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4話 入学式 朝

ここからが本編となります。3話までと違いゆっくり進行になります。

◇ ◆ ◇


 自室のディスプレイに表示されたゲームのようなステータス画面表示に眉を寄せた。

 何度見直しても間違い無く自分自身の名前だ。観測点なんてヒトをヒトと思わないような文字列に片眉を撥ね上げて通話を続ける。


「なにこれ。バグ、にしちゃ整然としすぎだし、悪戯だとしても……とりあえずマッキーこれ何よ?観測点て意味不明なんだけど」

「オレも今朝ふと思いついて検索したらこんな画面が出たんだっつの。ユッキーもその反応からして心当たり無しか」

「そりゃそう」

「魔質って項目が魔力属性だと思うんだがユッキーはどうなってる?」

「魔質はー、【雪】だね。まぁ知ってたって感じ」

「そか。それなら信憑性ちっとはあんのか、そーいや前世の最期にもこんな字見た気が……」

「ん、なに?どういう事?ひとりで納得してないで説明もとむ――」

「オレにもさっぱりだっつうの。人間性とか性格にしちゃ変な言葉選びだしな」


 推測ばかりであーでも無いこーでも無いと話込んでいれば


「おーい、そろそろ朝食食べないと遅刻するぞー」

 部屋外から父(ミドウ)さんの声。


「はーい!今いくー!すまんマッキー父さんに呼ばれたから一旦切るわ。こっち早めに出んとだし」

「おうリアル優先で。入学式だしな。オレの方は自宅で待ってる間もうちょい調べてみるわ」

「頼んだー」


 どうやら下階のリビングから呼ばれるまで話していたようで、通話を切って時計を見れば予定時間のギリギリだ。後ろ髪を引かれたがとりあえずPCは起動させたまま放置。

 そうして自室の扉に手を掛ける程度に離れると、プツンとスピーカーが途切れた時の独特な音が背後から届く。振り向けばディスプレイもPCも強制終了してしまったようで、電源が落ちてファンが回る音が空寒しく響いているのみ。


「うへっ……離れると勝手に落ちるとか……この手のオカルトもあんのかこの世界。頭ん中に直接話し掛けてきたりすんのかね?いや、念話は普通に実在するか。まぁいいや、エンガチョえんがちょー」


 人差し指に中指を絡ませる手印を結びつつ意識を切り替えようと荷物を手に持つ。魔物も殴り倒せるという触れ込みのゴツい学園指定鞄の頼れる重さを背中に背負ってひとつ息をついてから、2階のリビングへ。もちろん刀京魔導学園の制服は着込んであるし入学式準備は万端だ。


「おはよー」「おはよ早く食べなさいよー」「おはー」


 画面の事は一旦置き、リビングで朝食をかき込みつつ、家族が見てるテレビに視線を向けると、探索者配信が映っていた。

 パッと見だと魔物に押されているように見える。

 撮影ドローンに向かってドヤ顔している探索者の後ろで、盾を持ったお仲間が燃やされていて割とひっ迫した悲鳴。それも連続している。


「もぐもぐ……前髪かき上げてポーズしてる場合じゃないでしょ」

「お姉《ねえ》分かってないなー。フー様のしもべは燃やされてなんぼってやつなんだよ!配下が苦戦すればするほどフー様の一撃が輝くんだから!」

「さすが上司にしたくない探索者ランキング常連」

「イケメン無罪の下に批判非難は却下です」

「ふぁっきゅークソ法律」


 ムカつく顔してる優男でも公表されている技能(スキル)は優秀。【危機逆撃】いわゆる『ピンチになるほどダメージアップ』はいかにもな主人公的スキルだと思う。それを演出するのはどうかと思うが、効果が出ていてエンタメに利用出来るほどなのだからバカにしたものでも無い。

 でもいつか仲間に刺されるんとちゃいますかと内心で戦慄しつつ朝食終了。

 まあテレビで放送されるような探索者配信はエンタメ性が求められている割にきちんと安全ラインがあるようで滅多に死亡事故なんて起きない。だからあんな様子でも問題無いのだろう。


 今日の入学式は父の車で送って貰う事になっているので共に外へと向かう。

 自宅兼店舗な自営業の両親なので割と自由に休みを入れたりしているけど午前中は母(ミナリ)さんと妹(ミスズちゃん)が店舗に入る事になっている。妹《ミスズちゃん》が通う中学の入学式は来週なので休みを謳歌してるようで何より。


 閑話休題《それはともかく》。

 2階の生活フロアから1階の店舗フロアに全員揃ってワイワイと、後ろの母さんと妹《ミスズちゃん》がテレビに出てた探索者についていまだにキャーキャー騒いでいるのを背中で聞きながら下り階段先、店舗に入る為の扉は頑丈でゴツい金属製扉でセキュリティも完備されている所を通り過ぎる。ただ最近になって思うのがこの程度の金属扉なら私は蹴り砕けるなぁというほろ苦さで、子供の時はあんなに頼もしかった扉も魔導線が入っておらずただの素材まんまな強度しか無いと知れば、物を知らなかったんだなぁと嘆息が漏れる。こんな扉では魔力を流せば強化はされるもののその幅はたかが知れてるのだ。きちんとした術式が刻まれた物品とそうでない物品とじゃ強度に天と地ほどの差がある。

