第十八話
正門前に並ぶは騎士の列。姿勢よく立つその姿は、行き届いた訓練が物語っている。
ルリィは一人一人の顔を確かめて、歩いていく。
門に集まった民衆たちの目は、自身の遺族が荒らされて怒りに燃えるばかりだ。
その中に墓守の姿を確認して、ルリィは彼を手招きして呼び寄せた。
「怪しい人を見た覚えはあるか?」
彼は首を縦に振る。夜中に一人墓を掘り返している姿を見たと。その時は注意すると逃げていったのを覚えていると。
「しかし、それ以降は見たことありませんよ。墓もいつの間にか掘り返されてて」
「でも、一度だけ見たんだな? それはいつ頃だ? 」
「そうですね。丁度あんたたち騎士団が到着した時ですね。まさかですが、あんたらの中に犯人がいるっていうんですかい?」
彼は信じられないとでもいうように目を見開いていた。国を守る騎士団が、そんなことするはずないと。
「私はいると思っている」
その言葉に集まった民衆たちのざわめきが大きくなった。
罪を半分認めたような言い方は、騎士として異例だからだ。例え犯人がいようとも国を守る騎士なら隠蔽するところだ。
ルリィもそれはわかっている。しかし、そういったことは見逃せないのが彼女だ。だからいつまでも裏に回されるのだろうなと肩を落とした。
「それで、何か手がかりになるようなことは覚えてないか?」
「そう言われてもですねぇ。あのときは暗かったですから」
墓守は考えるように眉をひそめる。思い出すように視線を彷徨わせる。少ししてから、彼は手を打った。
「月明かりで照らされた髪。あれです、金色でした」
その発言に、騎士の視線が一斉に一人へ集まった。
ルリィが連れてきた騎士の中で、今金色の髪をしているのは一人しかいない。
視線を受けるルーマンの足裏が地面と擦れて鳴る。周囲の視線にたじろぎ顔を振った。
「嘘だ! 大体金色の髪なんて珍しくもない! そうだ、その墓守が自分の罪をなすりつけようとしてるんだ!」
「まだ、私はお前に聞いてないぞルーマン。ただ、犯人像として見つめただけだ」
「……く」
「この中で墓守が言っていた日にルーマンと過ごしていた人はいるか?」
ルリィのその言葉に、騎士のみんなが顔を見合わせる。ルーマン隊の隊員が手を上げかけたが、ルリィに見つめられて途中で降ろした。
ルーマンの奥歯が鳴る音が聞こえる。
「少しだけ、話を聞かせてもらっていいか?」
その言葉に、彼の瞳が細かく揺れた。
「クソが! いつも俺を見下しやがって!」
その吐き捨てた言葉に、隊員が全員驚いた顔をしていた。ルリィは眉間に少し皺を寄せる。
「何が神童だ! たまたまうまくいっただけのコネ使いがよぉ!」
「そのコネ使いに見破られたのは誰だ?」
「は、関係ないね! 俺には選ばれたギフトがある!」
なにかする前に捕らえろ。ルリィの瞳が隊員たちにそう告げていたが、彼らの動きが一歩遅れた。
ルーマンは地面に剣を刺す。黒い煙が地面を這う。
「俺のほうが隊長に優れてんだ! 俺の軍隊に溺れろ!」
「なるほど、それが動機かルーマン」
剣を抜きながら、小さくため息をついた。
「私の家を無茶苦茶にしたところで、お前は器じゃないよ」
黒い煙から這い上がってくるのは骸骨の群れ。それは剣や斧を担いでいた。
中隊規模のそれに騎士たちはぶつかる。剣が打ち合い火花が散る。門に集まっていた市民は逃げ出していた。
「……ち! 町に兵を裂きすぎたか……!」
ルーマンが歯噛みする。
ルリィが剣を振る。一体、二体、三体と骸骨を屠っていく。あと一歩で攻撃が届く。そう思ったが、新たな骸骨に割り込まれた。
「残念だったなルリィ! そいつはこの町の英雄の骨だ!」
「そうか、さぞその人もお前なんかに利用されて残念だろうな」
「は、言っとけ! 骸骨は倒しても蘇るぞ!? いつまで余裕でいられるかな?」
なるほどとルリィは剣を弾き返しながら思う。
倒したはずの骸骨はまた起き上がって武器を振っていた。その異様な光景に、周囲の騎士たちはたじろいでしまう。
消耗して押し返されるのはこっちだ。
「集団としてはルーマン。お前の勝ちだよ」
実際、ルリィはここを突破できない。彼の統率の取れた軍隊は、真正面の個ではどうにもならない領域に達している。
「はは! 今さら負けを認めたところ……で」
血が飛んだ。ルーマンの右手が斬られている。そのことに信じられないとでも言うように目を見開いた。
「総じて拮抗状態を破る策は、昔から伏兵奇襲って決まっている」
ルリィの言葉を表現するかのように、レイが彼の懐に入っていた。




