第54話「信念の対峙」第一部
ビューウウウッ……!
冷たい強風が、灰色の分厚い曇り空の下で雨を激しく掻き回していた。海岸沿いでは、荒れ狂う海に嵐が容赦なく降り注ぎ、風景全体を暗く重い色調の広がりへと飲み込んでいく。
湿った風と絶え間なく続く雲の慟哭を切り裂くように、一台のミニバンが道を走っていた。
後部座席で、少女は窓枠に腕を乗せ、その手に顔を預けていた。彼女の緑色がかった瞳の中には、加速によって完全に歪められた、灰色と深緑のアスファルトと木々だけがぼやけて映っている。
「ちょうど帰る時間になってから降ってくるなんて、私たち運が良かったね」
真琴の隣に座る華が呟いた。彼女は、かつては澄み切っていた青が、今は空を支配する鉛色の雲の重みで濁りきってしまった海を見つめていた。
「幸運などとは到底言えませんよ」悠司が懸念を滲ませた声で答える。「もしこれ以上雨足が強くなれば、おそらく俺たちは車を停めなければならなくなるでしょう」
「ひどくなるようなら、停めるのが一番ね」助手席の恵が付け加えた。「この嵐の中で峠を越えるなんて、狂気の沙汰だわ……」
それは、この時期にはよくある典型的な夏の嵐だった。
どんよりとした分厚い雲はすでに青空を飲み込み、何日も前からこの大地に豪雨を降らせようと脅かし続けていたのだ。
この雨は、真琴にとっての海への旅の終わりを告げるものだった。そして同時に――竜斗にとっては、森林警備隊での過酷な労働の幕開けを意味していた。
バチバチバチッ!
鋭く、激しく、金属的な音を立てて、雨粒が車のルーフに打ちつけられる。
警備隊のジープが、泥と石を四方八方に撒き散らしながら、未舗装の林道を切り裂くように進んでいく。
竜斗の視線は、この山の中でも異常なほど密集した森の奥へと吸い込まれていた。街のシルエットなど、濃緑の樹冠の下に完全に消え去ってしまうほど、彼らは隔離された場所にいた。
一同は、警備隊の制服の上に分厚いレインコートを着込んでいた。
「田寺さん、俺たち、あの上で具体的に何をするんっすか?」
後部座席で竜斗の隣に座る月島が尋ねた。彼は少し身を乗り出し、運転する田寺のシートに寄りかかっている。
「大掃除よ」西宮が素っ気なく答えた。
「大掃除?森のど真ん中で何を掃除するんだよ?」
「昨日の夜、土砂崩れがあったんだ」田寺が落ち着いた声で口を開いた。「この手の事故が起きた場合、俺たち警備隊は現場の障害物を取り除き、溜まった土砂や倒木、落石を片付けなきゃならない。そうすることで、連鎖反応や二次災害を防ぐんだ」
「土砂崩れ!?」月島が明らかに怯えた声を上げる。
「また崩れる現実的なリスクがあるんですか?」竜斗が尋ねた。
(結局のところ、この時期に山で土砂崩れが起きるというニュースは、ありふれたものだからな)
「ああ。だから、この嵐の隙間を縫って、木をチェーンソーで切り、溜まった土砂を引き剥がすんだ」
(隙間?)
竜斗は外の景色をじっと見つめながら、心の中で疑問を抱いた。ザァァァァァッ!雨は容赦なく、一向に弱まる気配もなく降り注いでいる。
「安心しろ」若者たちを落ち着かせるように、田寺が言葉を挟んだ。「危険で重労働な部分は、本隊が日の出と共にすでに終わらせてある。俺たちが呼ばれたのは、あくまで残骸の撤去作業のための追加の労働力としてだ」
「私たちの役割は、丸太をトラックまで運ぶことですか?」助手席に座る叔父を見ながら、西宮が尋ねた。
「その通りだ」
「なんか、すげー疲れそう……」月島はシートに深く沈み込みながら呟いた。その表情には、これから始まる労働への疲労がすでに先取りされていた。
「それが俺たちの仕事の本質なんだよ、三浦」田寺が、竜斗へと意識を向けながら宣言した。突然名指しされ、無気力な少年は不意を突かれた。
「……え?」
「賢進から、お前が警備隊で働きたいと思っていると聞いた。野生の熊と戦うとか、そういうヒロイックな期待を裏切るようで悪いがな。俺たちの現実はこんなもんだ。公園を維持し、観光客のゴミを拾い、土を運び、薪を割る」
「分かっています。そのことについては、賢進からも前に聞いていましたから」
「そうか?で、お前が短期バイトに入るって宣言した時、あいつはどういう反応だった?」
「あの人は……」
『本当にそれでいいのか、竜斗?』
義父の落胆した顔と、疲労に満ちた瞳の記憶が、少年の脳裏に木霊した。
「……明らかに不満そうでしたよ」
「ハッ!」田寺は短く笑い、歪んだ笑みを浮かべた。「あいつの気持ちも痛いほどよく分かるぜ。こんな仕事、自分の息子には絶対にやらせたくないからな。お前らは、今のうちにしっかり勉強しておけよ。この俺みたいな運命を避けるためにな」
「「息子?」」
西宮と月島が声を揃えた。二人の視線が、無気力な少年へと収束する。
「お前、自分の父親を下の名前で呼んでるのか!?」と、二人が問い詰める。
「……正確には、義理の父親なんだけど……」
◇ ◇ ◇
それから数分後、景色が一変した。
泥に完全に飲み込まれた未舗装の道が、唐突に終わりを告げたのだ。
ジープは巨大な鉄格子の門の前で停車した。両脇には高い金属製のフェンスが伸びており、いくつもの「危険」「立ち入り禁止」の警告看板が物々しく掲げられている。
田寺はエンジンのアイドリングを保ったまま、ジープから飛び降りた。門の横、フェンスの内側には、高さ三メートルほどの小さな木造の監視塔がそびえ立っている。
一人の森林警備隊員が、自身のレインコートでしっかりと身を包みながら、その構造物から姿を現した。
「お疲れ様です。土砂崩れの応援ですか?」隊員はそう尋ねながら、すでに重たい南京錠を外しにかかっていた。
「ああ。数分前に本部から俺たちに指示が出たんだ」
ギギギィィィッ……!
重厚な金属の格子が軋む音を立てて開き、通行を許可する。
田寺は感謝の意を示すように軽く手を挙げ、運転席に戻った。ゴゴゴゴッ!ジープのエンジンが力強く咆哮し、再び隔離された深い森の道へと突入していく。
「なんでこのエリアは立ち入り禁止なんっすか?」月島が尋ねた。
「理由はいくつもある」田寺が答える。「特に大きな理由が二つだ。一つ目は、お前らもすでに知っていることだ」
「土砂崩れ……」西宮が結論づけた。田寺は疲れた笑みを浮かべ、軽く頷いてその推測を肯定する。
「じゃあ、二つ目は何なんすか?」ツンツン頭の少年が問い詰めた。
「それについては……まあ、着いたら自分たちの目で、その答えを嫌というほど見ることになるさ」




