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瞳の色だけで選ばれた花嫁だと思っていましたが、龍人公爵に溺愛されているようです  作者: 蒼乃つむぎ


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運命の輪、その先で

占い師が差し出した一組のカードから、クラリッサは静かに一枚を引き、机の上へ置く。

占い師はカードを確認し、わずかに目を細めた。

「運命の輪の逆位置ですね」

「運命の輪……逆位置……?」

聞き慣れない言葉に、クラリッサは首をかしげる。

隣のセオドリックも占い師へ視線を向けた。

「どういう意味なのですか?」

クラリッサの問いに、占い師は穏やかな笑みを浮かべる。

「願いが叶わない、というわけではありません。ただ、あなたが今思い描いている形とは、少し違う結末へ向かう可能性があります」

クラリッサは表情を曇らせる。

「……それは、悪い結果ということですか?」

「一概に悪いとは言えません。先ほどお伝えした通り、願いが叶わないという意味ではありませんから」

占い師はゆっくりとカードを振る。

「未来とは、不思議なものです。望んだ道を外れたと思った先で、思いも寄らない幸運を手にする方もおります」

そう言って、カードを丁寧に重ね直す。

「もっとも――占いは未来を決めるものではなく、可能性を映す鏡にすぎません」

占い師は小さく笑った。

「当たるも八卦、当たらぬも八卦ですよ」



店を出ると、占ってもらったらしい人々の笑い声が聞こえる。

(あの方たちは良い結果だったのね……)

クラリッサは足元へ視線を落とす。

「……気になるのか」

隣に立つセオドリックが静かに尋ねる。

「信じすぎるものではない、と分かってはいるのですが……」

クラリッサは困ったように、力のない笑みを浮かべた。

「思い描いている形とは違う結末、と言われると、少しだけ不安になってしまって」

願いが叶わないわけではない。

そう聞いてもなお、「違う形」という言葉だけが胸に引っ掛かっていた。

セオドリックは前を向いたまま、小さく息を吐く。

「気にする必要はない」

その声はいつも通り落ち着いている。

「未来はまだ決まっていない。占い師もそう言っていただろう」

「はい……」

「それに、もし思い描いた形と違う未来になったとしても」

セオドリックはクラリッサへ視線を向ける。

「その未来を良いものにすればいいだけだ」

その言葉は飾られた慰めではないとわかるからこそ、クラリッサの表情は少しだけ和らいだ。

「……そうですね」

小さく微笑むと、先ほどまで胸を覆っていた重苦しさが、ほんの少しだけ軽くなったような気がした。

「せっかくの外出ですもの。あまり気にしすぎるのもよくありませんね」

「そうだな」

二人は気持ちを切り替え、再び領都の大通りへ足を向けた。


色鮮やかな布地を扱う店、香辛料の香りが漂う露店、精巧な細工が並ぶ工房。

活気ある街並みを歩きながら、クラリッサは焼き菓子や茶葉、保存の利く干し果実などを選んでいく。

「皆さんにもお土産を買って帰りたいです」

「オスカーたちか」

「はい。屋敷を守ってくださっていますし、何か喜んでいただけるものがあればと思いまして」

「そうだな。十分な数を用意しよう」

気が付けば、二人の荷物はかなりの量になっていた。

店の者へ領主館まで届けるよう頼むと、荷物は後ほど馬車で運ばれることになった。

身軽になったクラリッサは、ほっと息をつく。

「夕食は領都のお店でいただく予定でしたね」

「ああ」

クラリッサが空を見上げると、まだ日が高い。

夕食には少し早い時間だった。

セオドリックが辺りを見回す。

そのとき、クラリッサが「あっ」と小さく声を上げた。


「占い師さんがおっしゃっていた『開運スポット』がありましたね」

「ああ」

占いの後、占い師が『本来は別料金ですが、領主には特別に教えます』と渡してくれた紙があるのだ。

「せっかくですし、行ってみませんか?」

占いの結果は少し気になったままだが、だからこそ占い師が勧めてくれた場所にも興味が湧いていた。

セオドリックは懐から小さく折り畳まれた紙を取り出す。

「ここから歩いて行ける距離だな」

「では、夕食まで少し散策しましょう」

セオドリックは頷いた。

二人は地図に記された印を頼りに歩き出した。

お読みいただきありがとうございます。

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