↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/21

第18話 便利なはずが、仕事が増えた。

午前六時十五分。


アラームが鳴った。


「……あと五分」


五分後。


再びアラームが鳴る。


「……クソが」


仕方なく布団から出た。


顔を洗い、着替え、スマホを確認する。


メリカリから通知が来ていた。


昨日売れた、古いゲーム機の接続ケーブル。


正確には、売れたのに見つからないケーブルだ。


購入者には事情を説明してある。


その返事が届いていた。


『承知しました。見つからない場合はキャンセルでも大丈夫です。よろしくお願いします。』


「……いい人だな」


申し訳なさが増した。


商品は確かにあった。


写真も撮った。


型番も確認した。


それなのに、売れた途端に行方不明。


「……どこ行ったんだよ」


出品写真をもう一度確認する。


黒いケーブル。


特徴のある端子。


間違いなく、俺が撮影したものだ。


「……帰ったら探すか」


時計を見る。


「……やべ」


朝から探し物をしている場合ではない。


急いで支度を済ませ、車に乗り込んだ。



午前七時二十五分。


職場に到着。


いつもの喫煙場所でタバコを吸い、ブラックコーヒーを飲む。


午前七時四十五分。


仕事開始。


午前中は、いつもどおりに過ぎた。


昼休み。


弁当を食べながら、スマホでアニメの新作情報を眺める。


「……お、続編やるのか」


少し気になっていた作品だった。


放送時期を確認し、別の記事を開く。


新しいゲームの発売情報。


昔の作品のリメイク。


「……最近リメイク多いな」


そんなことを考えているうちに、昼休みは終わった。


午後も仕事をこなし、午後五時十五分。


「……終わった」


今日は寄り道せずに帰宅した。


着替えを済ませ、冷蔵庫にビールを入れる。


「……さて」


昨日散らかしたゲーム用品を、もう一度広げた。


黒いケーブル。


白いケーブル。


赤、白、黄色。


「……多すぎだろ」


一本ずつ確認する。


売れたケーブルは、特徴のある黒い端子がついている。


だが、見当たらない。


「……ねえな」


机の上。


押し入れ。


テレビ台。


昨日探した場所を、もう一度確認する。


「……同じことやってんな、俺」


そこで、ふと思いついた。


「……そういや、AIって写真も見れるんだっけ?」


最近、テレビやネットでよく見かけるAI。


質問に答えるだけでなく、画像を見て何が写っているか判断するらしい。


「……試してみるか」


スマホで調べる。


いくつかのアプリが表示された。


その中から、無料で使えるものを選んだ。


名前は『アシスト』。


『写真から商品を判別。説明文の作成や価格調査をサポートします。』


「……へえ」


便利そうだ。


インストールする。


起動すると、画面に案内が表示された。


『こんにちは。画像を送信すると、内容を分析できます。』


「……よし」


俺は床に広げたケーブルを撮影した。


そして、写真を添えて入力する。


『この中に、出品したケーブルと同じものがあるか確認して』


続けて、メリカリに掲載した写真も送る。


数秒後。


『確認しました。現在の写真には、同じ端子形状のケーブルは見当たりません。』


「……やっぱりな」


『ただし、出品写真ではケーブルの一部が机の奥へ伸びています。』


「……ん?」


写真を拡大する。


確かに、黒いケーブルの先が机の裏へ消えていた。


「……待てよ」


俺は机の裏を覗き込んだ。


電源タップ。


充電器。


使っていない機器。


そして、古いゲーム機。


その背面に、黒いケーブルが一本刺さっていた。


「…………」


引き抜く。


型番を確認する。


出品写真と見比べる。


「……あった」


間違いない。


売れたケーブルだ。


「……お前、ここにいたのかよ!」


昨日あれだけ探したのに。


机の裏に刺さっていた。


「……何やってんだ俺」


スマホを見る。


AIは、追加の説明を表示していた。


『撮影時の接続状態が、保管場所の特定に役立った可能性があります。』


「……なるほどな」


写真を見ただけで、ここまで分かるのか。


俺は少し感心した。


「……AI、便利じゃねえか」


購入者に連絡する。


『お待たせして申し訳ありません。商品を確認できましたので、明日発送いたします。よろしくお願いいたします。』