 そんな事を思いつつ店舗フロア内へ。

 前世では雑貨屋兼服屋でファンシーだった店内は、どこの異世界だよと言わんばかりの剣槍斧鎧篭手具足がこれでもかと陳列しており、カタログや見本が置かれトドメにはフルプレートメイルがレジ上の飾り棚で輝いている。これを幼少時に見た際は口が開きっぱなしとなった一幕があった。

 その頃から今も変わらず置かれたフルプレートメイルの隣には可愛らしいコア羅もんの巨大ぬいぐるみなども飾られ女性探索者に人気の名店として地元ではちょっとした有名店へと成長した。


 いってらっしゃーい、いってきまーすと手をふりふりしあって出発。


「コア羅もんの巨大ぬいぐるみもビワッジャーの果実ランプも増えて可愛らしくなったよね」

「はっはっは、探索者装備販売店にあるまじき店構えだ精神だファンシーさだって今でも怒る人いるけどそれ以上に女性の良客が増えて業績は右肩上がりさ。きっかけをくれたミラちゃんのおかげだね」


 ぬいぐるみは非売品だがどこそこで買えますよーと紹介したりも出来て横の繋がりも増えた。ホコリ掃除するの地味に面倒だけどね。ただコア羅もんは夕暮れ釣り堀でタバコが似合うようなイカツイ顔面しているのでパッと見は可愛いがよく見ると仰け反ってしまうお客さんも多い。


「巨大ぬいぐるみとかも美鳴《ミナリ》さんのセンスには頭が上がらないよ」

「母さん可愛い小物好きだもんねーミスズちゃんもだけど」

「ミラちゃんはその点大人しいよね、花より団子というか団子より修行というか。うん、探索者としては間違って無いんだろうけど……いやぁ昔からそうだったけどついに探校かぁ。感慨深いね。保護者同伴で入学式に出席出来ないかなぁ」

「呼ばれて無いのに生徒に混じってたら不審者だよ父さん、まぁ心配しないで。きっちりバッチリ魔物しばき倒して神々の恩寵(レベル)貰って(上げて)くるから!」

「だよねぇ。ミラちゃんはブレないねぇ……本当に今日からもうダンジョンに入るのかい?せめてガイダンスとか聞いてからの方が」

「もー父さん、道場主さんからも『ミラちゃん達は心配せんでも大丈夫じゃ』って太鼓判押して貰ったでしょうがーマッキーと一緒に傷ひとつ無く帰って来るの約束するからさ」

「うーん、そうだけどねぇ。牧野ちゃんといえば、今日の入学式一緒に送るので良かったよね?」

「そうそう。行きしの道沿いだし寄って貰っていい?後ー10分くらいかな。連絡いれとくー」


 それから今日の予定、入学式後からの学園内探索やDA《ダンジョンアタック》予定や通学定期購入などの話をしている間に牧野家に到着。


「おはよーございまーす」「おっはーおじさんもおはようございまーす」「おはようセイちゃん、牧野さんもおはようございます」「おはようございます、今日は本当にすみませんウチの娘がまた――」


 呼び鈴押してみれば父さんと牧野おばさんがアレコレと挨拶しあうのを横目に奥から金髪美女が親しげに手を振ってきた。本当に背も胸もデッカくなったな。ここ数週間でさらに大きくなった印象。

 グラビアモデルにスカウトされて表紙飾りましたとか言われたらさもありなんと頷く事請け合いの美女と白ギャルの中間辺り。化粧なんてしてない筈なのに紅を刺してるように潤い顔。子供料金とか絶対拒否られるヤツ。さらに声まで色気溢れるハスキーヴォイス、サキュバスか何かの血入ってる?


「ミラちゃん高校でもまたこのバカ娘をよろしくね」「いえいえこちらこそお世話になってばかりでー」


 ほらお願いしときなとおばさんに頭をヘッドクローされお辞儀させられる金髪美女が何もしてねーだろうが!と叫ぶがそれでもガン見してしまうのは仕方無いだろう。お胸さまが揺れ、揺れ……


「((これはメロン))」


 しかし父上どのは正真正銘男性であるので。ジト目を向ければ頭を掻いて誤魔化しモード。


「ははっ、いやはやいやはや。失礼」

「あー、そうなのよね。少し前まで全然だったのに、なんか急に背丈も胸もおっきくなったのよねこの子。全く誰に似たんだか」

「へっ。お袋じゃねぇのは確かだn」

「誰がその無駄にでっかいのの世話焼いてやったと思ってんだい!」

「ゴフォッ!ギ……ブギブォ……」


 おばさんの滑らかな重心移動からの鋳鉄。さらに腕を回して金髪美女の首を締める裸絞。ネイキッドチョークが完全にキマってマッキーの口から泡が吹き出した。そして揺れるお胸さま。まぁじででけぇ。


