好きな人が告白されてるところに出くわしたら、焦りとかすっげーやばそう
僕は走って、神埼さんの居た渡り廊下まで行く。
それにしても、神埼さんは部活してないって言ってたのになんで部活棟なんかに。
いや、そんなことは今気にしても仕方がない。
三階にある、僕の教室から、部活棟に行くには、二階に降りて、そこから渡り廊下を渡るのが一番近い。三階には渡り廊下がないから。なんて不便な作りなんだ。
僕は心のなかで文句をたれながら、階段を駆け下りる。そして、渡り廊下を渡り、部活棟へと入っていく。
問題はここからだ。部活棟は四階ある。そして今は二階。神埼さんが上に行ったのか、下に行ったのかわからない。
とりあえず、二階の廊下を回ってみる。が、神埼さんの姿はなかった。二階のどこかの部室に入っている可能性も考えたけど、一部屋一部屋探すのはさすがにきつい。それに居なかった時なんて言えば……。間違えました。と言って扉を閉めるぐらいしか考えつかない。なので、僕は一階へ降りることにした。
一階の廊下を見渡す。そこにも姿はない。
一階じゃなかったようだ。
こういう時の僕の運は最強に悪いから。ハズレを引いたんだろう。
くそう、こっから三階へと階段を駆け上がっていく。
部室があるのは三階まで。四階は物置みたいな状態になっている。だから三階だろう。そう思ったけれど、三階の廊下にも居なかった。
普段運動しないから、息が切れて苦しいのにもかかわらず、もう一階階段を上らないといけない。走る力は僕にはもう残ってなかった。
半ばあきらめて、階段を登る。
「お待たせしました」
途中で神埼さんの声が聞こえてきた。四階からだ。僕はゆっくりと階段を上がる。
誰かと待ち合わせしてたんだろうか。こんなところで。
「話ってなんでしょうか?」
僕は階段を最後まで上がらず、身を潜める。立ち聞きするのはよくないかもしれないけど、今行くのはなんだか野暮な気がした。
「神埼さん!」
男の声がした。会っているのは男か。なんだか嫌な予感がする。
「はい」
落ち着きが無い男の声とは真逆に、神埼さんの声はすごく落ち着いているような気がした。
「あの、俺、神埼さんのことが好きで、よかったらパートナーになってもらえないか?」
告白だ。
しまった、先をこされてしまった。どんな奴なのか見たくて、覗きたいが。それをやると色々まずい気がする。もしバレたら。なんでここにいるのか、から質問攻めされそうだ。まさか神埼さんをつけてきたなんて言えないし。
いや、そんなことより、神埼さんの返答だ。ここでオーケーされたらたまったもんじゃない。
僕はゴクリと生唾を飲んで、神埼さんの言葉を待った。
が、神埼さんは思ったよりも早く、返答した、
「私、好きな人が居るので。ごめんなさい」
はっきりとした物言い。おとなしいようで、そういうところはきっちりとしている。相手は固まっているようだ。何も声が聞こえない。
「じゃあ私、帰りますので失礼しますね」
やばい、こっちにくる。
僕は急いで、階段を駆け下りた。足が疲れきっているけれど、バレるのはまずい。とりあえず昇降口までは逃げよう。
鉢合わせしたとしても、昇降口なら問題はない。はずだ。
僕は一目散に一階まで駆け下りて、昇降口の、自分の下駄箱のところで、息を整える。
いきなり運動したからか、汗も出ている。これは、収まるまで少し時間がかかるかも、
「あ、井上くん。今帰りですか?」
僕が息を整えている間に、神埼さんがやってきた。
「あぁ、うん。そうだよ」
「なんか疲れてるみたいですが、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だよ」
僕はにっこりと微笑む。内心いろんな感情がまざって居るのだけれど、今さっき見たことをバレてしまっては説明がめんどくさい。
ごまかすための笑み。
それを神埼さんはどう捉えたのかわからないが、
「そうですか、なら一緒に帰りませんか?」
と誘ってきた。もちろん、断る理由なんてない。
「もちろん、良いよ」
僕は快く受けた。
二人で靴を履き替えて、校門を出る。
そういえば、校門で待ち合わせのメールしてたんだけど、まだ見てないみたいだし、どうしよう。ここで切り出すべきなのかな。
そんなことを考えていたら。さっきの出来事を思い出す。
『私好きな人が居るのでごめんなさい』
この言葉は想像以上に重たい。