送信。


「……よし!」


ようやく一件落着だ。


ケーブルを軽くまとめ、プチプチで保護する。


今回は段ボールなんて使わない。


ゆうパケットポストミニの専用封筒を取り出す。


サイズを確認し、商品を収めた。


「……楽勝だな」


あとは発送手続きをして、郵便ポストに投函するだけだ。


もちろん、明日忘れなければ。


「……忘れんなよ、俺」


封筒を玄関に置いた。


そして、スマホをもう一度手に取った。


「……ほかにも使えるんじゃねえか?」


押し入れには、まだ売れそうなものが残っている。


古いゲームソフト。


コントローラー。


攻略本。


「……よし。次だ」


俺は古いゲームソフトを一本取り出した。


ケースには傷がある。


説明書も少し折れていた。


「……これ、いくらになるんだ?」


スマホで写真を撮る。


アシストに送信した。


『このゲームソフトの商品名と、中古の相場を教えて』


数秒後。


『こちらは人気シリーズのゲームソフトです。中古価格は状態によって異なります。』


その下に、商品名と参考価格が表示された。


「……ほう」


思っていたより高い。


「……マジかよ」


だが、よく見ると。


「……ん?」


表示された商品名が違う。


似たシリーズではある。


しかし、俺が持っているのは別の作品だ。


「……おい」


写真をもう一度確認する。


ケースのタイトルは、はっきり読める。


俺は入力した。


『タイトル違うぞ。写真をよく見て』


『申し訳ありません。再確認します。』


数秒後。


『こちらの商品は、先ほどとは別の作品でした。』


「……だろうな」


参考価格も変わった。


さっきの半分以下だった。


「……危ねえな」


危うく高値で出品するところだった。


いや、高値で出すだけなら自由だ。


問題は、商品名まで間違えることだ。


「……これ、鵜呑みにしたらダメなやつか」


便利だが、万能ではない。


それだけは分かった。


次に、昨日の攻略本を取り出した。


表紙に傷。


角折れ。


書き込み。


染み。


状態は悪い。


それでも、売れた実績はある。


「……こいつも見てもらうか」


表紙と裏表紙。


傷のある部分。


書き込みのあるページ。


何枚か写真を撮った。


アシストに送る。


『この本をメリカリで出品する。タイトルと説明文を考えて』


すぐに文章が表示された。


『中古ゲーム攻略本です。表紙に擦れや角折れ、内部に書き込みや染みがあります。状態をご確認のうえ、ご検討ください。』


「……おお」


これは使える。


文章を考える手間が省ける。


「……悪くねえな」


さらに画面を眺めていると、別の機能が目に入った。


『画像を作成する』


「……画像?」


説明を読む。


写真をもとに、商品紹介用の参考画像を作れるらしい。


「……へえ」


俺は少し考えた。


商品写真だけでは、どうしても地味になる。


だったら、紹介用の画像を一枚追加してもいいかもしれない。


ただし、実物と違うものを載せたら困る。


「……注意書きは必要だな」


俺は攻略本の写真を選び、指示を入力した。


『この本を紹介する参考画像を作って。商品自体のデザインは変えないで。可愛い女の子も入れて』


送信。


数秒後。


画像が完成した。


「……おお!」


画面には、銀色の髪をした美少女がいた。


大きな瞳。


少し不思議な雰囲気。


手には、古い攻略本。


「……いいじゃん」


思わず感心した。


だが、拡大してみる。


「……ん?」


本のタイトルが違う。


しかも、表紙の絵まで変わっている。


「……おいおい」


俺は入力した。


『女の子はそのままでいい。商品の表紙だけ元の写真に合わせて』


『承知しました。修正します。』


数秒後。


新しい画像が表示された。


「……お?」


表紙は元に戻っている。


「……やればできるじゃねえか」


だが。


「…………」


女の子の手が三本あった。


「……何でだよ」


一本は本を持っている。


もう一本は腰に添えている。


そして、三本目が肩のあたりから生えていた。


「……お前、何の種族だよ」


俺は入力した。


『手が三本ある。二本に直して。ほかは絶対に変えないで』


『申し訳ありません。修正します。』


数秒後。


「……よし」


手は二本になった。


だが、今度は本が二冊に増えていた。