 ◇


 一騒動を遅刻するからとおさめて、車に肩を貸してやりながら後部座席に並んで乗り込んで出発。馬鹿娘をよろしくねーというおばさんの声にグロッキーな様子を晒す金髪美女《マッキー》。

 しばらくして回復したマッキと車内で色々と確認。魔力をすでに持っている事で悪目立ちする事を避ける為に一学期前半くらいまでは、戦(いくさ)封じを装着したままにする事や今日の予定を確認していれば、いつの間にか刀京魔導学園の敷地を隔てる壁が窓から見えた。


 前世ではこの辺りは部長の家の瀟洒な壁が見えたものだったが、現世では桜並木の後ろには石垣が建ち広がり、さらにその上に綺麗に塗られた漆喰壁と鳥居のような太い朱色柱が何千基と等間隔に続く。この桜並木と壁面が浮世との隔たりを感じさせるように連なっている光景は圧巻の一言。厚さも高さも桁違い、威圧感増し増しのファンタジー人工物である。


「本当なんでコレで観光名所にならないのか。絶対外国人とか好きそうなのに」

「学校周辺つうかダンジョン周辺は貴族が睨みきかせてるからなぁ」

「この壁は魔災時、ダンジョンから魔物が万が一出てきた時の為の防波堤の役割があるんだよ。もっとも二人が入る刀京魔導学園のダンジョンは一度たりとも魔物を防壁外に出させた事が無いって話だけどね」

「「ソウナンダー」ッスねー」

「さて、そろそろ校門だし次の信号で降りようか。迎えは来なくていいんだね?」

「そうそう。迎えはいいよ、ありがと。今日から私達も探索者だからね!学園内も見て回りたいしダンジョンにも寄る予定だから帰りは遅くなると思う。定期券とかも買っときたいし、だからちょい遅くなっても心配しないでオッケー」

「ん~~~~~、分かった。まぁもう探校生だもんなぁ。でもあんまり遅くならないようにね。牧野ちゃん申し訳ないがウチのヤンチャ娘をくれぐれもよろしく頼むよ」

「うッス!任せてください!」

「なんでぇ!?」


 子供の頃は将来は淑女、聞き分け良い品行方正な御良《ミラ》ちゃんと評判だったのにいつの間にか扱いが雑になっていた。誠に遺憾である。

 時期的にはセクハラ野郎をぶちのめす為に道場主に突撃した辺りだろうか?

 それともガキ大将をボコボコにした時か?

 魔力放出が楽しくて5mくらい飛び上がり着地に失敗して鼻血だした時?

 それともやはりダンジョンに夜突撃した頃だろうか

 うーむ、心当たりが多すぎる。

 イメージ挽回はもはや望み薄、とまで我ながら思わなくもない。


 まあそんな事よりやっと学園まで来れたのだ。15年である。感慨深い。長かった。本当に長かった!

 ダンジョンの魔物討伐という経験値稼ぎっ!やっとっ……やっと出来る!!

 しばき倒し回ってレベ上げ活動まで後少しの我慢だ!!



◇



 父の車を見送ってしばし、ちらほらと武器と思しき剣やら斧やらの長物を持ち運ぶ制服姿の流れに混じって刀京魔導学園の入学式会場までの道を歩きながらマッキーに話しかける。


