドを超えて――
ついに **英雄連盟** にまで届いていた。
いや、届いたどころではない。
英雄連盟は、もはや“崩壊寸前”だった。
「黒城レイが神獣を押さえつけた……?」
「いや、押さえつけたどころか“神域を揺らした”らしい……」
「そんな存在……英雄の敵か、英雄の頂点か……」
世界中の英雄たちが震え、
各国の勇者たちは武器を構え、
連盟本部はパニックに陥っていた。
レイはそれを聞きながら、なぜか満足げに頷いていた。
「フッ……我が闇の名は、ついに英雄たちの耳にも届いたか」
「いや、悪い意味でだよ!!」
俺――白峰ユウは、朝からツッコミで喉が枯れそうだった。
そしてレイの後ろには、監視官セリス、聖女アリシア、神官長ルシアがついてくる。
「黒城レイ。今日、あなたは“英雄連盟本部”に呼ばれているわ」
「英雄連盟……?」
レイは首をかしげた。
「俺は悪役だぞ? 英雄など関係ないだろう」
「関係あるのよ!! あなたのせいで英雄たちが震えてるの!!」
「そうなのか?」
「そうよ!!」
◆
英雄連盟本部――
世界中の勇者・英雄・伝説級戦士が集まる巨大な塔。
だが――
その前には数千人の英雄が集まっていた。
「黒城レイが来るぞ!!」
「魔王を跪かせた男……」
「いや、神獣を押さえつけた男だ……」
「どっちにしろ世界最強だろ……!」
いや、違うよ!!
レイは満足げに頷いた。
「フッ……歓迎されているようだな」
「歓迎じゃないよ!! 完全に災害扱いだよ!!」
◆
英雄連盟の大広間に入ると、
そこには世界最強の英雄たちが並んでいた。
勇者、剣聖、賢者、竜騎士、魔導皇――
各大陸の“最強”が勢揃いしていた。
そして中央には、英雄連盟総帥・ゼノスが立っていた。
白髪に金の瞳、巨大な魔力をまとった男。
その存在感は、まさに“人類の希望”だった。
「黒城レイ……貴様が噂の“神獣を跪かせた男”か」
「フッ……悪役だが?」
「悪役って言うな!!」
アリシアが叫ぶ。
ゼノスはレイを睨みつけた。
「黒城レイ。貴様が神獣を押さえつけたというのは本当か?」
「押さえつけたというより……少し跪かせただけだが?」
「それが問題なんだよ!!」
英雄たちがざわめく。
「神獣を跪かせるなんて……」
「人間の領域じゃない……」
「やはり魔王候補……いや、魔王そのもの……」
レイは腕を組み、堂々と立っていた。
「……ユウ。俺はどうすればいい?」
「どうすればって……誤解を解くしかないだろ!!」
「誤解……?」
「そうだよ!! お前は魔王でも神でも英雄でもないって言え!!」
レイは少し考えたあと、英雄連盟に向かって言った。
「俺は魔王でも神でも英雄でもない」
連盟が静まり返る。
「……では、何者だ?」
レイは胸を張って答えた。
「悪役だ」
「言うなって言ってるだろおおおおお!!」
英雄連盟が大混乱に陥った。
「悪役……!?」
「魔王より危険では……?」
「いや、悪役の方がタチが悪い……!」
セリスが絶望した顔で言った。
「黒城レイ……あなた、世界を滅ぼす気……?」
「そんなつもりはない。俺は悪役ロールを楽しんでいるだけだ」
「それが一番危険なんだよ!!」
◆
ゼノスは剣を構えた。
「黒城レイ……
貴様の力、確かめさせてもらう!!」
「フッ……良いだろう」
「良くないよ!!」
ゼノスが突進する。
その速度は、魔王すら上回っていた。
「速い……!」
「これが英雄連盟総帥……!」
「黒城レイでも避けられないんじゃ……?」
いや、避ける必要ないんだよな……
レイは微動だにせず、ただ指を鳴らした。
「――跪け」
その瞬間、ゼノスの身体が地面に叩きつけられた。
連盟全体が震え、床が砕けた。
「な……っ……!?
わ、私が……押さえつけられて……?」
ゼノスは震えながらレイを見上げた。
「貴様……本当に……魔王……?」
「違う。悪役だ」
「悪役で英雄連盟総帥を押さえつけるな!!」
アリシアが叫んだ。
◆
ゼノスは立ち上がり、深々と頭を下げた。
「黒城レイ……
貴様こそ、我ら英雄連盟が忠誠を誓うべき存在……!」
「誓うなよ!!」
俺とアリシアが同時に叫んだ。
だが英雄たちは震えながら言った。
「……悪役ロールでこの力……
やはりあなたこそ、人類の頂点……!」
「いや、なんでそうなるんだよ!!」
◆
その時――
連盟全域に警報が鳴り響いた。
――ゴォォォォォォン!!
「緊急事態!!」
「魔王軍が連盟に接近!!」
「黒城レイを奪還しに来た可能性あり!!」
「いや、奪還ってなんだよ!!」
俺が叫ぶ。
アリシアは魔力探知器を見て震えた。
「……これは……魔王軍の“幹部級”が複数……!
しかも……魔王本人の魔力反応まで……!」
「またかよ!!」
◆
連盟の外が黒い霧に包まれた。
その中心に、魔王が現れた。
「黒城レイ……貴様を迎えに来た」
「迎えに来るなよ!!」
俺が叫ぶ。
魔王はレイを見つめ、震える声で言った。
「黒城レイ……
貴様こそ、我が後継者……!」
「違う!!」
アリシアが叫ぶ。
「黒城レイは魔王じゃない!!
ただの……ただの……」
アリシアは言葉に詰まった。
「……ただの何?」
俺が代わりに言った。
「ただの悪役ロールプレイヤーだよ!!」
魔王は震えながら言った。
「……悪役ロールでこの力……
やはりあなたこそ、魔王の器……!」
「いや、なんでそうなるんだよ!!」
◆
こうして――
**黒城レイは“英雄連盟総帥と魔王を跪かせた存在”として、
世界中の英雄からも“頂点”として扱われることになった。**
もちろん本人は、まったく理解していない。
そして俺は――
またしてもツッコミ役として地獄を見るのだった。




