68 お嬢様とキラキラとした男子生徒
クラスは全部で五クラス。
この表記は冒険者のランクに似ている。
もしそうだとするのなら、単純に考えるとAがトップであるのなら私の名前はEにあるだろう……
E……ない。D、C……同じくない。
いっそ、私の名前はどこにも書かれていない。なんてことだったら嬉しいのだけど……となると残りはB? 筆記だけでB判定というのもなんだかな。
ちらっとAのクラスを見ると、特別なクラスなのか書いてある数が少ない。少数精鋭ってことなんだろうね。
私なんかがBでいいとも思わないけど……おかしいな。私の名前が見えなくもない。
そう、私が見ているその隣に見慣れた文字が見える。
BやCのクラスは二列になっている。Dに関しては三列もあったりするのに……私の名前が書かれているところは一列しか存在していない。
「おかしい……私が、Aクラス? これは、何の冗談かしら。見間違いだよね?」
何度見ても、間近から見上げてもそれは変わることがなかった。
おかしい……どう考えてもおかしい。
これが普通の、前世のように各クラス同じような人数であれば疑いはしない。
数が少ないということは、それだけ特別なクラスというのはわかる。そんなことってありえるの?
筆記に関しては良いほうだとは思うけど、それだけでこんなことになるものなの?
か、帰りたい。もしくは、図書室登校とかないの?
「あの、そろそろ入学式が始まりますよ?」
「いえ、私の名前が……」
「もしかしてなかったのですか?」
騎士の正装を身に着けている女性に話しかけられてしまう。
この人も……ここの教師だろうか?
それとも私を不審に思ったのだろうか?
そこへ割り込んできたのは、見覚えのある顔だった。
試験の日、教室で席を教えてくれて、椅子を蹴り飛ばされた時に助けてくれた金髪の男子生徒。
「ありますよ、ここに……ね? イクミ・グセナーレ様」
「なぜ私の名前が?」
「遅れてしまいますよ。私がご案内しましょう」
私に声をかけていた女性も呆気にとられ、何もわからないまま手を引かれて校舎の中へと連れて行かれた。
手を振りほどこうとしても、この人は離してくれない。
自分が非力なのは知っているけど、一体どういうつもりなのかしら?
助けてもらった恩はある……だが、この違和感。あまりよくないと思う。
「他の人はもう席についているようですね。さ、どうぞ」
講堂の中は生徒たちで埋め尽くされ、二階にも席があり、彼らは上級生なのだろうか?
そんな中を手を繋がれたまま、前の方へと連れて行かれる。
「いい加減、手を離してください。まったく。ここまで連れていただきありがとうございました」
「いえ、私たちも座りましょう」
何で私が最前列に……ここの席は何なの? どう見ても他の学生たちのものではない……
悪びれた様子もなく、先に座れと促されている。私も観念して座ると彼も私の隣に座った。
従いたくはないが、抵抗しても不利なのは変わりない。
それに、何がそんなに楽しいのか、隣ではニコニコしている。
ある意味、見慣れた会場を見渡し、予想通りと言うべきかこれから待ち受けているのは長い話でしょうね。
座っているからなおのこと睡魔が強くなる。式が進み、何も聞こえては来ないが、眠気と苦戦をしていた。
「国王陛下より祝辞を頂戴いたします」
国王という単語に、壇上に上がった人をぼんやりとした意識で見ていた。
「あの人が国王陛下……誰かに似ているような?」
「どうかしましたか?」
「いえ……」
この人は一体何のつもりかしら?
いちいち私の独り言にも反応して、そりゃ助けてもらったのは感謝してるけどね。
ありふれたような言葉を並べられ、私の頭はそれを受け入れるつもりは全くないようだった。
しかし、国王陛下というのもあるので私は何度も欠伸を噛み殺す。
長い長い式が終わり、ようやくこの講堂から出ることができた。
体を伸ばし、できなかった大きな欠伸をする。
「やっと終わった。思っていたより短いけど、長かった」
「面白い言い回しですね。ですが、あからさまに眠たいという表情。それと、先ほどの大きな欠伸をするのはあまりよくないと思いますよ?」
前回と今日と、この人はなんで私に話しかけてくるの?
あまり誰かと仲良くなるというのは避けたい。
親の階級を振りかざし自分を優勢に悦に浸る者。
何かしらの意図を持ち、婚姻目的で近寄る者。
自分の保身のために、階級の高い者に対して媚び諂う者。
どれもが私の知る一般的な学校とは遠くかけ離れすぎている。この学園での生活はあまり馴染めそうにもない気がしていた。
この学園は、言ってしまえばお金を払えば誰でも通うことができる。
私がここにいる理由はなんだろう? 生徒の繋がり、貴族の繋がり、爺さんのことだから後者よね。
「グセナーレ様。教室の場所、わかるのですか?」
「それはどうかしらね……」
彼も何かしらの考えを持っているのでしょうね……私を見ながらニコニコと笑っている。
この人も何か余計な思惑を持っているのだろう。
誰かと仲良くなって、恩でも売る?
私のことをどうするつもりだというのかしら?
小さいから妹的な扱い? 自分で思って何なんだけど……それだとしても色んな意味で悲しいよ。
「もし迷ったら、先生に聞くから結構よ」
「そうですか。残念です」
そう言いつつも、歩く私の後ろをなぜか彼は当たり前のように付いてくる。
流れとは違う方向へと向かおうとすると止められ、走り出そうとすれば腕を掴まれてしまう。
コイツはルビーからの差し金なのかしら?
私が大丈夫というのは、コイツがいるからということ?
「どういうつもり?」
「と……言いますと?」
いちいちその意味の分からない笑顔を振りまかないでほしいわね。
子供扱いをされているようで、かなり嫌味に感じてしまう。
「なぜ、私についてくるの?」
「同じクラスメイトなのですから、向かう教室も同じだとは思いませんか?」
思うわけがないでしょ。大体名前も知らないのに……今思えば私の名前を彼は知っていたのよね。
それに教室の場所も知ってそうだし、一体何者だと言うの?
少し冷静に考えれば、いくらルビーとはいえこんな真似はしないと思う。
学園で護衛がいるのなら、登校の前に待っていてもおかしくはない。
だとすると、コイツには私に近づくためのメリットでもあると言うの?