「ねぇマキさんや」

「なんだいユキさんや」

「やっとここまで来れましたなぁ」

「そうですねぇ本当長かったですねぇってジジババロール止めろや。ほら変な目で見られたろうが」

「それ多分きっとマジでマッキーの無駄にデカいメロンのせいだろ」

「視線がなー。男子連中の気持ちは分からんでも無いんだがな。オレでもオレがいたらガン見する自信あるし」

「マジか。私ならゲロゲロだけどまぁ、マッキーが(精神的ホモでも)幸せならまぁうん、応援するよ?傍目から見ればノーマルだしうん」

「ユッキーオマエさぁ……嫉妬か?」


 おい頭の上に無駄肉乗せるんじゃない。後ろからの拘束&頭上の脂肪球体をバシンと屈みながら叩いて脱出。


「そりゃ無い。デカパイとか分かってねー。世の中バランスよバランス均衡黄金律。芸術的なラインを求めたら胸はある程度でいいんだよ」

「それ意味分かんねーわ。胸も尻もデカい方がいいだろ」

「は?下品なおっぱい星人はこれだから。情緒がねーんだよ。頭の天辺から足のつま先まで緩やかな曲線が描く魅惑のライン、その美しさに秘められたエロスってのがさー」

「いや視界にガバッと来てボボンと見て分かるおっぱいのが良いだろ、これだからかしこぶった陰キャはよー」

「は?」

「あ?」


 互いにガンつけあえば間に火花が散ったのを幻視。

 それでもまぁまだ手を出すほどではない。クールな淑女なのだ私は。

 そう冷静に心を落ち着かせて前へと向いて歩き直す。

 と見せかけて、マッキの尻へフン!と一発キックをお見舞いすれば、やり返しとばかりにパシンと尻へやり返された。

 痛み分けで歩行再開、ほぼ同時にマッキも横並びになったので周りに聞こえない程度の音量で口を開く。


「にしてもやっぱ部長いないのかな」

「どうだろうなー。家の敷地全部学園に吸収されちまってるし、まっ罰ゲームで食べさせられ続けたあのヤバい食物群ももう無いと思えば胸が軽くなるってもんよ」

「いっそ食えばそのデカパイも萎むんじゃない?」

「やめろ。マジでありえそうだから。つーか今更手放さんぞオレの理想郷《ユートピア》」

「下衆《げす》い理想郷《ユートピア》だなおい」


 この世界は紛れもなく現実である。仮に上位存在的なナニカにゲームの中に放り込まれたと想定しても、考え感じて行動している私達にとっては関係無くリアルに15年間も過ごしてきた。順当に考えれば転生直前の、ネトゲみたいな設定をした『ホライゾンビースト』とやらに酷似した世界なのだろう。

 シリーズに関係する世界、もしくはホライゾンシリーズそのものがこの世界を模したゲームや映画だった、なんて妄想もした事があるほど、見た事あったり一致したり似たり寄ったりの情報などがあったからだ。もちろん全く未知である情報の方が圧倒的に多く存在するが、原作知識を無視なんてしていられない。

 なぜなら、ホライゾンシリーズ定番の『流れに身を任せたまま』だと一周目ルートになるのでは無いかという心配が付き纏うからだ。


 一周目ルート、それはホライゾンシリーズでは定番のゲームオーバールートの俗称だ。

 基本的にホライゾンシリーズのゲームは周回前提の造りになっており、即ゲームオーバーな選択肢や普通にゲームを進めるだけではレベルや装備といった育成が足りず戦闘で死ぬ。そうして死んだ場合、『こうして人類の希望の芽は枯れ落ち、この世界の人類の歴史は幕を閉じた』といった文言などが出てエンディングロール。バッドエンドである。

 再開しようとすると『最新のエンディングデータをロードしてからニューゲーム』という項目が選べるようになる。いわゆる強くてニューゲームを始めてノーマルエンド、グッドエンド、友情エンド、ハッピーエンド、ベストエンドなどを目指すというゲーム仕様だった。


 そういった原作関連と類似している所がある探索者養成校。その構造構成はどの探校でも変わり無いが、私達が通う刀京魔導学園は大規模と呼べるほど所属生徒数が多い。

 内部生つまり中等部生からの繰り上がりのA~D組と、高等部からの外部生がエキストラクラス、通称E組。このE組内でさらに5つに分けられ、寄付金や家柄や住んでいる場所や親の職業などでE1~E5組まで組分けされ1クラス200名、E組の1学年だけで1000名ほどが在籍。私たち二人共入学案内に記載されていたクラス指定はE3組。


 A組は正真正銘、本人が爵位を持つ貴族のクラス。少数精鋭で数人が在籍、多い年でも小中高等部と大学部合わせて片手で数えられる程度の人数しかいない。貴族はそもそも地元のダンジョンや魔物領域への対応や県議会などとの政務や執務などがある為、国営とはいえ刀京の中央区まで未成年者がわざわざ通いに来る者はほぼ無し。席を置くだけなら自身の領地にある学園を選ぶものだ。さらに年少で爵位持ちなんて貴族全体でも当然数少ない。

 親から親類縁者まで魔物討伐で殉職し、生き残りの中から最も血が濃い血縁者を中央貴族院が後継指定するケースはそれなりにあるようだが、年少者を指定する事はまずない。なので所属人数が少ないのだ。であるが所属する人数が少ないからといってA組自体無くそうとはならないのがこの国の身分制度であり教育制度。貴族の為のクラスを無くすなどあり得ないのだ。

 さらに彼等彼女等は授業などの知識面はもっぱら専用の教育係から学ぶ為に一般の授業講義などは受けない。集団指揮の経験を積むためだけに月に数回出席したり、籍だけ学園に置いていて年間通して出席すらしないという者さえいるし、それを許されている。B組の授業に交流も兼ねて混じる事もあるらしい。まあ触れ合う事など一般的に絶無というのがA組という超特権階級の貴族クラス。


 B組は準貴族が集まっている。貴族家嫡男や嫡女、次男次女以降の貴族の子供達、貴族に仕える士族といった貴族関係者の為のクラス。それなりに人数も多く、将来的に護衛や側仕えになる予定の者なども含み、一般生徒からすれば学園カーストのトップ層だ。

 C・D組は下級の士族と平民の混合クラス。Cは平民の中でも上流階級で、Dも上流階級出身者が多いとされるが家格や資産などが明確に下位。集団戦訓練の講義では雑兵として招集されて、集団指揮を学ぶA・B組の雑用係として初等部・中等部時代は過ごすそうだ。


