第1章:3.1 荒廃した村落の覗き見と足音
土の路面には幾重にも荷車の車輪が軋んだ跡が刻まれ、深さの異なる暗褐色の溝となって延々と続いていた。
五人は一列になって街道の端を歩いていた。
足元の草鞋はごわごわとして肌を刺すが、陽の光で固く干からびた土塊や小石の上を踏みしめても、先ほどのように野草の泥水の中を素足で歩かされるような骨身に染みる苦痛は、どうにか免れていた。
だが、正午の太陽が次第に天頂へと昇るにつれ、周囲の大気にはじっとりとした熱気が立ち込め始めていた。
リネンローブには裏地など一切なく、薄い一層の粗い繊維が直接肌に張り付いている。
一歩踏み出すたびに、乾いて硬くなった麻糸の端が少女たちの敏感で柔らかな素肌を擦り、堪え難いほどのチクチクとした痒みをもたらしていた。
先頭を歩く闕恆遠は、両腕をローブの両脇へと自然に垂らし、平然とした様子で前方の地形を観察しているように見せていたが、実際には背中の神経を張り詰めた弓のように強張らせていた。
背後から伝わってくる四人の少女たちが懸命に忍ばせる足音や、ローブが擦れ合う微かな衣擦れの音が、彼の耳に鮮明に届いていた。
空気の中に漂っていた朝の清冽な霧はとっくに消え失せ、代わりに遠くから微かに流れてくる薪の焦げた匂い、家畜の糞尿が放つ酸っぱい腐臭、そして発酵した麦汁特有の僅かな苦みが鼻腔を突いた。
「前を……」
「着いたみたいだ」
闕恆遠はわずかに盛り上がった土の丘の縁で足を止め、背後へ向けて声を潜めて告げた。
後ろの四人の少女たちもすぐさま足を止め、慎重に闕恆遠の脇へと身を寄せた。
落後し閉ざされたその寒村の全貌が、何一つ隠されることなく五人の目の前へと広がっていた。
村落の外周は、先端を尖らせた不揃いな灰黒色の丸太が粗末な柵となって囲み、その表面には枯れた棘付きの蔓が絡みついていた。
村の中には、削られてすらいない黄土の泥塊、荒削りな石、そして黒ずんだ茅を積み上げただけの平屋が数十棟ほど雑然と散らばっていた。
多くの屋根の茅はすでに腐敗してカビが生え、陽光の下で薄汚れた暗緑色の光沢を放っている。
ぬかるんだ路地では、痩せ細った灰褐色の剛毛を持つ見知らぬ家畜が、濁った水たまりの脇で尻尾を揺らしていた。
素足のまま全身を黄色い泥にまみれさせた子どもたちの群れが、木の棒を手に泥濘の中を追いかけっこして遊んでいる。
「ここ……」
伊凝雪は大きな瞳をかすかに見開き、無意識のうちに隣に立つ悦清禾のローブの袖口をきゅっと掴んだ。
「テレビでやってた中世のドキュメンタリー番組よりも、ずっと遅れてる感じがするよぉ……」
「まるで原始社会から封建時代に足を踏み入れたばかりみたい」
「少なくとも、ここにある程度の規模を持った人類文明がある証拠よ」
悦清禾の凛とした瞳が、村の入り口にある見張り台や泥造りの平屋の構造を素早く見定め、整然とした小声で分析を口にした。
「防衛設備があって、」
「家畜が飼育されていて、」
「それに定住用の家屋が存在するわ」
「つまりこの地域は、平時においては一定の治安と秩序が維持されているということね」
「ただ、」
「物質的な水準が極めて乏しいのは明白だけれど」
千慕羽は整った鼻の頭をわずかにしかめ、耳元にこぼれ落ちた金茶色のウェーブヘアを指先でそっと耳の後ろへと払いながら、やるせない溜息混じりに零した。
「空気の匂いがすごく独特だし……」
「それに、あの人たちが着ている服、」
「どれも色褪せるまで洗い古された粗末な布地ばかりだわ」
「継ぎ接ぎだらけの人もたくさんいるみたい」
玥映嵐は自らの身にまとう、質こそ劣るものの新品で皺一つない灰色のリネンローブを見下ろし、その面持ちをことのほか重く引き締めた。
「慕羽の指摘は的を射ているわ」
「あの村人たちの身なりをよく見て」
「彼らの麻布は激しく摩耗しているだけでなく、」
「色も斑で薄汚れた灰黄色をしている」
「私たちが着ているこの五着も同じ粗末な麻布だけれど、」
「織り目は均一で、汚れ一つなく、」
「何より仕立ての型が完全に一致しているわ」
「こんな閉ざされた辺境で、見慣れぬ仕立ての小奇麗な服を着た余所者が五人も現れれば、それ自体が格好の標的になりかねない」
闕恆遠は少女たちの冷静な分析に耳を傾けながら、その鋭さに密かに舌を巻いていた。
彼は横顔を向け、四人に向けて最後の確認を小声で口にした。
「道中で打ち合わせた設定は、」
「みんなちゃんと覚えているな?」
「俺たちは遠くの谷からやって来た、難に遭った行商人だ」
「道中で魔獣か野盗の襲撃を受けて、」
「荷物も身の回りの品も全部奪われ、」
「命からがらここまで逃げてきた」
「対外的には、」
「あんたたち四人は……」
「全員、俺の妻ってことにしてある」
最後の言葉を紡いだ瞬間、闕恆遠の声には僅かに乾いた掠れが混じり、視線を無理やり前方に据え置いて、少女たちの瞳を直視することを頑なに避けていた。
伊凝雪の愛らしい顔立ちにさっと朱が走り、彼女は唇を尖らせて小さく不満を漏らした。
「わかってるわよぉ……」
「どうせお芝居なんだから……っ」
「闕恆遠、心の中でニヤニヤしたりしないでよね!」
悦清禾は伊凝雪の手の甲を優しく宥めるように叩き、それから顔を上げて闕恆遠を見つめた。その瞳には、並々ならぬ真剣さと信頼が宿っていた。
「事の重大さは理解しているわ」
「村に入ったら、」
「交渉はすべてあなたに任せる」
「私たち四人はあなたの後ろに控えて、」
「極力自分からは口を開かないようにするわ」
「行こう」
闕恆遠は深く息を吸い込み、背筋をピンと伸ばした。
緊張を滲ませる四人の少女を背後に従え、村の入り口へと続く泥の小道へと足を踏み出した。




