第1話 ナイフぺろぺろおじさん(イケメン)
息抜きに書いてます!
楽しんでいただけると、幸いです
どうも小雪です。路地裏で不審者に殺されかけてます。誰でも良いので助けてください。
心の中でSOSを出しても現状は変わらない。目の前にはチンピラ三人組。背後は壁。終わった。短い人生だったなぁ。まだ十七歳なのに、まだまだやりたいことあったのに。
「おいおい、呑気に現実逃避かぁ?」
「随分と余裕そうだな?」
「さっさと金目のものを寄越せよ」
チンピラA、B、Cが何かを言っている。現実逃避中の私は、もはや何も言えない。
きっかけは何だっけ。そう、確か下校中にいきなり路地裏に引きずり込まれたんだ。気を失って、目を覚ましたら、見知らぬ場所にいた。そして当たり前のように、銃を持った人や包丁を持っている人がいた。何なら、死体とかも普通に転がってた。私の不幸はさらに続き、いかにもなチンピラ達に追い回されて、現在にいたる。
「なあ、嬢ちゃん。この世界、キラーガーデンは弱肉強食なんだよ。俺の言いたいことが分かるよな?」
ニヤニヤと笑う男たち。ご丁寧に説明ありがとうございます。キラーガーデンね。異世界ですか。そうですか。
私は、思わず遠い目をした。
そのとき——
新たなチンピラDが現れた。
「丁度いい所にサンドバックが四人もいるじゃねぇか」
やけに顔の良い、茶髪の男だ。年齢は20代前半くらい。黒いスカジャンに銀色のドッグタグのネックレスをつけてる。
「ひっ!お前はオールナイフ!」
「な、何でこんな所に!」
チンピラ達は慌てて逃げ出そうとした。けれど、それよりも早く、顔の良いチンピラDがナイフで二人を切り裂いた。最後の一人は声も出せずに、腰を抜かしている。
「た、たすけ……」
「ダメだ」
最後の一人も呆気なく殺されてしまった。次は私の番だ。いつの間にか、私は地面に膝をついていた。指先が震えているのが分かる。怖い。現実逃避なんて、本当は出来ていない。
「さ、次はお前の番だぜ」
赤い瞳が楽しげに細まる。
そして——
男は血の着いたナイフをペロリと舐めた。
「ナイフぺろぺろおじさん……」
頭の中に姉に見せられたホラーコメディ映画のワンシーンが浮かんだ。かませ役のチンピラがナイフを舐め回すシーンだ。
「は?」
男は唖然と口を開けたまま、構えていたナイフを下ろした。
「お前……めちゃくちゃ変なやつだな」
「はぁ……そうですかね」
男はしばらく私を見つめて、ため息をついた。
「あー、殺す気が失せちまったぜ。イラついてたのも、落ち着いたし、見逃してやるよ」
「ありがとうございます?」
どうやら、命の危機は去ったみたいだ。男は頭を掻きながら、ポツリと呟く。
「ま、お前みたいな弱そうな奴は他の奴らに殺されて終わりだろうけどな」
前言撤回、普通に命の危機だった。私はこのナイフぺろぺろおじさんに全てを賭けることにした。
「すみません!どうか、私を拾ってください!」
「は?俺に何のメリットがあるんだよ」
メリットと言われて、思わず口を閉ざす。だけど、ここで引き下がる訳にはいかない。
「えっと、えっと……」
必死に頭を回す。私にできることは何だろう。
「お前、料理は出来るか?」
「できます!」
食い気味に答えた。正直、料理はあまり好きではない。だが、生き残るためなら仕方ない。
「ふーん。良いぜ、拾ってやるよ」
「ありがとうございます!」
私は頭を下げて、お礼を伝える。感謝は大事だ。お礼が言えるかどうかで人生というのは決まると思う。
「俺はオールナイフだ。使えなかったら、殺すからな」
男はまたナイフを舐める。
「ぺろぺろおじさん……」
「その呼び方やめろよ……」
オールナイフと名乗った男は、呆れたように言う。今の反応で確信した。この人、そんなに怖い人じゃない。本当にヤバい人なら、とっくに殺されてるだろう。
「よろしくお願いします!ぺろおじさん」
「図太すぎるだろ」
ぺろおじさんはくるりと背中を向けた。そして、不敵な笑みを浮かべる。
「まあ、せいぜい頑張れよ」
彼はふっと口元を緩ませた。
「ソリに殺されないようにな」