 そして高等部からのE1からE5組は平民のみで構成されたクラス。身分のある新入生はもちろん上位組への転入という形になる。

 原作シリーズの多くのシナリオでは中等部時代に鬱憤を溜めに溜めたC・D組が下に扱ってよいE組を自分達の身代わりやストレス発散用おもちゃにしていた。そしてC・D組は映画やゲームの主人公用踏み台となるのだが、世界の主人公でも無い私達がおもちゃにされるのを座して待つ事も無いだろう。幾つかのゲームシナリオでは集団戦を行う際の肉壁兼特攻隊兼囮役として便利に扱われる悲惨な役どころなど御免被る。


 原作主人公はその悲惨さを目の当たりにするか味わうなりして奮起するというのが多くのパターンで、絶望やら失意の中にある状況の主人公組に光明を齎すのが主人公たる所以。つまりスタートが大体がどん底E5組スタートであり、私達のE3組とは離れている。

 原作主人公が助けるのはあくまで彼等彼女等の周りだけである。例外的に部活動が一緒であれば助けて貰えたりするが基本的に他クラスは敵対関係か格下の配下といった間柄になる……。


 どちらとも御免だ。


 そんな予定調和に関わるより、自助努力でレベルを上げたほうが格段に安全を確保しやすいだろう。

 主人公組が安泰というわけでも無いし、トラブルが舞い込みトラブルに突っ込みトラブルを作る厄介者《原作主人公》が側にいるのだから。


 まあこの現実は原作作品群と似通っている所もあるが、全く同じというわけでも無い。そもそも年代が違うし、仮に主人公くんちゃんみたいなのがいたとしても縁も無いだろうし関わろうとしなければ問題無いだろう。つまり、探校生活勝利の方程式、トラブルメーカーとは出来るだけ関わらないという明確な答えはもう得られているのだ。


「ふっ、勝ったな。勝利の美酒はピーチ味で頼む」

「突然どうしたロリ。車酔いにしても意味不明だぞ」

「酔ってねえしロリ言う方がロ……」

「お?ロリ言う方が何だって?おん?」

「ふぁっきんおっぱい」

「がはは」


 取り留めない会話をしつつスマホのメモを眺めていたら、マッキーがぽつりと小声で話しかけてきた。


「入学式後は手分けして校内巡った後にダンジョンか。一応確認しとくがゲーム部の他メンツ探すか?前に軽く調べた時は、この探校にゃゲーム部どころか前世の顧問さえ教員名簿に無かったけど」

「探すとしても徳岡さんあたりって言ってなかったっけ?何組かも謎だし容姿もどうなってるか謎だし手掛かり皆無だけどもー」

「部長と同様にな。ラインもねぇし電話番号も住所も分からん。名前も変わってるかもだしな。まぁ職員室に用あるし、そん時に天垂(てんすい)部長と徳岡さんの事聞いてみるだけ聞いてみるわ。年齢も名前も違ってたらお手上げってことで」

「了解。職員室に用って事は牛筆教員目当て?」

「おうよ、初期装備貰って来る。オーソドックスに剣だな」

「剣?マッキーが?」

「まっ、現世じゃそこそこ高いし貰えるもんは貰っとくぜ。まあなんだ、実はどの恩恵《ジョブ》目指すかここに来て迷ってしまってなー……。どっちにしろ今日は初期武器の手応えとか確認する予定だったろ。現実の牛筆教員てやけにネット上の評判いいしさ。魔物討伐を実際経験してみんと判断つかん事が多すぎる」


 基本的に簡易鑑定であれば戦力値が相対的に分かる程度。なので装備の見た目や佇まいなどで相手のジョブを推測するという洞察力が求められる。

 原作ストーリーでは大抵、戦士や騎士といった前衛は部隊指揮練習要員、使い捨ての肉壁として、『盾持ち集まれ』やら『槍持ち集まれ』やらと内部生組から招集させられがちだった。

 これは現実でも同様なようで、どの探校の外部掲示板でも話題にのぼる一般論。特に大盾使いと槍使いは需要と共に内部生組から高く評価されているようで、頻繁に呼ばれると自慢気に語っている者も多い。私達とは真逆の価値観だ。


 原作ゲームでは仲間にしたいキャラの好感度稼ぎ、現実で考えればコネ作りの為ならば大楯やらの装備を使ってもいいだろうが私は目指すべきジョブはすでに定めているので関係無し。むしろ呼ばれたく無い。私からすれば徴兵イベントはレベル上げのお邪魔でしか無いからだ。


 ちなみに牛筆教員というキャラは原作の多くで出演してきた、いわゆる名物お助けキャラで、この現実でもきちんと教員名簿に載っているれっきとした人物。学園の教師陣紹介動画などでもその姿を確認する事が出来た。


