表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/30

第26話 捜査チーム結成

「で…本気でトップ賞ねらってるやついる?」


シャロンは昨夜の残り物のスナック菓子をつまみながら、三バカトリオを見回した。


「いねえよなぁ。お前らじゃ、無理に決まってるしな」


そう言ってひとしきり笑ってから、部長に視線を固定した。


「で、部としてはどうするんだ?去年は協力して捜査しようとか言っといて、お前が犯人だったからな。足を引っ張りまくりやがって、散々だったのを思い出したんだよ」


いつになく…いや、いつも以上に嫌味を効かせているのは、去年のことを蒸し返しているのだろう。

何があったのか知らないが、だいたい想像がつく。

部長は気まずそうに眼鏡を押し上げているが、鼻先のフレームに緑色の何かが付着している。スナックえんどうの食べカスだろう。どうやら、相当思い出したくないようだ。


「さすがに、今年も部長が犯人ってことはないんじゃないか?」


山部社長が大きな声で笑った。


「いや、それだったら逆に最高なんだけどなあ」


レンジャー二人も加わった。

猫又が恥ずかしそうに後ろ頭を掻いたときに、フレームから食べカスが落ちたのが見えた。

「おや、落ちましたよ」と、ギンブナが目ざとく指摘するが、それは藪蛇(やぶへび)だ。

「あ、ごめん。歯クソだよ」と、猫又がサラリと言ったものだから、案の定、奇声をあげて大騒ぎしていた。

そのおかげで落ち着いたのか、猫又は丹念に眼鏡を拭き上げて装着すると、いつもの表情に戻っていた。


「まあ、今年はだいぶシステムを変えてきたからね。容疑者をステージに上げたのには驚いたよ。去年は個別接触がバンバンあったし、そういう意味で害の少ないうちの部が選ばれたんだと思うよ。これでまた犯人がうちの部ってことはないんじゃないかな」


すると、ギンブナが何事もなかったかのように乗っかった。


「では、我が部としてはどうしますかな?イベントは部の知名度を高めるチャンスですぞ」


何もする気がないのに参謀気取りなのは、相変わらずだ。

シャロンとコノハはすでに議論に参加する気がない。

あ~落ち着く、とユメジには思えるのだった。

しかし、このままのらりくらりといつものペースだと、ミステリーウィークが終わってしまいそうだ。

さて、どうしたものか。ユメジが思案していると、レンジャー二人が笑い始めた。


「知名度は高まってるじゃん!コノハちゃんとシャロンさんのステージでさぁ!」


シャロンの蹴りが飛んだ。

その様子を眺めながら、猫又がギンブナに言う。


「まあでも、生徒は250人程度だとして、市民は万単位だからね。がんばっても無理だと思うよ」


相変わらず、悲観的な発言をするやつだ。しかし、そのとおりである。


「では、個人行動としますかな?」


ギンブナが答えると、珍しくコノハが口を挟んできた。


「去年は部長が承諾の返信を、未定研究部全員に送っちゃいましたからね」

「返信?」


思わず聞き返したユメジを見て、コノハがクスクスと笑った。


「そうなんですよ。さっきユメジさんが質問されてたじゃないですか。犯人役の承諾メールです。イベントの何週間か前に、アドロ会長宛てのメールの宛先を間違えちゃったんです。『御意』って二文字だけだったから、意味がわからなかったんですけどね。それで、今回は封書になったんじゃないですか?」

「ああ、そういうことだったんだ」

「そういえばお前、妙なこと質問してたよな?なんで、あんな質問したんだ?」


シャロンがスナックえんどうの先をユメジに向けてきた。


「あ、いや…別に意図はないんですよ。みんながしないような質問をしようと思っただけで、何でもよかったんです」

「はあ?」


シャロンは眉を寄せた。その怪訝(けげん)そうな顔も美し――じゃなくて、なんだっけ?

ユメジもここのペースにすっかり染まっていた。気を緩めると落ち着いてしまう。

とにかく、みんなにやる気を起こさせる必要があるのだ。


「じつはですね、協力者を得ようと思ってまして。あのあと、質問の意図を聞きに来る人がいたら協力しようと思ってました。特に市民の方からの協力です。市民は犯人ではないし、聞きに来るような人は、自力で解く自信がないってことでしょ?そういう人なら協力しつつ最後に出し抜けると思って」


ユメジが説明すると、全員、静かになった。


「え…何かおかしかったですか?まあ、誰も聞きに来なかったし、レンジャー君たちも個人戦だって言ってたから、作戦失敗でしたけどね」


猫又が眼鏡の奥で目を丸くしていた。いつも飄々(ひょうひょう)としている彼が、驚いた顔を見せるのは珍しい。


「ユメジ君…ということは、君は覇者を目指すつもりなのかい?」


ユメジは力強く頷いた。


「そうですよ。当然じゃないですか。逆に何でそんな冷めてるんですか?」


そう言うと、山部社長がまたガハハと大きな声で笑った。


「こりゃあいい。気に入ったぜ。じつはお前はデキるやつなのかもしれねえ!俺はそういう頭は働かねぇから遠慮しとくが、また全員で挑戦してみろよ。宝くじに当たるよりは確立が高いぜ」


