第1章:2.1 緑葉が編む羞恥の境界
四人の少女たちは、それぞれの乱れた息遣いとまったく異なる移り香を漂わせながら、極めて慎重に闕恆遠の身元へと寄り添うように集まった。
草の先についた冷たい朝露が膝を濡らす。
わずか一寸動くだけでも、空気中の冷たさが鋭い針のように、敏感で柔らかな素肌へと突き刺さった。
だが、チュエ・ハンユエンの手のひらにある、淡い灰金色の微光を放つスマートフォンに視線が落ちた瞬間、束の間の驚愕が全身を覆い尽くしていた羞恥心を上回った。
「異界交易所……」
悦清禾の凛とした声には、隠しきれない掠れが混じっていた。
白くすらりとした長い両脚を隙間なく固く閉じ合わせ、彼女は身を守るかのように極限まで体を丸めていた。
両腕を胸の前で固く交差させ、息を呑むほどに豊かな膨らみを懸命に自らの影の中へと押し込んでいる。
「現在の権限Lv.1……」
「難民級……」
ユエ・チンホーは画面の中央に浮かぶ、古い羊皮紙のような質感を持った文字列を読み上げ、整った眉をきつく寄せた。
「つまり、」
「スマートフォンのハードウェアそのものは残っているけれど、」
「内部の根本的なコードは、」
「この世界の正体不明の力によって、強制的に書き換えられたってことね」
「今はコードの分析なんかしてる場合じゃないよぉ……っ!」
伊凝雪は両膝の間に顔を埋めたまま、泣き声の混じったやり場のない声を漏らした。
長い黒髪の隙間から覗く白い項は、今にも血が滲み出そうなほど赤く染まっていた。
「闕恆遠……」
「あ、あんた、早く向こう向いてよぉ……っ!」
「スマホを見るにしても、」
「そうやって堂々と私たちの真ん中に座らないでよっ!」
「私……」
「もう恥ずかしくて、顔すら上げられないんだから……っ」
伊凝雪が訴える声に合わせて、すらりとした細いふくらはぎが、羞恥と朝の冷気で小刻みに震えていた。
闕恆遠は深く息を吸い込み、喉仏を激しく上下させた。
この場にいる唯一の男として、少しでも視線を落とせば、いかなる正常な男の理性をも焼き尽くしかねない四つの純白の曲線が目に飛び込んでくるのだ。
彼は強く舌先を噛み、鋭い激痛によって無理やり正気を保ちながら、極めて自覚的に体を反転させ、四人の少女たちに背を向けた。
「わかった、」
「背中を向けるよ」
「絶対に後ろは見ないって誓う」
闕恆遠は背筋をピンと伸ばした。小麦色の逞しい背筋のラインが、朝の光の下で引き締まった凹凸を際立たせる。
「でも、みんな聞いてくれ」
「いつまでもここに立ち往生してるわけにはいかない」
「さっき体を向けた時に見えたんだが、」
「右斜め前、二百メートルほどの場所に土煙の立った街道がある」
「ってことは、ここには人間か、知性を持った生き物が活動している証拠だ」
「もしこのあと、現地の先住民や野盗、あるいは通行人が通りかかって……」
「今の俺たちの姿を見られたら……」
闕恆遠は最後まで言葉にしなかったが、そこにいる全員が、その結末がどれほど恐ろしいものになるかを理解していた。
武器一つ持たず、一糸まとわぬ青年と、同じく完全に服を失った、並外れて美しい四人の少女。
野蛮で過酷な異世界の荒野において、それは屠殺を待つ肥えた子羊の群れと何ら変わりがなかった。
「恆遠の言う通りよ」
玥映嵐が、真っ先に自らの感情を強引に理性へと引き戻した。
彼女は胸の前を両手で固く守りながら、正座の姿勢を崩さない。
高貴で端整な卵形の顔立ちには依然として赤みが差していたが、その眼差しには確かな意志が宿り始めていた。
「私たちは一刻も早く、体を隠せるものを用意しなければならないわ」
「たとえ一時的な凌ぎであっても、」
「この無様な姿のまま、人の目に触れる場所に晒されるわけにはいかないもの」
玥映嵐は顔を上げ、周囲へと視線を巡らせた。
そして、すぐ近くに生えている数株の背の高い異世界の広葉灌木へと目を留める。
その植物は極めて奇妙な形状をしていた。
葉の一枚一枚がゆうに長さ一メートル、幅半メートルほどもあり、縁には淡い銀色の筋が走り、質感はまるで肉厚な芭蕉の葉のようだった。
「あそこに大きな葉があるわ」
「それに、蔓のような長い草も」
玥映嵐は言葉を紡ぎながら、慎重に立ち上がろうと身じろぎした。
だが、腰を伸ばそうとした瞬間、全身を包む何一つ遮るもののない冷たさと、いつ誰に見られるかわからないという恐怖が、普段は淑やかで落ち着き払ったこの名門令嬢の足をもたつかせ、草地の上で危うくよろめかせた。
彼女は歯を食いしばり、極めて遅い小股の歩みでその植物の側へと擦り寄った。
そして白く華奢な指を伸ばし、太い葉柄を指先でちぎり取ろうと力を込める。
「痛っ……」
かすかな息を呑む音が漏れた。
異世界の植物の繊維は、想像していたよりも遥かに強靭だった。
玥映嵐の柔らかな指先では葉柄を折り取ること叶わず、かえって白くきめ細やかな指の腹に、痛々しい筋状の赤い鬱血を作ってしまっただけだった。
「俺がやろう」
背を向けたままの闕恆遠がその物音を聞き咎め、低い声で言った。
「ダメぇっ!」
伊凝雪が怯えた小鹿のように悲鳴を上げた。
「あんたが立ち上がったら、全部見えちゃうじゃないのよぉ!」
「目は閉じる」
闕恆遠は深く息を吸い込み、その声には一切の迷いもない厳しさと決意が宿っていた。
「両目を固く閉じる」
「絶対に開けない」
「誰でもいいから、」
「俺の手首を引いて、」
「その植物の前まで連れて行ってくれ」
「腕力なら俺のほうがある」
「葉っぱを引きちぎる役は、俺がやる」
まるで屋根裏部屋のような重苦しい沈黙が、草原の上に二、三秒ほど漂った。
悦清禾は深く息を吸い込んだ。
冷たい空気が、燃えるように熱くなった頬をわずかに冷ましてくれる。
「私がいくわ」
悦清禾は奥歯を噛み締め、魂すら焼き尽くされそうなほどの羞恥を無理やりねじ伏せ、草地の上からゆっくりと立ち上がった。