「てっきりマッキーは【聖拳士《モンク》】ルート目指してるものだとばかり思ってたわ」

「おう、いやそれがさー今朝の画面見たらどうも魔力属性が物理系統っぽい表示でさ」

「ン?中学ん時でも土壁とか作ってたよね?回復適性もあったし、あれで物理系統なの?自然系統の土属性じゃなくて?」

「【狙】属性だとよ。どう考えても自然系統じゃ無いだろこれ」

「ソ?」

「狙撃の狙だよ。狙うのソ。まぁどこまで信用できるか謎だしどっちにしろ、学園の魔導端末で魔力属性とか確認する予定だったしな。同じ表示になったら確定って考えるわ」

「それはまぁ、魔力属性確認する為にもこの刀京魔導学園選んだ所あるし。ホントもっと早く知りたかったよね。でもそっか、んー、物理系か特殊系って感じだねーそらまた……」


 この現世の魔力属性は千差万別であるが、系統としては3種に大別される。

 俗にいう物理系、物理干渉系統は動力を生成・操作する魔力属性。斬撃や衝撃・貫通といったベクトルを操る事に長けるとされているが、現実に存在する品目の属性もあるようで、こちらも含まれる。【鎧】属性や【牙】属性といったものが有名所である。

 自然干渉系統は風や火・水・土・光といった自然界に存在する力を利用したり、生成・操作する事も出来る魔力属性。干渉規模が大きい代わりに物理干渉系統ほどの精密な操作は難しいとされている。

 で、その二種に属さない魔力属性は特殊系統とされ、あまり見る事も無いだろうと具体例すら教えて貰えないのが現世の教育。

 ちなみに原作ホライゾンシリーズでの魔力属性はもっと簡略化されていて、【雪】やら【狙】などの魔力属性は無く五行や無属性、光闇程度で、コミックや映画にのみ【紫】やら【瞳】やら【星】やら【時空】といった特殊な魔力属性が登場していた。


「どうしてって感じだよな」

「んー……、個人的な考えとして言わせて貰えば、ジョブに関してはマッキーもよく知ってるように魔力属性と相性が良い行動をすべきだとは思うよ?ただまぁ最終的には好きな戦闘スタイル次第だよね。ゲームと同様に確定でジョブ選べるわけじゃないんだし自然体でいけそうなジョブ目指すのが一番かな。まあ実際DA(ダンジョンアタック)してみないとって考えは分かるから納得するまで悩みなよ。私の方は変わらないし付き合うからさ。ただ不意打ちされた時怖い魔法アタッカーだけは自衛手段ちゃんと考えた上で頼むね」

「そうなんだよなー。最低でも自衛手段あるのじゃないとっとなるとやっぱり……。ユッキーは【巫女】ルートに進むんだよな?」

「ん、【巫女】一直線。社(やしろ)にかよって無いから現実は分からんけど浄化系統の技能覚えやすい筈だし、何より飛行補正があるからね!」

「おう。PTにひとりいれば便利だし助かるわ」

「魔力属性も字面からして自然系統っぽい【雪】だったし相性も良い筈。実際に魔力凝らせたら冷えるし吹雪くし、知ってたって感じ。何も変わり無し」

「苗字からして分かり切ってた事か」

「そうともいう」

「ほんと雪に縁ありすぎだろ。つうかユッキーは金属装備ひとつもいらねえの?」

「金属装備なんぞ絶対願い下げ。装備ペナルティくらってまで装備するメリットぬぁーし」


 自然系統の魔力属性持ちは金属装備に魔力を通わせると自傷する事が多い。私なら凍傷だ。試しに装備販売店《ウチ》の品を装備してみたら手の平がかじかみ凍ってエライ目にあった。


 前衛の金属武器装備職、特に大盾と槍使いは学生の間は上流階級に呼ばれがち。

 回復などの純支援職は需要はあるし食いっぱぐれは無いようだがブラック勤務で一生拘束される覚悟がいる。

 後衛魔法職は純粋に探索中の危険度が段違い。

 ならば後衛中衛である弓職やガンナーといった斥候・遊撃職はどうかと思うが、経済的損失がキツイ。現実では矢代弾代が原作ゲームのように安価では無いし管理が非常に面倒なのだ。取り扱いに資格も必要だし、これは符を使う陰陽士や触媒を使う錬金術師や他術士系も同様でお金の問題がついて回る職は考慮外かアウト寄り。ただ魔導弓や魔導銃といった自前の魔力を矢・弾にも出来る武器種別もあるのでそちらを使用するならば許容範囲内。あくまで通常弾にコストが掛からないだけで、特殊効果を持つ矢弾には相応の値段が掛かるが。


 また生産職は家族どころか自分自身さえ守れないので選択肢にすら上がらない。

 商人系で原作ゲームで可能だった経済・生産チートにワンチャンだがソレを目指すならそもそも探索者養成校目指して血反吐吐く道場通いなんてしていないし、恐らくこの現実ではゲームのように上手く行く筈が無く、物価の操作や安定を担っている貴族家や財閥に食われるだけ。ビットコインとか現世にゃ無いし、経済なんて欠片も学んだ事が無い私には取れない選択肢だ。


