↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嬢様として異世界で暮らすことに!?  作者: 松原 透
奴隷商人編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/87

48 お嬢様は大森林へと向かう

 彼女はどうする?

 自由となった彼女の意思は何?


「これから先はかなり危険な場所。あの子たちを誰が守るの? 危険であることを考えれば、私の奴隷はどっちを優先すると思う?」


「自分だと言いたいのだろう」


 自分たちよりも彼らは私を優先する。

 私が子供を守れと言っても、優先順位は変わらない。


「そうよ。だから、これから先はあなたがあの子たちを守りなさい。今のあなたならそれぐらいできるでしょ?」


「子供たちは元気を取り戻し、成長した。なら、私はお前たちを置いて……」


「話にならないわね。そうしたいのなら、好きにすればいいじゃない。もう少しまともな会話ができると思った私が、まるで馬鹿だったみたいじゃない」


 結局、彼女の心は開かないままか。

 それも仕方のないこと……もう少しだけの付き合いだから、諦める他ない。


 クロはルキアを突き飛ばし、喉元に剣先を向けていた。


「あんたは! イクミ様の偉大さを分かっていると思っていた。この期に及んでまだそんなことを言うつもり?」


 偉大じゃないとは思うよ……うん。

 それにしても、クロがここまで怒るとは思ってもみなかった。


「すまない。こうなると思わなかったのだ。まさか、魔力制御を外すなど誰が想像できる?」


「私には想像できたよ。イクミ様なら村の場所が分かればこういうことをするって」


「嘘を言うな」


「嘘なんかじゃないよ」


 クロの言いたいこともわからなくはないけど……私的にはもういいかなって思っただけだよ?

 でもこれって、あの時と似ている?


「ねえ、クロ。それってもしかして経験談による発想なのかしら?」


 クロは体をビクリとさせ、かすかに剣先が震えていた。


「そういえばクロも最初は、誰がお前なんかの言うことを聞くかって。私に散々……」


「わー! わー! わー! ちょっと何言ってるんですか!」


「だって、奴隷紋を解放したときになんか似てるなーって」


 クロは私の方を向き顔を真っ赤にして両手をばたつかせている。

 一方ルキアは口元に手を当てクスクスと笑い始めていた。


「な、何がおかしいんだ! イクミ様を馬鹿にしているのか!!」


「くくくっ、す、すまない。お前のようなものが獣人の奴隷紋を解放などと、下手をすれば自殺行為だろう。なるほどな……」


「別に自殺行為というわけでもないよ。もし、あなたが私を攻撃してもクロ一人とはいえそう簡単に倒せないでしょ? クロのときにはバナンがいた。私はその程度の人間だよ」


 考えなしだったのは認めるよ。

 本当あの頃は、色々とおかしなところもあった。

 この世界での生活に、私も順応し始めたってことかな?


「私はお前が少し羨ましい」


「そう思う? こう見えても私だって色々と苦労はしているのよ?」


 貴族でもないようなのに、やたらと多い座学。

 淑女の欠片すら持ち合わせてもいないのにさまざまなレッスンの地獄。

 二人には、あの赤い悪魔がどう見えているのだろうか……


「一つだけ言わせてくれ」


「何かしら?」


「子供たちを助けていただき感謝する」


 ルキアが初めて私に頭を下げていた。

 元は子供たちを守るために、彼女は奴隷商人に捕まった。

 ずいぶんと時間はかかったけど、これで良かったのかもしれないわね。


「いえいえ、どういたしまして……と、言いたいところだけど、まだ準備には数日かかるし森に行くまで、まだ時間があるわ。無事解決できたら、もう一度その言葉を聞かせて」


「承知した」


 ルキアは軽く頭を下げてから、テラスから飛び降り子供たちの輪の中に入っていった。

 私の前でもああ言う顔をすればいいのにね。


 それにしても……クロはいつ鍛錬をしていたのだろう。

 ラズ兄さんとの戦いはもしかして手を抜いていたのだろうか?

 それとも、私の知らないところで……うん、やめよう。

 考えるだけ無駄だと思う。クロは強い、それだけで十分。


 冒険者の依頼に区切りをつけ、続々と帰ってくる冒険部隊。

 倉庫に保管されていた数々の魔物の素材を馬車に詰め込み、街に繰り出していく。帰ってくる頃にはどこかで借りてきたのか馬車の数も増えていた。何かが入った木箱を今度は貯蔵庫へと運び込んでいく。

 私はテラスから、眺めていたが……深く言及しないことにした。


 そして、一週間が過ぎ、出発は明日となった。


 子供たちは誰が思いついたのかはわからないけど、夜には送別会が開かれた。

 私のテーブルには、ティアとクレスが座り大いに盛り上がった。

 私は用意していたブレスレットを付けてあげると二人とも泣き出したが、いい思い出になってくれることを願った。


 出発当日の朝。

 広場には奴隷たちが整列をし私を待っていた。


「皆おはよう。前回の時とは違い、危険な旅の可能性がある。私の我儘で申し訳ないけど、誰一人として欠けることなくこの場所に戻れることを願っている。では、出発だ」


 さながら軍隊のように思えるが、彼らは普段は冒険者をしている奴隷たちのはず。

 それがなぜ、ここまで統制の取れた団体へと変貌しているのか私には理解できないままだった。


「毎度のことだけど……私の奴隷ってやっぱり頭おかしいのかしら」


「お嬢様?」


「あのバカは、前回と同じことをしているようね。まったく、無茶ばかりして」


 お前はこの部隊のリーダーなのよ?

 それなのになんでここにいない?


「ええっと、私は、なんのことか、さっぱりです」


 クロの視線は私から離れ、それが何を意味しているのか分かっているのかしら。


「クロ。咎めるつもりはないよ。私だって、あの時みたいなことはもうしないわよ。先行するのなら言ってくれれば了承したのに」


「ですが、一年前よりも随分と人も増えましたから、イクミ様がご心配されることもないと思います」


 再び奴隷市場に私が行くことはなくなったけど、奴隷商人を呼び寄せ何人もの奴隷を買い。

 借金奴隷になりそうな人を私の奴隷にしたりと、奴隷の総数は百人に達しようとしている。


 現に私を取り囲む部隊の数も多い。

 当初は七日かかる予定の道のりは、わずか五日間で到着した。


 馬車での旅路はなんの問題もなく走り続けていく。野営地に到着すると、あの時と同じようにすでに出来上がっている。

 それ故に、私たちの馬車は目的地へとただ進行するだけ。


「明日からは馬車は使えないから、私もようやく歩くのね」


 固まった体を伸ばしつつ先の見えない森を見ていた。

 パメルトラの森。山脈の山間に広がる巨大な森林。


 資源は豊富そうに見えるが、魔物の数も多く、冒険者たちもあまり近寄ることがない。

 この場所が危険に見合うだけの何かが得られるという保証がないため、誰も立ち寄ることがない。


 ならあの奴隷商人は、どうやってこの森へと足を踏み込んだ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。