空気が変わったようだった。


「そうだなぁ。俺たちも協力する?」


呼応するように黒レンジャーが言うと、青レンジャーは苦笑いして頷いた。


「そうするかぁ。別に俺らは住民税とか嬉しくないし。もし俺らが解いたらユメジさんに譲るよ。そしたらさ、みんなで力を合わせて謎を解いたって言えばいいんじゃね?さらに評価が爆上がりってカンジになるよ?」


ギンブナが鼻で笑った。


「じゃあ、決まりですな。未定研究部として全力で謎解きに挑もうではありませんか。ねえ部長?」


しかし、部長は何を悩むのか、鼻頭を掻いていた。

ここで、またコノハが口を挟む。


「あの、ですね…」


恐る恐るという感じで、手を挙げていた。


「なんだね?腰を折るんじゃないよ、ベイビーちゃん」

「いや…もしかしたら、また犯人がこの中にいるかもしれないんですよ?大丈夫でしょうか…」


「いや」と、被せてきたのは部長だった。急に態度を(ひるがえ)して、何かを思いついたように口元に笑みを浮かべている。


「逆にそれもアリだね」

「え?」

「正直、覇者になるのは難しいが、部として目立てばいいなら話は別だよ。また犯人が我が部から出れば、生徒会にとって外せない部だって認めたようなものだし、それはそれでおいしい展開だよ」


思わせぶりに窓辺に立つ部長に、ギンブナが賛辞を贈るように微笑んでから、コノハに視線を送った。


「というわけだ」


当然のように乗っかる男である。

そして、どこからともなくホワイトボードを転がしてきた。


「どちらにしても、おいしいのだよ。とりあえず目立つことだ。明日の会見では何でもいいから質問するのだ」


ギンブナは、ホワイトボードに決定事項として書き出し始めた。


≪未定研究部は協力して犯人を突き止める≫

≪会見では必ず挙手し、質問権を得る≫

≪目立つ!≫


書き終えると、満足そうにマーカーのキャップをパチンと閉じた。

しんと静まったが、その静寂をシャロンが破った。

「まあ、いいけど」と、素っ気ない素振りで別のスナック菓子に手を伸ばした。


「じゃあ、まずはリーダー決めだな。誰にする?」

「は?」


ギンブナは、何を言われているのか理解できないようだった。


「は?じゃねえよ。船頭がいないと捜査も何もないだろ。部として動けねえだろうが」

「それは部長に決まって…って、あっ!」


どうやら気づいたらしい。


「そういうことだよ。今年もリーダーが犯人でしたじゃマヌケもいいとこなんだよ。知名度も何もねえ。笑いもんだぞ。どうすんだ?」


確かにシャロンの言うとおりだ。だが、実際はそうとも言えない。

部長と副部長はシロだ。その確信はある。


(誰かをリーダーに誘導するつもりか?)


ユメジがシャロンを(いぶか)っていると、肩に手を置く者があった。


「ユメジ君、君がやってくれ」


猫又部長だった。


「エッ?俺ですか?なんで…」


先ほどまでの情緒不安定が嘘のように、澄み切った笑顔を浮かべている。


「大変そうだからだよ。君はそういうの好きそうだし」

「何言ってんすか!部長か副部長の役目でしょう」

「いやいや、一番やる気がある君こそふさわしい。そもそも、無理ゲーに挑もうって話なんだし、僕も副部長もゲームは苦手だからねぇ」


猫又は薄い目をさらに薄くして、有無を言わさぬ圧力を発していた。


「それなら、シャロンさんに…」

「ダメだ」


シャロンはおにぎりせんべいをガリっとかじりながら、ユメジの主張を(さえぎ)った。


「私とコノハは犯人の可能性がゼロじゃない。でも、お前が犯人の可能性はゼロだ」


(こいつ、やっぱり気づいてやがったか!)


「待て。なんでそう言い切れるんだよ」


ギンブナが不満そうに聞いた。


「それがわからないから、お前らじゃダメなんだよ。部長もわかってねえだろ。まぁ、こいつがリーダーってのは面白そうだ。また何か思いつくだろうしな」


シャロンが何を考えているのかわからないが、断れる雰囲気ではなくなった。

だが、これはユメジにとっては悪くない展開だった。

部員のやる気も出てきたようだし、実際に協力者も得る予定だった。それが部員であるなら遠慮する必要もない。

明らかに誘導された気がするが、結果的には計画どおりだ。


「わかりましたよ。リーダーやりますよ」


ついこの前までの自分なら考えられないことだ。リーダーを引き受けるなんて。

ユメジの脳裏には、まりんの顔が浮かんできたのだった。


最後までお読みいただきありがとうございます。

いつもの雑魚部のグダグダですが、一丸となってミステリーに挑むことになります。

雑魚部の奮闘にご期待ください。感想などいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