 召喚系ジョブはゲームのままだと無茶な条件、ブリテン連合国のロンドダンジョン30層の泉の水が飲みたいなどの召喚体の欲求を叶えなければならない仕様が怖い為に断念。ゲームであればボタンクリックで移動出来たが現実ではパスポートの発行にも審査に試験があり、さらに国外のダンジョンを潜る為には国際資格を取らなければならず、その資格でさえ国によって挑めるダンジョンを制限されるというから物凄い博打だ。家族の事などを考えなければ法律を足蹴にするアウトロールートも考えられるが、私達はふたりとも秩序の中で生きると決めているので無し。


 特殊なジョブは、特定のダンジョン進行時のみ取得とか特殊系統の魔力属性持ちであるとかの色々な前提条件があって、自由に動けない私達には厳しいし、魔力属性を確認する方法が刀京魔導学園の入学なのでどっちにしろ難しい。


 探索者でないと長距離移動も制限される世の中なのだ。前世のような地域をまたがる公共交通機関は少ない上に許可制で、探索者資格を持っていても気軽に国内旅行など出来ない。地域内であればそこそこ観光も出来るのだが、移動元と移動先の地域を治める貴族家双方に申請して受理されなければ別地域への移動なんて許されない。密行にワンチャンだが前科がつけば家族に迷惑が掛かるので同様に無し。


 つまりホライゾン世界知識があれど現実問題として目指せるジョブ選択肢は多くない。

 朝の鑑定されたステータスが正しければ、魔力属性などの組み合わせから相性が良いジョブはさらに限定されたと言ってもいいだろう。

 周りに聞き耳を立てているような通行人はいないがマッキーが声を潜めて呟く。


「ユッキーなら【侍】も余裕だろうに、勿体ない気するがな。正直今朝のサイト見た時さ、オレが【狙】属性ならユッキーはまさか【斬】属性かっていう心配よぎってさ」

「なにそれ。杞憂民してんね。物理系でもわたしは【巫女】目指せるしどっちにしろかな。マッキーも【巫女】目指さないか?」

「PTに二人も要らねえだろ。つうか無茶言うなユッキーと違って浄化適性も無いんだし。それよかこれはマジでさ、仮に魔導端末貰って【雪】属性じゃなくて物理系だったら【侍】ルートもありだと思うぜ?」

「装備ペナルティくらう現実からしてありえんと思うけどねー。てか【侍】なんかになった日にゃ士族連中がうるさいって。まぁ刀にゃちょい憧れあっけどね。マッキーも知ってるでしょ。手袋とか篭手装備した後でも剣の柄持って装備したら両腕が凍えたかんね、指先とか感覚なくなんのよ。あれで戦闘なんて無理無理。すっぽ抜けるか落っことすだけ」

「金属じゃない刀剣もあるし、雪属性と相性良い属性刀見つけりゃよくね?水属性の刀ならあの池行きゃ手に入るかもだし」

「水属性ってのも不安要素だわ、雪属性じゃないと無駄じゃないかなぁ、知らんけど。それに池のクエはゲーム主人公の血筋あってこその話っしょ。他のもいつになんのって話よ。ゲームなら序盤お荷物でもアリだけど現実じゃ死ぞ死。刀は良いけど【侍】ジョブにゃ思い入れも無いしね」


 幼少時、ただ単に枝切れを振るう事が楽しくて一日中振っていた事があったし、道場での木刀模擬戦では剣才有りとは評価されていた。

 自分でも意外な事に自然と姿勢や刃筋を立てれる事に小気味良く、魔力の修行が出来ない時間があった小学時代はそれこそずっと棒切れを振っていた時期もあったし、その努力のおかげだと思ってる。

 中学時代でも実際、門下生相手に良い勝負出来たのは木刀使った試合形式だった。

 だが折角育てた魔力を活かそうとすれば牙を剥かれるのだからたまったものではない。


 そして別に刀剣を使わなければならない事は無いが、この現世では魔力を使った方が絶対に強くなれると分かり切っている。

 それなら魔力活かすジョブを目指すだろう。

 そんな事を考えていたらマッキーが煩悶するように唸っていた。


「オレの【狙】属性ってなぁ……物理系統なんだろうけど、向き不向きがさっぱり分かんねー」

「ん、聞いた第一印象としては、映画に出て来た槍使いの【刺突】属性とかと似てる感じかなって思ったね。ゲームにはどっちとも登場しないけど」

「だよなぁ、ゲームだと無属性か物理属性で一緒くたにされてっし……」

「槍苦手だもんねマッキー」

「ふはは……組み手勝率1割下回ったからな。正直槍だけは無い。刺突剣《レイピア》も槍よかマシ程度。つうか近接全般きっちいわ。道場で思い知ったつうの」

「選択授業、弓道場とか射撃場選べなかったしね」

「ソレナ。近接技能の道場限定だもんな。まあエグイ鍛錬耐えれるかが受験ラインってのは分かるけどさ」

「【狙】属性ねぇ……じゃあ【銃使い《ガンナー》】系は?一応魔導銃の一番安いヤツならウチに用意してあるよ。それでも結構値が張ったから予備含めて数少ないけど、マッキーが使うなら取り置きから購入って形でいける筈」

