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雑談は推し活に入りますか?~底辺配信者の私の配信に最愛の漫画家がいる気がする  作者: 猫宮さかな
第一章 底辺配信者、推しに認知される

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第2話 宇崎百花はやっぱり残念なオタクである

「くっるー! ちょっと聞いて聞いて!」

「もか、もう少し音量下げて。テレビのリモコンで言うと十くらい」


 配信者名『らびっと100』こと本名・宇崎百花(うざきももか)は、書店周りを終え特典コンプした足で大学に向かい、講義室で講義の開始を待つ親友に飛びついた。

 飛びつかれた親友・秋野くるみはとても嫌そうな顔をしていた。いつもどおりだ。クール女子だ。


「で、発売日だったんでしょ? 買えたの?」

「買えた! 特典コンプ! 一冊あげるね」


 流れるような動きで鞄から一冊出して渡すと「仕方ないな」と不服そうに受け取ってくれた。でもいつも読んだ感想くれるから本気で嫌がってるわけじゃないし。漫画興味ないフリなだけだし。決して私の強がりじゃないし。


「コレの感想を話したいわけ?」

「ネタバレはしない主義なのでそれはない! っていうか私もまだ読んでないし」

「でも連載追っかけてるから知ってるんでしょ?」

「単行本だと書き下ろしとか加筆とかあるじゃん! 別物だよ!」


 くるがあんまり興味なさそうに単行本をパラパラめくる。

 私もその隣で読みたいところだけど、講義が始まる時間が近い。読み始めたら講義聞けない。それはまずいので、とりあえず巻末の書き下ろしだけ読んでおこう。お買い上げありがとうございますとか近況とか書いてあるエッセイ漫画みたいな後書き。銀杏先生がSNSでたまに書いてるエッセイ漫画とかも好き。全保存してる。一冊にまとめてほしい。

 そんな軽い気持ちで後書きを開いた私は「くっるーーー!」と奇声を発した。隣のくるからは「鳩か」とツッコまれた。

 どうしよう助けてと泣きつこうとしたら、講義の始まる鐘の音が鳴った。

 無情にも始まる講義。


 まってーうそでしょーこの気持ちのまま講義は無理ではー?


 泣きそうになりながらそれでも必死に講義を聞く私は本当に偉いと思う。

 その代わり、講義が終わった瞬間くるの腕をひっつかんでダッシュで部屋を飛び出した。

 なるべく人に話を聞かれる可能性が低くて、騒いでも怒られないところ。

 この時間講義があんまりない棟の端っこの講義室。この時間限定穴場スポット!


「はあ、推しっぽい人がらびこ配信に来た? あの過疎枠に?」


 親友のくるには雑談配信の存在を話してある。というか、くるもたまにリスナーとして遊びに来てくれてる。だからどれだけ過疎ってるかもよく知ってる。


「人違いじゃない?」

「私もその可能性を考えたんだけど!」


 机をバンっと叩く。思ったより大きい音が出て、ちょっとびっくりした。くるが「馬鹿だなあ」と言いたげにこっちを見たけど、とりあえず無視。

 買ったばかりの単行本の後書きを開いて、くるの顔の前に差し出す。


「銀杏先生が『最近は作業BGM代わりにいろんな配信を見てます』って書いてるこのコマ! このイラスト! 私のアイコンじゃない?」


 有名配信者っぽいアイコンがいくつかと、見覚えのないたぶんマイナー配信者のアイコンいくつかが、先生のイラストで描かれている。

 その中の一つが私・らびっと100のアイコンに似てる!


「……気のせいじゃない?」


 じーーーっと単行本を見た親友は一言勘違いと言い放った。

 よく見てほしい。この特徴的な髪形を! 瓜二つじゃん!

 そう思う私に、くるは残酷な一言を付け足す。


「小学生が書いたようなもかの絵に、似てるわけないじゃん。自分の絵をもっかいよく見てから言いな?」


 私は無言でスマホを操作して、らびっと100のアイコンを画面に出した。

 そこには特徴的な髪形の女の子がいる。

 ただし画力は残念。


「髪形が似てるって言いたいかもしれないけど、もかの絵を見てもどんな髪形かよくわかんないよ、それ」


 さすが親友。言わなくても伝わってる。

 嬉しい反面、言葉がざくざく刺さる。


「ううううう……でもでも、私が思う『らびっと100』のアイコンそのものなんだもん! もっと大きいサイズで見たい! コピーして部屋に飾りたい!」

「じゃあ、先生に認知されたいってこと?」

「うぐっ」


 机を控えめにぺしぺし叩きながら文句を言うと、くるが恐ろしいことを言い出した。

 認知は絶対されたくない。

 雲の上にいる推しに存在を認知されるのは嫌だ。

 でも、推しの描く自分のアイコンは見たい。

 私自身の似顔絵はいらないけど、アイコンの似顔絵は欲しい。


「……配信を認知されずに、アイコンだけ描いてくれるにはどうすれば……」

「んな都合のいい展開あるわけないでしょ」


 クール親友は「リスナーは別人だし、巻末のイラストも勘違い。わかったら新刊でも堪能してな」と冷たく言いながら、単行本のページをめくる。ちゃんと読んでくれてるの助かる。

 机に突っ伏しながら、私も手元の単行本に視線を落とす。

 目に入るのはあの巻末ページ。

 胸に芽生えた疑念はどう言われたって消えない。


 あの配信を見られているのは嫌だけど、でもなー

 絶対先生だと思うんだよなー

 推しの視界に入りたくないなー

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