6.協力依頼
魔王城に集った四人は、しばしのあいだ、それぞれに城内で時を過ごしていた。
正午が近づいた頃、ガルマイドは再び三人を応接室へと呼び出した。
「……それで、私たちに話というのは、何ですか?」
プラムバナードが、改めてガルマイドに視線を向けた。今回、四天王をこうして集結させた真意を、直接尋ねる。
「まぁ、大方は察しがつくがな」
アンダルシアはそう呟くと、グラスの水を一口、ゆっくりと飲んだ。
ガルマイドは三人の顔を順に見渡し、静かに口を開いた。
「ここに来てもらったのは、他でもない。今のバルザス様の現状と、そして今後についてだ」
「君たちも見たと思うが、バルザス様は今もなお危篤の状態にある。このままでは、魔王としての職務を続けるのは難しいだろう。クロム卿の見解では、一ヶ月と持たないとのことだ」
キースレインが、沈んだ声で頷いた。
「私も先ほど確認しました。あれほど頑健であられたバルザス様が……未だに、信じがたいことです」
四人の間に、短い沈黙が落ちた。
ガルマイドは、その沈黙を丁寧に受け止めてから、言葉を継いだ。
「だが、いつまでも悲しみに浸っているわけにはいかない。君たちも承知の通り、魔界は今、数多くの問題を抱えている。それを解決するためには、魔族の頂点に立つリーダー、魔王が必要だ。速やかに後継者を決めねばならない」
プラムバナードが、静かに問いかけた。
「確かに、その通りです。ですが……一概に後継者と言っても、どのように決めるのですか?」
「近日中に、万魔殿で新たな魔王を決める会議を開こうと思っている。そこでだ」
ガルマイドは一度、息を継いだ。
「私は、その会議で選挙を行おうと考えている」
「選挙……ですか」
プラムバナードが、わずかに目を見開いた。
「私は、この魔王選挙に立候補する。是非、君たちの力を貸してほしい」
そう言うと、ガルマイドは三人に向かって、深く頭を下げた。
三人は互いに顔を見合わせる。
「別に、俺たちは構わないが……他の魔族たちがどう出るかは、分からんぞ」
「そもそも、会議自体は開けるとしても、選挙という形式を通せるかどうかは、難しいかもしれませんよ」
突如、選挙を開くと言ったガルマイドに対し、アンダルシアたちはやや困惑気味に答えた。
ガルマイドは顔を上げて再び口を開いた。
「確かに、私が魔王になることで快く思わない者たちもいるだろう。……だが、それはこれまでの『魔王』という存在や、魔界の在り方を前提としたものに過ぎないと思う」
「……どういうことですか?」
キースレインが、真剣な眼差しで問うた。
ガルマイドは、三人の顔を交互に見ながら、声を落として続けた。
「私が魔王になったら——」
「なっ……!?」
三人は、ガルマイドが語った『魔王像』に、揃って絶句した。
「無論、強制はしない。私の考えに賛同できないのであれば、降りてもらって構わない。ただ、少しでも共感できるのであれば……君たちと共に、魔界の未来を見据えたい」
ガルマイドは、再び頭を下げた。
最初に口を開いたのは、アンダルシアだった。
「……分かった。お前に、魔界の未来を背負う覚悟があるのなら、俺はこれ以上は口出ししない。お前と歩く道を選ぶ」
続けて、プラムバナードとキースレインも、静かに頷いた。
「全く、君には昔から驚かされっぱなしだよ。でも……それも君の魅力の一つなんだろうね。僕でよければ、力になるよ」
「これから、新たな未来へと進むのですね。正直、生まれ変わる魔界を想像すると、少し怖れるところもあります。ですが……貴方の描く未来は、きっと明るいものになっているのでしょう。私も、参加させていただきます」
三人の言葉を受け、ガルマイドは深く息を吐いた。
「……三人とも、ありがとう」
「幸い俺たちは魔界でも顔が広い。ある程度、話が通る魔族には予め根回ししておく。だからお前は、自分のやるべきことをやれ」
「会議の日程や段取りは、僕の方で整えておくよ」
「私は、各地にいる魔族の皆さんへ招待状を送ります」
四人は、間近に迫ったその日に向けて、硬い結束を固めるのであった。