「いいのか?」


 食いつきいいなおい


「もちろんPT資金からだから私らふたりの借金とさせて頂きますマム」

「ありがてぇが、いや、だが、数年間も鍛えてきた道場での稽古が何だったんだってなんねそれ。マジで、いや素直にありがてぇんだが……でもまぁ今日の所はこのままでやってみるわ。魔力属性はてっきり自然系統の土属性だって思い込んでたからなぁ……銃系統のジョブは選択肢に入れてなかったんだよな。後衛か中衛が精々だし」

「物理系統なら銃適性たいていあるもんね。良かったじゃん銃撃ってる時すんごい楽しそうだったし相性良いのが重要だって」

「否定はしねえが……試射の時に戦封じを外せていれば気付けたかもしんなかったのによ。これも全部あのクソ教員のせいだ……まぁまだ本当に【狙】属性とかいう妙ちきりんな属性だと決まったわけじゃねえし」

「いやぁ……まぁ入学式で魔導端末貰ったら分かるよ」

「だな」

「……魔力属性とか適性ごとに向いてるジョブとかの情報集まってる筈なのになんで公開されないんだろうね」

「そういう情報は国とか貴族っつう上層部が独占しときたいんだろうさ。初DA(ダンジョンアタック)クラス合同授業がゲームとか漫画そのまんまなら」

「だよねー。あの罠。言われるままにしてたらレベル5になってジョブ得ても大抵脳筋前衛職という……」

「もしくは【悪漢《ローグ》】だな。ゲームと違ってリセマラなんて出来ないのによ。この現実《リアル》でどうなることやら」




■■■ ■■■ ■■■


〇神の恩恵(ジョブ)

 【ホライゾン~学徒の牙閃~】という別世界に存在した遊戯《RPG》では、神の恩恵(ジョブ)はあるが転職システムなどは無く、好き勝手に変更させられないシステムであった。ただ上位のジョブにクラスアップするシステムはあり、これをクラスチェンジと呼んだりもする。存在進化や種族進化とはまた別。

 ジョブはレベル1の「未定」からレベル5になるまでの行動によって自動で決定される。気に入るジョブになるまでニューゲームを繰り返しやり直すプレイスタイルもあり、リセマラ(リセットマラソン)などとも呼ばれていた。

 またダンジョンに入ってからの行動で成長傾向(筋力成長アップ魔力成長ダウンなど)も決まっていた。

 これらは全て天使と呼ばれた作成者が作った遊戯の設定である。

 だが現実と違うかといえばそうとも言い切れない。

 例えば探索者養成校のダンジョン実習などで相応の値段がする回復薬と棍棒を持たせ走らせ魔物を殴らせる行動は、戦士《ファイター》や槌使いなどの他に回復職である神官《クレリック》になる可能性を上げる。これはジョブ適正の武器武装で魔物と闘争を行った経緯を、地に満ちる神々の神秘が記録する為だ。

 怪我を負った者を回復薬で治療する行為も同じく神官《クレリック》や薬士《メディック》・調合士《アポセカリー》になる可能性を引き上げる。武器で倒さずとも歌や踊りのように魔物を倒さず支援に徹していれば歌い手(シンガー)や踊り子(ダンサー)といったジョブになる可能性を高める事が出来る。またパーティ内や同陣営を殴りつけたり脅迫したりすると悪漢《ローグ》や詐欺士《ライヤー》といった不名誉とされるジョブになる可能性ももちろん引き上げる。

 遊戯ではプログラムが決めていた事であるが、現世ではどういった存在がどのようにジョブを付与しているのかヒトの間では未だ謎に包まれている。神かダンジョンか、討伐された魔物の願望というたわけた憶測まで飛び交っているのが実情だ。


〇魔力属性及び適性

 魂が霊格神経と交信するたびに発生する魔力にはそれぞれ独自の波動や癖、習性、色、味など様々に違いがある。

 それをヒトは大きく分けて魔力属性と区分けし、魔力属性とは別法則で不随する習性を適性と呼んでいるようだ。例えば、土属性を持つ多くのヒトは自然干渉系統であるにも関わらず金属適性を持っており金属系の武装を装備しても反発されない。逆に、火属性のヒトであれば金属適性がほぼ無く金属系の武装を装備すれば反発されるといった具合だ。

 ヒトが把握している適性には他にも、銃や弾丸に魔力を込めても反発・減衰が無い銃適性、瘴気に抵抗力を持つ対瘴気適性、瘴気を祓う浄化適性、他者の魔力に馴染みやすい回復適性などが挙げられる。



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