第2話 ここで居候させてください!(殺人鬼のお家)
ぺろおじさんについて行くこと三十分。相変わらず、物騒な武器を持った人達だらけである。でも、普通の家ばっかりなんだよねぇ。ビルとかの建物はないけど、家は現代の家が並んでる。コンクリートの地面、あとカフェとかもある。
「あそこ、俺が働いてるところだ」
ぺろおじさんが指さしたのは、警察署だった。マジか。殺人鬼なのに警察官なのは流石に意味不明すぎる。しかも、この警察署は結構大きい。茶色の建物には大きく天守警察署と書いてある。
「殺人鬼なのに、警察官なんですか?」
「あ?当たり前だろ。この世界には、殺人鬼しかいねぇんだから」
不可解なものを見るような目で、ぺろおじさんは私を見た。
「てか、お前……何なんだ?殺人鬼には見えねぇぞ」
「迷子です。可哀想な迷子の一般人です」
精一杯、可哀想な人間であることをアピールしないと。そんな想いを込めて、ぺろおじさんを見つめた。ジト目で見られた。
「はぁ……マジで変なヤツを拾っちまったな」
彼は頭を掻きながら、深くため息をついた。
「着いたぞ、家政婦候補」
「意外と普通の家だ……でも、大きい」
豪邸と呼ぶに相応しい家だ。灰色の四角い家。ちょっと色が悪い豆腐みたいな形だ。でも、想像してたよりは普通かも。もっとこう、庭にしたいとか落ちてると思ってた。門を開いて、中へはいる。庭は芝生で、真ん中のコンクリートの道を通って先へ進んだ。
「お前、名前は何だっけ?」
「小雪です。可哀想な一般人です」
「小雪、ソリには気をつけろよ。アイツに冗談は通じねぇからな」
玄関の前で立ち止まったぺろおじさんは、突然真剣な顔で私を見つめる。
「ぺろおじさん……心配してくれてるんですか?」
「まあ、家政婦候補だしな。あと、その呼び方やめろ」
ぺろおじさんはドアを開けて中へ入っていった。私も後ろをついて行く。中もやっぱり広くて、ぺろおじさんはリビングらしき場所へ歩いていく。
「ソリ、家政婦を連れてきたぞ」
ぺろおじさんは、ソファに座った誰かに声をかけた。後ろ姿だけでも、ゾクリと背筋が思わず伸びるような、威圧感のある人だ。
「おい。こっち来いよ、家政婦候補」
ぺろおじさんに呼ばれて、恐る恐るソファに近づいていく。
「あの……今日からお世話になります。小雪です」
その人は日本刀を眺めていた。黒髪ポニーテールの凛々しい目つきの男性。黒い瞳に黒いロングコート。衣服はベルトだらけで威圧感がすごい。
「どういうつもりだ、オール」
低い唸るような声で、彼は問いかける。
「こいつはマックスソリチュード。俺はソリって呼んでる」
ぺろおじさんはなんて事ないように、ソリさんを指さす。ソリさんからは、殺気のようなものが出ている。正直めちゃくちゃ怖い。睨みつけられただけで、心臓が痛いくらいに跳ねてる。思わず首に触れた。私はいま、ちゃんと呼吸出来てるかな。
「ソリ、こいつは今日から俺たちの家政婦だ。俺もお前も料理出来ないだろ?」
「俺のテリトリーに無価値な女は必要ない。失せろ」
再び鋭い殺気が飛んでくる。ここで価値を示さないと殺される。本能的に理解させられた。
「卵焼きなら作れます!」
「は?お前、卵焼きしか作れないのかよ!」
ぺろおじさんが驚いた顔をしている。嘘をついたらきっと殺される。だから、ここで勝負するしかない。
「卵焼きなら、世界一美味しく作れます!」
「…………」
ソリさんはしばらく沈黙した後、すっと視線を逸らした。
「今すぐ作れ……」
「ソリ!?」
ぺろおじさんが困惑している。でも、私は思わず内心でガッツポーズを決めた。よし、卵焼きなら誰よりも上手く作れる。というか、この人は卵焼きが好きなのかな。まさか、ね?