「……増やすな!!」


俺はスマホに向かって叫んだ。


慌てて入力する。


『本は一冊! 手は二本! 商品の表紙は元のまま!』


『承知しました。』


次の画像が表示される。


「…………」


本は一冊。


手は二本。


表紙も正しい。


「……やっとか」


だが、女の子が別人になっていた。


「……誰だよ、お前!!」


最初の銀髪の美少女はどこへ行った。


代わりに、金髪の女性が微笑んでいる。


「……いや、可愛いけどさ」


そういう問題ではない。


「……最初の子を返せよ!」


俺は入力した。


『一番最初の女の子に戻して。商品は今の状態を維持して』


『申し訳ありません。画像の生成回数が上限に達しました。』


「…………は?」


画面を見つめる。


『引き続き画像を作成するには、プレミアムプランをご利用ください。』


「……来たよ」


無料で始められる。


ただし、途中から有料。


予想どおりだった。


「……いくらだよ」


プランの説明を開く。


月額料金が表示された。


「……高っ!」


もちろん、毎日使えば元は取れるかもしれない。


だが、今日のところは画像を一枚も完成させていない。


「……お前が間違えた分も、回数に入るのかよ」


返事はない。


「……そりゃねえだろ」


俺は椅子にもたれた。


便利だった。


ケーブルも見つかった。


説明文も作れた。


だが、画像一枚で何度も修正させられた。


「……結局、仕事増えてんじゃねえか」


スマホを置く。


机の上には、古い攻略本があった。


「……まあ、明日でいいか」


出品は一時中断。


ビールを取り出し、テレビをつける。


ちょうどアニメが始まるところだった。


「……お、間に合った」


今日はもう、何も考えたくない。


画面の中では、剣を持った主人公が巨大な城へ向かっていた。


「……こういうのでいいんだよ」


ビールを一口飲む。


そのとき。


机の上のスマホが震えた。


「……ん?」


アシストから通知が届いている。


『本日のご利用ありがとうございました。』


「……はいはい」


続けて、もう一通。


『より便利にご利用いただくには、プレミアムプランへのアップグレードがおすすめです。』


「……しつけえな」


俺は通知を消した。


だが、その下に、もう一行あった。


『別のAIサービスもお試しになりますか?』


「……は?」


自分のアプリなのに、別のAIを勧めてきた。


「……お前、商売する気あんのか?」


画面には、いくつかのサービスが並んでいる。


文章に強いもの。


画像に強いもの。


会話が得意なもの。


「……へえ」


世の中には、いろいろあるらしい。


「……ま、明日でいいか」


スマホを伏せた。


テレビに目を戻す。


画面の中では、主人公が城の門を開けようとしていた。


その門の形が、どこかで見たものに似ていた。


「……ん?」


俺は首をかしげた。


だが、次の瞬間には場面が切り替わった。


「……気のせいか」


そのまま続きを見始める。


机の上には、出品を見送った攻略本。


その隣には、昨日見つけた古いカード。


『受け取ったものは、返せない』


そして、伏せられたスマホ。


画面は暗い。


通知もない。


ただ、アシストの利用履歴には、一枚だけ見覚えのない画像が保存されていた。


石造りの城。


白い扉。


その前に立つ、小さな人影。


画像のタイトルは、たった四文字。


『次の購入者』


もちろん、俺はまだ、その画像を見ていない。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


10月の更新は、今回で最後となります。


売れたり、売れなかったり。

探したり、見つからなかったり。

そして、ついにAIまで登場しました。


便利なはずのAIに振り回される主人公ですが、彼の知らないところで、何かが少しずつ動き始めています。


11月からは、物語もさらに加速していく予定です。


果たして主人公は、無事にせどりで稼げるのか。

それとも、別の意味で人生が変わってしまうのか。


続きが気になった方は、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります!


それでは、11月の更新でまたお会いしましょう!


hassssy

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。